議会報告

  • 2022年03月24日
    2022年2月議会 岡田芳秀議員の「憲法改正の実現に向けた国会審議の促進を求める意見書」反対討論(2022.03.23)

私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました、議発第2号「憲法改正の実現に向けた国会審議の促進を求める意見書(案)」について反対討論を行います。

まず、日本国憲法が75年間一度も改正されなかったのは、国民の大多数が国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を柱とするこの憲法を支持し、とりわけ平和憲法の象徴である「9条」を支持しているためです。9条は、世界の心ある人々に支持されており、今日においても生命力を発揮しております。いま国民は憲法改正を求めていません。昨年10月の衆議院選挙後に共同通信社が実施した世論調査では、選挙で最重視した項目として経済対策が14.9%に対し、改憲を挙げたのは2.1%にすぎませんでした。

そのため、改憲勢力は、北朝鮮や中国による脅威、大規模災害や新型コロナ対応など緊急事態に対応するための条項がないことを口実にして、これを改憲への突破口にしようとしてきました。

しかし、なぜ、いまの日本国憲法には緊急事態条項がないのかということが大事です。それは戦前の大日本帝国憲法下で「戒厳令」や「緊急勅令」など緊急事態条項が80回も乱発をされ、日本は軍事独裁となり、侵略戦争に突き進み、その結果として300万人以上の日本国民の命が奪われ、2000万人以上のアジアの人々が殺害されたためです。緊急事態条項は「人間」を守るためのものではなく、「国家」「体制」を守るために憲法をストップし、「人間を犠牲にする」ものです。この反省があります。

ドイツで「ヒトラー独裁」が可能になったのも、緊急事態条項が活用された結果です。

大災害が起きた時にどうやって日本を守るのかについて、憲法はきちんと準備をしています。一つは、衆議院が解散している時に災害が発生した場合、参議院の緊急集会を開き法律や予算を審議・議決できるものです(憲法54条2項)。もう一つは、参議院を開くことも難しい場合、内閣が法律の範囲内で罰則付きの政令を出すことができます(憲法73条6号)。

また、災害対策基本法は、緊急時に内閣に対して、生活必需品の配給や物の価格の統制など、四つの事項に限定して立法権を認めています(正確には「緊急政令」)。人権を制限する規定も既に存在しています。都道府県知事の強制権として、救助のための従事命令、施設管理や物資の保管・収用命令など罰則付きで命令できます。

現場の声も緊急事態条項を不要としています。東日本大震災後の、毎日新聞の調査では、緊急事態条項が必要だと答えたのは、被災3県の自治体で1町のみでした。ある市長は「緊急事態条項だと、現地被災地では中央が決定するまで待ちになる。それは貴重な時間のロスになる。また、地域が自分たちの一番回復したい日常を知っている。」と回答しています。したがって、憲法に緊急事態条項は必要ありません。

 

また、この意見書案では、「ロシアの暴挙から、国際法、国際機関の機能不全が浮き彫りとなり、東アジアの安全保障環境が一層不安定さを増している」ことが改憲の必要な理由に加わっています。

もちろん、ロシアによるウクライナ侵略は許されません。ロシアの行為は主権の尊重、領土の保全、そして武力行使の禁止などを義務づけた国連憲章に違反することの明白な侵略行為といわなければなりません。プーチン大統領は、侵略戦争を合理化するためにさまざまな弁明をしていますが、どれも成り立つものではありません。

平穏な暮らしが奪われ、何の罪もない多くの市民や子どもたちの命が奪われていることに深い悲しみと、怒りを感じます。国際法、国連憲章を踏みにじるプーチン政権の暴挙を厳しく糾弾するとともに、即時撤退を強く求めるものです。

では、国際法、国際機関は機能不全に陥っているのでしょうか。決してそんな事はありません。国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)のドナヒュー裁判官はロシアの武力行使が「国際法に関する非常に深刻な問題を引き起こしており、深く懸念している」と表明し、16日、ロシアに対し、ウクライナ侵攻の軍事作戦を即時停止するよう命じました(仮保全措置)。ウクライナが2月26日に提訴していたもので、ゼレンスキー大統領はツイッターに「完勝だ」と書き込んで歓迎しています。命令には法的拘束力がありロシアへの圧力となり続けます。これより先、国連総会は40年ぶりに緊急特別会合を開き、2日には、ロシア非難決議が加盟国の7割超にあたる141カ国の賛成で採択されています。

また、20世紀に起こった植民地支配の崩壊と100を超える主権国家の誕生という世界の構造変化が、平和を促進する生きた力を発揮し核兵器禁止条約を生み出しました。こうした力がロシアの侵略に立ちはだかり、ウクライナのたたかいと連帯し、プーチン政権を包囲しています。

経済制裁でも、世界的な決済システム「SWIFT」(国際銀行間通信協会)からロシアの排除という、かつてない制裁や、エネルギー分野での制裁の動きも強まっています。この動きには日本政府も、加わっています。

 

何より大事なのは、「ロシアのウクライナ侵略はやめよ」の一点で団結し、世論でロシアを包囲・孤立させるとともに、ウクライナへの連帯を示すことです。既に、日本国内を含む世界中で無数のデモやスタンディングが取り組まれ、SNSにも「NO WAR(戦争反対)」の声が溢れています。本県各地でもプーチン政権の暴挙に対する抗議行動がひろがっています。こうした世論が、主権を守るためにたたかっているウクライナ国民や、弾圧に屈せず反戦の声をあげているロシア市民を勇気づけ、プーチン政権を追い詰める力になります。

一部には、中国による台湾侵攻の誘発など「力による現状変更」が東アジアにも波及するという懸念が広がり、軍拡・軍事同盟強化の口実とされていますが、国際世論の力でロシアを追い詰め、孤立させることができれば、今後、世界でいかなる国も、これにはもちろん中国も含まれますが、「力による現状変更」をさせない決定的な力になります。

「国連は無力だ」「憲法9条は役に立たない」などと言い募ることは、「力の論理」の信奉に行きつきます。「力の論理」を否定し、紛争を平和的に解決することを全世界に義務づけたのが国連憲章です。そして日本国憲法は、朝鮮半島や中国をはじめアジア諸国への侵略の反省を原点の一つにしており、再び侵略国家にならない決意が込められています。

この県議会では冒頭、武力行使を禁ずる国際法、国連憲章に違反するロシアに対する非難決議を全会一致で採決しました。わが党の吉良議員の代表質問に対して、濵田知事は「政府におかれましても、引き続き国際社会と結束のうえで、最大限の外交努力を行っていただきたい」と答えています。

いまやるべきは、ウクライナ情勢に便乗して改憲の旗を振ることではなく、県議会のロシア非難決議の立場を堅持し、平和の国際秩序を取り戻すことです。日本政府と国会は、そのための平和外交に全力をあげることです。

皆さんの賛同を求め、私の反対討論を終わります。