議会報告

【質問項目】

・知事の政治姿勢・地方自治法改定

・知事の政治姿勢・人口減対策について

・大阪万博への修学旅行について

・農政について

・地消地産について

・UIターンサポートセンターのパワハラ問題

・公共交通について

・地域医療体制について

・障がい者の自動車税減免について

 

●岡田議員 日本共産党の岡田芳秀です。私は、会派を代表して以下、質問いたします。

 

【知事の政治姿勢・地方自治法改定】

●岡田議員 先ず、知事の政治姿勢について、地方自治法改正に関連してお聞きいたします。

憲法の地方自治の原則は、戦前、府県・市町村が、国の末端機関として国民への支配と抑圧を強め、侵略戦争への道に国民を動員したという悔恨と痛苦の歴史の反省のうえに築かれたものです。ところが、この原則をくつがえし、想定外の非常時の対応を「口実」に、地方自治体を国の下請け機関にする大改悪・地方自治法の改悪が強行されたことに、強く抗議するとともに、この暴挙への認識を問いたいと思います。

現在の国の指示権は、必要に応じて個別の法律ごとに定められていますが、改正により個別法に規定がなくても「国民の生命保護のために特に必要な場合」、さらには「恐れがある場合」と国が判断すれば、行使できるようになりました。改正法では、「拡大解釈」による国の暴走への歯止めは明文化されていません。何が指示権の拡大を必要とする場合なのか、具体的な根拠や事例が説明されていません。国会審議では、個別法で対応できない事例について総務省は各省庁と協議もしていないことも明らかになりました(5/14衆院総務委)。

全国知事会会長の村井嘉浩(よしひろ)宮城県知事が、「拡大解釈をすれば、あらゆることを国が指示できるということになりかねない。これは地方自治の本旨に反する真逆の法案ということになる」との懸念を表明しているのも当然です。地方との協議と合意の義務化という前提もありません。

◆国の「指示権」を拡大させる地方自治法改正は、政府の「暴走」の歯止めがなく、憲法の地方自治の理念に反すると思うが、知事にお聞きいたします。

 

 〇県知事 岡田議員のご質問にお答えいたします。まず、今回の地方自治法の改正におきまして 特例として 国の指示権を行使できるようにするという 改正が行われた点について お尋ねがございました。

この特例はコロナ禍におきます課題を踏まえまして、今後も起こりうる想定外の事態に万全を期すとそういった観点から法整備が行われたものでありまして、その趣旨は理解できるものだと考えます。一方で、この運用が拡大解釈によって地方自治の本旨あるいは地方分権改革により実現した国と地方の対等・協力の関係、これを損なうことがあってはならないと考えています。このため、これまでも全国知事会とも連携をしてこの趣旨を国に訴えてまいりました。その結果、この指示権行使に当たりましては、事前に関係地方公共団体と調整を行うこと、あるいは目的を達成するために必要最小限度の範囲とするといったことと内容の附帯決議が国会において行われているところでございます。

また、指示権行使の際には、閣議決定を経ること、そして、行使後には迅速に個別法の規定が整備されるよう国会への事後報告や検証を行う、こういった手続きも国会における案文の修正という部分も含めまして講じられたところでございます。

国におきましては、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した際には 国と地方との連携が一層強化されますように 今回の国会における付帯決議を踏まえまして 適切に運用していただきたいというふうに考えております。

 

●岡田議員 今なぜ、地方自治体の自治権に介入するのか、その背景を理解することが重要です。

 4月にアメリカが岸田文雄首相を国賓待遇で招待しました。その理由について、エマニュエル駐日米大使は、軍事費の2倍化、敵基地攻撃能力の保有、武器輸出の拡大などをあげ、「70年来の(日本の安全保障)政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」(「産経」5日付)と、賞賛しています。バイデン米大統領は、共同記者会見で、米軍・自衛隊の指揮統制のかつてない連携強化をあげ、「日米同盟が始まって以来、最大のアップグレードだ」と述べています。

これらの賛辞は、米軍とともに戦うことに踏み込んだ証です。共同声明は「作戦及び能力のシームレスな統合」のため、「(日米それぞれの)指揮統制の枠組みを向上させる」と明記しました。指揮統制は、情報でも装備でも圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、自衛隊は事実上、米軍の指揮統制の下に置かれます。陸上自衛隊元幹部で、防衛大臣政務官などを歴任した自民党の佐藤正久参院議員は「反撃能力を日本が持とうとすると、目標情報一つとっても、アメリカから相当情報をもらわないと目標情報は取れない」と述べ、元航空自衛隊第7航空団司令の林吉永(よしなが)氏も「自衛隊には、国内は別にして海外のどの敵基地を反撃していいか、反撃した結果どういう戦果が出たのか把握する能力はない。そこは、米軍に頼ることになる」と現場に精通する方が証言しています。

 さらに政府は、安保3文書にもとづき敵基地攻撃能力保有と一体である「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」を進めています。この統合防空ミサイル防衛について、米インド太平洋軍は「IAMDビジョン2028」で「同盟国とシームレスに統合する能力を備え」ると明記しており、米太平洋軍IAMDセンター所長は、同ビジョンの公式の解説論文で「IAMD能力を米国が単独で高めるのは実行不可能」と解説しています。つまり、同盟国との一体的な運用が不可欠ということです。さらに解説論文は陸海空、宇宙、サイバー、電磁波などすべての領域情報を一元的に統合し「攻撃すべき目標」等を迅速に決定するシステム「統合全領域指揮統制(JADC2)」にインド太平洋地域のすべての同盟国を組み込むと述べており、同盟国には「主権の一部を切り離させる…政府をあげてのアプローチが必要」とまで迫っています。これが日米共同声明の言う『シームレスな統合』です。まさに米軍との一体化です。

◆この米軍とのシームレスな統合は、日本の戦後の平和国家の歩みを否定する暴挙と思うが、これらの事実について、知事の認識を伺います。

 

〇県知事 次に日米首脳共同声明に盛り込まれました、シームレスな統合への認識について、お尋ねがございました。我が国は、戦後一貫して平和国家としての歩みを進めてまいりましたけれども、近年は最も厳しく、また複雑な安全保障環境に直面をしております。

そうした中、本年4月に発表されました、ご指摘の日米首脳共同声明におきましては、日米間で作戦及び能力のシームレスな統合を可能にするといったことが掲げられております。このことにつきまして、岸田総理は日米が共同対処を行う場合に様々な領域での作戦や能力が切れ目なく緊密に連携することが重要と、その趣旨を述べられています。

私も、日米間でそれぞれの能力を発揮するために、緊密な連携を行うこのことは必要であるという風に考えます。一方で、岸田総理は、シームレスな統合とは、指揮統制の一体化や相手の指揮官に入ることではないとも述べられております。そして、自衛隊の全ての活動は主権国家たる我が国の主体的判断のもとで、日本国憲法や関係法令に従って行われるとも述べられています。

日米が連携を深めながらも、憲法をはじめとする平和国家としての枠組みから外れることなく専守防衛に徹するという、我が国の基本方針は変わっていないという風に認識をいたしております。

 

●岡田議員 こうした武力行使の現実に向かうための体制整備の一環が「地方自治法改正」であり、「特定利用港湾」です。

重要影響事態、存立危機事態では、「有事」である武力攻撃事態と違い、自治体への指示権はありません。また武力攻撃事態での指示も、港・空港の利用権、住民の避難・救援に限定されています。その制限を取っ払い、「有事」以前の事態からシームレスに迅速に自治体をあげて国の意向に動員させるためのものです。米軍との一体化という全体の流れの中でとらえないと、本質は見えてきません。

◆今回の自治法改正が地方自治体を戦争する国づくりに動員するものである、という認識、少なくとも懸念を持たないのか、持たないとしたらその根拠は何か、知事にお聞きします。

 

〇県知事 次に、今回の地方自治法改正や特定利用港湾の制度に対する認識について、お尋ねがございました。

国際情勢が緊迫をしまして、例えば、武力攻撃事態等、そして存立危機事態といった事態に至った場合におきます対応は、いわゆる国の実態対処法におきまして、また重要影響事態に至った場合の対応は、これはいわゆる重要影響事態法という国の法律によりまして、それぞれ国・地方間の調整の方法も含めて、必要な法令が整備をされているという風に考えています。

こうしたこともございますので国の方は、ただ今申し上げましたような事態におきまして 今回の改正地方自治法に基づく関与を行使することは想定していないと、国会でも答弁をされております。

