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- 2019年03月01日
- 議会(質問・討論)
- 2019年2月議会 吉良富彦県議の代表質問(2019.02.28)
【質問項目】
・知事の政治姿勢 地方自治と辺野古
・知事の政治姿勢 毎月勤労統計調査・消費税
・会計年度任用職員
・農業
・国民健康保険(国保)
・旧陸軍歩兵第44連隊跡地の保存活用
・教職員の異常な長時間労働
●吉良県議 私は日本共産党を代表して、以下質問を行います。
【地方自治と辺野古】
●吉良県議 まず、知事の政治姿勢に関わって、辺野古への米軍新基地建設について、伺います。
安倍政権は昨年12月14日、沖縄県が中止を強く求めているにもかかわらず、土砂の投入を始めました。土砂は赤土を多く含み、防衛省が県に示した含有率が守られていない疑いが持ち上がっていますが、防衛省は、県の立ち入り調査を拒否しての投入強行です。また、辺野古新基地の是非を問う県民投票の結果に係わらず工事は続行すると発言し、県民の声を一顧だにしない姿勢をとっています。
しかし、辺野古新基地は、完成など到底できないことを裏付ける事実が次々に判明しています。軟弱地盤の深さと、その地盤改良工事に使う砂杭の多さです。いずれも政府が隠し続けてきた「不都合な真実」です。
政府はこれまで大浦湾の軟弱地盤の存在を公にせず土砂投入を強行しました。既成事実を重ねて県民の諦めをまず誘った上で公表し設計変更に着手するという極めて姑息で卑劣な手法です。軟弱地盤の改良工事への設計変更には県知事の承認が必要ですが、玉城デニー知事は新基地建設反対の民意に応えたいと確固たる決意を繰り返し表明しており、設計変更は不可能です。
2月15日の野党合同ヒアリングで、防衛相は、海面から約90メートルの層にまで及ぶ軟弱地盤に対して国内での地盤改良の実績は最深65mで、海外でも最深70mであると明らかにしました。国内には、70mを超える工事可能な作業船すらなく、砂杭の総数は約7万7千本にも上り、環境面への影響はもちろん、総工費がどこまで膨れ上がるのか、完了までに何年かかるのか、一切明らかにしていません。また大浦湾側のサンゴ類7万4000群体の移植が必要であり、これにも県の承認が必要です。
途方もない年数を要することになる、としか政府がいえない、こんな公共事業が許されるのでしょうか。琉球新報は、政府の対応を「不誠実を通り越し、県民を愚弄しているとしか思えない。差別的で植民地のごとき政府の姿勢は、他県の公共工事でも同様にできるだろうか」となげかけています。
◆度重なる県民の「新基地建設中止」の審判を踏みにじり、情報を隠蔽、立ち入り調査も拒否し、既成事実を積みあげて強行するやり方は、国民主権、地方自治を押しつぶすものではないか、琉球新報の指摘も含めて知事はどう受けとめていらっしゃるのか、お聞きします。
■県知事 吉良議員の御質問にお答えをいたします。
まず、沖縄県辺野古の新基地建設について、お尋ねがありました。一般論として申し上げれば地方自治の観点からは地元自治体が反対しているにもかかわらず、国が事業を強行するといったことが望ましくないのは言うまでもありません。
また、公共事業における設計変更に伴う工期と費用の大幅な変更については、事業実施主体が責任を持って説明しなければならないのは当然であります。
ただ私は、従前から申し上げているように、沖縄の皆様の負担を軽減するに関しては平成24年の日米安全保障協議委員会いわゆる2プラス2での合意に基づいて対応していくべきだと考えており、このスタンスは今でも変わっておりません。
今般、埋め立て工事の課題として、軟弱な地盤を改良する必要があることが明らかとなりましたが、地盤改良にかかわる具体的な設計については、今後、防衛省において検討すると岩屋防衛大臣が説明されています。
地盤改良という新しい要素が加わったことで、設計の変更により埋め立て工事の工期は延びるとともに、費用も増えるものと思われます。
政府におきましては、今回の設計変更の内容について、沖縄県民の皆様の不安な声を踏まえ、しっかりと沖縄県に説明していくべきだとそのように考えています。
●吉良県議 (2月)24日投開票された辺野古への米軍新基地建設の賛否を問う県民投票は、埋め立て反対が投票総数の71.7%、43万4273票となり、投票資格者(有権者)総数115万3591人の4分の1(約29万)をはるかに超えました。県民投票条例の規定に基づきデニー知事は「投票結果を尊重し、速やかに内閣総理大臣及びアメリカ合衆国大統領に通知する」と述べ「辺野古埋め立てに絞った県民の民意が明確に示されたのは初めてであり、極めて重要な意義がある」と強調。辺野古新基地建設の工事を中止し、米軍普天間基地の一日も早い閉鎖・返還の問題も含めた県との対話に応じるよう、日本政府に「強く求めていく」と表明しました。
当初、投票に参加しないとしていた市も含め県内41市町村全てで「反対」が「賛成」を大差で上回り、翁長前知事が獲得した36万820票、玉城知事の史上最多の39万6632票も大きく超える歴史的な得票結果でした。
この結果は、多くの困難を乗り越えて県民投票を成功させた沖縄の民主主義、地方自治の勝利といえます。県民投票に示された沖縄県民の民意を重く受け止め、辺野古新基地建設のための埋め立てを安倍政権は直ちに中止すべきです。また、普天間基地の無条件撤去を求め、米国と交渉することを強く求めるものです。
◆知事は、辺野古建設の是非を問うた今回の沖縄県民投票の結果をどう受け止めているのか、お聞きいたします。
■県知事 次に、沖縄県での県民投票の結果をどのように受け止めているのか、とのお尋ねがありました。
今月24日に沖縄県で行われた県民投票につきましては、辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否に関し、沖縄の皆様の思いがあらためて明らになったものだと思いますし、これにより、政府による取組に関する説明の重要性がますます高くなったものと考えられます。
先ほども申し上げました通り、沖縄の皆様の負担を軽減することにかんしては、私は、
平成24年の日米安全保障協議委員会いわゆる2プラス2での合意に基づいて、対応していくべきだと考えております。辺野古移設だけが焦点化されておりますが、この2プラス2合意に基づいて、普天間飛行場の移設や、海兵隊のグアムなどへの移転と嘉手納基地以南の米軍施設の返還など、一連の再編プロセスが行われていくことも大変大きなメリットがあることなのではないかと考えます。
他方で、今回の県民投票の結果からも明らかなように、辺野古の埋立て反対について、大変多くの皆様の重い思いがあるということも、また重く受け止めなければなりません。
この両者をよくよく勘案して、両面から議論が徹底的に交わされることが大事なことだと思われます。
政府は外交や防衛について、責任を持って解決すべき立場にありますが、今回の県民投票を良き機会として、あらためて沖縄の皆様と対話を重ね、政府の取組について丁寧な上にも丁寧な説明を繰り返していくことが必要ではないかとそのように考えます。
【毎月勤労統計調査】
●吉良県議 次に、毎月勤労統計調査についてお聞きいたします。厚生労働省による毎月勤労統計調査の偽装を始めとする統計不正の影響は、極めて深刻です。
「政府統計への信頼が揺らいだ」75%(毎日新聞)、「この問題で政府の対応は不十分だ」83・1%、(東京新聞)、「政府の発表する統計を信用できない」79%(日経新聞)と、大多数の国民が不信と疑念を抱いています。日本経済学会は「日本の統計を通した実証研究の国際的な信頼性も大きく揺らいでいます」と訴え、「負の影響は計り知れません」との声明を出し強い警告を発しています。
統計データは、雇用保険の失業給付、労災保険の休業補償給付、育児休業や介護休業の給付などの給付額算定のベースとなっているため、給付不足がのべ1973万人、推計総額約538億円となっています。過労自死で夫を失った遺族の方は「労災認定には高いハードルがあり、被害者なのに何年も戦わないと認定されない。その上、国が数字をごまかして補償額を減らし、15年も放置し、わかっても秘密裏に修正していた。二重三重に国に裏切られた。怒りが抑えられない」と述べています。当然の怒りですだと考えます。県民の中にも多数の被害者がいると思われます。
