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- 2025年03月07日
- 議会(質問・討論)
- 2025年2月議会 細木りょう議員の一般質問(2025.03.05)
2025年2月定例会 細木質問予定項目 15問 10540字
【質問項目】
・防災まちづくり
・生活保護行政
・ビキニ被災者支援
・高知県公契約条例制定
●細木議員 おはようございます。日本共産党細木良です。通告に従い、質問させていただきます。
共産党県議団は昨年11月28日、2025年度予算編成に関する要望書(全144項目)を提出いたしました。重点項目は、中小企業支援、公契約条例制定、女性支援法にもとづく支援の充実、教員不足解消、医療的ケア児支援、消えた白線解消、災害時の水確保などです。今回の質問はこうした重点項目をいくつかピックアップし質問いたします。
【防災まちづくり】
●細木議員 阪神淡路大震災から30年、能登半島地震から1年2か月が経過しました。また、東日本大震災からはまもなく14年となります。津波等で被害にあわれた、大船渡の皆さん、今は大規模な山林火災がなかなか鎮火せず大変な状況となっています。一日も早く、少しでも早く、鎮火、これ以上被害が拡大しないように願っているところです。こうした災害で、あらためて、お亡くなりになった皆様方のご冥福と、被災されたすべての皆様にお見舞い申し上げます。
能登半島の復旧の遅れが指摘されています。石川県知事は、「創造的復興」をうたい、「災害と国防を一体的に考えていく」と発言、国いいなりの姿勢とともに住民の不満の声が高まっているとお聴きしています。「創造的復興」は大規模な再開発やプロジェクトを持ち込むものであり、住民置き去り、生活復興は後回しというのが、阪神淡路大震災での痛苦の教訓ではないのでしょうか。
創造的復興と対となるのが「人間の復興(人間的復興)」というキーワードです。102年前の関東大震災の復興をめぐり、福田徳三東京商大(現一橋大)教授は、「復興事業の第一は人間の復興でなければならぬ」とし、“人間の復興”は「生活や営業、労働の機会の復興であって、道路や建物はその道具立てにすぎない」と主張しています。
人間の復興という視点で復興に取り組んだこの間の事例として、復興計画づくりに市町村を重視して取り組んだ岩手県では、木造戸建ての仮設住宅建設や住宅再建費の上乗せ、医療費の軽減をすすめました。また2004年に発生した中越地震では、住み慣れた山古志村で住み続けたいという住民の願いにより、復興住宅の建設場所や地元の中心的な産業である養鯉業や畜産業の再建などを住民主体で進められました。特に復興公営住宅については、2戸一の住宅の仕切りを途中で外せる造りになっており、あとで若者のグループ活動や合宿、グループホームに転換できるようにしているなどの工夫が住民の発案で実現しています。
南海トラフ地震の発生率はついに80%程度となりました。第6期となる高知県南海トラフ地震対策行動計画(R7~R9)が今年4月からスタートします。今月末には国の南海トラフ地震における被害想定見直しが行われる予定ですが、これからもさらに被害を最小限に食い止める施策が求められています。
①被災住宅再建給付引き上げ
被災住宅再建について最大300万円給付する被災者生活再建支援法。復旧復興は何よりスピードが重要です。全国の多くの知事は共同通信社のアンケートに答え、支援上限額300万円の引き上げを求めています。資材高騰により能登地震発生後、上限額を600万円まで引き上げるよう求める野党の動きもあります。しかし、濵田知事はこのアンケートに「(上限額は)どちらかといえば引き上げるべきでない」、また支援対象(全壊から中規模半壊まで)の拡充についても「どちらかといえば拡充すべきでない」と答えられています。今年1月11日付けの高知新聞の記事でしたが、本当かと私は目を疑いました。
◆被災した県民が、住み慣れた場所で住宅を再建し、まちの復興にいち早くとりかかれるように上限額引き上げや支援対象の拡充は必要と考えますが、なぜ、後ろ向きのこのような回答をしたのか知事の考えを聞かせてください
○県知事 細木議員のご質問にお答えをいたします。
まず、被災者生活再建支援金についてお尋ねがございました。
自然災害によりまして、前回の住宅数が一定以上の規模となった場合には、被害を受けた 世帯を支援いたしますために、この被災者生活再建支援制度に基づきまして、全壊最大300万円といった水準の支援金が支給をされる制度となっております。この支援金は、人口規模などに応じまして、都道府県が拠出した基金から半分、そして残る半分は国の補助金という財源負担で支給をされておりまして、現在、中規模半壊以上の世帯が対象となっております。
この支援金の引き上げ、あるいは対象範囲の拡大につきましては、これまでも国と全国知事会の間でも議論が重ねられて参っております。その結果、対象範囲につきましては、令和2年に先ほど申し上げました中規模半壊世帯まで拡大されておりまして、この拡大には本県も賛同をいたしております。
この支援額の引き上げや、対象範囲の拡充は、被災者にとってはもちろん望ましいことではありますけれども、一方では国や都道府県の財政負担が大きくなる。また、地震保険など 自助の取り組みのインセンティブを損なう恐れがあるのではないかといった問題もありまして、国と地方の間ではもとよりでありますが、都道府県同士の間でもこれについては様々な意見の対立もあるところであります。
このために、直近のただいまおっしゃいました令和2年の制度改正について申し上げましても、実質的には議論がスタートしたのが、平成23年ということでございました。約10年をかけて議論が続いた結果、ようやく合意に達し、制度改正に至ったという経緯がございます。こうして長年の議論の結果、合意がされた現行の水準を私としてはできるだけ尊重すべきだという趣旨でアンケートに臨んだわけでございますが、そうした意味では、現状でも足りるといった趣旨の答えが1番ぴったりきたわけですが、選択肢の中では基本は引き上げるべきか引き上げるべきではないか、どちらかと、「どちらかといえば」はつけて良いというような選択肢でございましたので、ただいま申し上げました経緯を尊重して、現状でもやむを得ないのではないかというところに1番近い選択肢として、「どちらかといえば引き上げるべきではない」。あるいは、「どちらかといえば、拡充すべきではない」というような選択肢を選択したというのが、私の真意でございます。
一方で、私の考えを申しますと、ただいま、申し上げましたように、あまりにこの控除の水準が上がりすぎると、自助のインセンティブを損なうのではないかという心配がございますけれど、財源負担における国と県の関係について申し上げますと、国は大規模災害の時には、この負担率を高めて県の負担が増えないように措置をする、これは現実に東日本大震災の時にもそうされておりますし、来たるべき南海トラフ大地震のような大規模災害の時には、当然そうした措置が講じられるべきだという風に考えております。