また、特定利用港湾につきましては、平素における柔軟かつ迅速な利用について、あくまで、港湾法などの既存の法令に基づき関係者間で連携調整するための枠組みであるという風に認識をしております。そして、国はこうした枠組みであるということを前提に、自衛隊や海上保安庁によります港湾の優先利用のために改正地方自治法に基づく指示権を行使することは想定していないとこの点も国会で答弁をされているところであります。

また、この改正地方自治法に基づきます指示権の行使に当たりましては、先ほど申し上げましたように国会で附帯決議が行われまして、目的を達成するために必要最小限の範囲とするといったことが議決をされているわけであります。

このことから、議員の方からは武力行使におきまして、自治体を動員する枠組みになるのではないかというご懸念のご披露ございましたけども、私としては、そのような懸念は抱いておらないところであります。

 

●岡田議員 私たち日本共産党は、日米軍事同盟の文字通りの歴史的大変質に断固抗議するとともに、その中止を強く求めていく決意を述べ、次の質問にうつります。

 

【知事の政治姿勢・人口減対策について】

●岡田議員 次に、人口減少対策についてお聞きいたします。

 国連人口基金が昨年4月に発表した「世界人口白書2023」は、各国の取り組みと実態の分析に立ち極めて重要な指摘をしています。各国のこれまでの出生率引き上げ政策は、「長期的には効果がほとんどない」とし、出生率上昇に照準を当てた政策から、生殖に関する権利を支援する政策へ転換すべきだと主張しています。また、少子化が進む国の特徴として「職場でのジェンダー不平等、家庭でのジェンダー不平等、勤労者世帯への構造的支援の欠如という三重の足かせ」があることを指摘しています。

 同「白書」は、そもそも人口が「多すぎる」「少なすぎる」という問題設定自体が間違っており「有害」であると様々な事例を示して批判したうえで、問うべきは「一人ひとりが性と生殖に関する自己決定権を含め、基本的人権を行使する術を持っているかどうか」だと強調しています。また、少子化が進む韓国・日本に焦点をあてた特集をくみ、若い日本人女性の多くが、結婚して子どもを産むかどうかわからないと答えているのは、キャリアを続けることを望み、無給の家事や育児に縛られたくはないと考えているから」だとし、ジェンダー不平等が出生率低下の背景にあるとの認識を示しています。

◆まず、一人一人の生殖に関する権利、ジェンダー平等に焦点をあてた「世界人口白書2023」の内容について、知事の認識をお聞きいたします。

 

〇県知事 次に「世界人口白書2023」の内容への認識につきまして、人口減少問題への対応と関連してお尋ねがございました。

お話がございました「世界人口白書2023」 におきまして 少子化が進む国の女性は望む数の子供を現実に持つことができない、そうしたことがしばしば起こっているという風に指摘をされています。

その主な要因といたしまして、特に就労を望む女性は家事、あるいは育児の負担が女性に偏っている場合に出産は望まない傾向があるというような分析が示されているというところでございます。こうした白書の内容や指摘は少子化あるいは人口減少が進みます我が国 あるいは本県にも当てはまる部分があるという風に考えております。

このため、県ではこうした固定的な性別の役割分担意識の解消に向けまして、男性の育児休業の取得促進を原動力といたしまして、県民の方々の意識改革に本格的に取り組みたいという風に考えております。具体的には、現在、共働き・共育てを県民運動として推進をするべく官民による共同宣言の準備を進めております。さらに、若者、特に若い女性に魅力のある仕事の創出を高知県内で図っていくということ、そして、若年人口の増加に向けました プロモーションを県内外に展開をしていくと、こういった様々な施策を通じまして、人口減少対策に取り組んでまいる考えであります。

 

●岡田議員 子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決める基本的人権があることが大前提です。一方で結婚や子どもを持つことを望んでいても、それを妨げる高い障壁があります。

結婚をした女性一人あたりの子どもの数は、この20年変わっておらず、「女性にコストとリスクを押しつけている」構造が、女性の非婚化の要因となっているという指摘があります(荒川和久2024/6/7等)。たとえば、ニッセイ基礎研のレポート(2016/11)は、女性が大学卒業後、同一企業で働き続け、二人の子を出産・育休を2回利用し、フルタイムで復職した場合、賃金と退職金で2億3,008 万円となるとし、一方で第1子出産後に退職し、第2子小学校入学時にフルタイムの非正規雇用者として再就職した場合は9,670 万円、パートでの再就職では 6,147 万円と出産退職で1.3億から1.7億円ものマイナスとなると試算しています。これに年金額の差が追加されます。

また、離婚は婚姻数の約1/3であり特別の例ではありませんが、夫から養育費を受けている母親は28.1%にすぎず、86%のシングルマザーが働いているのに、相対的貧困率はOECD加盟36ヵ国中で下位の48.3%であり、女性が貧困に陥る「リスク」も存在します。共働きの場合でも家事労働の極端な不平等があります。

 子育て支援策はもちろん重要で充実させることは論を俟ちませんが、女性が結婚や子どもの有無に関わらず、一人の人間として、働き続けられ、安定した賃金を得られる環境の整備、ジェンダー平等の確立が「少子化問題」から汲み取るべき教訓です。私たちは、これまでも女性が多く働く医療・介護・福祉・保育分野の重要性を指摘してきましたが、

◆高知県の人口という基盤を支えている点から見て、女性が男性よりも賃金が低いことも踏まえ、女性が活躍し続けることのできる環境づくりについて、知事の認識をお聞きします。

 

〇県知事 次に女性が活躍し続けることができる環境づくりについて、お尋ねがございました。お話がございましたような男女間の賃金格差の解消に向けましては、1つには、女性の働く場を拡大していく、それに2つには、女性の就労の継続を図っていく、さらに第3に、女性の管理職割合を上げていく、こういった取り組みが重要であろうと考えております。

このため、元気な未来創造戦略の中では、女性の活躍推進を掲げまして、これまで、男性中心の職場という風に考えられてまいりました一次産業あるいは建設業などにおきましても、デジタル化を推進するといった努力によりまして、女性の働く場の拡大を図ってまいりたいと考えております。また、例えば、短時間勤務制度などの多様な働き方を進めていくということ、あるいは、ただいま申し上げました男性の育児休業の取得促進、こういった取り組みを通じまして仕事と家庭を両立しやすい環境づくりに取り組んでいきたいと考えております。

さらに非正規雇用あるいは無職の女性を対象にいたしまして、いわゆるデジタルスキルの習得から就職までを一体的に支援いたします事業、いわゆるリスキリング、学び直しの職業訓練ということでよろしいかと思いますが、こういったリスキリングの実施によりまして、女性の所得向上につなげていきたいという風に考えております。さらに申しますと、県内にも女性の役員、あるいは 管理職への登用を積極的に進められて業績を向上された企業が数多くございます。こうした取り組みですとか、ロールモデルとなる女性管理職の実例など、こうした県内の好事例を広く紹介し、また情報発信をし、県内に横展開を図っていきたいと考えております。

こうした施策を通じまして、女性がキャリアを諦めることなく生き生きと活躍できる、そうした環境づくりに取り組んでまいります。

 

●岡田議員 また、公務の現場では、正職員とかわらないような重要な仕事を会計年度任用職員がささえており、その多くが女性です。自治労連が4月に発表した調査では、年収200万円未満が55.4%で、低賃金と公募制度が働き続けたい思いを阻んでいることが示されています。この改善も重要です。

 1つは、正職員と同等の勤勉手当、期末手当の支給についてです。総務省は、新たに勤勉手当を支給する一方で給料、報酬や期末手当について抑制を図ることは適切でない。また、人事院勧告による4月に遡及しての給与改定についても地方財政措置を実施していることを通知しています。

◆県下の自治体で、勤勉手当支給にあわせ、給与を減少させたり、4月に遡っての給与改定に応じていない自治体は、女性の自立という点からも問題があると思うが、県下の状況と認識を、知事にお聞きします。

また、継続雇用についても総務省は「3年目の公募」が必ずしも必要ではないとしており、総務省Q&Aに出てくる「2回までは更新が可能」というのは、国の非正規職員である「期間業務職員」の制度を例示されているだけで、国においても、「短時間非常勤職員」には「3年公募制」はありません。

◆県下の自治体で「3年目で雇止め」という機械的運用がされていないか、働く人の立場にたった運用にする必要があるのではないか、知事にお聞きします。

 

また、再度任用時の給与決定についても、同Q&Aは「勤続による職業能力の向上に応じて行おうとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同様に勤続により職業能力が向上した有期雇用労働者又はパートタイム労働者に、勤続による職業能力の向上に応じた部分につき、同一の昇給を行わなければならない」とし事実上、昇給を促す内容となっています。