◆知事は、毎月勤労統計調査の偽装とその影響についてどう捉えているのかお聞きいたします。
■県知事 次に、毎月勤労統計調査の偽装とその影響についてお尋ねがございました。
毎月勤労統計調査の問題に関しては、データそのものの信頼性に関わる不適切な調査手法が行われていたこと、調査手法について対外的に虚偽の説明が行われていたこと、この2点について問題があったと認識しております。
この間題については、昨日、厚生労働省の特別監察委員会により、組織的な隠蔽は認定されないとされたものの、公的統計の意義や重要性に対する意識の低さや幹部職員の公的統計に対する無関心などを指摘するとともに、外部チェック機能の強化等の再発防止策を盛り込んだ報告書が取りまとめられたところであります。
他方、毎月勤労統計調査以外の政府統計については、現在、総務省の統計委員会点検検証部会により、点検が進められているところです。国におかれては、特別監察委員会の報告書や点検検証部会の今後の点検結果をふまえ、政府統計への信頼が揺らぐことのないよう、徹底した原因究明と速やかな対策を講じていただきたいと考えております。
このほか、毎月勤労統計調査の不適切な処理により、雇用保険や労災保険における追加給付等も生じていることから、国においては、こうした不利益を被られた方々に、速やかに給付が行えるよう、しっかりと対応しく必要があるものと考えております。
●吉良県議 2004年から続けられていた統計不正は、2018年1月から極めて悪質な偽装となります。1つは、3分の1しか調査してなかった東京の数字を3倍化して、「補正」し、賃金アップを偽装したこと、2つ目が、これが決定的に重要ですが、調査対象の入れ替え、また他の全数調査との整合性をはかるためのベンチマークの変更で、基準が2000円ほど高くなったにもかかわらず、従来のようにサンプルの入れ替え、ベンチマークの変更を過去に遡及して改定することを突如やめて、前年の数字と比較したことで、賃金の伸び率を「かさ上げ」したのです。この問題を早くから指摘してきた明石順平弁護士は、「別の人と比べて身長がのびた、と言っているのに等しい」「厚労省はずうっーと嘘をつき続けてきた」と厳しく批判しています。
こうした「かさ上げ」をのぞくと、昨年の実質賃金は、マイナス0.5となっているとの野党側の試算を、厚労省も認めざるを得ない事態となっています。しかし、政府は、「かさ上げ」部分をのぞいた場合の実質賃金の伸び率を公表することに否定的な態度をとっています。あまりに無責任です。
そもそも統計は、社会経済の実態をとらえ、各種の政策の基礎となることから「国民共有の財産」であり、民主主義の基盤をなすものです。1947年に制定された「統計法」は,第1条「法の目的」で、真っ先に「統計の真実性を確保」と明示されていました。これは戦前の反省にたって、つまり「大本営発表」に象徴される当局にとって好都合な数字だけではなく,何よりも現実を正確に反映した客観的な統計が作成されなければならない、という強い決意を表したものです。ところが、統計法は、2007月5月、安倍首相、菅総務大臣のもとで全面改訂が行われ、第一条「目的」の条文から、先ほど申し上げました「真実性を確保」の文言が削除されました。偶然とは思われません。
◆昨年の実質賃金はのびていないことを、政府はしっかりと説明すべきではないか、知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、昨年の実質賃金が伸びていないことを政府がしっかりと説明するべきではないか、とのお尋ねがございました。
平成30年度の共通事業所における実質賃金につきましては、国において、第一回目の有識者検討会が去る2月22日に開催されたところであり、これから議論が進んでいくものと承知しております。
実質賃金をめぐる議論につきましては、国民の関心も高いことから、国におかれては、検討内容や検討結果について、丁寧に説明を行っていただきたいと考えております。
●吉良県議 安陪政権は、偽装した「賃上げ」などを「景気回復」の根拠にして、今年10月から消費税率10%への引き上げを決めましたが、その前提は崩れました。
2012年を100として実質賃金指数は、13年99.3、14年96.6、15年95.7、16年96.5、17年96.3で、18年も先に指摘したとおりのマイナスで、アベノミクスで実質賃金は約4%低下しています。
消費税8%への引き上げは、消費を大きく後退させ、いまも深刻な不況が続いています。8%増税前に比べ、家計の実質消費支出は2013年平均363.9万円から338.2万円と年間25万円も落ち込んでいます。5年連続のマイナスです。日本全体でみても、GDPの実質家計消費支出(持ち家の帰属家賃は除く)は、2013年平均の241兆円から、2018年7-9月期には237.9兆円とは3兆円も落ち込んでいます。
増税延期を決めた2年半前、直近の4半期のGDPは年率換算でプラス1.6%でしたが、昨年12月に発表された7~9月期のGDPは年率換算でマイナス2.5%です。これは、2014年の8%増税強行直後以来の大きな落ち込みとなっています。2年半前の増税延期の理由は「世界経済の不透明感」でした。今、世界経済は、米中貿易戦争、イギリス離脱問題とEUの経済不安など、2年半前とは比較にならないほど「不透明感」は高まっています。2年半前の政府の延期理由がゴマカシでなければ、当然、今年10月の増税は延期となります。
◆消費税増税の前提が崩壊しているのではないか。増税による暮らしと地域経済への深刻な影響が出ることをどうとらえているのか、知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、消費税増税の前提が崩壊しているのではないか。増税により暮らしと地域経済への深刻な影響が出ることをどう考えているのか、とのお尋ねがございました。
政府は、昨年10月15日の閣議において、アベノミクスの推進により、経済成長率、雇用の状況などに鑑みて、景気は回復しているとして、消費税の増税をおこなうと確認をしております。
これまでも申し上げているとおり、消費税率の8%から10%への引上げについては、現在の国・地方を通じた厳しい財政状況や急速に進む少子高齢化という状況を鑑みれば社会保障制度の充実・強化を図り、かつ持続可能性を確保するために、やむを得ないものであると考えているところです。
一方で消費税率の引上げに当たりましては、経済的に厳しい状況にある方やマクロ経済全体へのマイナスの影響をできるだけ小さくすることが重要です。
国においては、前回の消費税率引上げの経験を活かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応することとしており、本県としましても、国の施策に呼応し、しっかりと一連の経済対策を実行してまいります。
●吉良県議 2017年度の企業の経常利益〔金融保険除く〕は史上最高の83.6兆円です。消費税5%実施、そして「構造改革」が本格化する97年度の27.8兆円の3倍にも膨れ上がっています。一方、2017年度の法人税収〔一般会計〕は、11.7兆円と、97年度の13.5兆円よりも減少するという異常な姿となっています。その結果が、大企業の内部留保〔保険・金融含む/2019国民春闘白書〕がこの10年で281兆円から425兆円と激増する事態を生んでいます。
◆このような状況は異常であり、消費税の引き上げではなく法人税の見直しにより対応すべきだと考えますが、知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、増税は消費税の引上げではなく、法人税の見直しにより対応すべきではないか、とのお尋ねがございました。
少子高齢社会における社会保障の安定財源としては、税収が経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく、安定していることに加え、勤労世代などの特定の者への負担が集中せず、経済活動に与える歪みが小さいことが望ましいとされています。
そのため、幅広い国民が負担する消費税は、これにふさわしい財源であると考えています。
先程申し上げましたとおり、消費税率引上げに当たりましては、経済的な影響をできるだけ小さくすることが重要でありますことから、政府におきましては十分な対策を実施してもらいたいとそのように考えております。