また、昨年末に議員立法で、この支援金の水準範囲を引き上げると充実をするというような提案もされているようでございますけれども、国が能登半島地震の時に高齢者世帯に限って600万円に引き上げるというのを、これは国の負担だけで行ったところでございます。
こうした形で、国の負担で、全額負担で国の判断・考えで水準を引き上げることも、これはこれで地方としてやめるという必要は、私はない(という)立場に立っています。
従いまして、仮に、今後、支援金の引き上げや対象範囲の拡充を行おうとされる場合には、少なくとも都道府県での財政負担は増やさないというような形で、国の負担で行われるということが、まず検討されるべきではないかと考えておりまして、全国知事会を通じまして、こうした働きかけをしたいということで、対応を考えて参りたいと思っております。
②耐震化促進
●細木議員 能登半島地震での住宅被害は11万5000件に上ります。国土交通省、国土技術政策総合研究所及び建築研究所では能登半島地震発災直後より、分野別に専門家を現地に派遣し、地震及び地震動、木造、鉄筋コンクリート造、基礎・地盤、鉄骨造、非構造部材、津波・瓦屋根、火災等の建築物被害調査等を実施するとともに、住宅再建・地域復興に向けた調査等を行っています。建築物構造被害の原因分析を行う委員会がとりまとめた報告の中で、建築学会が行った木造住宅の建築時期別の悉皆調査による被害状況(図表)が示されています。
お許しを得ましたので図表を見ていただきたいと思います。
こちらが全体の状況です。一番左が旧耐震、その次が新耐震、そして現行の新々耐震基準です。やっぱり、1981年(S56)までの旧耐震基準では倒壊・崩壊が19.4%、大破が19.8%(合計39.2%)ということでかなり高くなっています。この、(1981年から)2000年(H12)までの新耐震基準でも、倒壊・崩壊5.4%、大破11.5%(合計16.9%)といいう、少なくない状況で、発生しています。岡本議員といっしょに輪島市の門前町道下地区というところにも行って参りました。ここは、被害が一番大きいところです。旧耐震基準では、倒壊・崩壊が20.6%、そして大破が22.0%ということで、やはり旧耐震は一日も早く耐震化促進をしなければならないという事は論を俟ちません。しかし(81年~)2000年までの新耐震についても、倒壊・崩壊12.8%、大破20.5%ということで、合計33.3%、これは本当に大きい数字ではないかと思います。
私たち県議団が提出した来年度予算要望でも繰り返し求めている新々耐震基準前の2000年建築木造住宅までの耐震化対象拡大が必要だと思います。南海トラフ地震の被害想定において、前段で述べた被災者再建支援法による扶助では多額の支援金が発生し、財政負担が予想されています。財政負担を抑えるためにも旧耐震基準の家屋の耐震化100%を早急に達成することを目指しながら、並行して2000年建築の木造住宅までの耐震化を求めるものです。県民から拡充の要望もさらに強まっています。
◆耐震改修制度を2000年建築までの木造住宅にまで対象拡大することについて、いつの時点になったら踏み出すのか、目途を示していただきたい。知事に伺います。
●細木議員 国土技術政策総合研究所はまとめの中で今後の対策について、「新耐震基準の木造建築物について、2000年に明確化された仕様等に適合しないものがあることに留意し、新耐震基準導入以降の木造住宅を対象とした効率的な耐震診断方法の周知普及を図る。」と記しています。
◆12月議会質問で岡本議員が求めた答弁とかみ合わっていなかったため、改めて伺いますが、せめて2000年建築までの木造住宅耐震診断からでも始めるべきです。知事に伺います。
○県知事 次に、いわゆる2000年基準までの木造住宅について、耐震改修そして耐震診断の助成対象を拡大すべきではないかとお尋ねがございました。関連いたしますので、併せてお答えをいたします。
今回の能登半島地震におきましては、多くの木造住宅が被害に見舞われたことは承知をいたしております。その建築時期別の被害状況が、国土交通省からも示されているところでございます。それによりますと、1981年以前のいわゆる旧耐震基準住宅は2000年基準以前の住宅と比較して、倒壊した総数あるいは比率ともに、もう明白に大きいという形が明らかになっております。
こうした点も踏まえまして、本県におきましては、倒壊する危険性がより明白に高いと考えられます1981年以前の旧耐震基準住宅の耐震化の促進にまずは優先して、取り組むことが重要だと考えております。
しかしながら、議員からご指摘ございましたように、その次の2000年基準以前の木造住宅におきましても、一定の被害があったということは承知をいたしております。そうしたことを踏まえますと、81年以前の旧基準の分についで、次なるターゲットとして耐震診断への助成対象として検討すべきものとして、この2000年基準以前の木造住宅というものは意識をしているところでございます。
一方で、能登半島地震におきます防災意識の高まりがございまして、昨年来この81年前の旧耐震基準住宅につきまして、県内でも多くの耐震診断、あるいは改修の助成申請が殺到しているという状況でございます。結果、木造住宅耐震診断士の派遣に時間を要しているというような状況でございます。こうした状況でございますので、現時点で、耐震診断の助成対象を2000年基準以前の木造住宅まで拡大をしてしまいますと、診断士の人手不足などの限られたマンパワーの中で本来優先すべき81年以前の旧耐震基準住宅の耐震診断や改修が遅れてしまうということにつながることが懸念をされる、そういう状況にございます。
従いまして、現時点では、この81年以前の旧耐震基準住宅を優先するということといたしまして、ご指摘がありました2000年基準以前の木造住宅の耐震診断への拡充につきましては、現行の制度のもとでの81年以前分の助成申請が能登半島地震以前の水準まで、いわば、通常の水準まで落ち着いた段階で、この助成対象の拡大を図っていくと、そうした方向で検討をするという方針で対応したいと考えております。
③避難所における生活環境の整備
●細木議員 能登半島地震での災害関連死は300名を越えました。災害関連死をなくすため避難所の環境改善について、これまで度々質問を行ってきました。「すべての災害や紛争から影響を受ける人々は、尊厳ある生活を営む権利を有しており、そのための保護と支援を受ける権利を保有する」というスフィア基準に基づく避難所環境整備について、国はやっと重い腰を上げ昨年12月、自治体向け取組指針とガイドライン(チェックリスト)を2年ぶりに改訂しました。
指針では、平時における対応、物資確保体制の整備について、食料、飲料水、携帯トイレ、簡易トイレ、パーティション、簡易ベッド、毛布、炊き出し設備、入浴設備等の生活必需品は避難生活に不可欠であることから、災害が発生した場合に直ちにこれを提供し、スフィア基準を満たすことができるように、市町村においては避難所や物資拠点に必要な備品を確保するとともに、都道府県においては市町村の備蓄状況を踏まえた広域的な備蓄を確保すること、と記されています。避難所の多くは学校の体育館などが指定されていますが、器具庫などを利用しても十分な物資を準備しておくスペースが不足しています。