◆県下の自治体において、再度任用時の給与決定が適切に実施されているか、知事に現状と認識をお聞きします。

 

〇県知事 次に県及び市町村におきます会計年度任用職員制度の運用に関しまして3点にわたって、お尋ねがございました。関連をいたしますので、併せてお答えをいたします。

まず、勤勉手当の支給に合わせました給与の減額、そして3年目のいわゆる雇い止めについてのお尋ねがございましたが、こうした取り扱いは、県・市町村ともに行っておりません。また、再度任用時の給与決定に際しましても、県・市町村ともに職務経験などの要素を考慮した運用が行われているということでございます。ただ一方で、昨年の人事院勧告を踏まえた給与改定への対応ということに関して申しますと、県と半数以上の市町村におきましては、令和5年4月に遡って、遡及をして実施をするという扱いにしておりますが、残る14の市町村ではこの遡及改定は行われていないという状況でございます。

この会計年度任用職員の給与のあり方に関しましては、国から給与改定の実施時期を含めまして、常勤職員の給与改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とすべきという旨の技術的助言が行われているところでございます。

県におきましても、こうした国の助言を踏まえまして様々な機会を通じまして、市町村に助言をしてまいったところでございますが、最終的には各市町村の判断として、議会の議決も経て、こうした取扱いを決定されたものという風に認識をしております。県といたしましては市町村におきまして、会計年度任用職員制度の運用が適切に行われるという観点から、必要な場合には今後も状況に応じて助言を行って参る考えであります。

 

●岡田議員 また、取り決めをしたのに受け取れていない養育費を、公的機関が立て替え払いをし、支払義務者に請求する仕組がドイツ、フランス、北欧、韓国などでは整備されており、国内では明石市が独自に実施しています。

◆こうしたシングルマザー、ひとり親家庭への支援策の導入も県として検討すべきではないか、知事にお聞きします。

 

〇県知事 次に、ひとり親家庭の養育費の建て替え払いなどの支援策の導入についてのお尋ねがございました。

養育費はひとり親家庭におきます、子どもの生活を保障し、健やかな成長を支えるために必要な費用であります。ご指摘がありました、建て替え払いの制度の取り組みは、養育費の不払いを解消するための1つの手法であるという風に考えます。

ただ一方で、この制度によりますと本来親が負担すべき養育費を税金で負担するということになり得ますので、こうしたことに国民の皆さん、あるいは県民の皆さんの理解が得られるのかという課題、さらには、この制度を導入した場合には児童扶養手当などの既存の公的な給付制度も抜本的な見直しが必要なのではないかという問題が生じる、こういった課題があるという風に考えています。

従いまして、まずは国において、この制度の在り方の議論でございますので、この点はしっかりと国において議論検討をしていただくべき問題ではないかという風に考えております。

本県におきましては 現在ひとり親家庭支援センターにおきまして、弁護士などによります無料法律相談を行っております。この中で養育費の支払い義務、あるいは請求方法などに関して助言を行っております、当面の資金でお困りの方にはひとり親家庭向けの生活安定に資する費用を貸し付ける制度をご案内して、資金的な支援はさせていただいております。さらに今年度からはこの養育費の取り決めなどに必要な手続きの費用への補助も開始をしているというとこでございます。

県といたしましては、こうした取り組みを通じまして、ひとり親家庭の方が養育費をしっかりと確保できますように引き続き支援をしてまいる考えであります。

 

●岡田議員 有識者のグループ「人口戦略会議」が、全国の1729自治体のうちおよそ43%にあたる744の自治体で、2050年までの30年間に20代・30代の女性が半減すると分析し、将来的に自治体の「消滅の可能性がある」とのまとめを行いました。これに対し、島根県の丸山達也知事は、4月24日の記者会見で「日本全体の問題を自治体の問題であるかのようにすり替えている。アプローチの仕方が根本的に間違っている」、「人口減少は市町村や県単位の問題でなく、都市部に人口が集中する日本社会の構造を放置してきたことが引き起こしている現象だ」とまっとうな批判をしています。政府も6月10日の「デジタル田園都市国家構想実現会議」で、10年間取り組んできた「地方創生」は「人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」とする報告書をまとめています。

◆政府の「地方創生」策の失敗、地方の人口減少や東京一極集中が加速している事態をどう受け止めているのか、知事の考えをお聞きします。

 

〇県知事 次に、国の地方創生の取り組みと地方の人口減少や東京一極集中の受け止めについてのお尋ねがございました。

国におきましては、地方創生を進めるに当たりまして、地方が主体的に行う取り組みを新たな交付金などにより後押しをすると、こういったことを基本として様々な施策を展開されてきました。

合わせて、東京一極集中の是正に向けまして、大学や企業、政府関係機関などの地方分散の取り組みも進めてこられたとこでおります。この結果、例えば地域資源を生かした特色があると取り組みが各地で生まれるといった成果につながる事例も現れているという風には評価しております。しかしながら、データ的なものを見ますと東京圏を除く地方の人口は令和5年までの10年間で420万人以上の減少、本県でも7万人以上の減少という大変厳しいデータが出ておりまして、地方の人口減少に歯止めがかかっていないというのが実態だと考えます。

さらに、国が均衡を目標に掲げました東京圏の人口の転入転出の状況でございますけども、この転入超過数は令和5年で11万5千人というところまで拡大をしております。

国の方では、ただいま申し上げましたように、令和6年度には、地方と東京圏の転出入の均衡という目標を掲げておるわけですが、この目標は、正直、大変難しい状況ではないかという風に見込まれると思います。そもそも、地方の人口減少と東京一極集中、政治・経済・文化の中心であります東京圏に若者にとって魅力のある企業、大学が集積しているという構造的な問題に起因するものと考えています。この問題は、地方の取り組みだけでは解決できるものではありません 国土政策、あるいは、社会経済政策として、改めて国が責任を持って、戦略的に取り組んでいただくべきものというふうに考えます。

こうしたことから、我々といたしましては、東京一極集中の是正に向けまして、国において、省庁横断的な組織を新たに設けて、大学・企業などの地方移転促進策を抜本的に強化することを検討してもらいたいという提言を国に対して行ってきたところでございます。

その成果もありまして、先日、閣議決定をされました「骨太方針」には、東京一極集中といった課題の解決に向けて、地方創生の新展開を図るといった方針が盛り込まれています。引き続き、全国知事会などとも連携をしながら国に対して東京一極集中の是正に向けた取り組みが実効性あるものとなりますように、積極的に政策提言を実施してまいる考えであります。

 

●岡田議員 なお、女性の減少だけにターゲットをあてる方法は問題の正確な把握の妨げとなります。男性も同様に減少しています。国立社会保障・人口問題研究所の2020年から2050年の比較推計によると、高知県の場合、男性の減少率は56.6%と女性の56.3%とほぼ等しいことを指摘しておきます。(国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口』令和5(2023)年推計)

 地方から都市部への若者の人口流出の原因に、経済的な格差が指摘されています。たとえば、最低賃金の都市部と地方の格差は、02年度は104円が、22年度は219円に広がっています。そもそも諸外国に比べて低すぎる最低賃金が、結婚について「年収300万円の壁」と称される事態を招いてもいます。

 日本共産党は、アベノミクスによる大企業減税や恣意的な高株価対策で、この10年で180兆円も増加した内部留保の増加分に、毎年2%、5 年間の時限的課税で10 兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げを支援し、最低賃金1500円を実現すること、大企業の内部留保課税にあたっては、賃上げ分を控除し、賃上げすれば課税されない仕組みとして、大企業自身の賃上げを促進し、経済の好循環をつくりだすことを提案しています。これは東京一極集中を是正することにもつながります。

◆国として、最低賃金を全国一律の1500円とする必要があると思うが、わが党の提案も含めて、知事の認識をお聞きします。

 

〇県知事 次に 最低賃金を全国一律で1500円とすべきではないかといった点について、お尋ねがございました。この最低賃金の水準の全国統一に向けまして、大都市部と地方部との格差の縮小を図っていくということは、私としても目指すべき方向であるという風に考えています。ただそのためには、地方部におきまして労働生産性の向上を図るという取り組みが同時に成果を挙げていくということが不可欠だと考えます。仮に労働生産性の向上が伴わないまま最低賃金を引き上げるというような場合には、企業の経営にとって大きな負担となります。結果として雇用の維持、ひいては事業そのものの存立が危うくなるということになろうかと思います。

また、内部留保への課税を原資として賃金に対する直接補填をしてはどうかという話もございました。この方法によりますと事業者の収益力向上にはつながらないということであります。いわば、貯金の取り崩しというようなことでございますので、その効果は一時的なものにとどまってしまうという限界があるのではないかという風に考えます。

