議会報告

  • 2021年03月24日
    2021年2月議会 吉良富彦議員による「中国海警法の撤回に向けた外交的対応を求める意見書案」賛成討論

●吉良議員 私はただいま議題となりました議発第4号「中華人民共和国海警法の撤回に向けた外交的対応を求める意見書議案」について賛成討論を行います。

 中華人民共和国海警法が2月1日に施行され、中国海警局の活動領域が拡大され、武器使用を含む権限の強化も行われました。

 海警法は、中国が独自に「わが国の管轄海域」と主張する海域において、臨検、「建築物、構造物」の強制撤去、「武器使用を含むあらゆる必要な措置」の行使など、強制措置をとる幅広い権限を定めています。法制定後、中国は、東シナ海や南シナ海での力による現状変更の動きをエスカレートさせ、尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入した中国海警局所属の船舶が、二日連続で日本漁船に接近しようとする動きを見せた看過できない事態も起きており、今後、武力衝突などの事態を招かないためにも、冷静かつ断固たる対応を取ることが日本政府に求められています。

 そもそも、海洋法に関する国際連合条約は、沿岸国の主権の及ぶ範囲を、領海に限定するとともに、沿岸国の権利に配慮しながらも、領海に隣接する接続水域、排他的経済水域、大陸棚など、海域ごとにその権限を限定的に規定することで、国際社会の「航行の自由」を広く認めています。しかし、海警法は、中国が「わが国の管轄海域」と独自に主張する無限定性とともに、上に述べたように、国際海洋法条約では領海ですら無害通航に対しては強制的な措置は取れないのに、領海どころか、それを超えた『管轄区域』で武器使用ができるという、明らかな国際法違反の法です。日本政府は、「海警法は国際法違反だ」と中国に正面から指摘し、撤回を求めるべきです。

 にもかかわらず、中国が海警法を制定した後の2月4日に開催した第12回日中高級事務レベル海洋協議において、政府は、「強い懸念」を伝えるだけでした。2月16日の記者会見でも茂木外務相は、中国の海警船舶2日連続の侵入・接近に対して「深刻に懸念を致しているところであります」と懸念表明だけにとどまっています。政府の、このような弱腰の態度は、3月16日に開かれた日米外交・軍事担当閣僚会合(2プラス2)の共同発表文書でも同様で、「深刻な懸念」の表明のみにとどまっている事は重大です。

 国連海洋法条約に基づく国際法秩序を無視し、違反してもいいとした海警法そのものを容認するのではなく、中国に対して正面から厳しく批判し、その撤回を求める事が我が国の領海と船舶の安全を守る事に繋がることは自明の理です。そして、併せて、アジア諸国のみならず国際社会に対して中国の海警法の違法性を訴え、国際世論で中国を包囲し追い込み、実質的に横暴な行動を取ることを断念せざるを得なくなるような政治的・外交的対応を全方位で強力に推し進めることが急がれます。

 

 看過できないのは、こうした全方位平和外交による世論形成で中国を追い詰めていくのではなく、日本が「日米同盟を更に強化するために能力を向上させる」と、軍事的役割の拡大を2プラス2の共同発表文書で約束したことです。

米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は9日、米上院軍事委員会の公聴会で「インド太平洋地域での米国と同盟国の最大の危機は、中国に対する通常兵力による抑止力の崩壊だ」とし、軍事態勢強化の必要を訴えています。米艦隊が米本土を出発し、日本の南西諸島、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」に到着するまでに約3週間かかるとし、その間、海から敵地に上陸する水陸両用作戦能力などさまざまな戦闘能力を持っている自衛隊が対処することに期待を示しています。台湾有事などの際にも、自衛隊が、在日米軍とともに、米中軍事衝突の最前線に立たされることになりかねません。

米インド太平洋軍は2022米会計年度から6年間の予算要求で、「第1列島線に沿った精密打撃ネットワーク」を構築するとして、射程500キロ以上の地上配備型中距離ミサイルの費用を求めていると報じられています。鹿児島県の大隅諸島から沖縄県の先島諸島へと連なる南西諸島が配備候補地になる危険があります。共同発表文書は、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設の早期完了を明記しました。2プラス2に先立つ日米防衛相会談では、鹿児島県西之表市の馬毛島で基地建設を進めることも確認しました。中国に対抗する米軍と自衛隊の基地増強・一体化の一環です。

これら、米軍との際限のない軍備増強・一体化は、日本国民の目を最も実効性のある平和的外交から遠ざけ、米国との軍事同盟にのみしがみつかせる、誤った危険な道へと我が国を追い込むことに繋がります。軍事的対応の強化では決して解決しません。毎日新聞社説でも、「大事なのは、日本が冷戦時代の『米国に頼っていれば大丈夫』という思考に戻らないことだ。米国にかつての国力はない。国際秩序を安定させるには、民主主義と市場経済を基調とする国々による連帯が欠かせない」と主張しています。自衛隊による軍事的対応は、軍事対軍事の悪循環を生みだすだけです。海上保安庁の活動で不法侵入を許さず、先に述べた、政治と外交の力で解決すべきです。

 

今や国際平和、国際社会の動向は、軍事同盟諸国によってではなく、核兵器禁止条約の締結にみられたように、圧倒的な非軍事同盟諸国によって動いていく時代へと移ってきています。東南アジア諸国連合(ASEAN)が、紛争の平和的解決を掲げた条約を土台に、平和の地域共同体をつくりあげ、この流れをアジア・太平洋地域に広げていることは、世界の平和秩序への貢献となっており、この流れをこそ東アジアにおいても大きくすることが日本政府に求められています。

大国の横暴に反対する国際世論を高め、中国を外交的に包囲するとともに、軍事対応の強化にも反対していくことが何より重要です。

以上、同僚議員の皆さんのご賛同をお願いし、議発第4号議案の賛成討論と致します。