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- 2023年03月22日
- 議会(質問・討論)
- 2023年2月議会 塚地佐智議員の「令和5年度当初予算案」等への反対討論
●塚地議員 私は、日本共産党を代表いたいまして、ただいま議題となっています議案第1号「令和5年度高知県一般会計予算」および第48号議案に、反対の立場から討論を行います。
今日の物価高騰は、気候危機の進行、ロシアによるウクライナ侵略、また過度に輸入に依存した日本経済に「金融緩和」路線による円安の影響が重なったものです。そうした意味で、この物価高騰は、食料安全保障の確立、エネルギー政策の転換、気候危機打開など社会の在り方のシステムチェンジの必要性を改めて浮き彫りにいたしました。また、この10年、日本は非正規雇用の拡大、賃金が上がらず成長できない国、二度の消費税増税、医療・介護の負担増など国民負担率はあがり続け、その結果、危機的な少子化は予測を大きく前倒しで進んでいます。2022年の県内出生数は全国最少の3897人、前年比で8.8%もの大幅な減少となり、社会自体の存続危機ともいえる重大な事態となっています。
こうした状況を前にし、物価高騰など直面する県民の苦しみ、声に応える対策を、県民が「希望」が持てる社会へのシステムチェンジと一体で推し進めることが強く求められています。
今議会では、補正予算として、LPガス高騰への独自支援、飼料コスト削減支援、また当初予算としては、再造林の促進、中山間の介護人材確保への補助、有機農業等持続的農業への支援など重要な施策も盛り込まれており、一定の評価をするものですが、危機的な県民の暮らし、高知県の現状を打開するものとはいえません。
以下、令和5年度当初予算案への主な反対理由を述べます。
1点目は、産業振興施策の問題です。
産業振興の視点として内発的発展を位置づける必要があるとの我が党の吉良富彦議員の代表質問に対して、知事は「『地産地消』では限界があり、活力のある県外市場から『外貨』を獲得することが成長をはかるためには重要」とご答弁されました。いわゆる「外貨」を稼ぐこと自体は進める必要があります。県内事業者の魅力ある商品開発のご努力や伴走する県職員の積極的な役割は、県勢浮揚にとって非常に重要だと認識をしています。
しかし、なにより必要なのは、外商・観光の基盤である第一次産業、地域の暮らしの衰退を土台から底上げする施策です。具体的には、エネルギー関係費の県外流出が大きく、転換する必要があります。私たちの推計では、電気・ガス・重油代など約1300億円が県外に流出しており、県内一次産業の総生産876億円(2019年度)を大きく上回る規模です。今日の光熱費高騰で、県外流出はさらに膨らんでいます。この流出防止の推進は、地域経済を底上げし、気候危機打開という将来世代への責任も果すものです。この点で、県予算は、エネルギーの県外依存を転換する観点が極めて弱いものとなっています。
気候危機の原因の約3割を占める食と農の分野においても、学校給食への利用など有機農業の本格的推進、海外に依存する化学肥料・農薬からの脱却を強く求めます。
また、介護・福祉、保育、看護などケア分野の処遇改善も内発的発展を促す重要な柱です。県内総生産で、ケア分野では3, 000億円余り12. 8%を占める最大の分野です。ケア分野に女性が多いという側面も踏まえれば、その処遇改善は、男女賃金格差の是正、ジェンダー平等にも資するものです。
一義的には、国の施策の抜本的転換が必要ですが、今回、中山間の介護人材確保への補助が盛り込まれているように、県としても手当ては可能です。また全国的にも保育士の配置、処遇改善に自治体が予算支出をしています。こうした施策がケア分野の重要性に比して十分とは到底言えません。産業振興の面からも、ケア分野の処遇改善は、「安定した雇用」と「地域に住み続けられる前提条件」を生みだし、県民の内発的な活力を引き出します。
地域循環型経済は、域内の調達率を高めるほど、高い効果が生まれ、県外に資本を流出させない効果に留まらず、資本が地域で幾重にも循環することで、結果として県民所得を増大させます。内発的発展を県施策の中核に位置づけ、目標を持ち域内調達率を引き上げることで、県民所得を向上させ人口減を食い止める、希望ある地域循環型経済へのシステムチェンジを政策提言するものです。
また、2点目はデジタル化におけるマイナンバーカードへの偏重です。デジタル化がこれからの社会発展に重要であることには異論ありません。特に、中山間地域への医療提供体制確保などは、重要な取り組みです。しかし、マイナカードの強引な活用は、県民の利益に反するものです。使途が法的に制限されているマインナンバー自体と異なり、マイナカードの使途は法改正の必要なく拡大でき、マイナポータルを通じて膨大な個人情報を紐づけ・集積し、民間も含めた「活用」がなされようとしています。プロファイリングによる格付けや監視社会へ結びつく、極めて危険な動きです。
その国の動きに追随あるいはより先行する形で、公共交通や医療情報共有にマイナカードを使用する県予算が計上されています。先に指摘したマイナカードの本質的危険に加え、任意取得のカードを、行政がデジタル化施策に組み込むことは、全住民に提供されるべき行政サービスの利便性を享受できない県民を生みだし、行政の公平性の観点から重大な問題があります。また、48号議案に関わり、任意のカードを県職員の「身分証」として使用することは、事実上の強制となり、法に照らして問題です。
国の施策に無批判に従うマイナカード偏重の「デジタル化」は許容できません。
3点目は、教育行政についてです。35人学級の前進などこの間の努力は評価しますが、教員の長時間過密労働の中で、教員不足が続く悪循環が続いています。教員を目指す方が、教員になりたいと思える高知県にするため、臨時教員の現場経験を重視するなど採用審査の抜本的改革や学力テストの点数に追われるような現場、教育実習生の(パワハラ)問題にみられた教員の同僚性尊重・「チーム学校」とは真逆の現場の抜本的な改善、指導主事という教壇にたたない教員の全国に比しての異常な多さの是正など抜本対策が必要です。教員が追い詰められるような現場の状況は、その結果として「不登校」や「非行」の増加など、子どもへのしわ寄せがあらわれています。教員不足の解消、教育費負担の軽減を進め、子ども一人一人が尊重される教育行政への転換を強く求めるものです。
全国一の少子化が進んでいるのに、県の子ども医療費助成は、全国最低レベルのままです。社会課題が全国よりも先行して現れており、その解決策を提示することは、日本社会全体の変革につながりうるものです。また、岸田政権が軍事費倍増に邁進する中で、今後、県土への軍事化押しつけの問題が生じることが懸念をされています。県民が安心して住み続けられる高知県政を実現し、県民の暮らしと命、平和を守る役割を果たしていただくことを強く求め、議案第1号および第48号への反対討論といたします。
どうぞ、同僚各位のご賛同をよろしくお願いいたします。
●参考資料
エネルギー関係費試算根拠 電気料金793億円(2015年度、四国電力「有価証券報告書」等から試算)、ガソリン代425億円(総務省統計ダッシュボード、2019年度。1リットル150円で試算)、重油代133億円(経産省エネルギー消費統計2019年度。1リットル80円で試算) 計1351億円