議会報告

  • 2022年03月24日
    2022年2月議会 米田稔議員による「令和4年度一般会計予算」等への反対討論(2022.03.23)

私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっています議案第1号「令和4年度高知県一般会計予算」ならびに、第9号、第45号、第47および49号、第50号の各議案に、反対の立場から討論を行います。

 当初予算には、知事の政治姿勢、県政運営の基本的な方向性が示されています。

 令和4年度当初予算は、コロナ禍が長期化する中で、コロナ対策の抜本拡充とともに、ケア労働の大切さとその処遇の低さが明らかになるなど、日本社会に新自由主義からの構造的転換が問われる中での編成となりました。加えて、コロナ禍による全国的な医療崩壊は、医療保健体制を削ってきた社会保障削減路線の見直しの必要性を浮彫りにしています。

また、国連「家族農業の10年」が取り組まれているように、食料の安定供給をはじめとして、日本国内における一次産業の重要性が増しています。これら一次産業の持続的発展は、2050年カーボンニュートラル、2030年までのCO2排出量半減を目指す気候危機対策とも合わせ、持続可能な社会を築く礎となるものです。

今日、日本社会の質的な大転換が求められる中にあって、県民と地方自治の立場に立つのか、国の進める新自由主義路線、社会保障削減路線の追随・推進の側に立つのかが鋭く問われています。しかし、当初予算では、中学校での少人数学級の前進、新型コロナの無症状者への無料検査、2030年度の温室効果ガス排出量削減目標の引き上げなど、一定の評価すべき点はありますが、全体としては県民の願いに背を向けたものと言わなければなりません。

 以下、第1号一般会計予算に反対する理由を述べます。

 第一は、新型コロナ対策です。高知県の1~2月の新型コロナウイルスの新規感染者に占める死者の割合が全国平均の約3倍、全国最悪となったことが報じられています。医療機関、高齢者施設でのクラスターの多発が要因と分析をされています。これら施設への頻回の社会的・予防的検査で、クラスターの芽を事前に摘み取ることが必要でした。この反省を踏まえ、検査への考え方を抜本的に切り替えることを求めるものです。

また、まん延防止措置への本県適用への要請も判断が遅れ、特に、感染爆発で客足が激減した県内飲食業者への支援が遅れたことは問題です。

 第二は、医療介護についてです。県が掲げる「日本一の健康長寿県構想」では、「意識醸成と行動変容の促進」、「地域で支え合う」など、自助・共助への偏重が見られます。「病床の転換やダウンサイジング」を支援するとして、消費税財源による病床の統廃合・削減を、国の言いなりに進めていることは極めて重大です。加えて、介護分野では「ワークシェアなどの新しい働き方の普及」が持ち込まれています。これは、介護現場にコマ切れ労働を持ち込み、介護職の専門性をおろそかにし、処遇改善とも逆行するものです。

 第三は、産業振興についてです。特に中山間地域への対策は不十分で、現に中山間地域で暮らす人々の立場に立つ政策になっていないと思います。本会議で、限界集落を生みだしてきた原因を問いましたが、知事からは明確な答弁がありませんでした。条件不利地域である中山間地域に、市場任せの新自由主義的競争を押し付けてきたことが、中山間地域の疲弊の根本原因です。この認識なしに、必要な政策立案はできません。中山間地域の深い高知県では、山に住む人々の暮らしが、山や川、海の環境をも守る重要な公益的機能を果たしています。こうした公益的機能を重視する政策が必要です。「地域で稼げる農業」をスローガンとした農業経営体の規模拡大が進められていますが、農業の持続性を市場原理にゆだねるものです。中山間地域を衰退させてきた新自由主義から転換し、家族・小規模農業など今ある生産に光を当てる施策への抜本転換が必要です。また、県内事業者に甚大な負担を強いる消費税インボイス制度を「必要」とする知事の姿勢も、県民の立場に立たないものと強く非難しなければなりません。

 産業振興分野全体を見れば、グローバル化の推進として、輸出拡大、インバウンド観光、外国人人材の受け入れなど、コロナ禍での環境が激変する中でも、従前の施策を踏襲しています。加えて、コロナの影響で遅れが指摘される大阪万博・IR頼みの関西との経済連携も、その効果は疑問視せざるを得ません。

 第四に、デジタル化の無批判な推進です。当初予算の概要資料で、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の語を用い「デジタル技術の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念」と説明していることが、その姿勢を端的に示していますが、極めて一面的と言わざるを得ません。特に行政のDXによる事務の標準化は、地域の特質や課題に合わせた住民本位の市町村行政の執行を妨げる懸念が指摘されるなど、デジタル化の負の側面を踏まえることが必要です。また、中山間地域でのデジタル化については、必要なものは進めなければならないのは当然ですが、光ファイバー網の施設の遅れなど根本的なデジタルデバイドがある中で、あまりに表面的な施策に終始をしています。

第五は、教育についてです。学力テストへの偏重、また、全国から見ても異常に多い教壇に立たない教員数など、改善がされていません。加えて、重大なのは、「GIGAスクール構想」として進められている学校のデジタル化が、「個別最適化された学び」として、子どもたちに孤立した学びをおしつけ、教育の営み、本質をゆがめようとしています。PISAの調査で、コンピュータ利用時間が長いほど、読解力、数学、科学の3領域で学力が低下するとの報告は、極めて重大な指摘です。

 そして、六点目は気候危機対策です。目標は引き上げたものの、実現への具体策は全く不十分です。

 以上が、第1号一般会計予算への反対理由です。

 

 次に、第9号・国保事業特別会計予算は、コロナ禍の県民の暮らし、県下自治体の国保料引き下げの声に応えないもので、反対です。第45号・手数料条例については、国会の議決を経ない政令で、コロナを理由とした種々の手数料値上げを県民に押し付けることは承知できません。第47および49号は、昨年12月の一時金減額を6月の一時金において差し引き、年度を跨いで不利益を遡及するもので、不合理であり認められません。第50号の部局再編については、統計分析業務の産業振興推進部への移管は、公的統計の独立性・専門性の面から疑義があること、また、文化財保護行政の知事部局への移管は、保護と開発の均衡を崩す懸念があり、反対するものです。

 

 高齢化が進み、多くの課題を抱える本県だからこそ、その解決は、日本社会の変革の方向を示すものとなりえます。コロナ禍が浮き彫りにした新自由主義からの転換、気候危機対策の前進を通じて、県民が安心して暮らして行ける高知県政を実現していただくことを強く求め、私の反対討論といたします。