●吉良県議 私ども日本共産党は、こうしたいびつな状況にメスをいれ、8時間働けば普通に暮らせる賃金、大企業・富裕層の応分による社会保障の充実を提案しています。そして、現在の状況で消費税増税はすべきでない、と考える個人、団体とも共同して、消費税増税中止をもとめて全力をつくす決意です。
【会計年度任用職員】
●吉良県議 次に、会計年度任用職員問題についてお聞きいたします。来年4月から導入される会計年度任用職員制度について、県の方向性が職員組合に示されました。
この制度は、格差と貧困、とりわけワーキングプアと称される非正規雇用の拡大が、大きな社会問題となるなかで、急激に増加してきた自治体での臨時・非常勤職員の「任用の基準」を統一化、適正化すると同時に、なにより処遇改善を目的としたものであると、政府は繰り返し国会で答弁しています。また「処遇を引き下げることは改正法案の趣旨にそわないとものと考えている」と、参総務委員会でも総務省自治行政局公務員部長も答弁しています。
地方行財政の専門家である小西砂千夫・関西学院大学教授は、同制度の意義について「格差社会の問題が指摘されて久しい。正規職と非正規職の処遇の違いはあまりにも大きく、ワーキングプアという言葉も生まれた。それと闘うはずの地方自冶体が自らそれを助長すべきではない。会計年度任用職員という柱を立て、同一労働・同一賃金の観点で適正化を図るのは当然である。」「スクールカウンセラーが必要といわれ、志望する若者も少なくない。しかし、不安定な身分で昇給もない処遇だと、現実的な進路にはなりにくい。そこに大きな壁がある。若者の田園回帰を進め、出生率を上げるのが課題である。仮に、夫婦がともに地方公務員の会計年度任用職員だとして、同一労働・同一賃金の観点で処遇改善が進めば、農村の生活費ならば十分暮らせる。そうなれば、若者の地方移住の条件は大きく変わる。会計年度任用職員の創設には、このように大きな社会的な意義が込められている。構造改革がもたらした歪んだかたちでの人件費圧縮の悪弊を払拭するために、使命感をもって制度開始に向けての取り組みを進めてほしい」と述べています。
◆小西氏の指摘も含め、同制度の目的、意義をどう捉えているか、また、目的の1つは、処遇の改善であり、処遇の引き下げではあってはならないと考えるが総務部長にお聞きします。
■総務部長 まず、会計年度任用職員制度の目的、意義の受け止めについて、お尋ねがございました。
議員からお話のありました小西教授の主張につきましては、会計年度任用職員制度の導入により、同一労働・同一賃金の観点で処遇改善が進み、構造改革のもたらした歪みの是正などが期待される、という主旨であると受け止めております。
この制度につきましては、先ほど知事から答弁ございましたとおり、臨時・非常勤職員の適正な任用や勤務条件を確保するために導入されるものであり、このことによって、臨時・非常勤職員の方々が、引き続き地方行政の重要な担い手として活躍していただく、より適切な環境が整うものと認識をしております。
また、同制度の導入により、時間外勤務手当や通勤手当等の他、一定の期間勤務した場合には、期末手当が支給できるようになることから、一定の処遇改善につながるものと考えており、本県の制度導入に向けて、その目的・意義を十分踏まえた上で、検討を進めていきたいと考えております。
●吉良県議 今回、県が示した制度内容は、国のマニュアルなど最低限の基準を機械的に導入したもので、県と職員組合が長年の話し合いで合意してきた賃金、有給休暇などの労働条件を一方的に引き下げるものとなっていれば、処遇改善とはいえず到底、容認できるものではありません。
今回、処遇が大きく切り下げられようとしている職種に、消費生活相談室と登記事務にかかわる職員がいます。
ともに専門性、経験が重要な職種であり、一時的臨時的な仕事ではありえません。たとえば、消費生活相談員については、消費者庁も、繰り返し雇用の安定をはかるよう通知しています。消費者安全法施行規則は「消費生活相談員が実務の経験を通じて専門的な知識及び技術を体得していることに十分配慮し」「消費生活相談員の専門性に鑑み適切な人材及び処遇の確保に必要な措置を講ずること」としています。以前に指摘したスクールソーシャルワーカーの低処遇の問題もその1つです。
◆専門性、経験が重要な職種は、本来、正職員として採用すべきではないか、総務部長にお聞きいたします。
■総務部長 次に、専門性、経験が重要な職種について、正職員として採用すべきではないか、お尋ねがございました。
まず、任期の定めのない常勤職員が従事すべき業務か否かの判断に当たっては、ご質問にありました専門性や経験だけでなく、個々の具体的な事例に則して、業務量や担うべき業務の範囲、責任の程度などを踏まえ、総合的に判断する必要があると考えております。
会計年度任用職員制度の導入に当たり、総務省が作成したマニュアルでは、「臨時・非常勤の職の中に常勤職員が行うべき業務に従事する職が存在することが明らかになった場合には、常勤職員や任期付職員を活用する検討が必要」とされております。
本県におきましても、現在の臨時・非常勤職員が従事している業務内容を精査・整理した結果、常勤職員が行うべき業務内容であることが判明した場合には、正職員としての採用を含め、常勤職員等による対応をしっかりと検討していきたいと考えております。
●吉良県議 今回、県が示した運用方針は、国が処遇改善のための財源を示さないので、従来の予算の枠内で、処遇改善分にかかる費用を別のところで切り下げて帳尻を合わせようとしているようにしか見えません。行政の最大の力の源泉は、職員の知恵と力であり、経験と専門性です。人を大切にできない組織に未来はありません。
◆国にしっかりと財源を確保させて、処遇を改善し、希望をもって働ける職場にする。その決意を知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、国に対する会計年度任用職員制度の導入にかかる財源の確保と処遇の改善などへの決意について、お尋ねがございました。
会計年度任用職員制度につきましては、地方自治体の臨時・非常勤職員の適正な任用や勤務条件を確保するために導入されるものであり、このことによって、時間外勤務手当や通勤手当等の他、一定の期間勤務した場合には、期末手当が支給できるようになることから、一般的には処遇改善につながるものと考えております。
また、国会においても、「勤務条件などの確保に伴い財政上の制約を理由として、いわゆる雇い止めを行うとか処遇を引き下げるといったことは、改正法案の趣旨に沿わない」旨の答弁がなされているところであります。
このため、全国知事会などとも連携し、制度導入に伴い必要となる財源について、これまでも国に対し、その確保を求めてまいりました。
制度導入まで残り1年余りの状況となっていることも踏まえ、引き続き、財源確保について、国に対し、しっかりと要望してまいります。
併せて、会計年度任用職員の方々が、県勢浮揚の実現に向けて、それぞれの業務において、力を発揮していただけるよう、制度導入に向けた準備を進めてまいりたいと考えています。
●吉良県議 2015年12月の地方財政審議会の意見〔「 今後目指すべき地方財政の姿と平成28年度の地方財政への対応についての意見」〕は、地方財政計画における過去10年間の歳出の推移を見ると、子育てや高齢化、雇用や防災など行政需要や国の制度に基づく社会保障関係経費の増大にもかかわらず、歳出総額は抑制され、給与関係経費の減少などでの対応を余儀なくされ、地方自治体の運営は困難をきわめている、とし、「社会保障等の対人サービスの適切な提供には、マンパワーの確保が重要である。今後、少子高齢化への対応や社会的に支援が必要な人々へのきめ細かな対応がますます求められる」と指摘しています。
県は、課題解決先進県として、5つの基本政策に基づき、積極的な取り組みを進めていますが、貧困と格差の拡大、TPP、日欧EPAなど、自由化・規制緩和から地域経済を守る取り組みなど、行政需要は拡大をつづけています。それにもかかわらず、専門性の高い職員を正規化できないのは、職員体制3300人の枠組みに縛られているからで、その枠組みが限界に来ているのでないかと考えます。
◆3300人体制を見直し、必要な増員をすべきと思うが知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、知事部局3,300人体制の見直しについて、お尋ねがございました。
