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- 2023年03月22日
- 議会(質問・討論)
- 2023年2月議会 中根佐知議員の「高齢者の生活を守るため年金制度のマクロ経済スライドの一時停止を求める意見書」案への賛成討論
●中根議員 私はただいま議題となりました議発第7号「高齢者の生活を守るため年金制度のマクロ経済スライドの一時停止を求める意見書」案に、賛成の立場で討論を行います。
2023年度の年金額は、前年度比で68歳以上は1.9%、67歳以下は2.2%と額面上は増額となりました。しかし、マクロ経済スライドが適用された結果、物価変動率2.5%に対して実質的には最大0.6%目減りすることとなっています。
マクロ経済スライドは、2004年に導入された制度で、年金が増額される際に適用され、少子高齢化に応じて給付の伸びを抑える仕組みであり、年金増額の場合には、必ず実質的に目減りすることになるという、高齢者からすれば、理不尽な制度です。しかも、2018年度改定からマクロ経済スライドが適用されなかった分について翌年以降に持ち越すキャリーオーバーの仕組みも導入されるようになりました。今回は、このキャリーオーバーも適用されることになり、物価上昇率を下回る実質減となったものです。
現在、足元では、前年同月比で4%程度、第二次オイルショック以来41年ぶりという高い水準の物価高騰が続いています。物価高騰は、一部に、現在の4%程度でピークアウトするのではないかという希望的観測はあるものの、日銀が金融緩和策の維持を決定したことは、インフレを助長し、物価高の継続につながるものです。また、今後も4月からの電気料金値上げ、政府小麦売り渡し価格もウクライナ危機直後の小麦価格の上昇分が反映される見込みであるなど、希望的観測のとおりに物価高騰がピークアウトに向かうのか、先行きは必ずしも見通せません。また、一度引き上げられた食料品などの価格が、引き下がる方向に転じるかはさらに不透明で、高止まりの生活支出がかさむ状況が続くことが予想されます。
特に、物価高騰の中でも、電気代、ガス代などの伸び率が高いことも特徴でありまして、前年比で20%以上の上昇という大変に厳しい状況です。高齢者世帯は、当然のことですが在宅時間が長く、光熱費の上昇影響を、相対的に強く受けることは避けられせん。また、食料品の値上げも高い水準です。1月の消費者物価指数の上昇は、総合指数で前年同月比4.3%の上昇ですが、食料品の項目を見れば、この総合指数よりも高い、5.9%~9.8%の上昇率となっています。光熱費や食料という、日常の暮らしにおいて支出が避けられない品目が上昇している以上、高齢者世帯の物価上昇による負担は、全体平均よりもむしろ重いものになっているものと考えられます。
そもそも、今回の年金実質減は、満額でも月約6万6千円である国民年金のみの受給者、あるいはその満額を受け取れない低年金者にとってはより一層厳しいものとなり、憲法に定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障できない状態に追い込むものになっています。
切実な声をいくつかご紹介します。
「毎日のようにガス、水道、電気に気を使いながら、食料・飲み物の量を見ながら生活しています。」、「食料品や日用品の値上がりが続いて、スーパーの商品棚の値段の金額が目に入り、ため息が出ています。」、「物価高が日々の生活を大変にしています。特に食料品が高く苦しい。これまでも安い年金では衣服等の新しいものが買えずに来たのに……。」、「夫が亡くなり一人暮らしになり年金も自分の分だけになりました。貯金もなく年金だけにたよって生きています。(略)介護を受けたり、入院や施設に入所することになると、お金が足りなくてとても不安です。食費もけずり楽しいことも減らしていかねばなりません。」、「年金だけでは生活できず、体が動く間はとアルバイトをしてきましたが、だんだん限界に近づいています。これだけものが高くなると先への不安ばかりで生きる希望がもてません。」等など、たくさんの声があちらこちらから届いています。これら多くの声を直視し、必死に生きる国民の生活を支える制度にすべきです。
また、マクロ経済スライドは、高齢者だけに影響する問題ではありません。数十年をかけて徐々に、実質的な年金額を減らしていくという制度である以上、影響が積み重なる現役世代にとっては、将来受け取る年金が大きく目減りしてしまうという問題点があります。これは年金制度自体への信頼を損なうもので、現役世代の将来不安も高めるものとなります。しかも、マクロ経済スライドは、2004年の導入以来、デフレと賃金低迷という長期的な日本経済の不況下で、年金額が伸び悩み、今回を含めて4回しか適用されておりません。20年でわずか4回の適用という事態そのものが、制度の設計からも想定されておらず、政府が言う「年金制度を維持する」というマクロ経済スライドの役割についても、疑問符がつくものです。
3月15日には、大手企業の春闘回答があり、「満額回答」とはなったものの、目下の物価上昇率約4%から見れば、その水準には届かないものとなりました。本来なら、年金の支え手である現役労働者の賃上げと、非正規雇用の正社員化で、保険料収入と加入者を増やし、年金財政を安定させることこそ、もっとも根本的な年金制度維持の対策です。最低賃金の引き上げ、あるいは、保育・介護・看護などケア労働の賃上げなど、政府が主体的に実行可能な賃金底上げ策を実行し、社会全体のさらなる賃上げを促すべきです。
41年ぶりという急激な物価高騰の局面にあって、高齢者の暮らしを守るために、目減りをする年金額ではなく、物価上昇に見合う年金額とすることこそが必要との本意見書案の主旨は、多くの同僚議員に、ご賛同いただけると考えるものです。
同僚各議員のご賛同を心から呼びかけ、高齢者の暮らしを守るため年金制度のマクロ経済スライドの一時停止を求める意見書案への賛成討論といたします。
どうぞよろしくお願いいたします。