議会報告

【質問項目】

・新型コロナウイルス感染症対策

・コロナ禍での学生支援

・森林作業道

・土佐市メガソーラー

・特別支援教育

 

●塚地県議 私は、日本共産党の立場から、以下質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 

【新型コロナウイルス感染症対策】

●塚地県議 まず、新型コロナウイルス感染症対策について伺います。

第8波が、現実味を帯び、特に年明けにピークを迎えるのではないかとの予測が報じられています。

今後、インフルエンザの同時流行が懸念され、再び発熱外来の逼迫などが想定されるとして県は、感染に備えた抗原検査キットや薬などの備蓄をとホームページのトップで県民に呼びかけています。

そのページでは、まず、「発熱や咳などの症状が出た場合にご自身で確認ができるよう、医薬品として承認された抗原検査キットでの検査」を求めた上で、「陰性確認後、発熱外来以外の医療機関で受診ができる」としていますが、この記載は「検査キットで陰性確認を行わなければ発熱外来以外の医療機関が受診できない」とも解釈できます。

そもそも、発熱など症状があれば医療機関で診察を受け、早期発見早期治療が行えるという国民皆保険の制度の根本が、コロナ感染爆発でなし崩しになっていることは重大問題だと思います。

検査キットや医薬品も備蓄をしておくようにとの要請に至っては、医療保険の被保険者の権利を侵害するものと言っても過言ではありません。

◆医療的ケアに不可欠な物品や薬は、本来公的保険で診療投薬すべきではないのか、知事の認識を伺います。

 

〇県知事 塚地議員の御質問にお答えをいたします。

まず、新型コロナウイルス感染症対策に関連いたしまして、医療的ケアに不可欠な物品・薬は、本来公的保険で診療投薬すべきではないのか、というお尋ねがございました。

この夏の第7波におきましては、全国的に感染者が急増したことによりまして、発熱外来がひっ迫し、受診が困難な状況となりました。このため、国におきましては、重症化リスクの低い方が自分で感染の有無を判断できますように、一部の検査キットを薬局等で購入できます一般用検査薬として承認をいたしたところであります。

この検査キットで陽性が判明した方のうち軽症の方は、軽度の発熱がござましても、薬局で購入できる解熱薬を服用すれば、医療機関を受診しなくても、自宅での療養が可能となるというそういった環境が整ったわけでございます。

このような方が相対的に増えてまいりますと、医療機関の発熱外来の混雑を防止するという効果が期待できるわけでありまして、高齢者などの重症化リスクの高い方が発熱した場合に速やかに医療機関を受診し、早期に薬物治療につなげると、こういった環境が整うというそうした効果も期待できるわけでございます。

本県におきましても、感染拡大期におきましては発熱外来が混み合いまして、早期の治療 が望まれる重症化リスクの高い方の受診が遅れることを避けるということが重要になると考えております。

そのため、特に重症化リスクが低い若い方々には、本来、お話にございましたように公的保険の対象となり得るものではございますけれども、あらかじめ、自費での検査キットの備 蓄を推奨させていただいているという、そういうものであります。

なお、若い方々でありましても、症状が重い場合にはためらわずに医療機関を受診していただくようにお願いをいたしているところであります。

 

●塚地県議 さらに、県のホームページでは、「備蓄している抗原検査キットで陽性となった場合は、次の通り対応をお願いする」として、65歳以上、12歳以下、妊婦、基礎疾患がある、症状が強く医療機関の受診を希望する方等は、検査協力医療機関を受診してくださいと書かれており、検査キットでの自己検査が前提と読めます。

一方、11月17日の対策本部会議で示された対策では、「65歳以上、12歳以下、妊婦、基礎疾患がある、などリスクの高い方」については「検査キットの自己検査」を経ずに速やかに受診できる、対する65歳以下などの方は「発熱した場合、検査キットで陰性が証明されれば、インフルエンザの可能性があるとして、受診できる」と読み取れる記述となっています。

◆県はかねてより、65歳以上や子ども、妊婦、基礎疾患のある方は抗原検査を必要とせず発熱外来を受診できると説明されていたと認識しており、ホームページの記載内容については担当課に指摘もさせていただいているところですが、県としてどのような基本方針なのか、今一度健康政策部長にお伺いをいたします。

 

○健康政策部長 高齢者など重症化リスクの高い方の発熱外来受診の考え方について、お尋ねがございました。

高齢者や基礎疾患のある方々など重症化リスクの高い方に、発熱等の症状がある場合、自己検査の必要はなく速やかに医療機関を受診していただく必要があります。

従前の県のホームページでは、こうした重症化リスクの高い方にも自己検査を求める、との誤解を与え兼ねないものとなっていましたため、議員のご指摘を受けて表現・構成を見直したところであります。

引き続き、正確でわかりやすい広報啓発に努めてまいります。

 

●塚地県議 第7波の際は、抗原検査キットの配布事業がありましたが、今回は購入が求められ、2000円前後で販売されています。

今回の方針を受け、ある母子家庭の方から「1個2000円もする検査キットを家族分買うとなると、一週間分の食費がなくなる。物価高でこれ以上生活費を削ることもできないのに、食品の備蓄なんてできるはずがない」との訴えや障害がある子どもさんとご自身も糖尿病などの基礎疾患がある中でも働きながら生活保護を受けている方も、「検査キットの購入費は、私たちにとっては高額な買い物です。診察を受け投薬してもらえれば医療保護の対象になるが、薬屋で購入するのは保護費から出ないので、手が出せない」との声が寄せられています。発熱しても自ら購入した検査キットでの検査結果がなければ、受診できないというシステムは経済的弱者を医療から排除する非道なシステムではないでしょうか。

◆これまで通り、希望する方に抗原検査キットを郵送する方法を講じるべきと考えますし、少なくとも、生活保護受給者をはじめとする経済的に厳しい方々に対する検査キットの購入費については具体的な措置を講じるべきだと考えますが、知事にお伺いをいたします。

 

〇県知事 次に、検査キットについて希望する方や生活保護受給者をはじめとする経済的に厳しい方々への措置を講ずるべきではないか、とのお尋ねがございました。

第7波におきましては、全国的に感染が急拡大したということがありまして、検査キットの供給が追いつかずに、入手が困難な状況となっていたという状況がございました。こうしたことから、国から配布された検査キットを県から無料で配布をするという特例的な扱いを行ったわけでございます。

その後、流通状況が改善されまして、検査キットが入手しやすい状況となりましたために、この無料配布は休止をいたしております。ただ、今後、発熱外来や流通状況が、再びひっ迫し、自ら検査キットを入手して検査することが客観的に難しいとそういった状況になった場合には、速やかにこの無料配布の事業を再開いたしたいというふうに考えております。

また、今回の呼びかけは、経済的な理由などで検査キットの購入が困難な方々が、発熱等の症状が出られた場合にまで、自己検査を求めるといった主旨ではございませんので、このような場合には、速やかに医療機関で受診していただくようにお願いをいたしたいというふうに考えております。

 