◆避難所の備蓄資機材を確保するための広域的な拠点づくりが求められているのではないでしょうか。危機管理部長に伺います。
○危機管理部長 まず、避難所の備蓄資材を確保するための拠点について、お尋ねがございました。
県と市町村では、令和3年度に飲料水や食料、簡易トイレ、毛布など避難生活で最低限必要となる備蓄品8品目とその必要量を定めた備蓄方針を策定し、その整備に取り組んでいます。
これにより、県全体では8品目のうち、6品目については既に整備ができており、残り2品目、飲料水と毛布については令和9年度末までに完了する計画となっています。また、県では市町村の資機材を補てんするための備蓄資機材の保管用倉庫を、既に県内7カ所の総合防災拠点に整備をしています。
合わせて地域の孤立が長期化することを想定し、現在は新たな拠点を整備するのではなく、できる限り避難所に近い場所で備蓄品を整備する、いわゆる分散備蓄を中心に進めています。
こうした中、昨年の12月に国がスフィア基準を踏まえて、避難所の取り組み、指針等を改定しましたことから、簡易ベッドなど備蓄方針で定めていない品目が示されました。こうした品目については、今後、備蓄方針の見直しを行い、整備を進めていきたいと考えております。
また、これにより、市町村が資機材や備蓄倉庫を新たに整備していく際には、国の緊急防災減災事業債や、県の補助金の活用を促すなどして整備が加速されるよう支援してまいります。
●細木議員 先月2月28日、内閣府は、被災自治体の要請を待たず、プッシュ型支援の災害備蓄拠点を北海道・札幌、熊本、そして高知県に設ける方針を発表しました。簡易ベッドと段ボールベッドをそれぞれ500個、パーティション1000個、簡易トイレ15基のほか、入浴や調理ができる資機材も5セットずつ来年3月までに納入するとしています。こうした国の動きを歓迎するものです。
また、来年度の本県の予算では、キッチンカー、トイレカーの整備についての予算が計上されています。TKB対策(※災害後の避難生活において、トイレ(T)、キッチン(K)、ベッド(B)を整えることで、災害関連死を防ぐための対策)として重要です。キッチンカーは新規だけでなく既存のものについての支援や協定締結、トイレカーは、今後も計画的に増やしていくよう求めておきます。
④他県からの支援受け入れ
●細木議員 大規模災害が起きた場合、迅速で円滑な被災地支援が求められるものの、能登半島地震では自治体間の連携で課題が生じました。多くの自治体が被災地に支援に入ったものの、受け入れ先の自治体が依頼する支援内容を決められないなどして、混乱が生じたということです。
こうした教訓から総務省は、南海トラフ地震で甚大な被害が想定される高知県含む10の県に対し、発災直後に迅速な支援を行う「応急対策職員派遣制度」において「即時応援県」を事前に指定、高知県には島根県と秋田県から職員が派遣されることが報じられました。運用は来年度からということです。これまで応援協定を結んでいる山口県とあわせ、3県の受け入れ態勢や平時の交流、訓練が重要です。
一方、能登半島地震では高知県はじめ様々な地域から支援に入りましたが、宿泊施設確保が困難だったこともあり、応援のため派遣された職員さんは、被災した庁舎の床で睡眠を取るなど苛酷な環境下での活動が余儀なくされました。また、金沢市で宿泊し、現地までの往復時間がかかり作業時間が限られたことも復旧遅れの要因ともなりました。
◆緊急防災減災事業債の新たな対象事業として、応急対策職員派遣制度に基づき派遣される応援職員のための宿泊機能を有する車両の整備にも使えます。災害時支援や、事前の訓練活用にこの車両を活用することを含めて検討してはどうでしょうか。危機管理部長に伺います。
○危機管理部長 次に宿泊機能を有する車両の整備について、お尋ねがございました。
能登半島地震では、全国各地の自治体から応援職員が被災地に入りましたが、被災地ではホテルや旅館も大きな被害を受けており、宿泊場所が不足していました。
このため、応援職員は真冬にテントで寝泊まりするといった過酷な環境に置かれていました。また、被災地の近くで宿泊場所が確保できなかったことから移動に時間を要し、作業効率が低下したことも課題となりました。
こうした教訓を踏まえると、今後、本県から応援職員を派遣する際に備えて、お話のありました宿泊機能を有する車両を整備することは、課題解決の手段の1つになると考えます。
しかしながら、この考えのもと派遣のことを踏まえた上で整備をするとなれば複数台必要となります。また、訓練での活用は県の総合防災訓練の他、その他の訓練で活用するとしても、年に数回程度で使用する車も1台程度になると考えられます。
このことは、宿泊機能を有する車両を構えたとしても、平時にはほぼその機能を活かすことなく維持管理し続けることになります。このことからしますと、車両の整備にあたっては、民間事業者との協定による確保という方法を併せて検討する必要があると考えます。
このため、協定による確保を前提としながらも、有利な財源である、緊急防災減災事業債が将来的にも活用できるといった状態にあれば、訓練での活用は見込める危機管理部の公用車1台を更新する際において、宿泊機能を有する車両の導入についても、まずは研究をしてみたいと考えています。
⑤八潮市道路陥没
●細木議員 埼玉県八潮市で1月28日に発生した道路陥没事故は、未だ落下したトラック運転手さんの救出はかなわず、周辺住民への営業・生活はじめ、流域120万人の下水道利用に多大な影響を及ぼし、周辺河川への下水放流が行われるという未曽有の大被害を生み出しました。
下水道の汚水が空気に触れ硫酸が発生、下水道管が腐食し道路陥没につながったことが原因とされています。県内の下水道管も築50年を超えた管があり、県民から不安の声、点検を強めるよう求める声が出されています。
2015年の下水道法改正で創設された維持修繕基準では、5年に一回以上の頻度で腐食の恐れが大きい下水道管路の点検を義務付けています。国交省の「下水道管路メンテナンス年報」(2023年度)によると高知県で対象となっている管路は12㎞、点検の進捗率はR5年段階で2%と全国でも最低レベルに止まっています。
◆県内において、過去5年間の下水道管の劣化・腐蝕・破損などにもとづく道路陥没事案などなかったか。県内の下水道管の老朽化状況、速やかに修繕工事が必要な下水道管はどれくらいあるのか。土木部長に伺います。
○土木部長 まず、過去5年間の下水道管の劣化、腐食、破損などによる道路陥没の事案及び下水道課の老朽化状況について、お尋ねがございました。
令和元年度から令和5年度までの5年間で県が管理いたします流域下水道につきましては、下水道管路の破損等による道路陥没の事例はございません。
一方、県内各市町村が管理する下水道管路につきましては、同5年間で3件の道路陥没の事例が報告されておりますが、いずれも、陥没の深さが、5から20㎝と比較的小規模なものとなっております。