従いまして、大都市部と地方部との格差の縮小のためには、先ほども申し上げました労働生産性の向上、そのために、具体的には、デジタル技術の導入、省力化、自動化こういった 努力を通じまして、企業の稼ぐ力を高めるということが何よりも重要だと考えます。

県におきましては、産業振興計画におきまして10年後には1人当たりの県民所得を全国 20位以内に持っていくという目標を掲げまして、官民共同、市町村連携のもと、鋭意取り組みを進めているところでございます。

 

【大阪・関西万博への修学旅行について

●岡田議員 次に、大阪・関西万博への修学旅行についてです。

 大阪・関西万博への修学旅行を巡り、知事が「修学旅行の機会に万博を訪れるプランはありうる。案内、紹介する情報提供を、万博協会(日本国際博覧会協会)としても全国の学校が修学旅行などで来てもらうことがありがたいという気持ちを持っていることを踏まえて、教育委員会に伝え、検討してくれと教育委員会に言っている」と事実上、万博への修学旅行を推奨した発言に、県民から驚きと疑問の声が上がっています。

 この間、万博会場の安全性が確保されていないことが明らかとなっています。

 3月28日、夢洲1区の野外イベント広場の溶接工事で、火花がメタンガスと見られる可燃性ガスに引火し爆発、コンクリート床や天井材などが約100平方メートルに及び損傷しました。万博会場である夢洲では、かねてよりメタンガスの発生が確認されており、爆発が懸念されていました。

 この3月の爆発を巡り、建設業者と万博協会、国のずさんな対応も明らかとなっています。爆発当時、現場から消防への通報は事故発生4時間半後と不可解に遅れ、協会は当初床と床点検口の損傷と発表、天井部の確認できない写真のみ公表しました。事故の「矮小化」をはかったと疑わざるをえない事態です。

 さらに、事故後も、万博協会は、夢洲2区3区は「これまでガスは検出されておらず、ガス発生の可能性は極めて低い」(4/19藁田博行・整備局長)と繰り返し主張しています。しかし、5月に入り、1~3月の測定で同地区からメタンガスが検出されていたことを認めました。会場の安全性を確保すべき協会の管理能力の欠如が浮き彫りになっています。

 会場の危険性の懸念は、メタンガスにとどまりません。観光バス等を停める駐車場の下にはPCB(ポリ塩化ビフェニル)汚泥が埋設されています。2区3区の浚渫土砂の一部からは最終処分場排水基準の480倍にあたる総水銀(2.4ppm)も検出されています。これら有害物質の工事による飛散も懸念のひとつです。さらに、災害が起こった場合、3日間もかけて最大15万人を船舶などで避難させる計画で、本当に来場者の生命が守れるのか疑問を持たざるを得ません。

 国・文科省は、爆発事故後の4月8日付で「修学旅行などにおける2025年日本国際博覧会の活用について」との、万博への修学旅行を推奨する事務連絡を発出し、安全性を軽視する姿勢に終始しています。県教委もこの通知を各市町村教育長に周知し、国の安全軽視の姿勢に追随しています。

◆現状、大阪・関西万博会場の安全性が確保されていると考えているのか、教育長に伺います。

 

〇教育長 まず、大阪関西万博会場の安全性についてお尋ねがございました。

メタンガスの発生や避難経路の確保など、大阪関西万博会場の安全性を懸念する声があることは承知をしております。

この度、県教育委員会として、国及び日本国際博覧会協会に問い合わせを行ったところ、 メタンガスにつきましては、換気設備を設置し、強制換気するとともに、ガス濃度測定値を毎日公表することを検討するなど追加の安全対策を講じること、災害時における避難等の対応については、具体策を盛り込んだ実施計画を現在策定中であり、夏ごろには取りまとめられる予定であることを現時点で確認をしております。

もとより、万博につきましては、国家行事として行われることからも、安全性については国ないし万博協会の責任において確保されるべきものであると考えております。

 

●岡田議員 修学旅行は、あくまで学校教育の一環です。児童生徒の安全は大前提であり、加えて、不安を感じる状況で不参加を選択せざるを得ない児童生徒が出るとすれば大きな問題です。

 高知県では、紫雲丸事故や上海列車事故のように修学旅行中の事故で、多くの子どもたち、先生が犠牲になった痛苦の経験を持っています。教育活動の下、命が失われる事態を決して起こしてはなりません。

◆様々な危険性が指摘される中、万博を修学旅行の対象としないよう県教育委員会が主体的に判断すべきと考えますが、教育長にお聞きいたします。

 

〇教育長 次に万博を修学旅行の対象とすることがないよう、県教育委員会が主体的に判断すべきではないかとのお尋ねがございました。

教育課程編成の主体は学校にあり、修学旅行を含む学校行事などの特別活動につきましても、学校の長たる校長が責任を持って学習指導要領に従って適切に計画し実施されるべきものと考えております。

その前提として、安全性が確保されるべきであることは言うまでもございません。大阪関西万博につきましては、先ほどもお答えしましたように、今月24日に公表されたメタンガス等に関する追加の安全対策に加え、夏には災害時における避難等についても具体策を盛り込んだ実施計画が取りまとめられる予定となっているなど、今後さらに安全対策が強化されるものと考えます。

今後も、国や万博協会からの安全対策情報にも注視し、情報提供がありましたら、各市町村教育長や各県立学校長にも、速やかにお知らせをしてまいります。

 

●岡田議員 大阪府などで児童生徒を万博に無料招待する動きがありますが、保護者や児童生徒から万博の安全性の確保されない状況で、不安、反対の声が上がっています。

◆安全性に懸念が広がる万博への修学旅行に、県として補助金を出すことはあってはならないと考えますが、教育長の認識をお聞きします。

 

〇教育長 最後に大阪関西万博への修学旅行に補助金を出すことについて、お尋ねがございました。万博は国家的なプロジェクトであり 地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる場であります。

国内では数十年ぶりに開かれる同博覧会を児童生徒が訪れ、各国の展示を見学し体験することは、人類や地球の将来に思いを巡らし、個人のこれからの生き方を考える上で大変意義あるものと考えます。

その一方で、本県ではこれまでも、修学旅行に限定した補助金を出すといったことは行っておりません。このことから、今回の大阪関西万博につきましても、修学旅行に対する補助金は現時点では考えておりません。

 

【農政について】

●岡田議員 次に、農政についてお聞きします。

先日、土佐市の農家の方から手紙を頂きました。「人が居ない、人々の生活を支える全ての物が、冷え切って遠くへ消えていく、地域で一番の田畑が耕作放棄地になり草原・林となっている。みかん等の果樹園の放棄も多くなった。人の居ない消滅集落も出始めた。集落は老人ばかり、若者は他産業に就労、都会へ行ってしまった、農業の後継者は居ない。機械が故障したら米作りはやめると皆が言う。」と切々と訴えています。

この方の集落は比較的恵まれた地域(中島)だといいますが、それでも、戦後しばらくは農家数も50戸余りあったそうですが、現在は8戸で、後継者がいる専業農家は3戸になっているそうです。この方は「この様な農村疲弊、若者離れは農業での物作りが、農業生産者の豊かな生活を支える利益を生まないことである。これは農家の販売価格が、買い手が決める、市場競争価格で、生産者側の事情(つまりコスト)が無視された価格となっているからだ。」と訴えています。

◆こうした農家の声をどう受け止めるのか、農家のきびしい現状についての認識と、農業に希望がもてるようにするために何が大事だと考えているのか、農業振興部長にお聞きします。

 

〇農業振興部長 まず、農家の厳しい現状についての認識と農業に希望が持てるようにするための考えについて、お尋ねがございました。

議員のお話にありましたように燃料や肥料などの農業資材の価格高騰が続く一方で生産コストの上昇分が、販売価格に十分に反映されておらず、農家の経営は大変厳しい状況にあると認識しております。

こうした中で農業の未来に希望が持てるようにするためには、生産量の増加と生産コストの削減の両立を図り、しっかりと農家の所得を確保しそれを押し上げていくことが重要であると考えております。

このため、県では IoPクラウド「SAWACHI」を活用したデータ駆動型農業を推進し、最適な栽培管理により収量の増加や燃料や肥料の使用量の減少によるコストの削減を図るとともに、省力化を目指したスマート技術の導入といった農業のデジタル化を加速させているところです。

一方、農産物の合理的な価格形成に関しましては、現在、国において、コスト指標の作成に向けて、生産・流通に係るコスト構造などの実態を把握するための全国的な調査が行われております。県としましては、地域ごとに栽培方法や輸送距離が異なるといった実態がコスト指標に、適切に反映されるよう国の動きを注視するとともに、必要に応じて提言を行ってまいります。