知事部局の体制につきましては、「県政運営指針」も踏まえ、これまでも業務の見直しや効率化に向けた取り組みを進めながら、業務の状況に応じた職員の増員を含む適正配置により、簡素で効率的な組織の構築に努めているところです。
新年度においては、行政改革を進めることで、こうした取り組みをさらに強化することとしております。
一方で、ご指摘のありました行政需要の拡大や災害対応などのため、業務量が増加する中、職員定数に縛られることでやるべき業務ができない、あるいは、職員に過度な負担が生じるということがないよう留意する必要があると考えています。
知事部局3,300人体制の見直しについては、新年度、検討することとしておりますが、いずれにしても必要な人員をしっかりと配置できる体制を目指していきたいと考えているところです。
【農業】
●吉良県議 次に、農業政策についてお聞きいたします。昨年末のTPP11に続き、2月1日に日欧EPAが発行し、また、米国とはTPP以上の自由化要求が必至の貿易交渉が進められています。原則関税ゼロのルールにより、国内農業は、極めて厳しい局面に追い込まれています。こうした広大な「自由貿易圏」の出現と、輸送や保管技術の向上により、農産物においても国際的な最適地生産が大きく進み始めています。
県内で花卉栽培に取り組んでいる方からお話をお聞きしました。花類は関税ゼロで、現在、日本の花の流通量の約30 %は輸入品となっています。三大切花、菊、バラ、カーネーションは50%以上です。輸出国はコロンビア、インド、中国、ベトナム、マレーシヤ、韓国、ケニヤ、エクアドル等で、産地の特徴は、熱帯地方の高冷地(標高2.000~3.000m)の常春の土地であり、日本のように施設、暖房も必要ない所です。
最近ベトナムからコチョウランの切り花の輸入が増加しています。花の中で最も高温条件を好む、暖房費の多く要る作物ですが、暖房の要らないベトナム産には太刀打ちできません。そして、最近300㌶の菊の切花生産企業が出来たとのことです。日本の生産は大打撃で壊滅も近いのではと警告を発しています。
また、その方は、この間、オランダ、ドイツの花生産者、バイヤー等と情報交換し、世界一の花・野菜の生産国でヨーロッパの流通のハブ的存在のオランダでも、最近は新興国アフリカ等より、ヨーロッパ各国に農産物の流入量が多くなり苦戦しているとのことでした。
そして、野菜類が花類の様になれば、高知の施設野菜は大変なことになる。ピーマン、ししとう、トマト等が外国より、スーパー等量販店に直接流れ販売されたら、太刀打ちできません、と指摘しています。土佐市の乾燥ネギ工場が中国ヘ行き、ネギ生産は衰退しました。日本国内でも栽培環境の違いで、産地間の競合がありますが、それが国際舞台に大規模に展開されようとしています。
◆現在、県は県下各地でJAや食品企業などと様々な形で提携し、大型の「次世代型ハウス」による大規模な施設園芸を推進していますが、こうしたTPP11などの世界の流れを視野に入れ、リスクも認識したうえで、取り組む必要があると思いますが、知事の認識をお聞きいたします。
■県知事 次に、TPP11などのリスクを踏まえたうえでの大規模施設園芸の推進について、お尋ねがございました。
TPP11及び日欧EPAの輸入関税撤廃による本県園芸品への影響については、野菜では、これまでも関税率が低いうえ、参加国から競合する品目の輸入がほとんど無いこと、また、本県産の野菜は、品質や生産性が高く優位性もあることなどから、直接的な影響は無いものと認識しております。
また、これまで大型の「次世代型ハウス」の整備にあたりましては、生産量が多いためしっかりとした販売戦略が必要とされることから、品目や販路などを国内外の情報をもとに
慎重に議論を重ね決定してきているところでございます。
しかしながら、海外における新たな産地化の動きや、輸入の増加による価格低下などへの影響に備えて、本県の強みである施設園芸をさらに磨きあげ、海外の動向に関わらず、微動だにしない産地をつくりあげることが重要であります。
現在、「次世代型ハウス」での大規模な施設園芸の推進をはじめ、既存ハウスへの環境制御技術の導入など、施設園芸農家の所得向上に向け、「次世代型こうち新施設園芸システム」 の取り組みを進めてきております。
この取り組みにより、県内各地で次世代型ハウスの面積拡大と環境制御技術の導入が進み、生産量が増大したことで、日本一の生産量を誇るナスやニラ、ミョウガなど、国産志向
の高い青果物需要において、揺るぎない地位を保ち安定した販売につなげているところであります。
また、野菜の生産増大にともない、国内販売だけでなく、従来から取り組んでいるアジア向け輸出をさらに強化することに加え、EU向けにゆずで12・8パーセント、グロリオサなど花井類で8・5パーセント課せられていた関税が撤廃されたことから、これを好機と捉えEUへの輸出の拡大に取り組むなど海外への新たな販路を模索することも重要と考えております。
今後、さらなる収量増加や高品質化、省力化などを目指して、環境制御技術にIoTやAI技術を融合させた進化型のシステムである「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発に取り組むことで、施設園芸の飛躍的な発展を図り、国内外の競争に負けない園芸王国「高知」を実現してまいりたいそのように考えています。
●吉良県議 今年、国連が呼びかけた「家族農業の10年」がスタートします。国連が2014年の「家族農業年」に続いて本格的な取り組みを呼びかけたのは、輸出偏重や大規模化、企業的農業を推進してきた世界の農政が、家族農業の危機を広げ、貧困や格差、飢餓を拡大し、地球環境を悪化させてきたことへの反省からです。世界の農政が歴史的な転換を求められているのです。
また昨年末の国連総会は、小規模・家族農業の役割を後押しする枠組みとして「食料主権」「種子の権利」などを定めた「農民の権利宣言」を採択しています。
ところが、安倍政権は、こうした世界の流れにさからって、「競争力強化」を口実に大規模化・企業参入を最優先し、農協や農地制度、種子法など戦後の農業や家族経営を守ってきた諸制度を壊してきました。国連の「農民の権利宣言」に棄権の態度をとったのは、それを証左するものです。
政府が喧伝する「輸出拡大」にしても、2017年から2018年にかけ、農産物輸出は4966億円から5661億円へと確かに695億円増えましたが、農産物輸入は6兆4259億円から6兆6224億円と、輸出増の3倍近い1965億円も増加しています。つまり、輸出増と輸入増の差し引きで、国産の農産物市場が1270億円も縮小しているのです。農業成長戦略は完全に破綻しています。
安倍政権がめざすのは「企業が一番活躍しやすい国」であり、国民への食料の安定供給や国土や環境の保全は二の次です。日本農業新聞はこの1月4日付でアンケート調査結果を発表しました。農協組合長の96%が安倍農政を「評価しない」と答えています。農政の転換が必要です。多くの国民も、農業と農村の荒廃に胸を痛め、「安全な食料は日本の大地から」を願っています。生産者と消費者が共同した地域農業を守る取り組みも各地で発展しています。農山村に移住する都会の若者が増える「田園回帰」の流れも広がっています。
◆「国連家族農業10年」、「農民の権利宣言」にもとづく、地域に根ざした、小規模でも、その地に住み続けられる農業政策、地域政策が大事と思うのでありますが知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、「家族農業の10年」、「農民の権利宣言」に基づく農業政策についてのお尋ねがございました。
国連におきまして、一昨年の、12月に、2019年から20 28年までの1.0年間を「家族農業の10年」とすることが、また、昨年12月には「小農と農村で働く人びとの権利に関 する宣言」いわゆる「小農の権利宣言」が決議されました。
「家族農業の10年」の目的は、小規模農業が食料安全保障や自然環境、農業の持続性などの面で大きな役割を果たしていることに着目し、国際規模で小規模農業が直面する課題などについて議論を交わし、飢餓の根絶などに対応していこうとするものであり、また、「小農の権利宣言」は、世界の家族農業の権利を守ることを目的に、小規模農家の価値と権利が明記されたものであると認識をしております。