●塚地県議 県は、新型コロナ対応ステージを「警戒強化」に引き上げました。会食は「可能な範囲で規模縮小・時間短縮」、また、高齢者等の「重症化リスクの高い方は感染リスクが高い場所への外出は控える」などの対応を県民に求めています。第8波の拡大期が、年末・年始の書き入れ時と重なり、県からの求めにも伴って、小売店・飲食業など小規模事業者・個人事業者への悪影響が危惧されます。

 新事業チャレンジ支援事業費補助金は、設備投資が必要でその下限が50万円であり、小規模な事業者には活用のハードルが高いと言えます。新事業への挑戦支援はもちろん重要ですが、同時に地域経済を支える小規模事業所・個人事業者の事業継続も、本県の産業振興にとって死活問題です。中根議員の代表質問でも示した通り徳島県、また北海道なども独自の支援金を設けています。

◆年末にかけ倒産・廃業が懸念をされる小規模事業者、個人事業者への支援の必要性をどう考えておられるか。また、その事業継続を図るために、原材料費や光熱費などの上昇、また売上減少を補填する支援金等を検討するとともに、国へも要望すべきと考えますが、商工労働部長にお伺いをいたします。

 

○商工労働部長 小規模事業者、個人事業者の事業継続への支援について、お尋ねがございました。

まず、小規模零細、個人事業者の資金繰り支援につきましては、特別小口融資の償還期間の延長や伴走支援型特別保証融資の融資枠の増額などにより、これまでにも対応を行って きているところです。年末にかけましては信用保証協会や金融機関などと連携し、金融相談窓口を設置し対応していきたいと考えております。

次に、支援金について申し上げますと、現在の経済状況は、回復に向けた動きの中でエネルギー、物価高騰に見舞われており、その長期化も予想される状況にあります。

こうした状況下においては、先々の事業の継続につなげていくために、できるだけ早く、力強く構造転換を促していくことが必要と考えます。

仮に、お尋ねのありました支援金を創設すると、10億円を超える予算が必要となり、その場合には財源に限りがありますことから、他の必要な対策ができないこととなります。 このため、現段階で県として支援金制度を創設することは考えておりません。

また、国に対しましては、これまでの政策提言により、この度の総合経済対策にエネルギー高騰対策などが盛り込まれたところでございます。

まずは、今後の経済状況を注視し、その上で必要があれば、さらなる対策について政策提言を行ってまいります。

 

【コロナ禍での学生支援】

●塚地県議 次に、コロナ禍における、学生支援についてお聞きいたします。

 第7波では、学生の感染も多く、特に県外で一人暮らしをしているなど頼る所がない大学生が、民間のボランティアに医薬品や食料の配送など支援を求める状況が生まれました。これを教訓に、第8波では、学生に対し公的な支援が届くようにする必要があります。

 

 まず、1点目は、学生が、発熱した際の検査・医療アクセスの問題です。

 先ほど述べたように、発熱した際に、抗原検査キットや、1週間分の食料、医薬品などの備蓄が求められています。物価高騰も受けて、学生向け食料配布で食料を受け取る学生も再び増加傾向にあると聞いています。このような状況の中で、全ての学生が抗原検査キット、食料、医薬品等を備蓄できるとは思えません。

 また、基礎疾患等のない若年層は、症状の強い場合に限って、医療機関を受診することとなっています。必要な医療にかかれない学生が生じることが強く懸念され、急激な状態悪化など不測の事態が起こりかねません。

 取り残される学生を生みださないため、日常的に学生と接し、住所・連絡先等も把握し、相談窓口等も開設している所属大学等において、支援できるスキームが必要なのではないかと考えます。具体的には、大学等による学生への抗原検査キットの配布や、大学内の保健管理センター等を活用し学生に医薬品を処方するなど学生が医療的ケアにアクセスできる体制整備が必要です。

◆大学が学生用に抗原検査キットを確保するための財政支援を行う考えはないか。また、学生への医療的ケアを含めた大学内の支援体制を構築していただくよう個別具体的に協力を要請する考えはないか、文化生活スポーツ部長にお聞きをいたします。

 

○文化生活スポーツ部長 まず、大学が抗原検査キットを確保するための財政支援と、大学における医療的ケアを含めた学生への支援体制の構築の要請について、お尋ねがございました。

大学による検査キットの確保につきましては、高知県立大学及び高知工科大学では、これまでも数回にわたって、一定数の抗原検査キット又はPCR検査キットが備蓄されてきておりますため、県として、新たな財政支援を行うことは、考えておりません。

また、医療的ケアを含めた学生への支援につきましても、既に、両大学ともに、学内に設置されている健康管理センターの保健師、看護師が中心となって、対応がなされておりま す。

具体的には、発熱などの症状を自覚した学生から相談を受けた際には、その状況を丁寧に聞き取った上で、必要に応じて、医療機関との受診調整や、一人暮らしの学生については、 医療機関や宿泊療養施設への送迎を行うなど、手厚い支援が行われてきております。

県といたしましては、今後も各大学において、学生へのきめ細かな支援を行っていただきたいと考えております。

 

●塚地県議 2点目は、日常的な食料支援の問題です。コロナ禍に、物価高騰が重なったことで、学生の生活状況の悪化が続いています。

 私たち日本共産党県議団は、11月に政府要望を行い、文科省とコロナ禍の学生支援について交渉してきました。文科省からは、大学に対し「経済的に困難が学生等に対するきめ細やかな支援について(依頼)」などの事務連絡も行い、学生支援を要請しているとの回答がありました。

また、日本学生支援機構が、学生支援寄付金を活用し、「新型コロナウイルス感染症対策助成事業(食に関する支援)」を創設。大学等が、学生に食費等の費用を支援する取り組みに対し経費の1/2を助成するため16億円を予算化しているが、約4000校の対象に対し、306校、約2億円の活用(2021年度決算)にとどまっているとの回答もありました。

◆県内大学等において、この助成事業を活用した事例があれば、その学校と支援内容について文化生活スポーツ部長にお聞きします。併せて、活用していない学校については、その理由についてもお聞きします。

 

○文化生活スポーツ部長 次に、県内の大学などにおける日本学生支援機構の助成事業の活用事例と、活用していない学校の理由について、お尋ねがございました。

本年度、県内の大学などで、この事業を活用した学校は、高知大学と高知医療学院の2校であります。

いずれも食費への支援に活用されており、高知大学では、新入生全員に、大学生協の利用券3千円を配布し、高知医療学院では、在学生全員に、5千円の助成を行ったとお伺いしております。

他方、この事業を活用していない高知県立大学及び高知工科大学におきましては、後援会や同窓会からの支援や、県内の企業からの寄附をいただいており、学生数などに関わらず、一律に補助率が2分の1、上限額が1大学100万円とされている当該事業を活用するには至っていないと聞いております。

 

●塚地県議 ◆この助成事業の来年度の継続を要望するとともに、活用を促すために県内大学等に強く要請する考えはないか、文化生活スポーツ部長にお聞きいたします。

 

