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- 2020年12月25日
- 議会(質問・討論)
- 2020年12月議会 中根佐知議員による「核兵器禁止条約批准を求める」意見書賛成討論
●中根議員 私は、ただいま議題となりました議発第9号 「日本政府に核兵器の禁止に関する条約(核兵器禁止条約)の署名・批准を求める意見書(案)」について賛成の立場で討論を行います。
2017年7月7日に国連会議で採択された核兵器禁止条約の批准国が2020年10月24日に50か国に達し、来年1月22日には、条約が発効されるという画期的な情勢の進展が起こりました。そして2020年12月11日現在、署名国は86か国、批准国は51か国となっており、今後もその増加が見込まれています。広島・長崎の被爆者をはじめ、「核兵器のない世界」を求める世界の圧倒的多数の政府と市民社会が共同した、壮大な取り組みの歴史的な成果となりました。
この条約は、日本の被爆者の痛苦の体験と強い願いが実現の原動力となりました。条約前文には、「核兵器のあらゆる使用がもたらす破滅的な人道的結果を深く憂慮し」と記され、さらに、「核兵器使用の被害者(Hibakusha)及び核実験の被害者への容認しがたい苦難と損害に留意し」と、被爆者という日本語が書き込まれています。条約採択にあたり、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表は、「とりわけ被爆者の英雄的な努力を心にとめたい。その言語に絶する被害と疲れを知らぬ努力が、核軍縮条約を実現した」 と発言をしました。
核兵器禁止条約の背景には、2000年の核不拡散条約再検討会議で、核保有国も含めて合意した「保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束」を盛り込んだ最終文書が採択されたにもかかわらず、核軍縮が進んでこなかった現状があります。核保有国の核兵器への固執は、国際社会に対する背信行為であり、厳しい目がそそがれているのです。
核兵器使用の危険は、まったなしとなっています。現在、世界の核兵器は13,410発ありますが、うちアメリカとロシアの1,800発は「高度警戒態勢」という警戒即発射という状況にあります。たとえば、今年6月2日にロシアのプーチン大統領が署名したロシアの核使用条件は、①弾道ミサイル発射情報、②大量破壊兵器使用、③核施設等への攻撃、④国家の存続を脅かす通常兵器を使った侵略の時、となっており、これまで誤った情報によって核発射の手前までに至ったことが何度も発生しています。サイバー攻撃などによって制御不可能の事態におちいる危機も、以前にはなかった大きな脅威となっています。2013年、核戦争防止国際医師会議は、核兵器100 発で気候変動がおこり、農作物の不作などで年平均 11億 4千万人が栄養失調。10年間で20億人が餓死すると警告しました。
こうした危機は、人類の意志で直ちになくすことが可能です。
核兵器禁止条約の発効をうけて、日本政府に禁止条約への参加を求める地方議会の意見書が501に達し、全自治体の28%を超え、増え続けています。
また、全日本仏教会は、核兵器禁止条約の発効確定を歓迎する声明を発表し、「これを喜ばしく思う半面、核保有国と唯一の戦争被爆国である日本が、この条約に参加していないことを憂慮している」と表明しました。
日本カトリック司教協議会会長は、核保有国や、日本を含む「核の傘」のもとにある国々が来年1月22日に発効する核兵器禁止条約に反対していると批判。「世界的に世論を喚起して、核保有国に圧力をかける必要があります。その中で被爆国である日本が先頭に立つべきだ」と訴えています。
今年9月には、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN) の呼びかけで、NATO加盟国と日韓の計22カ国56人の元首脳、国防相・外相経験者が共同書簡を発表しました。核兵器が安全保障を強化するという考えは危険であり誤りだと強調し、核兵器禁止条約は「希望の光」だとして参加を各国に呼びかけたことも注目をされます。
条約は、核兵器の開発、実験、生産、保有、使用、威嚇に至るまで全面的に禁止・違法化するだけでなく、核兵器被害者への支援を明記しており、ビキニ環礁水爆実験で多くの被災船員を出した高知県民にとっても被災船員の救済に向けて、大きな意義を持つものです。発効によって核兵器に「悪の烙印」がおされたことで、すでに変化が起きています。核兵器関連企業への投資をやめた海外金融機関は、100社近くになり、日本でも生命保険主要4社が自制に踏み出しました。世界の市民社会の声が、大国の政策を動かす時代となっています。気候危機や原発事故への危険を憂慮する声は、世界銀行や世界の著名な金融機関が、原発・石炭火力を「座礁資産」と評価し、投資しない、巨大な動きとなっています。
核兵器禁止条約の発効は、核保有5カ国、とくにアメリカによる敵対・妨害をはねのけてのものでした。アメリカは10月、「核兵器禁止条約に関するアメリカの懸念」と題する書簡を各国政府に送り、条約への不支持、不参加を求めました。露骨な圧力・干渉であるとともに、いら立ち、恐れ、追い詰められているアメリカの姿を示すものともなりました。小さな国や途上国を含む多くの国ぐにが、こうした圧力・干渉をはねのけて、堂々と批准を進めていったことは、21世紀の今日、国際政治の主役が一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に交代したことを明らかにしました。
日本政府が「唯一の戦争被爆国として、核のない世界の実現に向けた国際社会の取り組みをリードしていく責務がある」としながらも、この核兵器軍縮において画期をなす条約への参加を否定し続けていることには、大きな矛盾があり、国際社会からの失望を招いています。 先日、国連総会第1委員会では、核軍縮に関する日本政府が提出した決議案に批判が集中しました。決議案は、核兵器廃絶を「究極」の課題としたうえで、核兵器禁止条約に一切触れず、昨年まであった「核兵器廃絶の明確な約束」も削除するというもので、共同提案国は 2016年には109カ国だったのに、今回は26カ国へと激減しています。
こうした核保有国に追随する惨めな外交から、唯一の被爆国、平和憲法を持つ日本として、核兵器禁止条約に参加し、イニシアチブを発揮すれば、人類に貢献する大きな変化を起こすことは間違いありません。
核兵器廃絶を求める国際社会の一員として、ただちに核兵器禁止条約の署名・批准を行うことを国に強く求めるときだと考えます。同僚議員のご賛同を心からお願いし、賛成討論といたします。