我が国の農業においては、家族経営体の割合が約98パーセントを占めており、日本の農業の維持・拡大を図る上では、その健全な経営発展を図っていくことが極めて重要であります。
また、本県の大部分を占める中山間地域では、産業の中心である農業を守ることが、地域そのものを守ることに繋がりますことから、生産条件が厳しく、規模披大が困難な中山間地域において、小規模な家族経営体がしっかりと存続しているための取り組みが不可欠であります。
このため、産業振興計画のもと、県内各地に設置した「学び教え合う場」での技術指導や、環境制御技術の導入支援などにより、生産性の向上を図るとともに、高齢化などによって農地の維持が困難になった地域では、集落営農組織や中山 間農業複合経営拠点の整備に取り組んでいるところであります。 さらに、今年度からは小規模園芸農家の所得向上にも直結する「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発を進めております。国連の「家族農業の10年」や、「小農の権利宣言」でいわれる、小規模農業の有する価値や役割は、農業の持続性という面で考えますと本県の目指す農業政策と根本的に相通ずるものと考えております。
今後におきましても、経営の規模や形態を問わず、多様な担い手が地域で安心して暮らし、農業を続けていけるよう、しっかりと取り組んでまいります。
【国民健康保険】
●吉良県議 次に国民健康保険についてお聞きいたします。高すぎる国保料に、住民は悲鳴をあげています。高齢低所得の加入者が多い国保の保険料は、そもそも高くなる構造があり、他の現役世代の医療保険にはない平等割と、加入者数で保険料が増える均等割もあって、子育て世帯にとってより厳しいものとなっています。たとえば、高知市で、年収240万円の夫婦と子ども二人の世帯の保険料は、後期高齢者医療支援を加えると約29万円にもなり、1ヶ月半分の給与に相当します。子どもの均等割だけで6万円となります。同じ世帯が「協会けんぽ」なら、保険料は半分以下の約12万円です。
国は、国保の都道府県単位化にあわせ、国保の「構造的問題」の解決を求める地方の声におされて3400億円の公費投入を行いましたが、高すぎる国保事業費納付金つまり国保の保険料の実態はほとんど改善されていません。むしろ、高額な新薬の保険適用にともない、保険料がますます高くなる傾向となっています。
2019年度の国保の市町村事業費負担分は、18年度比で9%もの増額となっており、このままでは、19年度の保険料は大きく引き上げられることとなります。昨年の雇用者の実質賃金はマイナスです。19年度の年金給付も、マクロ経済スライドによる0.9%減が実施され、0.1%増にとどまるため、物価上昇1.0%に追いつかず実質マイナスです。
全国知事会は2014年、「負担は限界」として、国保料を協会けんぽ並みに引き下げるために1兆円の公費負担増を要望し、3400億円の公費投入後も、「国庫負担率の引き上げ」を要望しています。知事は、18年度の実施状況を見て、さらに政策提言をしていくことを答弁していましたが19年度の国保料の引き上げが県民に与える影響は深刻です。
◆知事は、その影響をどう認識しているのか、また引き上げをできるだけ回避するため県としてどう取り組んできたのかお聞きします。
■県知事 次に、国民健康保険に関して、来年度の国民健康保険の事業費納付金の増額の県民への影響と、引き上げをできるだけ回避するために行ってきた県の努力について、お尋ねがありました。
市町村に負担をお願いする国保事業費納付金は、各市町村の国保料・税率が、主にこの納付金を基に算出されることから、納付金の増額は、被保険者の負担に影響を与える可能性があるものと認識をしています。
本議会に提出しております来年度の予算案において、国保事業費納付金は約9%の増額を見込んでおりますが、これは、今年度、納付金算定の基礎となる要素のうち、歳出にあたる医療費が、今年度は想定以上に増加しており、来年度においても引き続き増加すると見込んだことなど歳出の増が見込まれる一方、納付金以外の歳入はむしろ減少する見込みであることが主な理由となっています。
今回、この納付金の算定に当たりましては、医療費以外の歳出の要素である社会保険診療報酬支払基金へ支払う介護納付金の精査を行うなど、納付金の増加幅を圧縮するよう努力するとともに各市町村には、来年度の納付金の状況について丁寧に説明を行い、理解を求めてまいりました。
また併せて、医療費を適切に抑制して、今後の納付金の増加を抑制するために、ジエネリック医薬品の使用促進や糖尿病の重症化予防などの健康づくりさらには地域包括ケアシステムづくりや地域医療構想の推進などこれは現在進行形の取り組みでもありますけれども、これらの根本的な取り組みにも取り組んでいるところであります。
現在、各市町村においては、県から示された納付金の額だけでなく今年度の国保特会の収支見込みや基金残高、さらには、国保財政の健全な運営と被保険者への負担の影響などを総合的に勘案し、国保料・税率の検討を行っていただいているものと考えております。
●吉良県議 日本共産党は、1兆円の公費投入で、「均等割」「平等割」をなくし、国保料を大幅に引き下げること、その財源としてきわめて低い税率の証券優遇税制を、他の先進国並みにすれば、1.2兆円確保できると提案しています。
子育て世代の保険料を格段に高くしている均等割は、子どもの貧困解消や少子化対策に逆行するもので直ちに廃止すべきものです。2月7日の参議院予算委員会で、日本共産党は、国は全国知事会から均等割の軽減措置の導入など見直しを再三要望され、検討すると合意してから4年も経っていることを指摘し、「いつまでに結論を出すのか」と厳しく迫りました。首相は「引き続き検討する」としか答えませんでした。この点でも地方からの声と取り組みをさらに強めていく必要があります。
全国には、仙台市など、子どもの均等割を軽減している自治体が存在しますが、国保法77条(国保税の場合、地方税法717条)は、被災、病気、事業の休廃止など「特別な事情」のある場合、市町村の判断で保険料〔税〕を減免できます。「特別な事情」には政省令の定めがなく、首長の裁量にゆだねられており、各地の独自減免は、この規定を利用し「こどもがいること」を特別な事情として実施しています。また、国保法77条にもとづく減免制度への公費投入は、政府・厚労省の区分でも「国保運営方針に基づき、計画的に削減・解消すべき赤字」には含まれていません。もちろん、厚労省が「削減・解消すべき」とする「法定外繰り入れ」も「自治体の判断」でできることは、国会答弁、2015年4月16日、衆院本会議などの答弁で明確にされています。
◆そこで、県として子どもの均等割の減免にふみだすことを求めます。例えば県内自治体の一般財源繰り入れ分を県が支援する制度です。課題解決先進県として、知事の決意をお聞きいたします。
■県知事 次に、国民健康保険料の子どものいる世帯への均等割の減免の実施についてお尋ねがございました。
国民健康保険では、所得や資産といった被保険者の能力に応じた負担だけでなく、子どもを含めた全ての被保険者の人数に応じて国保料・税を負担していただくこととされており、
子どもの多い世帯はそれだけ負担が増加することとなっています。
他方、わが国の少子化の現状は危機的な状況であり、将来にわたって国や地方が活力を維持していけるよう、若い世代が安心して結婚し子育てを行うことができる環境を整えることは国を挙げた大きな課題であり、幅広い分野での思い切った政策の展開が不可欠となっています。
また、議員のお話にありました国保料・税の子どもの均等割の減免を行った場合には、その分の国保料・税に代わる多額の財源が必要となってまいります。
そのような状況の中、全国知事会としては国に対して少子化対策・子育て支援の充実の観点や医療保険制度間の公平性の観点から、国保料・税の子どもに係る被保険者均等割の軽減措置を導入し、子どもの多い世帯の負担軽減を図ることを、繰り返し提言してまいりました。
私としても、軽減措置の導入については、国の責任と負担によって行っていただく必要があると考えており、引き続き全国知事会を通じて、粘り強く提言を行ってまいりたいと考えています。
●吉良県議 高すぎる国保料が払えず、無保険となり、病院にかかれず手遅れになる不幸な事態がうまれています。