○文化生活スポーツ部長 最後に、日本学生支援機構への当該事業の継続の要望と、県内の大学などに対する事業活用の要請について、お尋ねがございました。

この助成事業につきましては、本県の大学などだけでなく全国的に見ても、十分な活用はなされていないものと承知しております。その要因としましては、補助率や上限額の設定 などの点で、各大学などにとって使い勝手が良い制度とはなっていないことが、そのひとつではないかと受け止めております。

このため、県といたしましては、日本学生支援機構に対し、事業の継続と併せまして、各大学などが活用しやすくなるよう、学生数や事業内容などに応じて、補助率や上限額などを 見直していただくことにつきましても、要望してまいりたいと考えております。

その上で、高知県立大学及び高知工科大学に対しましては、この事業の活用も含め、経済的に困難な状況にある学生に、引き続き、きめ細かく支援を行うよう要請してまいります。

 

【森林作業道】

●塚地県議 次に、森林作業道について、伺います。

高知県の発展は中山間地域の発展にかかっており、その主たる産業は県土の84%をしめる森林林業の振興です。県も産業振興計画に位置づけ、原木の増産体制等に取り組んでいます。

 原木生産を加速させる上で、林道・作業道の開設は必要な施策です。しかし、昨年12月議会で我が党の米田実県議が指摘したとおり、皆伐後の山地崩落や林道・作業道を起点とする土砂災害も引き起こされています。

 先日、いの町の山間地の方から、急傾斜地崩壊危険区域の裏山に作られた作業道から複数の崖崩れが生じていることに対する、今後の対応についてのご要望が寄せられ、私も現地を確認させていただきました。この問題は、この場所に止まらず、今後の林業振興、住民の安全を守る上で問題点を整理し、今後に生かす必要を痛感して以下、質問をさせていただきます。

 

今回問題となっているのは、いの町上八川地区で、中央構造線の南側に位置し、地滑りや土砂災害が多いことでも知られている三波川変成帯に属した急傾斜地崩壊危険区域周辺地域での森林作業道の工事です。

この地域では、平成24年から26年にかけて整備した柿の平線という支線で土砂災害が発生し、土砂が谷を下り、国道194号線からその下の仁淀川の支流まで大きな岩や土砂が到達した。また、平成29年度に整備した作業道の支線4号沿いで間伐していた木材が山肌を滑り国道194号線の山側に設置されている土砂災害防止用の金網を突き破り国道を飛び越し川にまで到達するという災害が生じたとお聞きしています。

 そして、昨年8月に森林作業道本郷馬路(ほんごうばろう)本線から支線である本郷馬路本線迂廻路にかけて人家の真上で土砂災害が発生しました。幸い、崩れた土砂は下の迂廻路で止まりましたが、二次災害で、下の人家を直撃する極めて危険な状態にあり、県も現地の調査を行い、この11月にいの町や事業者の事業で、災害復旧工事が完了いたしました。

 土砂災害を誘発した、この迂廻路は、平成29年度に延長251m、幅員3m、総事業費122万円、県の造林事業費補助金、森の工場活性化対策事業費補助金、いの町のもりづくり交付金事業補助金の3つ合わせて114万円余り、補助率93.3%と極めて高い高率の補助金で事業が行われています。この葛川地区は、「葛川地区急傾斜地崩壊危険区域」に指定されていますが、森林作業道迂廻路の一部がこの区域に入っていないか住民の方が確認している中で、急傾斜地崩壊危険区域を定めた標柱が撤去、放置されているのを発見し、中央西土木事務所職員に報告し確認を求めました。

◆急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律では、区域内で切土等を行う場合、知事の許可を得ることが定められていますが、この箇所は許可を受けておらず、7月25日に違法な工事が行われたことを中央西土木事務所の職員と確認したと聞いていますが、それは事実か、土木部長にお伺いいたします。事実とすれば、急傾斜地崩壊危険区域の中でどのような法律違反を犯しているのか。また、その行為に対し今後どのように監督責任を果たしていこうとされているか、土木部長にお聞きします。

 

○土木部長 急傾斜地崩壊危険区域内で、知事の許可を受けずに違法な工事が行われた事実があるのか、また、事実である場合の、法律違反の内容と県の監督責任について、お尋ねがございました。

ご指摘の葛川急傾斜地崩壊危険区域内におきまして、森林作業道の整備による切土等の行為が、知事の許可を受けずに行われていたことを、中央西土木事務所が本年7月25日に確認しており、違法な工事が行われていたことは事実であります。

「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」第7条では、区域内で切土や盛土等の行為を行う場合は、知事の許可を受けるよう定めており、本工事はこれに違反しておりま す。県では、工事を行った事業者に対して、まず、区域内での制限行為を行う際には、知事の許可が必要であることを 8月に口頭で指導したところでございます。

引き続き、現地の状況を確認し、斜面の崩壊を助長・誘発する可能性があると認められる場合には、同法第8条に基づき、必要な対策を実施するよう、適切に指導を行ってまいります。

 

●塚地県議 県の作業道作設指針では、切土高は、局所的に超えることがあっても1.5m程度以内とすることが望ましく、なおかつ高い切土が連続しないように注意すると定めています。独立行政法人森林総合研究所が2012年に出した森林作業道開設の手引きによると、「切土法面の崩壊箇所を調査した結果、崩壊の8割以上が切土高が1.5m以上で起こっています。また、地山傾斜が30度を超えると崩壊が多くみられるようになります。」と記述しています。

◆この迂廻路の標柱が立っていた地点と迂廻路全体で最も高い地点の切土高はいくらで、それは局所的か、連続しているのか。また、災害が起きた本線の路肩から下の人家若しくは国道までの傾斜は何度あるのか。林業振興・環境部長にお伺いいたします。

 

○林業振興・環境部長 まず、急傾斜地崩壊危険区域の標柱が設置されていた地点および森林作業道迂回路全体で最も高い地点の切土高と、その連続性について、また、災害が起きた本線の路肩から下の人家または国道までの傾斜角度について、お尋ねがございました。

県の森林作業造作設指針は、国の指針に従い局所的な場合を除き、切士の高さは1. 5メートル程度以内が望ましく、かつ、高い切土が連続しないよう配慮が必要としています。

標柱が設置されていた地点の切土高は6. 7メートル、最も高い地点は9. 5メートルでございます。また、切土はほぼ1.5メートルを超え連続しています。

本線の路肩から最も近い人家までの平均傾斜は約40度、 国道までの平均傾斜は約2 9度で、いわゆる急傾斜となっています。

指針に基づく切土の高さに配慮する必要がありますが、地形が複雑で急傾斜の森林が多い本県では、切土が高くなる傾向にあります。その場合でも、国の指針に基づき定めた地質や土質等の条件に応じた切土の標準勾配は守るように指導をしてきています。

今回の森林作業道につきましては、部分的な高い切土や連続した切土となっておりますが、切土の標準勾配は適合していると確認しております。

 

●塚地県議 住民の方からは、この迂廻路を工事するにあたり事業者が本来必要な手続きが成されていないとの指摘もあります。

標柱を設置している土地の所有者は道を抜くことに反対しており、全ての地権者の同意を得ていない。また、標柱のあった土地の地目は畑のままで、農地法の手続きをとるか地目を山林に変更してからでないと本来は工事に入ることはできませんが、手続きがとられていないとのことです。