次に、県内の下水道管路の老朽化状況につきましては総延長1742kmのうち、耐用年数である50年を経過する管路延長は148㎞で、全体の約8%となっております。このうち、県が管理する流域下水道管路11kmにつきましては、50年を経過する管路はなく、令和6年11月に点検した点検調査の結果からも、速やかに修繕工事が必要となる下水道管路はございませんでした。
また、県内各市町村が管理いたします下水道管路につきましては、令和4年度末現在、速やかに修繕工事が必要な区間の延長は1.4kmとなっており、これにつきましては順次対応していく計画となっております。
●細木議員 下水道管の事故は敷設から40年を超えると急増すると指摘をされています。築50年にこだわることなく老朽水道管の点検をすすめること、修繕のための予算、人員の大幅増が必要です。この間全国の上水道事業に関わる職員数は80年代7.5万人が4.7万人へ、下水道事業は90年代4.6万人が2.7万人に激減。技術継承、災害対応など上下水道の技術職員確保が急務となっています。
◆全国では上下水道とも広域化や民間委託が広がっており、職員数の減少、特に技術職・専門職が不足しています。どう対応していくのか土木部長に伺います。
○土木部長 次に上下水道の事業に関わる職員数の減少にどう対応するかについて、お尋ねがございました。県内各市町村の水道、いわゆる上水道の担当職員は、平成18年度末時点で392名であったものが、令和4年度末時点で280名と約3割減少しております。
このため、小規模水道事業者の技術者不足をカバーする取り組みといたしまして、本年度県は高知市及び高知県建設技術公社と連携いたしまして、発注者支援業務や耐震化推進にあたっての技術的上限など、市町村への技術支援体制を構築いたしました。
これに加えまして、人工衛星やAIを活用した漏水調査等新しい技術を活用した水道分野におけるDXの取り組みを、県が主導して複数の市町村と共同で実施することにより、業務の効率化を進めてまいります。
一方、県内各市町村等の下水道の担当職員は平成14年度 200人をピークに減少傾向にあり、令和4年度末時点では148人と、ピーク時より 約3割減少しております。
下水道分野につきましては、小規模下水道事業者の技術者不足への対応といたしまして、専門知識の必要な下水処理場の整備・更新に係る工事や設計等の業務を日本下水道事業団に委託し、実施をしてまいりました。
これらの取り組みを通じまして、引き続き、県といたしましても、上下水道職員の減少にも対応できるよう、各市町村を支援してまいります。
【生活保護行政】
●細木議員 次に、生活保護について伺います。
物価高騰により生活扶助の基準額を上乗せする特例加算が2026年度まで継続することになりましたが、月1500円では、大幅な物価高騰には到底追いつく額ではありません。
厚労省はこれまで2013年から2015年にかけて物価下落したとして、実際は食費や生活必需品の物価は下落していませんでしたが、全体で6.5%、最大10%削減する前例のない大幅減額を行いました。この措置に対し全国で減額の取り消しを求める訴訟が行われ、直近の2月28日、四国で初めての原告勝訴となった松山地裁はじめ地裁合計19件、高裁2件あわせて21件の違憲判決が出されています。
生活保護制度はいわずもがなですが、「いのちのとりで、生きるための権利」です。そして生活保護基準は、就学援助など国の制度だけでも47もの施策・制度の利用や自己負担に影響するなど保護世帯だけでなく、一般市民の生活に大きな影響を持っています。生活扶助基準額は、物価上昇に見合う大幅引き上げ、せめて2013年以前の基準に戻すことが必要だと思います。
物価高騰の折、保護世帯のみなさんは、ぎりぎりの生活を強いられています。県は福祉事務所の監査を行う事務を担っています。生活保護制度で使える制度はすべて活用できているか、必要な保護が適用されているかという観点でチェックしなければなりません。
一つの例として、私の住む介良地域はバス停、電停から遠い「公共交通空白地」が存在し、通院もタクシーに頼らざるを得ない高齢の受給者がおいでますが、ケースワーカーからも移送費についての説明がなく、タクシーによる通院は認められないのでは?と移送費を請求していない事例もありました。
そこで大切になってくるのが、「生活保護のしおり」です。「しおり」は、生活保護を申請・利用する際の案内書であり、生活に困窮した住民と生活保護をつなぐ架け橋となる資料です。厚労省はこのしおりや自治体のHPについて、「内容に不適切な表現はないか、制度改正などが反映されていない点がないか、申請をためらわせるものがないか」点検と改善を求めています。
高知県生活と健康を守る会連合会は昨年、県および県下の11の福祉事務所の「生活保護のしおり」を全国的に評価の高い京都府や小田原市のしおりと比較し、生活保護問題対策全国会議が作成した40項目のチェックポイントで採点作業を独自に行っています。結果として県内で最高29点、最低が-25点、54ポイントの差があるなど大きなばらつきがあります。また、県作成の「しおり」の記載内容も決して高いとはいえない評価となっています。
◆「生活保護のしおり」の記載内容については、厚労省の求める内容に基づき、点検と改善をどのように実施していくのか、子ども・福祉政策部長に伺います。
○子ども・福祉政策部長 まず、生活保護のしおりの点検と改善について、お尋ねがございました。
生活保護のしおりは、生活保護を必要とする方々が制度の内容を理解し、適切に活用できるよう、県福祉保健所や市福祉事務所、町村役場などの窓口で提供されています。
具体的には、生活保護制度の目的や概要、生活保護の申請手続き、給付内容受給者の権利と義務、相談窓口の案内等が記載されております。
しおりの内容については、議員のお話のとおり、厚生労働省から申請権の侵害につながる 不適切な表現がないか、制度改正などが反映されていない点がないかなどを点検することが求められています。
このため、県では生活保護を必要とする方々がためらうことなく申請できるよう、毎年実施している事務監査において、生活保護の申請が国民の権利であることを、しおりに明記するよう重点的に指導しているところです。
一方で、しおりに記載されている項目につきましては、福祉事務所によって情報の多寡もみられます。生活保護を必要とする方に必要な情報が行き届くよう、市福祉事務所に対して、内容の充実を指導するとともに県が作成するしおりについても見直しを行い、好事例の共有などにより、県内の全体的な底上げに取り組んでまいります。
●細木議員 「しおり」の改善とともに、日々ケースワークを行う職員への研修についても不備・不足している実態はないでしょうか。保護利用者はスティグマを負い、家族や親せきとも関係が疎遠になり友人関係も希薄など孤立状態に陥りやすく、希死念慮の割合も高いと言われています。ケースワーカーは利用者からすると生殺与奪を握る強力な権力者であることの自覚を持たねばなりません。
