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- 2021年10月14日
- 議会(質問・討論)
- 2021年9月議会 塚地佐智議員の「コロナ危機から脱却する経済対策を求める意見書(案)」賛成討論
私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま議題となっております議発第8号「コロナ危機から脱却する経済対策を求める意見書(案)」について、賛成の立場で討論を行います。
新型コロナウイルス感染症の拡大による「コロナ危機」が、日本社会の中にある脆弱性を浮き彫りにしました。新型コロナウイルスは、もちろん、感染者を選ぶわけではありませんが、それによって起こったコロナ危機の負担や不利益は、主に社会の脆弱な部分に集中しました。
この間の矛盾の集中点となっているのは、ひとつには、非正規雇用労働者です。コロナ危機において、多くの非正規労働者が、まさに「雇用の調整弁」として使われ、仕事を失いました。厚生労働省によれば、非正規雇用労働者は、2020年度平均で97万人減少し、そのうち65万人が女性とされています。女性の非正規労働者が一番の犠牲になったと指摘しなければなりません。これは、経済が大きく落ち込んで問題となった「リーマン・ショック」時にも見られなかった現象です。コロナ危機の影響が、特に、宿泊業、飲食業などの女性が非正規雇用で働く産業を直撃したことが大きな要因となりましたが、元をただせば、アベノミクス下で2019年までに増えた雇用者のうち7割にあたる349万人が非正規雇用だったことが、この事態に拍車をかけました。この非正規雇用の増大が、危機に脆弱な雇用環境をつくったとの批判は免れません。
また、第二の矛盾の集中点となったのは、中小企業、個人事業主など、業者の皆さんでした。持続化給付金、家賃支援給付金も一度きりの支給しかなく、十分な補償がない中で、「自粛」を強いられ、2020年度の中小企業の休廃業・解散は過去最高の約5万件に達しました。企業数として99%以上、従業員数でみても7割を占め、まさに日本の経済を支える屋台骨である中小企業に深刻な打撃が広がっています。今、中小企業、個人事業主など、業者の皆さんを支えることが、日本経済を立て直すうえで、喫緊の課題となっています。
そして、第三に文化・芸術・イベント業界も壊滅的な苦境に立ち至っています。これらの業界では、イベントの中止・縮小が相次ぎ、また観客の入場制限も長く継続されました。新型コロナウイルス感染症が深刻化した2020年3月から21年2月までの1年間で、イベントなどの入場料収入が8800億円減少し、これは2019年の収入に比べて8割減にあたります。文化、芸術、また音楽などのイベントは、人間の生活を潤し、生きる意味を与える、欠かすことのできない必要不可欠なものです。これを支援することは、政治の果たすべき責任です。
このように、新型コロナウイルス感染症が浮き彫りにした日本社会の脆弱性は、この間、アベノミクスを筆頭に進められてきた、市場原理と自己責任を是とする新自由主義的政策の必然的な結果と言わなければなりません。新自由主義が、社会の余力を削ぎ、危機に弱い経済をつくってしまいました。
新自由主義的政策の主要な特徴のひとつは、大企業が儲ければ庶民に利益がトリクルダウンする、つまり「したたりおちる」という考え方をとることです。世界に目を転じれば、このトリクルダウン経済を脱却し、税制の改革を通じた富の再分配をめざす、新自由主義からの転換の動きが、明確に強まっています。
この10月8日には、OECD(経済協力開発機構)が、OECD非加盟国を含む約140ヶ国の参加で、国際課税のルールづくりに関する会合を開催し、歴史的合意に至りました。この合意では、巨大IT企業への「デジタル課税」の強化や、タックスヘイブンを利用した税逃れで問題となっている法人税率に、国際的な最低基準を課すなどの課税強化を打ち出しました。
アメリカのバイデン大統領は4月に行った施政方針演説で、トランプ前政権による減税は大企業経営者の私腹を肥やしただけだったとして、大企業と富裕層に公平な負担を求める方針を明らかにし、連邦法人税の増税や所得税の最高税率の引き上げを提起しています。
また、イギリス政府は年間利益25万ポンド(約3800万円)以上の企業の法人税率を現行の19%から2023年4月に25%に引き上げることを決めています。
日本においても、コロナ禍の中でも過去最高の税収となった消費税を引き下げ、富裕層・大企業への増税をはかるかどうかが、新自由主義からの転換の試金石ともなります。過去最高となった消費税の税収は、安倍元首相の下で2回にわたって引き上げられ、5%から10%へ倍化された税率によるものです。逆進性の強い消費税の度重なる増税は、庶民の生活・営業に大きな重荷となっています。一方で、大企業の内部留保は過去最高となっています。この不公正を正すことが必要です。
岸田・新首相も、自民党総裁選で「新自由主義からの転換」を訴えてきました。しかし、この間明らかとなったのは、「成長なくして分配なし、まず成長を目指すのが重要」との発言が象徴するように、その内実はあくまでアベノミクスの焼き直しであり、トリクルダウン経済、新自由主義の継続にほかならないということです。これでは、コロナ危機が浮き彫りにした脆弱性を正す、公正な経済の回復は到底望めません。
コロナ危機からの経済の回復は、この危機の矛盾をおしつけられ、矛盾の集中点となった人々に光を当てた、公正なものでなければなりません。本意見書案が求めるように、生活困窮者への特別給付金の支給、業者への支援、また文化・芸術関係者らへの抜本的な支援強化が必要です。その上で、この格差を作り出してきた根本の原因である新自由主義からの脱却を明確にしなくては、この危機は形を変えて、何度でも繰り返されてしまいます。まさに今、その分岐点にあると言えます。
今こそ、経済政策を大きく転換するべき時です。コロナ危機から脱却し、新自由主義からの転換によって日本の経済を根本から立て直して、明日の暮らしが見通せなくなっている県民のいのちと暮らしを守るために、同僚議員の賛同をお願いし、私の賛成討論といたします。なにとぞ、よろしくお願いいたします。