森林作業道の整備について、平成28年12月議会で石井県議の質問に対し当時の林業振興・環境部長は「森林作業道作設指針等に基づいた壊れにくい道づくりを進め、開設後は管理台帳を作成して適切な維持管理を行うよう指針等に基づいた指導を行っている」と答弁されています。しかし、この現場においてそうした指導が行われていたなら、こうした事態にはなっていなかったのではないか、と言わざるを得ません。

この間住民の方が情報を集める中で補助金申請資料も平面地図に路線図を引いただけで傾斜なども不明なきわめて簡易な物であったこと。作業道完了後も、補助金額が適切かとの確認はされたが、指針が遵守されているかなどの確認はされていないことが明らかになったとのことです。

◆作業道作設事業者からの補助金申請書提出時点で、その箇所が指針に基づき妥当なのか、完了後指針が遵守されているのかのチェックや指導は県、市町村のどちらが行うのかなど、部長が答弁された「指導」とは、具体的に、どのような体制でどのような手順に沿って実施をされているのでしょうか。林業振興・環境部長に伺います。

 

○林業振興・環境部長 次に、森林作業道作設指針に照らした工事箇所の妥当性や、工事完了後の同指針の遵守について、チェックや指導を行う際の体制と手順について、お尋ねがございました。

まず、補助金を受けようとする森林作業道について、森林作業道作設指針に適合するかどうかのチェックや指導につきましては、交付を行う県や市町村がそれぞれの補助金交付要 綱等に基づいて行うことになります。

県の手続きにおいては、事業者は工事に先立って、実施予定箇所及び概算事業量等を記載した事前計画書を所轄の林業事務所に提出することとしています。林業事務所は、内容や計画性等を確認し、事業規模や線形、開設量などが適切であるかなどの必要な指導を行うこととしています。

森林作業道の補助金交付申請は、事業終了後、速やかに行うことと定めています。

その際、所轄の林業事務所の検査員が、関係書類や現地において森林作業連作設指針の適合確認等を行い、不適合の場合には手直しの指導又は不合格である旨を通知することとし ています。

 

●塚地県議 森林作業道作設指針は、適切な森林保全と管理のため、作業道を作設する上で考慮すべき最低限の事項を目安として示したものであり、きちんと事業者に考慮させなければ意味を持ちません。指針を守るべき責任は当然事業者の方にありますが、守らせる責任は行政にあります。今回の問題が生じた原因には、造林事業費補助金、森の工場活性化対策事業費補助金が事業完了後に補助金の交付申請を行うという異例の措置となっている点もあげられます。

◆今回の違法行為を含めた問題を受け、何を教訓とし、今後、チェック体制の強化など、どう改善を図るお考えか、林業振興・環境部長に伺います。

 

○林業振興・環境部長 次に、今回の違法行為を含めた問題を受け、何を教訓と、どう改善を図るのか、とのお尋ねがございました。

今回、葛川急傾斜地崩壊危険区域内において森林作業道の整備をしたことにつきましては、事後申請方式という事業の特殊性から、事前確認が十分できていなかったことに起因したものと捉えています。

こうしたことを防ぐには、事業実施前に法的制限や必要な許可等の有無をしっかりと確認することが重要と考え、事業者から提出される事前計画書にチェックシートを追加することとしまして、本年4月から運用を開始しております。

併せて、県の森林作業道作設指針についても、必要となる方針を加えながら、しっかりと周知していくことが必要だと考えています。

そのため、近年の局所的な豪雨による災害発生の状況を踏まえた国の指針に基づき、開設を避ける場所や配慮すべき工法、傾斜に応じた作業システムなどを指針に追記し、周知を 図ってきたところでございます。

今後は、こうした取組の実効性を高めながら、林業振興と地域の皆様の不安解消の両立に努めてまいります。

 

●塚地県議 本県のような急峻な地形での木材搬出に最も適しているのは、かつて各地で行われていた架線集材での作業システムであり、県も土砂の流出または隣地の崩壊の恐れのある場合は作業道によらず架線集材を検討するとしています。

◆有資格者の減少、コスト高の問題もありますが、災害復旧にかかる経費を鑑みて、県としても対策を講じるべきと思いますが、この項は、知事に伺います。 

 

〇県知事 最後に、森林の作業道につきまして、急峻な地形での木材の搬出におきまして、作業道によらない対策を講じるべきでないか、といったお尋ねがございました。

本県におきましては、約6割の森林が傾斜3 0度以上の急傾斜地に分布をしているところであります。

こうしたことから、本県では、架線による集材が他県に比べて発達してまいりました。ワイヤーを使って作業道でない方法で、集材をするということでございます。

しかし、最近では、操作する技術者が減少いたしましたり、作業道の開設技術が進展してきたということがございまして、こうした架線集材の方法の活用機会が減少してきているというのが実態でございます。

一方で、議員ご指摘のとおりでございますが、急傾斜地における作業ルートの設定は、安全面、あるいは経済面などから慎重な検討が必要でありまして、その意味で、架線集材ということも有力な選択肢であるというふうに考えているところであります。

このために、架線集材に係ります人材の育成、あるいは新たな技術の導入等についてもあわせて進めて行く必要があるという認識でおりまして、そうした取組を県としても進めてまいっております。

この人材育成につきましては、県立林業大学校におきまして、架線シミュレーターを活用しながら架線集材に必要な資格を取得させるといった取組を進めております。

また、新たな技術の導入につきましては、近年開発されました無線操作が可能な集材機などの安全性・生産性の実証を行っておりまして、こうした成果の普及に取り組んでいるところであります。

加えまして、現在、整備中の森林クラウドは、架線集材のシミ ュレーションにも活用できます。こうしたことから、地形条件に応じた作業システムを事前に確認することが可能となるというメリットがあると考えております。

こうした架線集材の活用に係る取組も着実に進めていくということによりまして、急傾斜の森林を多く抱えます本県林業の課題解決を図ってまいりたいと考えております。私からは以上であります。

 

【土佐市メガソーラー】

●塚地県議 次に土佐市宇佐のメガソーラー開発計画について伺います。 

  土佐市宇佐地区の太陽光発電事業計画の立地場所が、高知県が定める「太陽光発電施設設置・運営ガイドライン」で「設置を避けるべきエリア」とされている「崩壊土砂流出危険地区」に、大半が含まれていることがこの間、明らかになりました。宇佐自然を守る会の皆さんの調査と、高知民報社の報道によって県民に知られることとなりました。

  問題の重大性は、計画を実施するための森林伐採等の許可について県が判断するために開催した、高知県森林審議会森林保全部会では、この情報が委員に提供、明らかにされていないまま林地開発の許可を認めてしまっており、このまま推し進めることは決して認められるものではありません。