◆生活保護制度の正しい理解や人権尊重の必要性についての研修、生活保護に関する直近の裁判例、決定処分に対する裁決例などが職場で共有されるなど、ケースワーカーに対する研修の状況について、子ども・福祉政策部長に伺います。
○子ども・福祉政策部長 次に生活保護ケースワーカーに対する研修の状況について、お尋ねがございました。
生活保護制度を実施するにあたって、ケースワーカーは、法令遵守はもちろんのこと、常に温かい配慮のもと公正かつ適切な運営を図っていく心構えが求められます。県では毎年、新任のケースワーカー及び査察指導員に対し、制度の正しい理解についてや、被保護者の立場を理解し、その良き相談相手となるべきといった生活保護実施の心構えも研修しています。
また、各福祉事務所を対象とした連絡会も毎年開催し、国の制度改正の動向の説明と共に不適切な取り扱い事例を踏まえた注意喚起も行っています。
今後とも、生活保護の適正実施という観点から定期・随時を問わず、研修会等を開催し、必要な情報の周知徹底を図ってまいります。
●細木議員 ケースワーカーは、求められる業務が複雑化、深刻化・多様化する相談への対応、時によっては暴力被害に遭う事があるなど大きなストレスにさらされています。物価高など厳しい生活環境のもと保護世帯が増加傾向です。社会福祉法の規定では都市部ではケースワーカーは保護世帯80世帯に一人、郡部では65世帯に一人という標準が守られるよう、職員配置を行う事とあわせメンタルヘルスへの対応など求めておきます
これまでは、原則として自動車の保有を認めておらず、自動車がなくては日常生活が営なめない地域では「生活保護を取るか、自動車を取るか」究極の選択が求められ、泣く泣く車を手放した事例、生活保護利用を諦める事例が多くありました。
この間、自動車利用の対応をめぐり、名古屋高裁では昨年10月、鈴鹿市の保護停止処分は「行政権の逸脱・濫用」で違法との判決が出され賠償を命じました。また札幌地裁でも利用の制限撤回が認められています。こうした事例を受け、厚労省は昨年12月25日付けで、「生活保護問答集について」の一部改正の事務連絡を発出しました。内容は、「自動車は原則として保有を認めていないが、障害児・者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住するものが、通勤・通院等のために利用する場合で、一定の要件を満たす場合に例外的に保有を認める」「障害児・者又はその家族若しくは常時介護者が障害児者のために日常生活に不可欠な買い物等に行く場合についても、社会通念上やむを得ないものとして、原則として自動車の利用を認めて差し支えない」さらに障害がない場合でも「公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等の通勤や通院等のため保有が認められ」るとし、「日常生活に不可欠な買い物等について、地域の交通事情や世帯の状況等を勘案して、低所得者世帯との均衡を失しないと保護の実施機関が認める場合には、自動車の利用を認めて差し支えない。」と適用を変更しました。
高知県下では公共交通が縮小しており、デマンド交通等や福祉輸送などでカバーしている地域もあるものの十分ではなく、“公共交通機関の利用が著しく困難な地域”、”公共交通空白地“が増加しています。
◆自動車利用について、厚労省通知にもとづいて適正に運用されなければなりません。どのように制度を周知徹底させ運用していくのか、子ども・福祉政策部長に伺います。
○子ども・福祉政策部長 次に、自家用車利用に係る制度の周知徹底について、お尋ねがございました。
生活保護制度において、自動車は資産に該当し、その維持費が生計を圧迫するため、原則保有は認められていません。ただし、障害のある方や公共交通機関の利用が困難な地域にお住まいの方が通勤・通院に利用する場合などには保有が認められています。
県におきましては、これまで生活保護世帯の自家用車の取扱いに関して、独自にマニュアルを策定し、福祉事務所における取扱いの平準化を図っております。昨年12月末の厚生労働省の事務連絡で自動車の保有が認められている生活保護受給者について、通勤や通院に限られている利用目的が拡大され、日常生活に不可欠な買い物などの利用も認められる場合があるとの改正が行われました。
この事務連絡を受け、県では、直ちに各福祉事務所に対して周知を行ったところです。今後は県の独自マニュアルについても見直しを行った上で周知徹底を行い、適切な運用につなげてまいります。
●細木議員 生活保護制度には、あまり知られていないと思われますが、「家族介護料」支給制度というものがあります。「家族介護料」とは、告示別表第1第2章-2-(4)において、告示別表第1第2章-2-(2)のアに該当する障害のある者であって、当該障害により日常生活の全て(具体的には食事、排泄、入浴の3動作)について介護を必要とするものを、その者と同一世帯に属する者が介護する場合においては、障害者加算とは 別に13,150円(令和6年7月以降)を算定するものとする、というものです。
昨年10月に大阪府堺市において、ある世帯で家族介護料の支給漏れ(17年間で約246万円)が見つかり、これを受け、再調査した結果、52世帯で家族介護料の支給漏れが見つかった事例が新聞報道されました。県内においても、家族介護料等の支給漏れはないでしょうか。
昨年12月、衆院厚生労働委員会で日本共産党・田村貴昭議員がこの問題を取り上げ、多くの自治体で加算もれが起こっている可能性を指摘、福岡厚労大臣は自治体に注意喚起をするとともに、実態把握に努めると約束しました。
◆「家族介護料」が支給されている県内の件数、制度の周知をこれまでどのように行ってきたのか。また今後の実態把握作業について子ども・福祉政策部長に伺います。
○子ども・福祉政策部長 最後に、家族介護料について、お尋ねがございました。
家族介護料の加算につきましては、一定以上の障害があり、日常生活の全てについて介護を必要とする方を同一世帯の方が介護する場合に支給されるものです。
令和6年7月末現在、県内の支給件数は16件となっています。
県ではこれまで、堺市の事例を踏まえまして、独自に県内の福祉事務所に家族介護料の要件について周知するとともに、支給の状況を確認したところです。その結果、介護や障害のサービスを利用しているという理由で、一律に支給を行っていないといった事例はなく、各福祉事務所では、訪問調査により把握した生活状況等を踏まえて、個別に支給の可否を検討しているということも確認しているところです。
一方、家族介護料の支給に係る注意喚起や実態調査について、現在、国において検討していると伺っております。
今後予定される国の注意喚起を踏まえ、県におきましても、各福祉事務所に対して適切に 支給決定がされるよう、改めて周知を行いますとともに、実態調査にも協力していきたいと考えております。
【ビキニ被災者支援】
●細木議員 今年は広島・長崎被爆80年の年です。
