議会報告

  • 2022年06月27日
    2022年6月議会 吉良富彦議員による「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書(案)」賛成討論(2022.06.22)

私は、議発3号「旧制の通称使用のさらなる拡充を求める意見書案」に反対し、議発2号「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書(案)」に賛成する立場から討論を行います。

近年、女性の就業者数が増加し、結婚後も仕事を続ける女性が大半となるなど女性の社会進出はもはや当たり前となっています。しかし、結婚にあたっては夫婦が同一の姓を称すると定めた民法(第750条)の規定から、女性の約96%が余儀なく改姓している現状があります。改姓による社会的キャリア、そして、社会的・個人的アイデンティティ喪失や支障、不便・不利益性が女性に課せられる現状の解決には、民法750条の見直しが、いまや喫緊の課題であると言わざるを得ません。

国際社会において、夫婦が同じ姓を名乗ることを法律で義務付けている国は、日本以外には見当たりません。我が国の法制審議会は既に1996年に選択的夫婦別姓制度の導入を答申しています。しかし、一向に応えようとしてこなかった国・政府は、国連の女性差別撤廃委員会の総括所見において2003年及び2009年に、民法750条を改正するよう勧告され、引き続き2016年にも3度目となる勧告を受けています。このような女性差別を容認しつづける国の姿勢は国際的にも恥ずべきものと言わざるを得ません。選択的夫婦別姓制度の導入にむけ速やかに民法改正をすべきです。

家族形態の変化や生活様式の多様化も進む中、国民の意識の動向にも変化が見られます。2021年12月に行われた内閣府の世論調査では「現在の制度である夫婦同姓の制度を維持した方がよい」が27%に対し「現在の制度である夫婦同姓を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」が42.2%、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」が28.9%となっており、なんらかの法制度の改正を求める意見は全体の71.1%となっています。「旧姓の通称使用についての法制度」という中間的な設問が今回新たに加えられていますが、それは夫婦別姓を「法」で定める事と同義とみなされるものではないかという疑問が出るなど、設問のわかりづらさは否めず、野田聖子・男女共同参画担当大臣も疑問を呈しています。そうであっても、調査全体を見れば、婚姻前の姓の使用について法的根拠・法整備を求める民意が71.1%と圧倒的多数とみなされます。内閣府の調査で明らかになったことは、本日提出されている、議発3号「旧制の通称使用のさらなる拡充を求める意見書案」が国に求める、旧姓の通称使用拡大や周知は、法的根拠・法整備を求めておらず、そのレベルでは、社会生活上の不便・不利益は解消できるものではありませんよ、という民意が示された、といえます。

そもそも、国の「第5次男女共同参画基本計画」決定前のパブリックコメントにおいて、「第9分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備」に関する意見は675件で、そのうち選択的夫婦別姓制度に関する意見は445件と全体の65.9%が寄せられていました。その全てが「通称使用の拡大ではなく、選択的夫婦別姓制度の早期実現」を求めるもので、制度導入に反対する意見はゼロという事実があります。そして、今回の2021年の世論調査で「通称を使うことができても、それだけでは対処しきれない不便・不利益があると思う」と回答した人は前回の41%から59%へと大きく増えています。

 今、旧姓を通称として使用することは「任意の便宜的な措置」であり、勤務先で通称使用が認められても、国家資格は通称では認められません。税や社会保険、預貯金の口座やクレジットカード、携帯電話の契約、法人登記や成年後見人の登記等では、戸籍姓を用いることになります。

通称使用はタブルネームを認めることです。個人には使い分ける負担を増加させ、社会的にはダブルネーム管理のコストや個人の識別の誤りのリスクを増大させます。そして、何よりも婚姻の際に姓の変更を望まない当事者にとって、個人の人格、アイデンティティに関わる本質的・根源的な問題は解決できません。憲法13条は、個人の尊厳を保障し、24条2項では、婚姻に関して法律が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めています。個人の姓名は、個人のアイデンティティそのものであり、個人が自己の姓名を選択し、これを呼称することそれ自体が保障されなければなりません。

国民の間に、家制度への考え方や家族観による意見の違いがあります。ですから、選択的夫婦別姓制度は夫婦同一姓を選ぶ人の権利も保障しており、国民それぞれの思いを叶える選択肢となる制度です。

少子化の急激な進行により、姓の問題で結婚をためらう人もあるとの調査結果もあります。これ以上、議論を先延ばしすることは許されません。若い世代が将来に展望を持ち、希望を実現できる社会にしていくために、国民の多様な声を真摯に受け止め、国連のSDGsが提唱する「誰一人取り残さない」社会に向けて選択的夫婦別姓制度の実現を国に、本議会として働きかけることを求め、以上、議発3号に反対し議発2号への賛成討論といたします。同僚議員のご賛同、よろしくお願いいたします。