2017年6月1日時点の滞納世帯は10652世帯で、加入世帯(11万7339)の約9%、窓口で10割負担しなければならない資格証明書の発行は2017世帯にも及んでいます。これ以外に、失業、退職後に、保険料が高すぎて、国保に加入していない無保険世帯も存在しています。
高知市で、妻と幼児の3人世帯の40代の男性の例です。喉に違和感を持ち、保険証がなくても受診できる医療生協の「無料低額診療」を知り受診しましたが、甲状腺に炎症性のリンパ節増大が疑われて、総合病院を紹介されました。しかし、保険証がないために総合病院は受診できず、市の国保窓口に「病状・受診経過書」を持参し、訪ねましたが、滞納額の2分の1が払えないこと、また、総合病院への紹介が受診ではなく「精密検査」であることから「特別の事情」にも該当しない事の2点を理由に保険証が交付されず、この時点で、この男性は総合病院にかかることはできませんでした。男性はその後、滞納額の一部を納付し、受診できましたが、すでに食道癌がリンパに転移し、手術もできない状況でした。高知市は、滞納額の半分を一括納入しないと保険証をわたさないという機械的な対応をしています。
それは、2009年1月、わが党の小池晃参院議員の質問趣意書に対して、当時の麻生太郎総理大臣が、医療を受ける必要がある場合には、保険料が払えなくても「緊急的な対応として、当該世帯に属する被保険者に対して短期被保険者証を交付することができる」とした閣議決定の趣旨にそぐわない対応です。
また機械的な差押さえも増加しています。2009年の1100件から2016年度は2639件となっています。この点も、改正された生活困窮者支援事業の趣旨にそって、「滞納は生活状況のシグナル」として、支援につなげる取り組みを強化すべきです。
◆生活苦、保険料滞納から受診できず、手遅れになるような事態を生まないよう、市町村に対し文書等を含めてしっかりと助言すべきと思いますが、健康政策部長にお聞きします。
■健康政策部長 国民健康保険の保険料滞納者への対応に関する市町村への助言ついてお尋ねがございました。
国保料・税を長期にわたり滞納している方については、まずは、その方が行っている事業の休廃止や病気など、国保料・税を納付することができない特別な事情があるかどうかを適切に把握し、その上で特別な事情がある方に対しては、短期被保険者証を含めた被保険者証を交付します。一方、特別な事情がないにもかかわらず滞納している方に対しては、一旦は医療機関の窓口での本人負担が10割となる資格証明書の発行を行うこととされています。
そのため、県では、市町村に対して、滞納している方の所得の状況や病気の実情など滞納の理由を丁寧に確認、その状況に応じて適切に短期被保険者証とするか被保険者資格証明書とするかの判断を行うよう助言しているところです。また、併せて各市町村の条例に基づいた国保料・税の減免制度を活用することや、さらには、生活困窮者に対しては、生活保護などを担当する福祉部門ともしっかりと連携して対応する必要があることなども助言しています。
今後におきましても、研修会の機会や個別に訪問して行っている事務打ち合わせの場などを通じて、それぞれの市町村で適切な対応がなされるよう取り組んでいくほか、こうした助言の内容のさらなる徹底を図るため、市町村に対して文書での周知も行ってまいります。
【旧陸軍歩兵第44連隊跡地】
●吉良県議 次に、旧陸軍歩兵第44連隊跡地についてお聞きいたします。旧大蔵省印刷局あとに奇跡的に残った陸軍歩兵第44連隊の弾薬庫等の戦争遺跡の保存と活用について伺います。
2017年9月議会での私の質問に対し、知事は既に売却手続きに入っていた当該用地について「県が取得するには相当ハードルは高いと考えられますが、まず文化財としての価値について専門家の意見をお聞きし慎重に判断して参りたいと考えている」と述べられ、次に「一方で、売却手続きが進められようとしている段階にあり、検討可能な時間は限られているのではないかとの危惧がございますので、その点については財務事務所に要請したいと思います。」と、保存と活用を切に願ってきた県民に大きな希望を与える答弁をなされました。
その後開催された高知県文化財保護審議会の答申は「弾薬庫・講堂の建造物については、明治30年代前半に建築されていて、高知の近代和風建築、近代化遺産としては他に類例が見当たらず、歴史的価値が高いことなどから、ともに国登録有形文化財、県保護有形文化財に相当する」と報告され、また、審議の過程では「多くの方々が出征していった歴史的いわれのある場所であり残すべき価値がある」「隣接する高知大学はまさに連隊の跡地の歴史であり平和学などの教材としてあるいは学びの場としての意義は十分にある」との意見が多く出された事も付議されていました。
この答申を、真摯に受け止められ、財務事務所や文化庁とも積極的に協議を重ねてこられたことに敬意を表したいと思います。
昨年の12月末、私どもが行った知事・教育長への予算要望の席で、教育長から塚地議員が本議会で提案した高知県歴史民俗資料館の戦争遺物などを保存活用する場所にという方向で検討されている旨のお話があり、本日午前の梶原議員に対するご答弁で、その方向が現実に向かっていることを確信いたしました。
◆そこで、知事に伺いますが当初「県として取得するにはかなりハードルが高い」とお答えになっていた状況から、「土地を購入することを前提で検討する」と決断されたのはいつ、どのような思いであったのか改めて伺います。
■県知事 最後に、第44連隊跡地の保存活用に関し、土地の購入を前提に検討すると決断したのはいつ、どのような思いであったのかとの、お尋ねがございました。
第44連隊跡地は、高知県文化財保護審議会からの答申にもありましたとおり、単に遺存する弾薬庫及び講堂が文化的価値を有するというだけではなく、明治中期から昭和前半にかけて、高知の多くの若者がこの地から出征し、そして多くの若者が帰らぬ人となったという、高知県民にとっては歴史的に意味のある土地であり、当該跡地を後代に継承することは県としましても重要な意味があるとの認識の下、関係機関との協議を進めて参りました。
一方、文化財の取得、保存については極めて限られたケースであり、県が取得するには相当ハードルは高いとの考えから、まずは、教育委員会において土地を購入せずに活用する複数の方法について検討を進めて参りましたが、本年1・月末までに全ての協議が不調に終わり、残念ながら土地を購入せずに活用することは困難であるとの結論に至りました。
しかしながら、午前中の梶原議員のご質問にお答えしましたように、先の大戦からすでに73年を経過し、戦争体験者の高齢化や減少により、記憶の風化が憂慮される現状において、戦争のあった時代である近代から昭和の歴史を後世に引き継ぐことは大変重要なことだと思います。
加えて、将来において昭和の歴史をきざむ資料館のような施設整備について検討することとなった際には、その設置場所としてこの場所が最も適切な場所であるとも考えます。
以上のことから将来における施設の整備等も視野に、今後は当該跡地を県が購入することを前提に検討を進めていく、との結論に至ったところであります。私からは以上であります。
●吉良県議 44連隊のあった朝倉地域には、日露戦争の戦没者の碑が並ぶ陸軍墓地や軍馬の碑、現在の国立高知病院にある陸軍病院跡の碑なども存在し、JR朝倉駅とともに高知県の戦争の歴史を伝える地域としての位置づけが重要だと考えます。
◆午前中のご答弁では、今後の活用については「専門家による検討委員会を設置し、検討をする」とのことでしたが、委員の中に地域で活動されてきた歴史家の方や平和学に関する高知大学関係者、当然、戦争遺跡の保存と活用を進めるネットワークのメンバーにも参加していただく体制にすべきと考えますが、教育長に伺います。
■教育長 まず、旧陸軍歩兵第44連隊跡地の保存活用に関し、来年度設置予定の検討会のメンバーについてお尋ねがございました。
来年度設置予定の検討会では、将来における土地の利活用の方向性や遺存する講堂及び弾薬庫の修理・耐震化の方法、展示資料の内容、施設の管理運営の在り方などについて、県内外の専門家による検討を行いたいと考えております。
メンバーとしましては、県の施設として社会的にも政治的にも偏りのない形で整備や資料展示などの方向性が検討されるよう、例えば国レベルの文化審議会で委員経験がある方、県の文化財保護審議会の委員経験のある方、県内外の博物館関係者及び文化財の保存活用の専門家などを想定しています。