  同部会が開かれたのは、2020年(令和2年)8月3日で、それを受け、県は8月27日に開発許可を決定しています。議事録は公開されていますが、配布された審議資料を含めて事務局が計画の内容を説明しガイドラインについても言及はしているものの、計画地が崩壊土砂流出危険地区であることに一切触れないまま審議を進めています。委員からは、過去2014年に、災害が発生し下流域の住民に避難指示が出された経緯も踏まえ、大規模開発への懸念が繰り返し示されました。しかし事務局の県は、過去の災害については、審査されていない中でずさんな工事が行われていた等述べる一方、今回の開発については「計算上安定すると判断している」等を説明し、許可は適当、と押し切っています。

◆これについて先日県は、崩壊土砂流出危険地区に該当するエリアであることを情報提供していなかったことを認めていますが、なぜ部会においてそのような重大な内容を、委員に提供、報告しなかったのか、経過と明快な見解を林業振興・環境部長に求めます。

 

○林業振興・環境部長 次に、太陽光発電の事業計画における立地場所が崩壊土砂流出危険地区に該当することを、森林審議会森林保全部会において報告しなかった経過と見解についてお尋ねがございました。

「崩壊土砂流出危険地区」を含む山地災害危険地区は、治山事業実施箇所の選定や優先度の判断のための目安となるものとして、また、市町村等における警戒避難体制の整備のた めの基礎情報として活用しています。

太陽光発電の設置・運営に関するガイドラインでは、「崩壊土砂流出危険地区」等については、「設置を避けるべきエリア」となっていますが、森林法に基づく保安林や、土壌汚染対策法に基づく要措置区域等、法で設置が認められていないものと違って、設置は可能となっています。その上で設置する場合は、植生マットの使用や沈砂池の設置、切土のり面への擁壁の設置、調整池等の貯留施設の優先設置等、防災面での対策を行うよう求めています。

また、開発事業が完了した後は、防災面での対策が施され、森林でなくなることから、 「崩壊土砂流出危険地区」から外れるといったことになります。

一方で、林地開発許可制度は、森林の持つ「災害の防止」、「水害の防止」、「水の確保」、「環境の保全」という4つの機能が損なわれることがないよう、技術的に詳細な許可基準を定め審査するものです。

事業計画区域内に「崩壊土砂流出危険地区」が含まれることについて認識はしていましたが、森林審議会森林保全部会は、林地開発許可制度に基づき、許可基準に従って県が審査した事項を審議いただく場であることから、報告していなかったものでございます。

しかしながら、森林審議会森林保全部会において、ガイドラインの情報提供をしておりますことから、あわせて、計画区域内に、「崩壊土砂流出危険地区」が含まれるという情報についても提供すべきであったというふうに考えております。

 

●塚地県議 法的拘束力がないとはいえ、県自らが「設置を避けるべき」と定めているエリアに該当する重要な情報が、委員に共有されていれば、審議の結果が変わった可能性は否定できません。しかも、今年7月の台風4号の雨により開発申請地のすぐ西側にある塚地坂トンネルの南口から約100メートル西の山側で巨岩の落下や、約100立法メートルの土砂崩壊が起こっています。このエリアは、開発申請地と一帯に崩壊土砂流出危険地区に判定されているところです。開発申請地内でも作業道の斜面が数か所崩れたと説明していました。まさに林野庁の要領に基づき県が判定をした「崩壊土砂流出危険地区」の危険性を事実で示しているといえるのではないでしょうか。

◆許可の正当性に重大な疑義が生じていることから、一部始まっている現場の工事を緊急に差し止め、許可内容を早急に再審査すべきと考えますが、林業振興・環境部長のお考えを伺います。

 

○林業振興・環境部長 次に、工事を差し止め、許可内容を再審査する必要性について、お尋ねがございました。

林地開発許可制度においては、先ほど申しましたとおり4つの機能が損なわれることがないよう、技術的な視点から審査するものです。当該地につきましても、森林審議会森林保全部会では「災害の防止」等に関する林地開発で審査すべき事項について、図面等を確認して頂きながら説明をいたしました。

特にこの案件は、森林審議会森林保全部会で意見を聞く基準であります開発面積1 0ヘクタールには満たなかったものの、極めて近い面積であること、平均傾斜34度の急斜面であること、過去に他事業者の開発行為に起因する土砂災害が発生したことを踏まえ、慎重に慎重を期して諮問したものであることを森林審議会森林保全部会の場で説明しました。

また、事業者からは、事業計画区域内に「崩壊土砂流出危険地区」が含まれることを踏まえて、災害の原因となる可能性のある表層土の除去、浸食防止と表面水の分散、流速の軽減を目的とした植生シートの施工など、対策を実施した上で太陽光パネルを設置する計画が 提出されました。

森林審議会森林保全部会においては、こうした計画であることを説明し、技術的、専門的な見地から様々なご意見をいただきました。その上で、洪水調整池など防災施設の先行設置を許可条件に加え、県として許可の判断を行ったものです。このため、森林審議会森林保全部会での議論は適正に行われており、再審査を行うことは考えておりません。

 

●塚地県議 開発計画地には、過去に避難指示まで出た災害場所も含まれています。

  だからこそ、委員からは、県内でも例がないといわれる急傾斜地における開発でもあり、傾斜は急で大丈夫かと懸念する意見が相次いでいましたが、これに対して県は、表層土は薄く、硬い岩が出てくることから、「傾斜は急だが、浸食されても崩れることはない」との説明に終始しています。開発許可ありきの対応と受け取られる説明です。しかし、開発地は県が「崩壊土砂流出危険地区」と判定し、県が策定した「太陽光発電施設の設置・運営等に関するガイドライン」は、その「崩壊土砂流出危険地区」を「設置を避けるエリア」と明確に位置づけ、“用地の選定にあたって十分考慮し検討してください”と述べているのです。「県が自分で決めたガイドラインで設置を避けるべきとなっている場所であれば、許可しない方向で動くのが通常だ。そうでなければ、何のためのガイドラインなのかということになってしまう」との県林業振興・環境部元幹部のコメントを先の高知民報が紹介をしています。これがガイドラインの趣旨に沿った基本姿勢であるべきです。

現に開発計画地内での土砂崩壊、同じ危険地区に指定されている西側の山の崩壊などが実際に起こっていることや、また県内で例のない急傾斜での太陽光発電設置、過去の災害の不安定な盛土の残地存在などのリスクがあり、それらに対し、安全を確保できる技術、保証があるとは言えないのではないでしょうか。

◆開発許可に関する審査、指導に当たっては、ガイドラインに記載された用地の選定に係る制約を踏まえた上でどのような検討がなされて許可という結論に至ったのか、具体的な検討経過について林業振興・環境部長に伺います。また、県は責任をもって、災害や水害などを発生させるおそれがない、と判断できるのでしょうか。林業振興・環境部長に伺います。

 

○林業振興・環境部長 次に、開発許可に関する審査、指導にあたっての、具体的な検討経過と、県は責任を持って、災害や水害が発生する恐れがないと判断できるのか、とのお尋ねがございました。

県では、太陽光発電事業者等から事業実施に向けて相談があった場合には、先ほどご説明しましたガイドラインの主旨を踏まえて概要説明を行うこととしています。

本件につきましては、事業者から当ガイドラインに関し事前に相談があったことから、ガイドラインの概要について説明をしています。

その際、県は事業計画区域内に「崩壊土砂流出危険地区」 が含まれていることを認識し、事業者にその旨を伝えたものの、事業者は、事業地の変更はしないとの考えを示しました。

