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- 2020年03月23日
- 議会(質問・討論)
- 2020年2月議会 米田稔県議による当初予算修正提案理由(2020.03.23)
私は、提出者を代表し、議発第2号「令和2年度高知県一般会計予算に対する修正案」について提案理由の説明を行います。
本修正案は、交通運輸政策費のうち高知龍馬空港施設設計等委託料1億4376万3千円、また小中学校費のうち県版及び全国版学力テストに関する歳出予算3633万2千円と、高等学校費のうち基礎学力把握検査等委託料5033万9千円、それぞれ減額修正を行おうとするものです。
最初に、高知龍馬空港施設設計等委託料についてです。
この予算は、高知龍馬空港に新たに国際線ターミナルビルを建設するための基本設計及び実施設計を委託するものです。
国際線ターミナルビルを設置する計画は、一昨年から6回に渡り開催された「高知龍馬空港航空ネットワーク成長戦略検討会議」の場で提案をされたものです。昨年9月の中間とりまとめでは、年間100往復便を目標に掲げ、総額42億円の施設建設が提案されていましたが、経営コンサルタントによるシミュレーションを行うなど、今日の海外情勢も勘案し、費用の縮減を検討した結果、今年1月22日の最終とりまとめにおいて、当面、規模を縮小した計画で進めることとなりました。
私たちも、今後本県でのインバウンド観光を促進するうえで、しっかりとした検疫や逃走防止機能を持つこと、また空港の混雑の解消、国際線利用は一旦県外空港まで行く費用負担が生じていること等を認識しています。そうした課題を理解しつつも、以下の点で、今議会への設計予算の提案は拙速であると考え、削除を求めるものです。
理由の第1は、費用対効果として示されている内容に不透明さが多すぎるという点です。 建設費29億円のうち国からの補助があるのか、あるとすれば金額はいくらかなど明確になっていません。全額県費負担となれば、県財政に大きな負担となります。
また、年間50往復のチャーター便を確保したとしても、年間4千9百万円の運営赤字が生じると試算していますが、その中には、電気、空調や保安機器の設備更新費用は含まれていません。それらを含めて計算し直すと、建設後10年間は、年間1億5千3百万円もの運営経費を県が負担することになります。
一方年間50往復した場合、経済波及効果4億1千3百万円が見込まれる、「稼げる」としています。しかし、その試算もチャーター便の客が全員高知県内で2泊するという想定であり、きわめて不確実なものです。
しかも、今日の新型コロナウイルス感染症による影響はいつ回復するかも見通せない状況です。慎重な検討が必要ではないでしょうか。
理由の第2は、建設後の国際線ターミナルビルの運営形態が明確になっていない点です。 県民の多くは、現在の高知龍馬空港ビル株式会社が運営を担うと考えているのではないでしょうか。しかし、国際線ターミナルビルの運営は、往復50便が利用しても運営赤字が巨額となることが見込まれており、株式会社がそのような事業を展開することはできません。空港ビル株式会社が運営できないもとで、新しい国際線ターミナルビルはどこが運営をするのか、また空港ビル株式会社との関係をどうするのかなど、現時点で明らかになっていません。
建設費29億円と、毎年の運営経費1,5億円余もの巨額な県費を投入する事業を開始するためには、県民に納得、合意できる計画をしっかり作り、説明責任が果たせるようにすることが重要です。「成長戦略検討会議」の最終結論が出されたのはこの1月22日、県が予算説明を行った2月12日まではわずか20日間しかなく、十分な検討が加えられたとは言いがたい状況です。
先に述べた課題と解決策を県民に明らかにできる段階で、改めて本予算を計上すべきです。同時に県議会が、今こそチェック機能を果たし、本予算を一旦削除するよう、強く求めるものであります。
次に、教育予算の減額修正についてです。
第一の理由は、第2期教育大綱の基本目標は、全国学力・学習状況調査において、小学校の学力は全国上位を維持し、さらに上位を目指す、中学校の学力は全国平均以上に引き上げる、としています。そのために小学4年、5年と中学1年、2年に県版学力テストを持ち込み、子どもと学校現場を際限のない点数競争へと追い立てています。
もともと政府・文科省は、全国学力・学習状況調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面に過ぎないこと、と説明しています。学力テストの点数引き上げを教育の大目標にすること自体、公教育を根本からゆがめることになると言わなければなりません。
第二の理由は、厳しい環境にある子どもが増え、教育格差がいっそう拡大をしています。そうした中で「学力偏重」の競争教育の強化によって、子どもたちのストレスを強め、またこれが要因となって、暴力行為、不登校、いじめなど様々な問題行動が発生し、深刻な事態が広がっているということです。
県教委人権教育課の資料に、不登校の理由についての調査結果が紹介されていますが、ともに学ぶ場である学校生活での「学業の不振」が、子どもにとって耐えがたい負担とストレスになっていることは明らかではないでしょうか。
点数競争ではなく、一人ひとりの基礎学力の定着、学ぶ喜び、わかる喜びを保障できる教育こそ求められています。
高校生向け・県版学力テストは、昨年12月議会で指摘をしましたが、国公立大学進学者数や家庭学習の時間数など数字目標を設定し、その達成に向けての県版学テ実施により、生徒、学校現場をストレスと多忙化へと追い立てています。しかも特定の大手教育産業の評価基準によって、生徒一人ひとりをSからDまでの学習到達度ゾーンに診断・認定し、ランク分けするなど、人権を踏みにじる教育は許されるものではありません。
国連子どもの権利委員会は、2019年2月「ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること」等、日本政府に勧告をしています。また全国に先駆けて、土佐町や大月町などで「子どもや教員への深刻な影響を懸念し、全国学力調査を、悉皆式から抽出式の調査に改めることを求める」意見書決議が可決をされています。
子どもの権利、尊厳を守る国内外の願い、世論にしっかりと応えていくことが、教育行政と高知県議会、議員の使命ではないでしょうか。
いま教育にとって大切なことは、過度な競争ではなく共同を広げること、子どもたち一人ひとりとしっかり向き合い、基礎学力の定着とその個性を最大限伸ばすことです。そのために、教員の専門性、同僚性の尊重と、早急な少人数学級の促進、教員の多忙化解消、そして定数内教員の確保と教員増が求められています。
教育行政が教育条件の整備を図るという役割をさらに発揮されることを、強く期待するものであります。
以上、令和2年度一般会計予算に対する修正案の提案とします。同僚各位のご賛同を心よりお願いを致します。