なお、これまでも、お話にありました地域で活動されてきた歴史家の方や民間団体の方からの提案等も頂いておりますので、頂きました情報などにつきましては、検討会における議論の際に活用させていただきたいと考えております。
●吉良県議 ◆最後に、今後どのようなスケジュールを考えておられるのか、高知県歴史民俗資料館の収蔵庫の集積状況や弾薬庫等の保存状況を見ると一定のスピードも必要になると思いますが、教育長に伺います。
■教育長 次に、今後のスケジュールについてお尋ねがございました。
まずは、来年度設置予定の検討会においてしっかりとご検討いただき、その検討結果を踏まえて、第44連隊跡地の活用について広く合意をいただくことができましたら、土地の鑑定評価など土地の取得に向けまして具体的な作業を進めていきたいというふうに考えています。
土地取得にあたっては、県から財務事務所に取得希望書を提出した後に、財務事務所内で県に対して売り払うことについて検討する期間も一定程度必要であると伺っておりますので、協議が整いましたら具体的な土地購入に向けて必要な手続きを行っていきたいと考えております。
また、これと並行して弾薬庫及び講堂の修理や活用等についても、検討会での検討結果を踏まえて順次必要な作業について、議会にお諮りするなどの手順を踏んで進めていきたいと考えております。
【教職員の異常な長時間労働】
●吉良県議 次に教職員の異常な長時間労働について、お聞きいたします。
1日12時間労働、休憩数分。文部科学省が発表した2016年小中学校教員の「教員勤務実態調査」の結果です。法律で45分と定められている休憩時間は小学校でたった6分、中学校も8分。土日も中学校は部活等で4時間半、小学校2時間以上勤務です。これをもとに月当たりに換算すると時間外勤務時間は小学校98時間、中学校は119時間。過労死ラインを大きく超え、労働条件の問題であると同時に、これは優れて子どもたちの教育条件そのものと言えます。
この1月、高知市内の中学校に伺い、昨年5月に同校が行った勤務実態調査についておききいたしました。40人の教員のうち過労死ライン80時間どころか100時間を超える教員が、なんと13人にも上り、160時間、130時間を超える教員もいらっしゃいます。一日の勤務実態も調査されていましたが、例えば3人のお子さんを持つ3年生担当の47歳の女教師は7時過ぎに出勤し時間外勤務となる午後4時45分以降、加力指導、学級通信作成、教材研究、印刷、提出物点検、研究所への連絡文書作成、欠席者への連絡をして退勤は9時過ぎです。帰宅後も教材研究、プリント評価と実質勤務状態が続いています。
新採男性教員は出勤朝6時から7時の間、放課後の部活動指導が終わるのは午後7時ごろ。その後、学級通信作成し翌日の授業の教材研究をし学校を出るのは午後10時を回っています。土・日曜日に部活の大会がなくても過労死ラインはとっくに超えているのが実情です。本県教育委員会が昨年行った勤務時間外調査でも、中学校では2人に1人が過労死ラインを超え小学校でも2割がこえている実態が明らかになり、文科省の調査結果、そして私が訪れた学校の実態を裏付けるものとなっています。
◆今回県の調査で明らかになった勤務実態を余儀なくされている教員のみなさん、並びに、勤務実態の過酷な学校に身を置く児童生徒、そこに我が子を預けることに不安を持ったであろう保護者に、教育長はどのような思いを持ち臨まれるのか、まずお聞きいたします。
■教育長 次に、県の調査で明らかになった勤務実態を余儀なくされている教員ならびにそのような環境で授業を受ける児童生徒、そこに我が子を預けることに不安を持ったであろう保護者に対し、どのような思いを持ち、臨むのか、とのお尋ねがございました。
議員のお話にありました県の調査結果では、スクールサポートスタッフを配置している20校について、昨年6月から12月までの間における一カ月の時間外勤務が、80時間以上となっている教員の割合は、小学校で12%、中学校で34%となっております。
こうした長時間勤務は、教員の皆さんが疲労を蓄積し、心身の健康を損ない、日々の教育活動に支障をきたしたり、子どもと関わるための時間を十分に確保できないといった状況につながってまいりますので、そうした働き方は、児童生徒の学習活動の充実や、保護者の方々の安心という面からも是正していくべきものであると考えております。
教員の皆さんが、児童生徒のためであれば時間外勤務も厭わないという姿勢で取り組まれてこられた中で、これまで県教育委員会としましても、長時間勤務の是正に関し、必ずしも十分な対策ができていない状況であったと考えております。
今後は、本来業務である授業やその準備、児童生徒指導などの子どもと向き合う時間を確保するとともに、教員の肉体的・精神的な負担を軽減し、学校を働きやすく魅力的な職場にすることで、日々の教育活動の成果につながるよう教員の「働き方改革」に向けた取組をより一層推進してまいります。
●吉良議員 「一升徳利に二升は入らぬ」という絶妙な指摘を佐藤晴雄日大教授がしています。佐藤氏いわく「ある官僚経験者の話である。例えば、国土交通省に道路や橋を造る計画がある場合、財務省がその予算を認めなければ道路や橋は作られない。ところが、教育行政の場合、新たな施策の予算が認められないにもかかわらず、なんとかそれを実施せよ、という具合になる…。確かに教職員定数増の要求が十分認められなくても、その定数の不足分は教職員の努力や負担に転嫁されてしまう。」「教育行政は、新たな課題が発生したら学校に詰め込めばよい、という姿勢を改め、『一升徳利に二升は入らぬ』ことを肝に銘じる必要がある」。時事通信社「内外教育」の10月30日号から引用いたしました。
これだけ働いても授業準備や子どもに触れ合う時間が取れないという、今日の事態は、長年の施策の累積の深刻さを示していると言えます。
国も自治体も教職員の労働時間に関する責任ある当事者です。今ある施策は『一升徳利に二升は入らぬ』ことを忘れ、教育効果があるからと教育委員会が付け加えたものばかりです。「学力向上も、残業なしも、と言うなら、教員を増やすしかない」とは現場の率直な声、教職員を増やさずに「教育効果がある」業務を積み重ねることは、教職員を違法な長時間労働に追い込み、学校で一番肝心な授業準備と子どもたちに向き合う時間を奪い、教育を台無しにすることにつながります。「教育効果がある」論は、適法な労働条件を保障すべき行政機関が違法な労働条件を作り出し、しかも結果として子どもの教育も荒廃させるという二重に誤った論です。教育改革・教育施策の削減・中止への取り組みは避けては通れません。すでに、初任者研修に関して、負担軽減へと一歩、歩を進めた県教委の姿勢に現場から評価の声が聞かれています。
◆過労死ラインまで労働時間が膨らみ、かつ標準的な授業や子どもと向き合うことは削れない以上、現場の負担となっている国や自治体の教育施策の中止・削減に向けて、現場教職員の声を集約、反映すべきだと思いますが、教育長に伺います。
■教育長 次に、学校現場の負担となっている国や自治体の教育施策の中止・削減に向けて、現場教職員の声を集約し反映すべき、とのお尋ねがございました。
教員の長時間勤務を是正するにあたっては、先ほど申し上げました「働き方改革」の目的を踏まえたうえで、これまでの働き方を見直し、子どもたちに対して、今まで以上に質の高い教育活動を行うという観点から、どういった業務について、削減や効率化、外部人材の活用などを図るかを判断することか必要だと考えております。
そのためには、学校現場で業務を担っておられる教員の皆さんの意見を聞くことが重要であると考え、各課が行う学校訪問の際の教員の意見や、働き方改革に取り組むモデル校の校長や教員の意見、校長会からの要望、教職員団体との話し合いなど、機会を捉えて現場の声をお聞きしながら、働き方改革の取組を推進しております。
これまでの取組として、例えば、移動時間も含め、縮減を望む声が多かった「研修・会議」について、まず本年度は、初任者研修の日数や配置校での研修時間の削減を行い、来年度は、終日研修の終了時刻を1時間繰上げるとともにテレビ会議システムの活用の拡大に取り組んでまいります。
また、報告等の準備に係る事務負担が大きいとの声が多かった「調査・照会」については、県教育委員会実施分128件について、重複の排除や整理等を行うことで、来年度は16件 の廃止、32件の調査項目や様式の簡便化などを図ることとしました。