その後、事業者からは、先ほどご説明しましたとおり、太陽光設置場所の全面に植生シートを設置することや、沈砂池の設置等、切土のり面への擁壁も含めて、ガイドラインの趣旨を踏まえた計画が提出されました。

また、過去の災害により不安定土砂が堆積している区域では、洪水調整池等の設置に伴い不安定土砂が除去されることや、調整池の管理道の設置による土砂の締固めなどにより、 災害等のリスクを軽減する計画となっています。

当該開発地は、林地開発許可制度の基準を満たす計画であると認めて許可しており、必要な防災対策ができていると判断をしております。

                                                  

●塚地県議 さらに、今月6日付高知新聞に報道されましたが、この開発事業者が林地開発許可条件に違反して、残置森林を伐採した問題に関してお伺いいたします。

  現地の土佐市は、事業者の行為が県の許可条件順守などを求める誓約書に明確に違反しているとして、再発防止策を講じるよう指導したと報道されています。県は、事業者から間違って計画外の森林約1235平方メートルを伐採してしまったと報告を受けた、としています。

◆県は、今回の違反行為にどう対応してきたのか、事業者はまちがって伐採したと言いますが、山林といえども1235平方メートルもの伐採はとても考えられません。林業振興・環境部長に経過を含めて見解をお聞きします。

 

○林業振興・環境部長 次に、開発事業者の許可条件違反に関し、どのように県が対応したのか、また経過を含めた見解について、お尋ねがございました。

令和4年9月12日に開発事業者が来庁し、台風による倒木を処理する際に誤って残置すべき森林を伐採したとの報告がありました。

このため、同日、現地調査を行った結果、「開発行為は、申請書及び添付図書の内容に従って行うこと」 、「開発行為の計画を変更するときは、許可の変更申請等を行うこと」の二つの許可条件に違反している事実を確認しました。

その後、 9月14日に文書による行政指導を行い、防災施設を除く全ての開発行為の中止及び計画外の伐採による土砂流出防止のための応急措置計画の提出を求めました。

そして、 9月1 6日付けで事業者から提出のあった応急措置計画は適当であると判断し、 9月22日に受理通知を行い、計画内容に基づき速やかに実施するよう指示しております。

事業者は、 9月28日に応急措置を完了し、 10月6目付けで応急措置完了届の提出がありました。このため、県は 1 0月1 8日に現地確認を行い、翌日付けで応急措置の完了届を受理した旨の通知を行ったところです。

今回の違反行為につきましては、誠に遺憾であるというふうに考えております。今後、こうしたことがないよう、県としましても、定期的に巡回を行いながら、適切に事業者を指導してまいります。

 

●塚地県議 ◆事業者は、太陽光パネル設置の候補地としてこの伐採地を検討するつもり、との話もあるとのことですが、意図的であり悪質ともいえるのではないでしょうか。今後の県の対応を含めて林業振興・環境部長に併せてお伺いいたします。

 

○林業振興・環境部長 次に、違法に伐採した土地を太陽光パネル設置の候補地として検討することについて、今後の対応を含めて、お尋ねがございました。

議員のおっしゃるとおり、事業者からは、伐採した区域に、太陽光パネルを設置する可能性もあるということを聞いています。

開発行為にあたり、残置することとしていた森林を伐採した場合は、森林に復旧することが基本となります。今回、残置森林を伐採したことにより、当初の計画と相違することとなり、太陽光パネルを設置する場合も、植栽し復旧する場合も、いずれの場合も変更の手続が必要となります。このため、事業者に対して変更計画を速やかに提出するよう、指導しています。

しかしながら、未だに変更計画の提出がされていないことから、県としましては、期限を設けて変更計画の提出を求めることを、今、考えているところです。仮に、期限までに変更計画が提出されなければ、森林法の規定に基づき、復旧命令を発出することを検討してまいります。

また、仮に誤って伐採された場所にパネルを設置するという計画が提出された場合は、内容をしっかりと確認し、技術基準に照らし合わせ、変更を許可すべきかどうか審査をして まいります。

 

●塚地県議 事業者は、住民との約束を反故にし、重要な洪水調整池設置よりも先に、森林伐採や作業道の造成を進めようとするなど、今回の違反も含めて許されない許可条件違反などを繰り返しています。

◆県はどう受け止めているのか、また、森林開発行為に係る許可条件における22項目の1番に、「以下の条件にしたがって開発行為を行わない場合は、この許可を取り消すことがある」と規定しています。これに基づいて早急に対応を検討し、許可の取消しを発動すべきと考えますが、林業振興・環境部長のお考えを伺います。

 

○林業振興・環境部長 最後に、事業者の許可条件違反に対する受け止めと、許可条件にのっとり、許可の取り消しを発動する必要性について、お尋ねがございました。

今回、許可条件に違反した行為につきましては、誠に遺憾であると考えております。

このため、県では、許可条件違反等を犯した事業者に対して、違反した事項を是正するための措置を講じるよう、まずは、行政指導を行っているところです。仮に、事業者がこの行政指導に従わない場合は、開発行為の中止命令などの監督処分を課すこととなっています。

許可の取り消しは、許可条件として取消権の留保を附して、許可要件に係る重大な義務違反があり、監督処分によっても当該義務違反が解消されない場合には、行うことが可能とされています。

このことは、許可の取消処分が強い権利制限であることから、慎重に行う必要があるとされているためです。

当開発地において事業者は、行政指導に応じて、許可条件違反を是正する一定の措置を講じております。このことから、現状においては、直ちに許可を取り消す段階であるとは考えておりません。

 

【特別支援教育】

●塚地県議 最後に、特別支援教育について伺います。

県立山田特別支援学校や日高特別支援学校の狭隘化解消を目的として、今年度高知江の口特別支援学校のあとに、日高特別支援学校の分校として高知しんほんまち分校が開校しました。しんほんまち分校を開設するに当たり、「豊かに学べる教育の実現をめざして高知市に小・中・高、寄宿舎のある県立の100名規模の知的障害特別支援学校をつくる会」略称学校を作る会の方々からは、一歩前進の側面はあるものの、県教委が示した計画では定員の問題でも教育内容においても課題解決につながらないのではとの指摘が相次ぎました。

この分校の定員は一学年高等部16人、中学部6名の22人で、今年度の入学者は高等部13人のみで、中学部は入学者がいないままでのスタートとなりました。

今年度開校したばかりですから、今後、どのように存在意義をつくっていくかが問われていますし、中学部入学者が0人という状況の改善は急がれるのではないでしょうか。

学校をつくる会に参加しておられる保護者の方などからは、「県教委が特色ある分校にするため、求める生徒像を学校説明の中に書き込み保護者や教員に説明していることで混乱が起きている」との指摘があります。県教委が示した求める生徒像は、①身の回りのことは、指示に応じて一人でできる生徒、②目標達成に向けて努力できる生徒、③就労を目指す生徒という3点です。一方、中学部の校区である高知市教育委員会の入学決定基準の考え方は、学校教育法施行第22条の③に規定する障害の程度、「知的障害では、知的発達の遅滞があり、意思疎通が困難で日常生活で頻繁に援助が必要。この程度に達しない場合は、社会生活への適応が著しく困難」と判断される程度でなければ、特別支援学校ではなく特別支援学級に在籍すべきとなっています。高知市教育委員会の中学部への入学決定基準と県教委が掲げる求める生徒像の乖離が大きいが故、入学者が0という状況を作り出していると思います。