こうした取り組みにより、既存の農家経営発展を図ることで、新たな就農者の増加につなげ、さらに地域が元気になるといった好循環につなげてまいります。

 

●岡田議員 5月に成立した新たな食料・農業・農村基本法に基づいて新しい基本計画が策定されますが、食料自給率の目標を掲げ、達成に責任を持ち、食と農の未来に希望が持てるような計画として、地域の農業振興が図られるものにしなければなりません。何より農業で食べていけるようにすることが大事です。

政府の農業施策は兼業農家など多様な家族経営への支援が弱いと言わざるを得ません。政府の担い手政策は専業農家である効率的かつ安定的な経営体、農業で生計を立てる担い手を支援するものです。兼業農家や半農半Xなど多様な生産者は専業農家の補助者と位置付けられています。また、有機農業に対する支援も不十分です。

新規就農者が減っており、人口減少が続く中で、施策の対象を効率的かつ安定的な経営体、法人に絞る必要はありません。農業生産に携わる多様な生産者への支援が必要です。

本県の新規就農者は、ここ数年、年間210人台となっています。コロナ禍前の260人から270人には戻っていません。

◆新規就農者がコロナ禍前にもどらない原因と対策について、農業振興部長にお聞きします。

 

〇農業振興部長 次に、新規就農者数がコロナ禍前に戻らない原因と対策について、お尋ねがございました。

本県の新規就農者数は、平成28年の276人をピークに、その後は横ばい傾向でしたが、新型コロナウイルスの影響が出始めた令和2年度には217人と大きく減少し、以降は210人台で推移しております。

就農形態や年代別で見ますと30歳代以下の自営就農者の数が大きく減少し、とりわけ親元就農は、ピーク時の半数近くとなっております。これはウクライナ情勢や円安などの影響による生産資材の高騰により、特に、施設園芸を主体とする本県では就農の際の初期費用が増大し生産基盤がある親元就農であっても経営リスクが高まり、就農へのハードルが上がっていることなどが、主な原因と考えられます。

このため、初期費用の軽減を図るため、本年度新規就農者のニーズが高い中古ハウスを活用する場合の県補助金の補助率を引き上げました。また34歳以下の自営就農者を対象とした国の給付金への上乗せや国の給付金の対象とならない親元就農者を支援する県独自の制度を創設するなど、就農の際の経済的負担を軽減するための取り組みを強化したところです。

さらに、新規就農者の確保に向けては、就農希望する若者のさらなる掘り起こしが重要であると考えております。このため、SNSを活用したキャンペーンや農業体験ツアーを開催するなど、多くの若者などに農業に興味を持ってもらう、農業の魅力を知ってもらう取り組みを強化しております。こうした取り組みをしっかり進めていくことで、産業振興計画の目標である年間320人の新規就農者数の確保を目指してまいります。

 

●岡田議員 また、多様な農業生産の一つである有機農業につきましては、本県でも推進していこうとしていますが、有機農業者からは、生産面や販売面で課題があるとお聞きしています。

◆そこで、有機農業者やこれから有機農業を始めようとする方の支援にどう取り組むのか、農業振興部長にお聞きします。

 

〇農業振興部長 最後に、有機農業者や、これから有機農業を始めようとする方への支援についてお尋ねがございました。

本県の有機農業の取り組み、面積や個数は近年横ばいとなっておりますことから、有機農業を拡大していく上での課題を明らかにしていくため、昨年度、有機農業者を主体とした有機農業推進検討会を立ち上げました。

その中で、病害虫や雑草の発生により収量が安定しないといった生産面の課題や、ロットが十分でなく販路の拡大が難しいといった販売面での課題が挙げられました。そのため、生産面では、農業振興センターでの病害虫対策についてのアドバイスや勉強会の開催、スマート機器による除草技術の実証などに取り組んでおります。

また、販売面では個々の取り組みでは、ロットの確保に限界がありますことから、生産者のグループ化を促しながら、商談会への出展などによる量販店や学校事業者とのマッチングを支援しております。

新たに、有機農業を始めようとする方への支援と致しましては、農業振興センターに相談窓口を設置し、有機農業の取り組み事例や地域の有機農家を紹介しますとともに、早期の技術習得に向けて、農業担い手育成センターでの基礎研修や有機農家での実践研修が受けられるよう体制を構築しております。

加えて、推進体制の強化を図るため、生産者に加え、流通事業者や消費者、学識経験者で構成する高知県有機農業推進協議会を今年度設立いたしました。協議会において、それぞれの立場からのご意見をいただき、今後の取り組みの推進に生かしていきたいと考えております。

 

【地消地産について】

●岡田議員 次に、地消地産、つまり地域の消費者ニーズがあるものを地域で生産し消費する、このことと関連して循環型農村経済圏(スマート・テロワール)の構築についてお聞きします。

スマート・テロワールとはなにか。カルビー株式会社の元社長、元会長の故松尾雅彦氏が著書『スマート・テロワール』で提唱している構想であり、山形大学が2016年から、その構想の実現に向けて実証実験に取り組んでいます。

”テロワール”とは、それぞれの地域や気候や地形、土壌を含めた風土、自然環境そのものであり、スマート・テロワールとは、テロワールに「洗練された」の意味である”スマート”を付けた造語です。山形大学では地域の自然環境を表すテロワールに農業技術や加工技術を含めた生産技術に消費行動を加え、自然環境、生産技術、消費活動を共有するユニットをスマート・テロワールと呼んでいます。

 具体的な取組みとしては、地域の風土を活かし、耕種農家と畜産農家が連携して土壌を改善しながら地域に適した農畜産物を生産する「耕畜連携」。次に農業者と地域の加工業者が連携して、その生産した農畜産物の中から厳選素材だけを用いて加工食品を製造する「農工連携」。さらに、加工業者と地域スーパーマーケットなど小売店が連携して、その加工食品を地域内で販売する「工商連携」。そして地域の消費者が望む商品として地域の消費者に提供する「地消地産」。なお、「地産地消」というのが一般的ですが、スマート・テロワールでは「地消地産」としており、あくまで地域の消費者が望むものを地域で生産することを目標としています。

 こういう手法で地域の活性化を図るのがねらいです。いわば全員参加型です。以前から推進されている6次産業化との違いは、一般的な6次産業化は、農家が加工や販売も手がける「個人戦」であるのに対して、スマート・テロワールの取組みは、それぞれの専門分野(専門業種)が保有する設備や技術を活かし、その役割を担って地域全体で取組むことであり、ステークホルダー(利害関係者)の協働活動による「団体総力戦」であるという考えが大本にあります。つまり、地域全体で盛り上がろうという取り組みです。人口でいうと10万人から数十万人の規模が想定されています。本県で言えば一級河川の流域という規模感でしょうか。

 本県の産業振興計画にも「分野を超えた連携」とか「分野を貫く共通テーマ」が掲げられていますが、戦略の柱は地産外商とイノベーション(変革)です。人口減少が進む本県においては、なによりも地域の皆さんが地域に誇りが持てるようにすることが大切です。そして、多様な担い手が、消費者のニーズをつかんで生産から、加工、流通、販売まで地域で循環する仕組みをつくり、誇りの持てる、暮らしやすい地域社会を築いていくことが必要ではないでしょうか。そのことが、地域を守り、豊かな暮らしをつくり、人口減少を食い止める力にもなります。

本県では、資材やエネルギーなど県内で生産すれば県内でまわるお金が、多く県外に出ています。地域内で食品を加工し、この加工に力をいれることが大事だと考えます。販売すれば、新たな産業、新たな雇用が生まれることは自明の理です。そうすれば、地域に人が残り、人が集まることになります。

一定の広域で様々な課題を相談できる、そして最良の解決策を研究できるプラットホームをつくり、地域循環型の農業、水田、畑、山林、水、太陽光、あるいは観光資源など地域の資源をフル活用し、魅力ある地域、循環型の産業構造を築き、雇用の場も作り出す。2、3年かかっても、しっかり地消地産の仕組み、地域循環型経済を作っていくことが、持続可能な地域を作っていくことになるのではないでしょうか。それは、SDGsにも貢献します。

◆こうした取組を、まさに総力戦として地域で展開することが、地域の活性化、人口減少や少子化対策につながると考えます。知事の所見を伺います。

具体的に提案します。私は、循環型農村経済圏として物部川流域をスマート・テロワールのモデル地域にできないかと考えます。この地域には様々な条件がそろっています。川上から川中、川下にかけて豊かな自然が広がり、歴史や文化が受け継がれています。そして広い平野では農業が盛んであり、交通の便にも恵まれています。様々な事業所や高知大学、高知工科大学など大学、研究機関も揃っています。農業、林業、商工、観光などそれぞれの分野の取り組みも活発です。

