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- 2025年03月25日
- 議会(質問・討論)
- 2025年2月議会 岡本和也議員の「2025年度予算(案)」等反対討論
私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっています第1号議案「令和7年度高知県一般会計予算」および条例議案第55号(「高知県建築士法施工条例の一部を改正する事」)・第56号(「高知県建築基準の一部を改正する事」)・第57号(「高知県手数料徴収条例の一部を改正する事」)について、反対の立場から討論を行います。
予算案は、今後も続く人口減の元で、公共サービスを見直して持続可能な社会の実現を目指す「スマートシュリンク=賢く縮む」という考え方を人口減少対策の戦略にすえています。具体的には、消防広域化、国保の保険料水準平準化、周産期医療の集約化、県立高校の再編です。これが本当に県民の願い、要求から出てきたものでしょうか。
消防の広域化では、知事は「県一本化でやってくれと言うのが、おおむね消防長さんの意見だ」と強弁しました。しかし、委員会質疑では、要望の出ている消防長については2023年度総務省に設置された消防広域化の推進に向けた検討会に当時の高知市消防局長が入られて、「いろんな刺激や話を受けて、戻ってこられて県としても広域化について考えていく必要があるのではないか、との高知市消防局長の声が元々あって」との説明でした。県下では、これまでも条件の合うところでは、広域化、共同化に取り組んでいます。高知市と土佐市は2023年11月に14億円余りをかけ消防指令業務を共同化したばかりです。その状況の元で、知事は「県一本化が最も有効」と断言し、全国初の県一体制の実現をかかげ、「広域化推進室」を新設し、あり方検討会には、広域化に旗をふる総務省消防庁からオブザーバーが入るのを見ると、国の施策に率先して追随していくという危惧を強く持つものです。
政府が広域化しなければ財政的にやっていけないと進めた「平成の大合併」で周辺部の切り捨てが加速化した失敗をしっかり教訓にすべきです。
国保の保険料水準平準化について。国保の構造的問題の解決に対して全国知事会は1兆円の公費負担を要望しました、しかし、予算措置は3400億円にすぎないことが根本にあります。周産期医療の問題も、病院の6~7割が赤字で「地域から病院がなくなる」と言う全国的課題であり、政府の医療費抑制、医師数抑制が生み出した結果です。
いま県政に最も求められる事は、人口減や地方の衰退を招いてきた国の政治に正面から問題提起を行い衰退の原因と対峙していく姿勢です。全国一律の最賃は無理とか、高額療養費の上限見直しにも制度の持続性が大事とか、農業への市場原理を当然視したり、異常な大軍拡にも理解を示す姿勢では県民の暮らしを守る事は出来ません。
こうした視点を抜きに、「賢く縮む」と言っても、明るい展望は出てきません。その事が予算案全体を貫く問題として、予算案反対の第一の理由です。
第二は、子育て支援についてです。特に、子どもの医療費無償化に対する県の消極的な姿勢は見直す必要があります。子どもの医療費無償化は、2009年から改善が見られず全国最低水準となっています。県としてしっかり、子どもの医療費無償化の底上げをするよう求めます。
第三は、人口減少問題を若い女性に押し付けるジェンダー平等に反する様な施策となっている事です。施策の説明に独身者に対し「婚活の未活動」と言うとらえ方に唖然とします。
そうした息苦しさが県外、都会への脱出を後押ししている事に気づくべきです。
第四は、デジタル化の無批判な推進です。デジタル化が社会発展に重要である事は理解できます。しかし、メリットばかりが強調され、デメリットは全く触れられていません。政府の「デジタル改革」は、行政保有のデータを企業に開放し、「儲けのタネ」として企業の利益につなげる為の「改革」です。マイナンバーカードを核としたマイナポータル(情報提供の履歴)を使っての様々なサービス利用は自己責任とされており、機微な個人情報が収集される危険があります。「匿名加工」していても専門業者が分析すれば簡単に個人が特定できる事が海外で起こっています。個人情報を守る規制がEUなどに比べて極めておそまつな状況で、推進一辺倒の姿勢は、行政の仕事と言えるでしょうか。また、ガバメントクラウド(行政や自自体のみが使用できる政府の情報システム)利用料やシステム改修費など、想定を超える自治体の負担増が問題になっています。本予算案の中にも、県庁内のイントラネット(内部のみで利用できるネットワーク環境)整備という県単事業に14億円も支出されています。
第五は、教育行政です。教員未配置という異常な事態が続く一方、教壇にたたない教員が教育委員会に配置され、率でも実数でも全国一という事態となっています。学力テスト偏重の結果、標準授業時数を大きく超える事態が常態化し、ストレスフルな学校生活は、過去最多の不登校、教員のメンタルなどの病休を生み出しているのではないでしょうか。
千葉県は標準授業時数を超える授業時数をゼロにしています。県内でも土佐町などで踏み切っています。授業準備に十分時間がとれない状況では、教育効果は高まらないとの判断からです。子どもたちにも余裕がうまれています。しかし、県教委は、大幅な超過はなくなったと言うだけです。
過度な競争教育の是正、子どもに寄り添い、向き合う事のできるゆとりある職場環境をつくるため少人数学級の拡充、正規教員の確保、教職員の働き方改革、なんでも相談でき、互いに学び成長できる民主的な職場環境づくりに転換する事が必要です。
教育現場へのAI導入はじめデジタル教育推進予算が提案されています。しかし、ユネスコはICT教育(パソコンやタブレット端末、インターネット等の情報通信技術を活用した教育手法)そのものに警鐘を鳴らす報告書を出しており、個人情報のオプトアウト(配信拒否)に関する視点や、デジタルシチズンシップ(デジタル技術によって社会に参加する能力)教育の重要性など、無批判に取り組むのでなく、立ち止まって判断するよう要望します。
最後に経済・産業政策です。エネルギーなど地域外に出ていくお金を地域で生み出すという是までわが党が提案した「地消」は大変重要であり、より本格的な推進を要望します。
GDP25%を占める社会保障は、経済の大黒柱であり医療介護福祉分野は県内最大の経済と雇用分野で本格的な支援が必要です。また、農業は、県の産業振興計画の土台であり、国全体では、8兆円に及ぶ農業の多面的機能にふさわしい支援が必要です。
条例議案第55号、56号、57号については環境に配慮した建築の推進の点で評価します。しかし、建築確認の民間開放は公の検査力の低下を招き、耐震強度偽装事件につながった誤りを繰り返すものです。また、手数料の大幅増は最終的には県民の負担となるもので容認できません。
以上の理由から、これら議案に対する反対討論とさせていただきます。議員各位の賛同を心よりお願い申し上げます。