◆教育長は、この事態をどのように受け止められているか、お伺いいたします。

 

設置者として高知市教育委員会との協議が必要です。協議に当たって、県としての考え方を整理しておく必要があるのではないでしょうか。

◆まず、高知しんほんまち分校に中学部を設置した狙いです。同じような機能を持つ日高特別支援学校高知みかづき分校には高等部しかありません。なぜ、しんほんまち分校には中学部を設置したのでしょうか。

 

◆また、保護者や特別支援に関わる教員からも、小学校卒業段階で義務教育である中学部を選択するのに「就労を目指す」といった生徒像が必要なのかとの声もあります。どのように受け止めておられるか、教育長に伺います。

 

○教育長 まず、高知しんほんまち分校の中学部に入学生がいない事への受け止めと、中学部を設置した狙いや生徒像についてお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えいたします。

高知しんほんまち分校につきましては、本年度、高等部13名の生徒を迎え開校できたことを大変うれしく思っております。ただし、一方で、中学部に入学生を迎えることができなかったことにつきましては、大変に残念に思うところであります。

高知しんほんまち分校は、県立山田特別支援学校の狭あい化の問題の解決に向けて、「高知県における知的障害特別支援学校の在り方に関する検討委員会」からの提言を受けまして、設置したものでございます。

そして、同検討委員会からは、「生徒数の増加は中・高等部で顕著であり、まずは、この両学部を設置することが望ましい」との提言をいただいております。

さらに、県といたしまして、高知みかづき分校のような専門的職業教育を行うのではなく、基礎的職業教育を行う学校とすることで、中学部から学べる学校としたいとの思いから、現在の学部構成にしたものであります。

こうした学校の特色から、求める生徒像を「就労を目指す生徒」とし、昨年度保護者や関係の皆様にお示しをしたところです。この生徒像につきましては、小学校卒業時点の児童の思いや状態を表したものではなく、あくまでも、高等部の生徒をイメージしたものであります。

今後、児童生徒や保護者の皆さんに、この生徒像がより具体的に伝わりますよう、補足の説明を加えるなどの改善を図るとともに、入学の可否について判断していただく高知市教育委員会とは、高知しんほんまち分校に入学を希望する生徒の状態等につきまして、十分協議してまいりたいと考えております。

 

●塚地県議 さらに、もう一方では、通常学校での特別支援学級の教育条件に不安を感じている保護者からは、専門的な教育を充実して受けさせたいとの思いから、特別支援学級ではなく特別支援学校に行かせたいとの願いもあります。そうした保護者が、この分校への就学を希望したけれど、高知市が行っている決定基準では、障害の程度が厳しく定められているため、その思いが届かないという実態もあります。

◆高知しんほんまち分校中学部の有効活用のため、高知市教育委員会との協議もされていると思いますが、この点について協議の結果を教育長に伺います。

 

○教育長 次に、高知しんほんまち分校中学部の有効活用に関する、高知市教育委員会との協議結果についてお尋ねがありました。

高知市教育委員会とは、就学に向けた協議を毎年行っておりますが、今年度は、それに加えて、高知しんほんまち分校の就学希望状況等についても情報共有し、協議を行いました。

その中で、特別支援学校への就学は、障害の程度が法令の規定に該当することが必要条件であることが原則ではありますが、発達検査の数値のみで判断することがあってはならないことを説明しております。

また、子どもの成長にとって必要な支援内容を丁寧に検討する必要があること、保護者と合意形成を図りながら、総合的に判断する必要があることについてもお伝えしております。この協議のなかで、高知市教育委員会におきましても、一定のご理解をいただいたものと考えております。

 

●塚地県議 この項の最後に、特別支援学級の課題について伺います。普通学校での特別支援学級は2012年以降の10年間で523学級から今年度の666学級へと急激に増加してきました。その特徴は自閉症・情緒障害と判定される児童生徒が、2012年の469人から10年間で1528人へと毎年100人近く増加していることです。本県は、障害種別で学級を編成するという先進的な取り組みを築いていますし、県教育委員会も、課題意識を持って、相談支援体制や教員の指導力の向上施策などを打ち出していますが、現場の困難は深刻さを増す一方です。

ある教室では、学年がばらばらの7人の知的障害児をひとりの担任が見ていて、教員自身も「満足のいく指導・支援が難しく、納得いく支援ができないしんどさ、保護者の期待に応えられないもどかしさを感じている」と語っています。また、高知市の自閉症・情緒障害の特別支援学級の在籍者は平均で5.4人となっており、担任の手が回らないことから、交流学級への同行もできず一人ひとりに適した指導がしづらい実態にあります。

◆せめてクラスに3学年以上が在籍する場合は複数配置にするといった対応ができないか教育長に伺います。

 

○教育長 次に、3学年以上の児童が在籍する特別支援学級への教員の複数配置などについて、お尋ねがございました。

本年度、県内の公立小中学校において、3学年以上の児童生徒が在籍する特別支援学級は140学級あります。そのため、この3学年以上が在籍する学級全てに教員を複数配置するこ とは、財政面でも、また教員の確保といった面でも困難であると考えております。

現在、本県では、特別支援学級において多人数で、重度の障害がある子どもが在籍するなど、担任以外の支援が必要であると考えられる場合には、市町村教育委員会とも協議の上、’個別の指導が可能となる児童生徒支援の加配教員を配置するといった支援を行っているところでございます。

今後も引き続き、国の加配定数の確保に努めるとともに、国に対して、特別支援学級の編制基準の引き下げについても、全国都道府県教育長協議会や教育委員協議会とともに要望してまいります。

 

●塚地県議 特別支援教育の就学についての教育相談支援について、高知市以外では県立学校の職員が支援に参加をしています。

◆今年度235学級で、児童生徒数も県内の約半分を占めている高知市への就学のための教育相談支援体制の充実を図る必要があると思いますが、どう対応されるか教育長にお伺いをいたしまして、私の第一問といたします。

 

○教育長 最後に、高知市の就学のための教育相談支援体制の充実について、お尋ねがございました。

特別な支援を必要とする児童生徒の就学に関する教育相談は、市町村教育委員会が行うことになっております。そして、市町村教育委員会においては対応が難しい障害種については、県教育委員会が申請を受け、県立特別支援学校の教員を相談員として派遣しております。

高知市につきましても同様に、対応が困難とされる、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱の4障害種に関して県教 育委員会が相談員を派遣し、支援を行っているところでございます。

このほか、高知市は県の補助金を活用して、専門的な教育相談員を配置しています。

県教育委員会としましては、今後も、こうした支援を継続していくとともに、高知市との情報共有を随時行い、個別の相談にも対応し、子どもや保護者の支援につなげてまいります。