しばらくは人口減少が続く中で、これらの取組の総合化を図り、持続可能な地域を築くことが大事だと考えます。この地域で農業を軸に、再生エネルギーも含めて、地域循環の農村経済圏ができれば、さらに地域の活性化が図れると考えます。地域外への経済の流出を抑えて、地域外からの収入を増やす。新しい商品開発などにも取り組み、雇用の場をつくり、雇用の質を高めることが大事です。

◆嶺北地域との連携を視野に入れた物部川流域での分野横断の循環型農村経済圏を作る考えについて、そしてそのための総合的な協議会や話し合いの場を設けることについて、知事の所見を伺います。

 

〇県知事 最後に、いわゆるスマート・テロワールの取り組みへの所見、そして、これを物部川流域でモデル的に行ってはどうかというお尋ねがございました。関連しますので、合わせてお答えいたします。

ご指摘がありましたスマート・テロワールは、食と農に関する経済を、地域内で循環、完結するということを目指す、そういうものだという風に承知いたしておりますが、現代は物やサービスがグローバルに行き交う時代となっております。従って、様々な原材料にいたしましても、価格、品質などを考慮して、域内外を問わず、より合理的に調達することが、経済活動の基本となっているとそういう時代だと考えております。

このため、本県におきましては、これまで、県内で完結をする閉ざされた経済を志向するということではなく、県外とのオープンな経済取引によりまして、地産外商、地域の産業を強化して、県産品を海外に売り込んでいく、そして、それによっていわゆる外貨を獲得していくと、こういう考え方を柱に据えまして、本県経済の活性化を図って参ったところであります。

その結果、県内総生産、あるいは1人当たり県民所得などの経済指標は着実に伸びてまいりました。

こうした努力に加えまして、ご指摘もありましたように、県内の消費に当たりまして、県外から調達をしてきた財やサービスを県内産に置き換えていくと、いわゆる地消地産を進めること、このことによりまして、県内生産をボリュームとして押し上げることができますと、県の経済成長にとっては、さらにプラスとなるということだと思います。

そういう意味では、この取り組みは私どもとしても進めたいと考えておりまして、これまでも、例えば、県内で消費するエネルギーを太陽光などの再生可能エネルギーに置き換える取り組み、これは積極的に行って参っておりますし、農業に関連する分野で申しますと、土佐酒の原料を県外産の酒米から県産の酒米に変えていくための取り組み、さらには県内産の稲を原料とした飼料、イネWCS と称しておりますが、これの生産を拡大していくといった形で、原料の県内生産を進めていくという努力は進めているところでございます。

今後もこうした取り組みも含めまして、県内経済の成長に繋がってまいります地消地産の取り組みは進めてまいりたいと思います。

その際には、特定の地域に絞った取り組みでございますと、この製品の置き換えの選択肢がかなり限定をされてしまうことになりますので、県内産への置き換えが可能なものを県全域で広くピックアップをしていくというスタンスで検討してまいりたいと考えております。私からは以上であります。

 

【UIターンサポートセンターパワハラ問題】

●岡田議員 次に、県の外郭団体、一般社団法人「県UIターンサポートセンター」のパワハラ問題について、以下、人口減少・中山間担当理事にお聞きいたします。

移住促進と人材確保の相談窓口を一元化した同センターは、活動費は県補助金でまかない、理事長と事務局長は県職員が勤めています。県の最重要課題である「人口減少対策」を担う重要な役割を担っていますが、2020年から5年足らずの間に定数の8割に当たる約20人が相次いで退職し、人材が定着していない異常な状況が続いています。この問題は全国報道もされ、高知県に対するマイナスイメージを発信してしまいました。

UIターンサポートセンターは6月4日に開かれた理事会で、月内に第三者委員会を立ち上げ調査する方針を決めました。同センターの片岡千保理事長は「被害者の意向も確認し、公正中立な立場の弁護士らで構成する調査委員会の設置に向け準備を進めている」ことが報道されました。

その後、同センターは6月19日に社員総会を開き、月内に弁護士らによる第三者委員会を立ち上げ調査する方針を決めました。被害者の意向も確認し、公正中立な立場で構成する第三者委員会の設置を求めるものです。

◆そこで先ず、県はUIターンサポートセンターに対して、どのような対応をとってきたのか伺います。

 

〇人口減少・中山間担当理事 まず、UIターンサポートセンターのハラスメント問題に対する対応について、お尋ねがございました。

1月下旬にセンターの職員から、県に対しセンターのハラスメントについての訴えがなされたことを受けまして、県ではまずセンターに対し事案発生時の対応や判断について改めて事実確認を行うよう指示するとともに、当時の関係職員への聞き取りなどについてはセンターを所管する移住促進課も協力して行ってまいりました。

3月下旬のセンターの理事会では、センターが行った調査の経過報告がなされましたが、この段階では、明確にハラスメントにあたる客観的事実が確認できておらず、引き続き調査を進めるとの説明でございました。

これを受け、県としては、内部調査では事案の解明に限界があると考え、センターに対し外部の専門家を交えて解決を図ることが望ましいと助言を行ったところでございます。

その後、センターとしても、県の助言や理事会における意見、被害を訴える方の意向も踏まえ、第三者委員会を設置する方向としたところですが、その際、被害を訴える方々との協議には移住促進課も同行し、センターとの意思疎通をサポートしてまいりました。

また、第三者委員会の専門家の構成や体制などにつきましても、その都度センターの相談に応じ、必要な助言を行って参ったところでございます。

 

◆また、公正な調査を期待するものですが、予定している委員構成について伺います。

 調査結果は県民に公表されるべきものです。

◆県民に対し調査報告結果の公表時期についてお聞きします。

 

〇人口減少・中山間担当理事 次に第三者委員会の委員構成と調査結果の公表時期について、お尋ねがございました。関連いたしますので、併せてお答えいたします。

第三者委員会の委員については、県やセンターとの利害関係がない公正中立な立場で客観的な調査を行っていただくために、センターが高知市弁護士会に適任者の推薦を依頼し 推薦された3名の弁護士が委員に選任されております。

また、ハラスメントの認定にとどまらずセンターの組織としての再発防止策を検討いただく際には、委員に加えて学識経験者や社会保険労務士にアドバイスをいただける仕組みにしていると聞いております。

この第三者委員会の調査につきましては 報告書の取りまとめの期限を本年12月まで、期日までに調査が完了しない場合は、協議の上、期間を延長することもできることとしておりますが、いずれにしましても報告書が作成された段階でその公表について速やかに対応していくと聞いております。

 

●岡田議員 第三者委員会による調査と同時に再発防止の取り組みを行わなくてはなりません。トップによるメッセージ発信、就業規則に関係規定を設けるなどルールを決めること、アンケートなどの実態把握、教育研修、組織の方針等を周知啓発することは必須です。

◆ハラスメント再発防止のためどのような取り組みを行っていくのか伺います。

 

〇人口減少・中山間担当理事 最後にハラスメントの再発防止のための取り組みについて お尋ねがございました。センターでは、事案の訴えを受け、まずハラスメント相談窓口にセンター外部の職員である県移住促進課を加えるとともに、リーダー以上の職員に対してハラスメントの防止や円滑なコミュニケーション手法に関する動画研修を行うなど、改めてハラスメントに対する意識啓発を図りました。

今年度に入りましても、4月から新たに就任した理事長が、全職員と1対1の個別面談を実施し、仕事の悩みや職場環境への不安など個々の職員の状況把握に努めており、今後も 定期的な面談を予定していると聞いております。

また、同じく4月には、全職員に対しハラスメントに関する研修を実施し、リーダー以上の職員に対する新たな研修も企画するなど、研修の充実強化にも取り組んでおります。加えて来月には、全職員のストレスチェックに合わせ、ハラスメントに対する認識やハラスメントに該当する事案がないかなどを確認するアンケート調査を行い、問題の早期発見につなげていくと聞いております。センターからは、第三者委員会の再発防止策の提言を待つことなく、さらなる組織運営の改善に取り組んでいくとお聞きしており、県といたしましても様々な改善策を着実に実行していけますよう、引き続き、必要な助言や協力を行いセンターの取り組みをサポートして参りたいと考えております。

 

【公共交通について】

●岡田議員 次に、公共交通についてお聞きします。

利用者減少による赤字路線の拡大、運転手不足、補助金財源確保など公共交通が抱える問題は深刻化しており、県内のJR、とさでん交通、タクシー業界はじめ交通事業者の存続が危ぶまれています。