そして、アメリカによる太平洋での核実験によって多数の漁船員や住民への被ばくを引き起こした「ビキニ被災事件」から今年で71年となりました。1954年3月から5月にかけて行われた6回の水爆実験により被爆した漁船の数は政府の調査で延べ約1000隻(被爆された方は2万人ともいわれています)にも及び、高知県内にも多数の被爆者がおいでます。ビキニ被災事件は日本の原水爆禁止運動が発展する歴史的な契機となり、昨年ノーベル平和賞を受賞した日本被団協は1956年に結成されています。
若くして被爆した漁船員は40~60歳代で白血病やがん等に侵され、命を落としたり、少ない年金の中、通院や入院で治療されています。また子や孫に影響が出るのではないかと悩み苦しみ続けられてもいます。
しかし日本政府は被爆した漁船員に対し、健康調査や疫学調査は行わず、賠償金や見舞金もほとんど支給されず切り捨てられたままとなっています。ビキニ被災事件は終わっておらず、船員や遺族に対する救済は当然行わなければなりません。
日本政府は核兵器禁止条約を批准していませんが、条約の第6条には核兵器使用および核実験などあらゆる核による被災者への支援が記されています。今月3日からNYで始まった核兵器禁止条約締約国会議では、ビキニ被災者などへの支援も論議されており、本県の被災者遺族であり、県内の元漁船員らが国に損害賠償を求める訴訟団の団長である高知市の下本節子さんも参加されています。
◆県内市町村にも働きかけ、県内の元マグロ漁船員のビキニ事件による被災の実相を明らかにすることを求めます。知事の見解をお聞きします。
○県知事 次に、ビキニ事件につきまして、県内の元マグロ漁船員の被災の実相を明らかにすることについて、お尋ねがございました。
ビキニ環礁におきます水爆実験で被災をされた船員の方々、そして支援者の方々のこれまでのご労苦はいかばかりかとお察しを申し上げるところであります。県といたしましては、被災した方々の健康への影響を明らかにする調査研究は、事の性格上、県や市町村ではなく、国の責任において実施すべき事項であると考えます。このため、国に対し、継続的に調査研究の実施を提言、あるいは要望をして参っております。
また、県におきましては、支援団体の方々が独自に行われています死亡原因の追跡調査に際しまして この調査に協力をいただくように漁協への調整を要請いたしましたり、あるいは、国の統計資料の入手などに際しての支援を行ってまいりました。今後も引き続き被災者の方々、支援者の皆さんの思いに寄り添った支援を県としては継続をしていきたいと考えております。
●細木議員 ◆既存のマグロ漁船員の名簿をもとに安否確認、死亡が確認された場合は死亡原因の把握、県の死亡統計に対比させた分析を行うべきではないか。また、県内の元漁船員に対し、健康相談、健康診断を実施するよう求めるものですが、健康政策部長に伺います。
○健康政策部長 まず、ビキニ被災者支援として、マグロ漁船員の安否確認や死亡原因の把握・分析を実施することについて、お尋ねがございました。
先ほど知事から答弁がありましたとおり、元船員の被曝に係る調査研究には、国の責任において実施すべきものと考え、これまで国に対し、科学的検証を継続するよう提言してまいりました。
他方、県では、人口動態統計から過去50年間程度の地域別・疾患別の死亡者数の年次データを抽出することができますことから、支援団体に提供し、調査に協力して参りたいと考えております。
次に県内の元マグロ漁船員に対し、健康相談などを実施することについて、お尋ねがございました。
被災船員の方々の健康相談については、平成26年度から実施しており、昨年度からは 船員同士の交流も図られるよう集合形式で行っております。
その場には、市町村の保健師も同席し、健康診断結果を用いた保健指導や介護保険サービスへのつなぎも行っております。
今後、健康相談を実施するにあたりましては、被災委員の方々に開催の情報が行き届くよう関係機関と連携し、周知を強化してまいります。
併せまして、被災者のご事情によっては、訪問による健康相談なども実施するなど工夫も加えながら支援を継続してまいります。
●細木議員 現在「高知県史」が編纂されています。高知県民および世界の核実験被ばく者の命や健康にかかわるビキニ被災事件は避けては通れない出来事です。
◆編纂中の高知県史にビキニ事件はどのように掲載される予定なのか。文化生活部長に伺います。
○文化生活部長 高知県史へのビキニ事件の掲載について、お尋ねがございました。
ビキニ環礁において、本県の漁船員の方が水爆実験により被曝されたことは本県の戦後史において、歴史的な事柄の一つではないかと考えています。
高知県史の編纂にあたりましては、昨年度から戦後史を担当する「現代部会」を設置し、大学教授等の部会委員により資料編の構成を検討するとともに、ビキニ被災に関することも含め、県内外で関連する資料の調査を実施しています。
今後、さらに調査資料調査を進めた上で、調査で得られた成果を踏まえ、高知県史に掲載する事項を検討することとしており、ビキニ被災に限らず、本県の重要な戦後の歴史を後世に伝えることができるよう、編纂に取り組んでまいります。
【高知県公契約条例制定について】
●細木議員 最後に、高知県の公契約条例制定について伺います。
現行の公契約の問題点として、過度な価格競争・ダンピング受注・重層下請け構造により労働者の人件費引き下げなど「賃金・労働条件の悪化」、契約更新のたびに労働者の雇用が危機にさらされ非正規雇用が増加する「雇用の不安定化」、外部委託化による専門職の削減、委託事業者の経費削減による「住民サービスの質の低下や専門性の低下」、人件費に対する明確な積算基準が存在せず委託料の積算に考慮されない「費用精算のあいまいさ」などが挙げられています。
国交省は、先月14日「公共工事設計労務単価」について、この3月から全職種で全国平均6%引き上げる決定を行いました。13年連続の引き上げとなり全国全職種加重平均値は24,852円(8時間)となりました。この間、県議団に寄せられた相談では、県が発注する公共工事の現場で賃金未払いや、危険手当が一部しか支払われない等違法な実態が寄せられています。こうした事例を改善するため、発注者の責務として、積極的に是正・改善しなければなりません。
そのため、公正性や透明性を確保し、ダンピング排除、健全な事業者が適正な価格で受注できる条件づくり、労働関係法令の遵守、賃金下限額を上回る賃金の支払いを契約上義務付けることで、労働者に適正な賃金が支払われるよう公契約条例の制定が求められています。
全国的に公契約条例を制定する自治体が増加しています。自治体独自に一定額以上の賃金を義務付ける規定を有する「賃金条項型」は高知市含め32、賃金条項がなく、労働条件の整備を受注者の責務とすることを理念的に定める「理念型」は55自治体。県レベルはすべて「理念型」ですが、長野、奈良、岐阜、岩手、愛知、沖縄、静岡、滋賀、熊本県の9県が条例を制定しています。このうち奈良、岩手、愛知県は賃金支払い状況、社会保険料加入状況についての報告義務があり、理念型ではあっても賃金引上げ等の効果が生まれているようです。
