議会報告

  • 2020年12月25日
    2020年12月議会 岡田芳秀議員による「高齢者医療費2割負担撤回」意見書賛成討論

●岡田議員 日本共産党の岡田芳秀です。私は、ただいま議題となりました議発第10号「後期高齢者の医療費2割負担への引上げを撤回し、誰もが必要な医療を受けられるよう求める意見書」案について賛成討論をおこないます。

政府は「全世帯型社会保障検討会議」において、いわゆる「団塊の世代」が75歳になり始める2022年度から一定年収以上の後期高齢者(75歳以上)の医療費負担を原則1割から2割に引き上げる方針を決めました。先日の政府与党の協議において、その一定年収は、単身者は200万円以上とすることで合意し、政府は12月14日、全世代型社会保障検討会議を開き、そうすることで最終的な取りまとめを行っています。このまま導入されますと、約370万人に影響がでる、看過しがたい計画であります。

いま社会保障で政府に求められているのは、第3波といわれるコロナ禍に立ち向かっている医療関係者を支援し、国民の命と暮らしを守ることです。医療関係者は、新型コロナ感染拡大で疲弊する医療現場への支援を強く求めています。とりわけ感染リスクが高いとされる高齢者の命を守ること、これが最優先です。こんな時に、後期高齢者の医療費負担の引き上げを議論している場合ではありません。

高齢者は、安倍前政権による2度の消費税増税のもとで、生活費を切り詰めて暮らしています。そして、このコロナ禍のもとで、人に迷惑をかけてはいけない、自分が感染してはいけない、と自らの行動や健康維持にとりわけ気を配って生活をされておられます。どうしてこんな時期に後期高齢者の医療費の負担増を急いで決めなければならないのでしょうか。

日本医師会の中川俊男会長は、「原則1割から倍にする議論をすること自体がそもそも問題だ」、「受信控えを生じさせかねない政策で、高齢者に追い打ちをかけるべきではない」と指摘をしています。

後期高齢者は、収入の大半を低い公的年金に頼る一方で、複数の病気を抱え、治療も長期間に及ぶ人も少なくありません。年をとると入院も増え、医療費負担は現役世代などの3~7倍近くになります。後期高齢者に窓口負担2割への引き上げを求めることは、単純に医療費負担が2倍になるのではありません。実質的な負担は、現役世代の何倍にもなるのです。

高齢者に特有の複数・長期・重度などの病気の特徴があるからこそ、高齢者の自己負担は軽減されています。自己負担割合を引き上げて、現役世代と同じにすれば、高齢者の受診抑制が深刻化するのは必至です。高齢世帯の生活保護世帯が増加しているなど、高齢者の貧困化が確実に進んでいるなかで、年収200万円以上とはいえ、あまりにも人命を軽視するような無慈悲な政策であり、こうした施策は国民皆保険の根幹を揺るがすものとなります。

政府は、2018年度で約121兆円の社会保障給付費が2025年度には約141兆円に、2040年度には約190兆円に膨らむとして、「抑制と負担増は必至」だと宣伝し、負担増を合理化しています。しかし、その国の社会保障給付費の水準は、実額だけでなく対GDP比で考える必要があります。GDP比では2018年度は21.5%、2025年度は21.8%、2040年度でも24.0%です。厚労省の鈴木俊彦前事務次官(今年9月退任)は、「2040年度の24%という水準は、日本よりも高齢化率の低いスウェーデンやフランスが現在負担している水準よりも低いものであり、国民が負担できないという水準ではないことが分かりました」(『労働保険旬報』2019年1月1日号「座談会社会保障・税の一体改革をふり返り2040年の社会保障改革を展望する」)と述べています。「国民が負担」という点は、私たちと立場が異なりますが、他の先進国と比較しても今後の社会保障費の伸びに日本経済は十分対応できるということです。

社会保障の向上及び増進は、憲法25条に明記されているように、国の責任で行うべきものです。国民の互助会のようにして、世代間を分断し、双方に負担増を押し付けあって向上させるものではありません。

要は、国の責任で、能力に応じた税と社会保険料負担をどうするのか、他方で所得再配分機能をどうするのか、ということです。今回の後期高齢者の医療費負担増は、現役世代の負担を軽減するということを名目としていますが、高齢者と現役世代の世代間対立をあおりながら、高齢者に負担を押し付けることは許されません。そもそも、この間、高齢者医療の国庫負担を45%から35%に下げ、現役世代の保険料負担で肩代わりをさせるという制度設計そのものに問題があるといわなければなりません。「自助」、「共助」ではなくて「公助」が必要です。

注目すべきは、後期高齢者医療制度の保険者である広域連合の動きです。昨年6月、各都道府県の広域連合の全国組織である全国後期高齢者医療広域連合協議会は、75歳以上の窓口負担の「現状維持」を求める要望書を厚労相に提出しています。その要望書は、負担増の中止にとどまらず、被保険者の負担を将来にわたって抑えるため、後期高齢者医療制度に対する国庫負担の引き上げをも含めて要望しています。

国の責任で国庫負担を増やすとともに、大企業へ応分の負担を求めることが必要です。実質賃金が低下し、国民生活が窮地に追い込まれている一方で、法人企業統計では2018年度の経常利益は84兆円で6年連続過去最高を更新し、内部留保は463兆円で7年連続更新しています。大企業と年間1億円以上の高額所得者に適正な税と社会保険料負担を課すべきです。与党自民党の中にも大企業の内部留保に課税せよという声があがっているではありませんか。そうすれば、後期高齢者に新たな負担をかけなくて済みます。

後期高齢者医療制度が導入された2008年、当時首相だった麻生太郎財務相は“現役世代より低い1割負担で心配なく医療が受けられる。ぜひ維持したい”と明言していたはずです。長年にわたり日本と地域社会を支えてこられた後期高齢者に対して、医療費の2割負担を求めることは撤回をし、誰もが安心して必要な医療が受けられるよう、国に強く求めるものです。

同僚議員のみなさんのご賛同を呼びかけまして、賛成討論といたします。