議会報告

  • 2024年12月16日
    2024年12月議会 細木りょう議員による令和5年度決算反対討論(2024.12.06)

私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました372報第1号「令和5年度高知県一般会計歳入歳出決算」及び372報第9号「令和5年度高知県国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算」について、認定に反対の立場から討論を行います。

 私たち日本共産党は、決算審議にあたって予算や事業が適正に執行されているかどうかとともに、この一年間の議会論戦や知事の政治姿勢についても合わせて分析し、評価についての検討を行ってきました。

 第一は、産業振興施策の問題です。

知事は、「活力のある県外市場から『外貨』を獲得することが成長をはかるためには重要」だと述べられ、関西圏との連携に力を入れています。もちろん「外貨」を稼ぐことは重要ですが、ただ稼ぎさえすれば良いという姿勢では禍根を残すことにならないかと考えることがあります。その一つが、本県の大阪関西万博への対応です。大屋根リングなどに本県産の資材が使われていますが、レガシーとして残されるものではありません。パビリオンを含めて万博開催後にはすべて取り壊されるものです。私たちは、軟弱地盤でメタンガスが排出するなど安全性が懸念される夢洲での万博開催に反対してきましたが、この万博を本県の売り込みに使うなら、むしろ能登の災害復旧や復興にこそ協力すべきだと考えます。

また、本県の経済収支を見た場合、全体として赤字ですが、産業別収支の割合を見ると、電気・ガス一などエネルギー分野が大きな赤字となっています。私たちの試算では、電気・ガス・重油代など約1300億円が県外に流出しています。この額は、県内の一次産業の総生産額876億円(2019年度)大きく上回る規模です。ですから、このエネルギー分野の収支の赤字を少なくすることが、本県の経済にとってプラスとなります。しかし、決算をみると、エネルギーの県外依存を転換する姿勢がほとんど見られません。この施策を見直すことが、県経済の底上げにも、気候危機を打開するという将来世代への責任を果たすことにも貢献します。

 

第二は、デジタル化におけるマイナンバーカードへの偏重の問題です。

デジタル化が社会の機能を向上させる面があることは理解できます。中山間地域の医療提供体制の確保などは、重要な取り組みです。しかし、デジタル化の強引な活用は、県民の利益に反することになる場合があります。使途が法的に制限されているマイナンバー自体と異なり、マイナンバーカードの使途は法改正の必要がなく拡大でき、マイナポータルを通じて膨大な個人情報を紐づけ、集積し、民間も含めた「活用」がなされようとしています。これらは、プロファイリングによる格付けや監視社会へ結びつく危険があります。

こうした国の動きに追随して、公共交通や医療情報共有にマイナカードを使用する予算が執行されています。先に指摘したマイナカードの本質的危険に加えて、任意取得のカードを行政がデジタル化施策に組み込むことは、全住民に提供されるべき行政サービスの公平性を阻害することになります。国のデジタル化施策に無批判に追随することは容認できません。

 

第三は、教育行政についてです。

35人学級の前進などこの間の努力は評価しますが、教員の長時間過密労働の中で、教員不足が続いており、学校現場は深刻な事態となっています。そのため、私たちは、教壇に立たない教員が全国比でも異常な多さとなっている事態の改善、具体的には充て指導主事を学校現場に配置することを求めてきました。少人数であっても現場に戻す動きは評価しますが、教員不足を充足するものにはなっていません。

教員を目指す方が、教員になりたいと思える高知県にするため、臨時教員の現場経験を重視する採用審査への抜本的改革や、学力テストの点数に追われる学校現場の改善も必要です。教員が忙しさに追われる状況は、「不登校」や「非行」の増加など、子どもへのしわ寄せとなります。

教員不足の解消、教員採用審査の改善、教員の働き方の改善に本腰を入れて取り組むとともに、教育費負担の軽減を進め、子ども一人ひとりが尊重される教育行政の充実を強く求めるものです。

また、県版学力テストは3400万円余の費用をかけ毎年実施していますが、児童生徒、教員への負担となっており競争教育を助長させており中止するべきです。

 子育て支援では、全国で一番少子化が進んでいるのに、県の子どもの医療費助成は、全国最低レベルのままです。市町村が取り組む施策の拡充につながる、県の子どもの医療費助成の充実が必要です。

 

第四は、特定利用港湾についての知事の政治姿勢です。自衛隊等が平時から民間空港・港湾を整備活用するもので、知事は県民の不安をよそに高知港、須崎港、宿毛湾港の選定への同意を強行しました。国が公開したQ&Aでは、訓練だけではなく「武器・弾薬に輸送、部隊の展開」に港を使うと明記しているように、港が軍事利用され将来的に米軍との共同訓練が想定されるものです。県民に対する説明会を一度も開かない姿勢は許しがたく、97年の県議会で決議された「高知県の港湾における非核平和利用に関する決議」にも反するもので同意撤回を求めるものです。今後政府から出される要請などは逐一県民に明らかにすることを強く求めるものです。

 

第五は、土佐市の産業廃棄物中間処理場問題です。該当の事業者に対し県は、「新事業チャレンジ支援事業費補助金」2500万円を支出しました。県の産業廃棄物指導要綱では小型炉であっても自家処理でなく業として運用するなら県との事前協議、住民への事前説明が必要です。住民への事前説明がなく、住民合意がないままの補助金支出は問題であることを指摘しておきます。

 

次に、報第9号についてです。

高い国保料・税が被保険者の大きな負担となっています。いまの国保料値上げの背景には政府が18年度に国保の「都道府県化」を強行したことがあります。市町村が単独で運営してきた国保財政を都道府県と市町村との共同運営に変え、都道府県が値上げの旗振りをしていく仕組みにしたためです。

それまでは国保料の負担抑制のため、多くの市町村が独自に一般会計から国保財政への繰り入れるなどの財政措置をしていました。しかし政府は都道府県を通じてこうした独自措置を打ち切るよう圧力をかけてきました。これが国保料の値上げをもたらしています。

国保料の値上げは、自営業者やフリーランス、年金生活者、非正規労働者など、国保に加入する人たちの暮らしを圧迫し、とりわけ子育てに逆行します。子どもが多いと「均等割」で国保料が高くなるため、子育て支援として「均等割」の負担軽減を図る自治体が増えています。

そもそも国保は、他の制度と比べ被保険者の年齢が高く医療水準が高い一方で、低所得者や無職者の被保険者が多く、所得に占める保険料負担が重いという構造的な問題を抱えています。この構造問題をそのままにして、住民と自治体に負担を押し付けるというのが広域化の本質です。

県は、令和8年度までに赤字補てん目的の一般会計からの繰り入れを解消するよう市町村に依頼していますが、保険料のさらなる引き上げにつながることが懸念されます。また、基金残高が増加していますが、市町村の納付金の算定が適切であるのか検証が必要です。

高い国保料・税の根本には、この30年間、国が国保に使うお金を減らし続けてきたことがあります。国保の広域化が加入者を困難に陥らせないよう、国に対して、国保への財政支出を求めることが必要です。

以上をもって、報第1号及び報第9号への反対討論とします。ご賛同よろしくお願いいたします。