公契約条例を制定した効果については、労働者にとっては、熟練従事者の賃金水準が下支えされることで、適正な労働条件の確保、雇用の維持・安定の実現、地域の賃金水準の確保など最賃引き上げや地域間格差の改善につながっています。また、事業者にとってもダンピング受注や低価格入札・過当競争をなくし公正競争を実現することで、ペーパーカンパニー等の排除、健全な経営をしている事業者が適正な利潤を確保し、地域に根差した事業経営ができるようになるなどの効果が生まれています。
こうした効果は、公共サービスの向上により住民にとっても安心安全な生活を送ることができ、住民の福祉向上、地域経済の活性化・循環にもつながります。
県にとってもメリットはたくさんあります。公共事業の品質確保、良好な公共サービスの提供、活力ある地域社会の実現、職員のモチベーションアップ、住民の定住化、雇用の安定化による納税の確保、地元建設業者・職人の育成による地域防災・減災の強化、地域経済が発展する事で税収増をもたらします。さらに県が最も重視する人口減少対策、持続可能な地域づくりにも大きく寄与することになります。
来年度予算要望に関する知事との懇談の席でもお渡しをいたしましたが、一昨年制定した熊本県の「持続可能な社会の実現に寄与する熊本県公契約条例」の特徴をご紹介いたします。
基本理念1「契約の透明性、競争の公平性の確保及び不正行為の排除」では、『談合その他の不正行為の排除』が掲げられています。談合その他の不正行為は、入札者間の公正かつ自由な競争や予算の適正な執行を阻害し、県民の利益を損ねる行為であるとし、これを見過ごすことなく毅然とした対応を行い、不正行為に対する処分の実施とともに、再発防止を図るため様々な事項に取り組む、としています。
基本理念2「総合的に優れた内容の契約の締結」では、低入札価格調査制度や最低限価格制度を適用し、契約の内容に適合した施行・履行を確保するとし、最低制限価格制度の基準についても検討することとしています。
基本理念3「誰もが安心して働き続ける労働環境の整備・活力ある地域経済の振興」では、業務従事者の労働環境整備について労働関係法令順守を担保する方法が検討され、地域経済循環の視点では熊本県中小企業振興条例に基づき、県内事業所の優先的調達や県産資材の使用推進などが謳われています。
基本理念4「事業所が行う環境に配慮した事業活動など、持続可能な社会の実現に資する取り組みの勘案」では、SDGsの17の取り組みを評価することとしています。また指定管理者制度においても条例の趣旨が反映できるようにしていることも特徴となっています。
以上、熊本県の条例をご紹介しましたが、2021年制定の「事業者を守り育てる静岡県公契約条例」は、人口減少や少子化の進行の下、県産業を支える人材確保を目的の一つとして制定し、基本理念では、性別、年齢、国籍等にかかわらず、多様な人材が活躍する社会の実現に資すること。
障害者その他の就業を支援する必要がある者の雇用の促進に資すること。
柔軟な働き方ができる職場環境づくり及び働く人の健康づくりに資すること。環境に配慮した事業活動に努めること。
持続可能で活力ある地域社会の実現に資すること。
その他社会的な価値の創出に資すること。
など、事業者に係る規定が設けられ、毎年度取り組み方針の実施状況を議会に報告しているなどの特徴を持っています。
◆県の施策とも合致し、県政の発展につながる公契約条例制定に向け、庁内で検討チームをつくるなど準備をすすめるべきと考えています。知事の所見を伺います。以上で一問といたします。
○県知事 最後に、公契約条例の制定に向けて、庁内検討チームを作るなどの準備を進めてはどうかとお尋ねがございました。
議員から、ご紹介をいただきましたように、熊本県や静岡県の公契約条例は県の行う契約を通じまして、特に、熊本県の例に準じて申しますと、4つの政策目標の達成を目指すという風にされております。これは議員からご紹介もいただいたとおりでありますが、あえて、私の方で大まかにまとめ直しさせていただきますと、4つの政策目的・政策目標としまして、1つは「契約の透明性や公平性の確保」、2つは「適正な金額での契約」ということだと思います。3つ目が「受注先の労働環境の整備や地域経済の振興」、4つ目が「持続可能な社会の実現」というような政策目標を掲げておられるということだと思っております。
条例におきましては、この目的を達成するために県において基本的な取組方針を定めまして、規則などで必要な、例えば、事務処理要領の制定といった措置を講じていくと、そういうことを県に対して求めている、そんな条例であろうと思います。
本県の場合、こうした公契約条例はありませんけれども、関係法令の他に、他の条例や規則・県計画、こういったもので、具体的な措置のレベルで言いますと、結果的には両県と同じような措置を講じているという風に考えております。
例えば、1点目の「契約の透明性の確保」などにつきましては、談合情報対応のマニュアル、あるいは指名停止要領、こういったものを定めまして、不正行為に対して厳正に対処をいたしております。また、2点目の「適正な金額での契約」ということにつきましては、公共工事や清掃警備といった労働集約型業務などの入札におきまして、いわゆる低入札価格調査制度、あるいは最低制限価格制度、こういったものを導入いたしております。
3点目の「受注先の労働環境の整備や地域経済の振興」について申しますと、受注先におけます労働関係法令の遵守、あるいは県内事業者への優先発注の促進、こういったことが図られております。
さらに4点目の「持続可能な社会の実現」につきましては、競争入札の資格審査や評価基準にワークライフワークバランスですとか、SDGsの取り組みなどを位置づけておるところでございます。こうした本県におきます様々な現行の制度によりまして、公契約条例の制定によらなくても、その理念を具現化するような具体的な措置は講じられておりまして、これを通じて県政の発展につなげることができているという風に考えております。
従いまして、現時点で、公契約条例を制定したり、そのための庁内検討チームを設置したりする必要はないという風に考えております。
ただ、一方でこの県が行います公共調達契約は、多くの分野に渡っております。物品の購入、サービスの購入いわゆる役務の提供でありますが、ありましたように公共工事あるいはデジタルサービス関連は1つの独特の世界を作っているということでございまして、現在ではこうした県の公共調達にかかります様々な制度や措置について、もう一覧性のある形で体系的に整理したものがないというのは現状であります。
今後、これらにつきまして、例えば地球温暖化対策であったり、働き方改革であったり、そういった特定の政策目的を推進するという観点から、分野横断的に統一的な方針を定めて、洗い直しをするというような必要も生じる可能性はあるんではないかという意識は持っております。そうした場合には、その結果を改めて検討の結果の改正を、一覧性のあるような形で整理をいたしまして、指針のような形で県庁職員の事務の参考になるように、あるいは、県民の皆さんの参考になるようにお示しをすると、こういった対応は今後必要な場合には考えて参りたいという風に思っております。私からは以上であります。