 

【第二問】

●塚地県議 それぞれご答弁ありがとうございました。ちょっと残り時間が少なくて、2問目が十分にできないんですけれども、いくつか、させていただきたいと思います。

まず、土佐市のメガソーラー開発の問題ですけれども、先ほどの縷々のご答弁をお伺いしていて、その太陽光発電の運営に関するガイドラインの中で設置を避けるべきエリアとしているのに、先ほど部長は、設置は可能なんだとおっしゃいました。それは可能かもしれません。でも、この避けるべきエリアというふうにガイドラインで定めていれば、いかにして避けるのかというのが県の基本姿勢でないといけないんじゃないですか。そうでないから、今こうした様々な土砂の崩壊の危険性の問題も出てきてるじゃないですか。

先ほどの話では、この土砂の流出の危険区域なんだということを事業者には説明をしたと、事業者に説明したのに、なぜ審議会の委員にも土佐市にも住民にもそのことをちゃんと説明してないんですか。まず、そのことをもう一度お伺いをいたします。

 

そして、今日、縷々いろいろ説明をいただきましたけれど、この縷々、説明の大前提はここが設置を避けるべきエリアなんだとガイドラインで定められている、ということだと思うんですね。その基本姿勢に立って私は再度住民の皆さんに説明をすべきだという風に思いますので、その考えはないかということを、2問目、お伺いをしたいと思います。

 

で、さらに先ほどですね、この開発場所に対してですね、この崩壊土砂流出危険地区というのが「含まれている」という本当に部分であるような答弁をされましたけれども、大半がそうでしょう。ほとんど。それ、もし数字がここで分かるようでしたら、約9.6haのうちどの地区に定められている区域がどれくらいの広さなのか、もし答えられたら答えてくださいよ。含まれているっていうレベルの話ではないと、私は思っておりますので、その数字がお構いなかったら再度言っていただきたいと思います。

 

で、ここは、知事にですね、お伺いをしたいんです。それは事業者への信頼の問題です。先ほどです、残置森林のですね、伐採の問題でご答弁がありました。間違って切っちゃいました、でも、切ったところにパネルを設置する計画も検討しています、ってそんな話ありますか。

これはですね、本当に、自分でやっておいて後は自分でいいように活用していく、後で届ければいいんだという事業者の姿勢のなにものでもないじゃないですか。で、さらに住民の皆さんが怒っておられる貯水池の設置の問題も、住民の皆さんが見咎めたから、それが先に完成するってことになったんですけど、これ言ってなかったらそのまま貯水池もできてないうちに、工事もしていた可能性だってあるということです。

部長は、これからですね、頻繁に、頻繁にと言ったかどうかあれですけど、巡回をして指導をしていくというふうにおっしゃいました。

こういうふうに、設置すべきでないエリアに危険性を冒してでも、太陽光発電を設置させる事業者、しょっちゅう、しょっちゅう指導もせんといかん、巡回もせんといかん。そんな信頼性のない状況を、どう考えるかということは、これは知事にお伺いをしたいと思います。

 

最後にもう一点、検査キットの問題とコロナでの対策のことで、知事がおっしゃいました経済的にお困りの方は検査キットで調べなくても、ぜひ受診してくださいということを伝えていきます、というご答弁だったと思うんですけど、それはすごく大事なことで是非あの大いにそのことを周知していただきたい、どういう周知方法でされるかということをお伺いして、私の第二問といたします。

 

○林業振興・環境部長 第二問にお答えいたします。

まず、最初のガイドラインにのっている、避けるべきエリアとされているものを認めるのかというご質問だったと思います。基本的には、県としては避けるべきエリアということで、事業者に対しては、その旨お伝えし極力避けていただくよう、お願いをしているところでございますけれども、先ほど、申しましたように、最終的には設置ができないということにはなりませんので、事業者側としてもそういう設置をするという判断をされた場合には、先ほど申しましたような、防災対策もしっかりして頂いて、それをしっかり審査をして、見るということで、対応してきているところでございます。

それから、2問目の住民に説明する必要があるではないかという質問でございました。基本的には、県の方から住民に説明をするという、そういう規則ではございませんけれど、この件につきましては、少し検討してみたいなというふうに考えております。

また、3問目でございますけれども、今のところ数字を持っておりませんけども、確かにエリアとしては大半が含まれるということになります。

 

○県知事 まず、土佐市のメガソーラーの事件の事業者への対応の問題についてであります。お話がありましたように、また部長からも答弁いたしましたように、事業者の方が許可条件にない森林の伐採を、いわば勝手に、間違ってと言っているものですが、許可条件にない形のものをですね伐採をした、ということは事実でありまして、これは大変遺憾なことだというふうに考えておりますし、基本は、これは復帰を図るべきものが基本だということは、その考えは改めて申し述べたいと思います。

また、ただ、我々、県の行政は法令に基づいて行うということでありますから、この法令におきまして、この林地の開発許可というのがですね、一定の技術基準に適合すれば、それは許可をすべきものとして運用しなければいけない。この点は、最終的に、そういう事業者の方でありますから、訴訟での係争なども想定しますとですね、やはり、法令に基づく対応の範囲内で、どういうことができるかということで考えていかないといけない問題だと思いますので、そういった観点に立ち、先ほど部長からも答弁と申し上げましたとおり、しかし、これまでの経緯もございますので、県自身がしっかり巡回をして、チェックをしていく体制を強化していくということも含めて、この点につきましてはしっかりとウォッチをし、対応を見極めた上で、住民の皆さんの不安を取り除くように努力をいたしたいというふうに存じます。

それから、検査キットの問題の広報についてであります。

これに関しましては、お話ございましたような経済的に困難を抱える方々にどういう形で広報するのが一番効果的か、という観点からですね、具体的にいろんな方法考えられると思いますが、県の広報媒体ですね、どういう媒体を使うのが効果的かという観点から、健康政策部等に検討させまして、その上でしっかりと周知を図って参りたいと思います。

 

●塚地県議 法令遵守は当然のことなんですけれども、このガイドラインとは何かっていうこと、これは林業作業道との関係も、やっぱり作設指針は何なのかということ、私は改めて今回感じております。

林業作業道の問題で言うと、最高高い所は9mの切土があるって、そんなのが作設指針で合致しているとか、ここまで違反を繰り返したり、指導せんといかんっていうようなところはどういうことなのかっていうことの、改めて県の指導性、誠実な対応を求めたいと思いますし、最後に、住民の説明会はですね、検討するっていうふうにおっしゃったので、ぜひ、それは前向きに必ず実現をして頂きたい。

前向きに検討するかどうかだけ、林業振興・環境部長に第三問させていただいて、私の一切の質問を終わらせていただきます。宜しくお願い致します。

 

○林業振興・環境部長 先ほども申しましたように、こちらから積極的に説明するということにはなっておりませんけれども、住民の皆さん、そういう説明を求められるということも今までもありますので、そういう声があるということであれば、積極的に、前向きに考えていきたいと思います。