全国どこに住んでも同じように移動できることはまさに基本的人権そのものであり、県民の「移動権」を保障することは、県のあらゆる施策の土台となるものです。公共交通の減便や廃止は、高齢者や学生など免許を持たない交通弱者に対し不便な生活を強いることになり、県施策の大きな柱でもある中山間再興ビジョンを実現する上でも、公共交通をどう確保していくのか重要な課題となっています。

 この間、高知新聞が「明日の足~高知の公共交通を考える~」を連載しています。特に話題になっているのが、5月下旬に行われた高知市地域公共交通会議で、とさでん交通が示した10月からの路線バス再編案に一宮トーメン団地発着便の廃止等が盛り込まれたことです。地域住民からは、住民の声を聞かず一方的に廃止が提案され、代替案もないことへの不安の声が多く届き、再協議する事態となっています。

 今回の路線廃止や減便案の提案の要因は「運転士不足」です。とさでん交通では現段階で24人不足しておりやむを得ない判断だとしています。路線バスの運転士不足はコロナ禍以前から起こっていましたが、ここ数年全国的に深刻な実態となっています。運転士不足の構造は路線バス事業が低収益であるために、業務の厳しさに比べ給与など労働条件が悪く、職場としての魅力が低いことで志望者が少ないことにあります。

 運転士不足の原因を根本的に解決するためには、事業者の収益性を向上させることが必要ですが、現在の運賃水準では安定的に持続させるのは困難であり、事業者の経営努力を求めても限界に近いのが現状ではないでしょうか。

 県は今年度交通事業者への支援として、臨時交付金等を財源に新たに県外からの移住者向けに「バス運転士等確保支援事業費補助金(2000万円余り)」やバス運行対策補助金4.4億円余りを計上しています。しかし県として十分な支援といえるのか。市町村はバス代替のためのデマンド交通やコミュニティバスを運行することで負担も強まっています。

◆デマンド交通やコミュニティバス運行に対する支援の状況について、総合企画部長にお聞きします。

 

〇総合企画部長 まず、市町村の実施するデマンド交通やコミュニティバス運行に対する支援状況についてお尋ねがございました。

県では、路線バスの運行支援に加え、路線が廃止となった場合の代替手段となるデマンドバスやコミュニティバスの導入についても、支援を行っているところであります。

具体的には 導入にあたって必要となる住民のニーズ調査や実証運行に係る費用、そして実際に車両を購入する際にも、その費用について支援を行っております。直近3カ年の支援状況をまとめて申し上げますと、実証運行費用は延べ12市町に対して2478万2千円、車両購入費用は計 15台、延べ10市町村に対して3845万2千円の支援を行っております。今後も引き続きしっかりと市町村のニーズに対応してまいります。

 

●岡田議員 昨年度の地域交通法では、「エリア一括協定運行事業」が導入され黒字・赤字にかかわらず一定のエリアのバス路線運行に対して「交通サービスの提供の対価として」自治体が事業者を支援することができるようになり、国の補助もあります。赤字補填ではなく、自治体が必要と判断したバス路線網全体も支援することが可能となりました。路線バスの存続のため現在の労働条件を抜本的に改善するために必要な人件費分を適切に反映し、運転士の処遇改善を支援の条件にすれば労働条件が公的に保証され、運転士不足問題の解決につながるのではないでしょうか。

◆運転士不足解消のため「エリア一括協定運行事業」を活用し、とさでん交通への支援をすべきではないか、総合企画部長に伺います。

 

〇総合企画部長 次に、エリア一括協定運行事業を活用した支援について、お尋ねがございました。本事業は昨年度創設された制度であり、現在、全国で唯一導入している長野県松本市にお話を伺いますと、事業の契約を3年から5年の複数年定額で行うことから、事業者側は安定的な経営を図ることができる、自治体側は安定的に交通サービスを確保できるといったメリットがあるとお聞きしております。

また、法定協議会などで事業者と利用者などが路線再編や運航条件などについて協議を十分に重ね、相互理解の下で、交通ネットワークが再構築できたともお聞きしております。

一方で、関係者からは、現行の国の補助が路線の維持費に比べ少額であることから、そもそもの国の補助額自体を見直す必要があるといったお声もお聞きしているところであります。

いずれにしましても、本県における公共交通が大変厳しい環境にある中、本事業は公共交通の維持に向けて1つの選択肢となり得るものと考えております。今後、松本市の先進事例も参考に沿線市町、事業者と共に本事業の活用についても検討をしてまいります

 

【地域医療体制について

●岡田議員 次に、地域医療体制について伺います。

本県における健康寿命の延伸に向けた取り組みとして、日本一の長寿県づくりの柱に血管病の重症化予防対策が位置付けられています。なかでも、糖尿病対策が重要視され、糖尿病性腎症透析予防強化プログラムを医療機関と保険者等との連携強化で進めてきています。

しかし、令和6年度診療報酬改定で、その取り組みの成否にも関わる地域の医療機関、とりわけ診療所などの存続を危ぶむ不安の声が広がっています。

問題視されている改定は、昨年12月22日の閣議決定において「診療所を中心に管理料や処方箋料等の再編等による効率化・適正化を行なう」とされたことの具体化として「特定疾患療養管理料」の対象疾病から糖尿病、高血圧、脂質異常症を除外することになった点です。この3疾病は「特定疾患療養管理料」の90%を占めることから、実質、「特定疾患療養管理料」の廃止に等しいものです。医科診療所の再診回数に占める「特定療養管理料」の割合は内科で67.4%、外科で44.6%、小児科で36.2%、泌尿器科で24.1%(社会医療診療行為別統計2022年6月審査分)で、日常診療の大きなシェアを占めており、その実質廃止は、収入の大幅な減少につながります。大阪府保険医協会の試算では、特定疾患療養管理料及び特定疾患処方管理加算が算定出来なくなる場合、内科系診療所を中心に月額100万円単位で収入減となるとされ、地域の第一線で「かかりつけ医」機能を担う医師、医療機関に重大な影響が出ると見直しの声が広がっています。

厚生労働省は、「特定疾患療養管理料」を実質廃止し、代わりに生活習慣病管理料(Ⅱ)を新設し移行を促しています。この新設の管理料は患者の同意に基づく療養計画を策定したうえ、当該治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理を行なう事を求めています。しかし、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病は、年齢、進行具合や合併症の有無など患者像と治療戦略が様々で、これまでも医師の医学管理、医療技術の判断で患者対応がされてきました。療養計画と署名といったハードルを上げることで、かえって治療の中断も懸念されます。しかも、大阪府保険医協会の試算では、移行しても平均月15万円程度の減収が見込まれています。すでに県内診療所では高齢の医師が、デジタル化の負担増による廃業を選択し、そこを踏ん張ってきた医師も、今回の診療報酬の改定で継続の意欲を失ったとの声も寄せられています。

◆そこで、今回の特定疾患療養管理料の実質廃止に伴う診療所などの閉院の引き金になる懸念など、本県医療機関の経営に与える影響について、県として調査する考えはないか、健康政策部長に伺います。

 

〇健康政策部長 まず、診療報酬上の特定疾患療養管理料の見直しが本県の医療機関の経営に与える影響について、お尋ねがございました。

令和6年度の診療報酬の改定では生活習慣病の効果的な疾病管理を行う観点から、特定疾患療養管理料を見直し、新たに生活習慣病管理料のⅡが創設されました。この改定に伴い今月から生活習慣病は、医師が作成した療養計画書により医師は治療方針を説明し、患者は体重や血圧の目標を設定するなど、医師と患者が共通の理解のもとで疾病管理が行われます。生活習慣病の治療にはこのようなよりきめ細かな疾病管理が効果的と考えます。

今回の診療報酬の改定が医療機関の経営に与える影響ですが、日本医師会はこれまで糖尿病などで特定疾患療養管理料を算定していた医療機関の大部分は、新しい生活習慣病管理料に移行可能であると見解を表明しております。

本県においても同様であり、今のところ、経営上の大きな課題となる可能性は高くないものと考えております。実際の影響につきましては、今後、国が調査・検証をすることとしており、県としましても、その結果を注視してまいります。

 

◆今回の診療報酬の改定は、医療効果の観点ではなく医療費削減に着目したものであり、糖尿病性腎症重症化予防に逆行するとの指摘について、健康政策部長の考えを伺います。

 