【第二問】
●細木議員 はい、それぞれご答弁ありがとうございました。
今回の質問、公契約条例と2000年までの木造住宅の耐震化なんとしても良い答弁がいただけたらという風に思っていましたけど、なかなかちょっと厳しい状況でした。
耐震化については、やはり今、能登半島地震を受けて、申請が急増しているということですので、現在90%の耐震化率を1日も早く100%にするために診断士さんを増やしたり、以前の議会でも言いましたけど、低コスト工法を施工できる業者さんが県内では偏在をしているということについては、その工法が沢山の事業者ができるように応援もしていただいて、1日も早く100%、そして2000年の方にスライドしていけるようにということをちょっと強く求めていきたいと思います。
水道事業については、公衆衛生と生活環境を守るために、憲法25条では、公衆衛生は 国の責任という風に言われています。下水道事業については 独立採算性と受益者負担という枠組みですので、こういう下水道管路の老朽化対策について、今の現状ではあまり危険なもの、即座に危険なものはないという風な判断でしたけど、これからどんどんどんどん増えていくわけです。
その点ではやっぱり、国の責任で、職員さんも増やしていくというような方向が、災害対応という点では必要ではないかと思います。
このまま行きますと、やっぱり水道料金の引き上げとか、あと自治体の負担が増えていくということになります。国の責任において、人材の確保、老朽化したインフラの整備を行うように、知事に求めていただきたいと思います。
また、国が、今、方向性として進めているのは、ウォーターPPPということで委託です。これは、水道のコンセッションへの移行、すなわち水道事業を利権化して営利企業に売り渡すものということで、私たちは反対をしています。
国に対して、自治体への財政支援については、ウォーターPPPを前提条件にしないように制度設計を、知事は、知事会を通じて国にも求めていただきたいと思います。これは、要望で構いません。
あと、私もホームレスの支援の団体にも入って、時々、夜回りなどもしています。その現場で、市内の中心部にも今でもおられますし、以前は千松公園にも、ホームレスの方おいでました。
色々お話を聞きますと、会社の元社長さんであったり、元公務員さんであったり、飲食店の経営者であったり、という職種はバラバラです。友達や知人の連帯保証人になったことがきっかけで生活困窮になり、ホームレスの生活を余儀なくされているというようなお話も聞かせていただきました。
誰でもが陥りやすいということであります。生活保護制度は最後の砦=セーフティネットであるとともに自立につながる制度でもありますので、県の査察におきましては、不正受給はもちろん駄目なんですけど、不正受給でそういう濫給防止という視点だけではなく、使える制度については全て受給者に制度を活用してもらうという漏給防止という観点でも監査をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
あと、家族介護料については、この間、高知市の事例で4件、支給漏れの可能性であるというようなことがあったようです。これについて、なぜこういうふうに対象から漏れるようなことがあったのか。もし、子ども・福祉政策部長、こういう情報があったら教えていただきたいと思います。ちょっとこれ、2問で考えていただけたらと思います。
で、県内は今8つの市町村が、介護事業所がゼロになっています。1個しかない事業者は9つの町村となっています。で、こういう(介護)事業所が少なくなる(自治体が)、これからどんどん増えていくっていう可能性の中で、家族で介護をせざるを得ないという事態も、これから想定をされます。そういう点では、この生活保護の家族介護の制度が、これから増える可能性っていうのもあるわけです。先ほど、国の方で基準を設けて、自治体の方に周知する、そういう動きもあるっていう風なご答弁でした。そういう基準が新たに設けられた際には、市町村にしっかり対応していただいて、周知徹底して、支給漏れがないように、これを求めておきたいと思います。
あと、ビキニの被災の問題もご答弁ありがとうございました。
高知県の元漁船の皆さんは 今回のノーベル平和賞の受賞、自分ごとのようにすごく喜んでいます。私も、昨年、「劇団the・創」による「ビキニの海からの証」が上演されて、私も舞台に立たせていただきました。このお芝居を通じて、室戸水産高校生が、このビキニによって被爆をされ、若い命が失ったということを僕も初めて知りました。
現在、3.1のビキニデーの集会が、3月1日に行われました。県は、1984年の非核平和高知宣言を行っていますので、政府に対して核兵器禁止条約に参加するように求める広島や 長崎の知事と、一緒に求めていただきたいなという風に思います。そしたら、2問、ここで終わります。
○子ども・福祉政策部長 はい。先ほどの家族介護料の高知市の案件ですけど、完全に支給漏れかどうかって言ったところは、まだ私のとこまでこう情報が入ってきておりません。
これにつきましては、今後、国からの実態把握調査もされるという風に伺っておりますので、そうした中で、ちょっと高知市にもお伺いしまして、最終的な支給漏れがないといったようなことを、今後も注意喚起もしていきたいと思いますし、そういった意味で、取り組んで参りたいという風に考えてございます。
●細木議員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
公契約条例についてですけれど、建設業の担い手不足は危機的状況と言われています。で、平均賃金が他の産業より16% 低く、適正な労賃へと構造的転換を目指すために設計労務単価は元請以降にも行き渡らせて 労務費の見える化を進めるため、昨年、国が標準労務費というものを新設されています。
県発注の公契約だけでも賃金条項を高知県が定めたら、全国初の条例ともなりますので、是非、1本化をして横断的なものが必要になったら検討されるという、そうした知事の答弁 もありましたので、実現していっていただきたいと思います。公契約条例が制定されると、県と契約している企業は建設関係にとどまらず、業務委託、指定管理、受託事業所も対象となります。県雇用の臨時非正規雇用労働者、警備、清掃、公園管理、福祉・介護などに影響が及んできます。県全体の賃金水準の引き上げにもつながって、人口減少を食い止めることもできます。県レベルで条例制定が、全国で進むことによって、国の公契約法制定にもつながっていくのではないかと期待をされています。
最後ですが、南国市の若宮の東遺跡で文字が記されている土器が発見されました。「何と不」ということで、反語的に「なんで何々しないのか」という意味があるそうです。なぜ公契約条例を制定しないのか、なぜ2000年までの木造住宅耐震化をしないのか、という思いがありますので、これからも実現に向けて、実現までしつこくこの問題を取り上げていきたいと思いますので、執行の皆さん、同僚議員の皆さんよろしくお願いします。以上で全質問を終わります。ありがとうございました。