議会報告

  • 2022年12月21日
    2022年12月議会 岡田芳秀議員による「防衛関係費の充実に向けた財源についての意見書」反対討論

●岡田県議 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました、自民・公明両党提出の議発第5号「防衛関係費の充実に向けた財源についての意見書」議案に反対する立場で討論を行います。

岸田政権は16日、「安全保障3文書」、すなわち「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」を閣議決定しました。

本意見書は、この「3文書」の「新たな検討」によって、「防衛力増強のための防衛関係費の充実が既定路線となった」とした上で、財源については「目下の日本の経済状況にも十分な配慮を願いたい」、「景気を冷ます政策を採用すべきではない」と述べ、「厳しい経済環境を脱するまでは、増税に限らない財政捻出を検討し、防衛力の強化と経済回復の両立を目指していくこと」を求めています。

しかし、防衛力の強化は必要だが、その財源は経済状況や景気に配慮してといっても、総額ありきの大軍拡を進める以上、暮らしと経済への打撃は避けられません。

 

この意見書に反対する最大の理由は、この意見書が今回の「安全保障3文書」を「既定路線」であるとの認識に立っていることです。「戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換する」と「国家安全保障戦略」が宣言しているように、「3文書」は、「専守防衛」「平和国家」「軍事大国にならない」といった戦後のわが国の安全保障の基本をすべて投げ捨てるものであり、敵基地攻撃能力の保有などの軍事力強化を国家の最重要目標に引き上げるものです。

安保法制によって集団的自衛権行使の法制面の整備を行ったので、今度は、実践面で、それを担う自衛隊の能力を抜本的に強化し、それを支える国家総動員体制をつくりあげる。これが今回の「3文書」が目指すものです。戦後の日本の国のあり方の根本からの転換を、国民に信を問うことも、国会でのまともな審議もなく強行することは、民主主義を根底から破壊するものです。

意見書は、この「3文書」を既定路線だとしていますが、この前提を認める訳にはいきません。日本共産党は、「安全保障3文書」の閣議決定の撤回を求めます。

 

「安保3文書」の実行は何をもたらすのか。

第一は、憲法と立憲主義を破壊します。「3文書」の新たな踏み込みは「反撃能力」という名で敵基地攻撃能力の保有を進めることにありますが、これが憲法違反であることを批判しなければなりません。歴代政権は、敵基地攻撃能力について「法理的には可能」だが、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、政府答弁)との立場を一貫してとってきました。この政府見解に照らせば、「反撃能力」=敵基地攻撃能力の保有が、憲法違反であることは明瞭です。この憲法解釈を、一片の閣議決定で覆すことは立憲主義の蹂躙にほかなりません。

第二は、平和の破壊です。相手国に脅威を与える大軍拡を進めるならば、相手国の軍事的対応を加速させ、結果として日本を危険にさらすジレンマに陥ることになります。つまり「軍事対軍事」の悪循環に陥ることになります。

さらに重大なのは、集団的自衛権を発動するもとでの敵基地攻撃です。安保法制では、日本が武力攻撃を受けていなくても、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から脅かされる明白な危険」、つまり、「存立危機事態」の際に、武力行使ができるとしています。すなわち、日本が直接の武力攻撃を受けていないもとでも、米軍が始めた戦争を日本の「存立危機事態」と認めれば、相手国領域にトマホークなど長距離ミサイルを撃ち込むというものです。それは日本を全面戦争に巻き込むことになります。これが「3文書」の行き着く先です。

第三は、暮らしと経済の破壊です。

「反撃能力」=敵基地攻撃能力保有のための大軍拡は、大増税と暮らしの予算削減を国民に押しつけ、暮らしと経済を破壊します。政府・自民党による大軍拡の財源論は、すでに示されているものを見ても、庶民増税や暮らしの予算の流用・削減になっています。

今なお多くの人が避難生活を余儀なくされているもとで、復興特別所得税の半分を防衛費に回し、期間を延長しようとしています。

「歳出削減」については、どの予算を削るのか明らかになっていません。すでに年金・医療・介護などで社会保障の連続削減が押し付けられていますが、さらに社会保障の大削減が加速される危険があります。

また、「防衛力強化資金」の名で、医療機関の積立金やコロナ対策の「未使用分」など、医療や暮らしに充てるべき予算が流用されようとしています。

さらに、「防衛費に国債は使えない」というこれまでの政府見解を反故にし、歴史の反省を踏まえて国債発行を原則禁止した財政法を踏みにじって、国債の増発を進めることも懸念されます。

しかも、増税以外の「財政確保策」が予定通り進む保証はまったくありません。「防衛力強化資金」は、どれもいわゆる「埋蔵金」にすぎず、一度使えば枯渇してしまいます。「決算剰余金」は、これまで多くが経済対策の補正予算の財源にされてきたものです。増税が1兆円程度でとどまる保証はどこにもなく、数兆円規模に膨れ上がる危険があります。

さらに、大軍拡は2027年で終わりではありません。「3文書」は10年後まで防衛力を強化するとしています。この道を進めば、消費税増税を含む大増税、暮らしの予算の大削減に落ち込んでしまうことが懸念されます。

 

戦争の心配のないアジアをつくるための憲法9条を生かした平和の外交戦略こそ必要です。あれこれの国を排除するブロック的な対応では、平和はつくれません。地域の分断を深刻化させ軍事的緊張を高めるだけです。地域のすべての国を包摂する平和の枠組みをつくり、強化することことによってこそ、東アジアに平和を創り出すことができます。

 

共同通信社の直近の世論調査によると、2023年度から5年間の防衛費を現在の1.5倍の約43兆円に増額する岸田首相の方針に賛成が39.0%、反対は53.6%でした。多くの国民が政府の方針に反対を表明しています。特に若年層(30代以下)で「支持しない」が7割を超えています。「子育て予算を2倍にする」と言いながら、その道筋をまったく示さない一方で、増税が突出するやり方に対して、若い世代が怒りを持っていることの結果です。

日本共産党は、大軍拡とそのための財源づくりに反対する立場から、本意見書に反対を表明するものです。皆さんにご賛同を呼びかけ、私の反対討論といたします。