〇健康政策部長 次に、診療報酬の改定が、糖尿病性腎症重症化予防対策に与える影響について、お尋ねがございました。

今回の診療報酬の改定により、糖尿病など生活習慣病については、療養計画書の作成など一定医療機関の負担を生じるものの、その治療効果については大いに期待しているところでございます。本県で進めている透析予防強化プログラムでは医療機関と患者の間に保険者が関与して、さらに疾病管理を徹底させており効果が上がっているところでございます。現在県内の11市町14 医療機関において実施されているところですが、導入を予定している医療機関も複数あり、今後、医療機関や関係者の皆様のご意向も踏まえ、県内全域に広げてまいりたいと考えております。

 

【障がい者の自動車税減免について】

●岡田議員 最後に、自動車税の障がい者減免について伺います。

物価高騰が続く一方、社会保険の負担増などで県民の暮らしは悲鳴をあげています。そんな中、5月に自動車税の納付書が送られて来た、夫が脳梗塞の後遺症で障害の一級となった高齢のご夫婦から障がい者減免制度についての相談が寄せられました。

自動車は障害1級の夫の名義であり、本人は運転が困難なため、同一世帯である妻が、通院やリハビリを兼ねた卓球クラブへの送迎などを行なっており、減免の対象になると思い県税事務所に聞くと、対象外だと言われたと、納得できないという内容です。

対象外となった理由は、県が減免の要件として定めている自動車の「使用内容」の規定が、障がい者の通院・通学等のために、月4回以上かつ1年以上継続して使用が見込まれることの証明が必要というもので、通院以外の社会活動への参加などは対象とならないとしているためでした。

自動車税の減免制度は、都道府県ごとに定められており他県の状況を確認してみたところ、高知県の規定は極めて限定的で厳しい内容であると言えます。例えば、鳥取県では、令和元年度から減免の要件の緩和が行われ使用目的に通院、通学などの他、「その他日常生活における移動」を含むこととし、使用目的の証明書類の提出も不要となっています。また、佐賀県においても、昨年令和5年度から「障がいのある方の幅広い社会参加を促進するため」、使用目的や使用回数の要件を廃止し証明書の提出も不要となっています。香川県でも平成26年度にこれまでの通院、通学の「週一回以上かつ、3か月以上継続」に、新たに「障がい者の日常生活(買い物、交流活動等)のために、週1回程度使用する」ことを加えて、対象範囲を拡大しています。

◆他県におけるこうした見直しは、障がい者の社会参加を広げる取り組みとして学ぶべきものがあると思いますがいかがでしょうか。また、自動車税は、本県にとって貴重な自主財源でもありますが、障がい者への減免に対しては交付税措置も取られていますから、本県においても、使用目的に社会参加の視点を加えるよう求めるものですが、総務部長にお伺いし、私の第一問といたします。

 

〇総務部長 自動車税の障がい者減免について他県における見直しに学ぶこと、また、使用目的に社会参加の視点を加えることについて、お尋ねがございました。

本県では身体障がい者ご本人が所有・運転する自動車に対する減税がございますが、これに加えて、ご家族が運転する自動車でもっぱら重度身体障がい者等のための運転するものについて減免することができると条例で定められております。

この減免の決定に際しては、実際に当該自動車がもっぱら重度身体障がい者等のために運転されているかどうか、これを客観的に判断する必要があるため、病院や学校による証明書を提出していただくことを要件としておりまして、他県におきましても、約半数の団体で証明書の提出を要件としていると承知しております。

買い物など日常生活における移動を幅広く対象とし、証明書の提出を要件としない団体もあると承知をしておりますが、こうした仕組みは、障がいのある方の活動を幅広く捉えて減免することとなる一方、使用の実態を客観的に確認することが難しいため、もっぱら重度身体障がい者のために運転されているとは言えない自動車も含め、減免対象としてしまう可能性があると考えております。

そのため制度の見直しについては、税の公平性の観点から、慎重な対応が必要であり、現時点で、要件を緩和することは難しいと考えております。

 

●岡田議員 それぞれご答弁いただきましてありがとうございました。

まず、地方自治法改正についての指示権の問題です。拡大解釈は良くないということで答弁もございましたし、歯止めとして附帯決議があるというご答弁だったと思いますけれども、やっぱり、日本の地方自治、憲法で保障されていますし、国と地方は別の法人格であります。その地方自治に対するこの統制が図られる、強められるという懸念を私は持っております。そして、何よりも、その背景としてですね、やはり、シームレスな日米の防衛問題での統合、こうした背景があるということが非常に重要だと思います。

この背景をしっかりと認識をしていなければ、本当に地方自治を守れないんじゃないかと、そして、平和、県民の安全、安心を守れないという風にも考えているところでございます。相手の指揮権に入ることはないというような答弁もありましたけれども、実際ですね、そういう指揮権に入らなければ情報が得られないということも、いろんな関係者が述べております。そうした中で、指揮下に入ることも懸念をするところでございます。

地方自治をしっかりと守っていく、これを貫くことが大事だということを申し上げておきます。

次に大阪関西万博の修学旅行について、これもう1度、教育基本にお聞きをしたいと思うんですけれども、なかなか、安全性の面も含めてですね、非常に懸念の声が広がっております。それで、例えばですね、大阪府交野市の山本景市長が5月24日に会見を開いて、学校単位で行かせなくてもいいと呼びかけた方がいいと判断したと判断をしたという風に語っています。その理由としてですね、学校の変わり目や暑い時期を除くと5・6月に学校の 来場者が集中するのではないかと。あと交通の便のアクセスの悪さ、こうした中で、集団でですね、学校単位で行くっていうのは非常に懸念されると、安全性としてですね。

そして、何よりメタンガスの爆発事故が発生し、安全に懸念があるとこれらの理由によってですね、学校単位で行かせなくてもいいのではないかという会見も開いております。安全性(については)、引き続きですね、その後の状況を見ても、いろんなところで、メタンガスが発生しているということもありますし、また、暴風雨にも弱いとか、あるいは、学校の現場で言えば(修学旅行等の)下見もできないと、これで本当に大丈夫かという声もあります。

教育長の今の答弁を聞きますとですね、判断するのは学校だとか、あるいは、国が国家事業としてやっているから、安全を国がやっておられるはずだとかいうか、何か、他人事というかですね、やっぱり、教育委員会としては自主的にですね、どう判断するのか、していくのかというところが、今1つ、今の答弁では見えてこなかったと感じていまして、その辺、県教育委員会として、どう判断するのか再度ですね、ご答弁をいただければという風に思います。

そして、スマート・テロワールの問題で、知事からご答弁をいただきました。ものづくりやサービスがグローバルに行きかうようになった状況の中で、より合理的に調達することが必要だということだと思いますけども、あの、地産外商を別に否定するわけではないんですよ。やっぱり、地域の今の疲弊といいますかね、衰退というか、そういう状況の中で、地域でやっぱりあるものは地域で作ると、高知でできるものは高知でつくると、そして、経済を回しながら、産業の育成、雇用の場を作っていくという考え方なんですよ。地域の資源を最大限活用しながらやっていくということなので、これはですね引き続き検討していただきたいということで要請をしておきます。

総務部長にですね、障がい者の自動車税の減免のことですけれども、証明書を要件としない県があるけども、使用を客観的に評価できないということもありましたけども、やっぱり社会的な参加、これを保障することも大事だと思いますので、その点、検討していただきたいのですけど、再度質問いたします。以上です。

 

〇教育長 先ほど申し上げましたけれども、教育課程編成の主体はやっぱり学校であって、学校の長たる校長が責任を持って学習指導要領に沿ってですね、適切に計画・実施されるべきものであると思います。

ただその上で、やはり1番は、安全性が確保されているということが大前提であろうというふうに思っております。

ただ、今回の大阪万博につきましても、確かに事故はございましたけれども、これからさらにですね、安全対策を強化していくという風なお話もございます。そのような意味で、我々としてですね、この安全面については、情報収集をしてですね、その都度都度、各学校あるいは市町村教育委員会にお知らせをしたいと思っております。

そのような意味で、今現在、県教育委員会が統一的にですね、判断するということは考えておりません。

 

〇総務部長 お答えする前提として、今の本県の仕組みは、病院通院は〇で、それ以外の買い物は×ということで、その用途を評価しているわけではなくて、客観的にその使用の実態を確認できるかどうかということで判断するものでございます。

今、議員から、地域参加を促進するためにということでご質問いただきました。

そこについては、基本的にはですね、そういう目的であれば、法に基づく障がい者についてですね、あの地域生活支援事業として、移動支援といった事業は市町村の方でもなされていますので、そういった施策が中心になるとは思っております。

その上で、他県の税の減免の状況は日々変わっていますので、そこはよく情報収集をして、勉強していくということだと思っております。