さらに、「研究指定事業」についても、教員の授業力等には大きな成果があるものの、同一年度に多くの指定を受けると研究発表会の準備等に係る負担感が大きいとの声を踏まえ、 一部については廃止や他の事業への統合を行うとともに、1校あたりの指定事業数の調整を行い、過度に同一校への指定が集中することがないように見直しを行っているところです。
今後も、県教育委員会としましては、機会を捉えて現場の教員の声をお聞きしながら、働き方改革の趣旨に沿った取組を推進してまいります。
●吉良県議 中央教育審議会はさる1月25日、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策」の答申を出し、文科省は残業上限原則月45時間、年360時間が原則のガイドラインを策定しました。各県教育委員会に対し方針の策定、状況把握、業務の役割分担や適正化、必要な環境整備などの取り組み、事後検証などを求めています。
その中、教育課程の編成・実施に係わる標準授業時数の在り方について「指導体制を整えないまま標準授業時数を大きく上回った授業時数を実施することは教師の負担増加に直結するものであることから、このような教育課程の編成・実施は行うべきではない」と、踏み込んだ指摘をしています。
◆本県での実態はどうかお聞きします。
■教育長 次に、教育課程の編成・実施に関わる標準授業時数の在り方に関し、本県の実態についてお尋ねがございました。
教育課程の編成及び実施にあたっての標準授業時数は、学校教育法施行規則において、学習指導要領に示されている各教科等の内容を指導するために要する授業時数を基礎として定められているものです。例えば中学校1年生であれば1週間に29時間の授業を年間35週実施することとして、標準授業時数が1015時間となっております。
学校教育法施行規則における計算上の授業日数は、年間35週ですが、標準授業時数を確実に確保したうえで、災害やインフルエンザの流行などによる学級閉鎖等の不測の事態にも備えるため、余剰時間を加えて授業時数を設定することができるようになっており、実際には全国的に1年間で40週程度となっています。
また、標準授業時数に示された教科等以外にも、消費者教育や環境教育等の現代的な諸課題や、防災教育のような本県独自の課題への対応も求められており、それぞれの学校が教育課程を工夫して編成を行っております。
今年度、文部科学省が実施した、小学校第5学年と中学校第1学年を対象とする平成29年度の授業時数実施状況調査では、働き方改革に関する中央教育審議会の答申において、「児童の負担過重にならない限度」の例として示されている「標準授業時数から105時間を超えて授業を行った学校」について、本県では小・中学校全体の約20%となっております。
この国が定めた標準授業時数を下回ることはできませんが、上回って教育課程を編成することにつきましては、校長や各学校の設置者の判断に委ねられておりますので、今後、適正な教育課程の編成及び実施が行われますよう、市町村の教育長会や校長会において、先ほどの答申の内容等について情報提供していくことなどによりまして、改善につなげてまいりたいと考えております。
●吉良議員 教員の多忙の決定的要因は、この標準事業時数、一日に受け持つ授業数の増加にあります。教員定数は1958年の「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律」で定めています。定数割り出しの根拠について「教科の指導時数と、1教員あたりの標準指導時数との関係をおさえて」実際に都道府県で行われている時数を平均化し「1教員当たりの標準指導時数は、一週24時限をもって標準とし」「一日平均4時限となるが、これは一日の勤務時間8時間のうち、4時間(休憩時間を含み)を正規の教科指導に充て、残り4時間を教科外指導のほか、指導のための準備整理、その他校務一般に充当するという考え方である。」と明確に述べています。
つまり、教員一人当たりの授業負担は長い間「一日4コマ、週24コマ」とされ、それに基づいて今の教員の定数が配置されているわけです。ところが、国は、この基準を投げ捨て教員の授業負担を増やしたのです。
学校週5日制(1992年から部分実施、2002年から完全実施)で、日数が1日減るので、6分の1=約16.7%のコマ数を減らさないと4コマにはならないのに、実際は7%しか授業を減らさず、教員の1日の授業負担が増えました。その後も、次々と教員増をせずに、つまり必要なコストをかけずに授業時数は増やされ、2003年には時数増確保の通知を出し、2011年には「ゆとり見直し」の号令で、標準指導時数自体も増やしてきたのです。
授業という教員しかできない業務のところで長時間労働の根本が作られているわけで、それを改善するには、教員を増やす以外にありません。
学校6日制のころの授業時数に戻したとして、今の5日制労働で行うためには、9万人の増員が必要となります。中教審のヒアリングの場で種村全国小学校長会会長も「週5日制に移行した際に土曜日の授業が平日に回されたことが、現在の長時間労働の背景にある」と訴えています。
◆政府に対し、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策」の実現には、教員の定数増を図るしかないことを示し教員増を求めるべきだと思いますが、教育長にお聞きしまして私の第一問といたします。
■教育長 最後に、学校における働き方改革に関する総合的な方策の実現のため、政府に対し、教員の定数増を図るように求めるべきであるとのお尋ねがございました。
県教育委員会としましては、これまで働き方改革の取組として、「ICT等を活用した勤務時間の管理」「業務の効率化・削減」「専門スタッフ外部人材の活用」の3つの柱を中心として取り組んでまいりました。これらの取組は、中教審の答申である学校における働き方改革に関する総合的な方策」の内容に合致しており、まずは、これらの取組を着実に進め、県教育委員会全体として業務の見直しや工夫改善を実施してまいります。
また、個別の教育課題の解決を図るために、県教育委員会として国に対して教員加配の重点化による支援についての政策提言も行ってまいりました。具体的には、児童生徒の学力向上や学校生活への適応を進めるための少人数学級編制の加配や、学習指導要領の改訂に伴う小学校英語を着実に進めるための小学校英語専科教員の加配の充実、学校における働き方改革に向けた体制充実のための学校事務職員や主幹教諭の加配の充実についての提言を行ってまいりました。
こうしたことから、来年度の学校における働き方改革に向けた加配定数については、小学校専科指導の充実や学校事務職員の体制強化とともに、主幹教諭の学校マネジメント機能強化など、国全体で1,110名の増員が示されているところです。
今後は、県教育委員会として、勤務時間の上限、変形労働時間制の導入など、国の動向に注視しながら、市町村教育委員会としっかりと連携・協働し、学校における働き方改革の取組を推進してまいります。併せて、今後も国に対して必要な加配定数の確保等についても粘り強く要請してまいります。
こうした取組を進めたうえで、なお定数増が必要な状況がありましたら、全国都道府県教育長協議会等とも連携を図り、学校における働き方改革に向け、定数増も含めた体制の充実について国への要望を検討してまいりたいと考えております。
●吉良議員 第2問を行います。
まず、会計年度職員のことですけれども、給与のことだけではなくて、処遇と言うと休暇だとか更新していくそうした条件も含んでいるわけですね。現在、職員団体と交渉中ということですので、勤務条件のことですので、こちらの方があれですけれど、しかし姿勢としてそういう休暇も含めて、処遇の低下は招かないという決意をお聞きしたいと思うんですけれども、これは知事にお願いいたしましょうか。
それから、教育長、教職員団体との今の交渉どのようになっているのか。それから、この間、臨時教員を含めて、処遇改善を随分とはかってきたわけですね、その努力が、ちゃんと実るように、さらに前進になるように、この処遇改善を図られるべきだと思うんですけれども、それについての教育委員会としての考えかたも合わせてお聞きしたいと思います。
次に、国保のことなんですけれども、相当厳しい状況になるだろうと、おっしゃっておったんですけれども、これは国の方の交付金が予想よりも少なかったわけですか、その影響はあるのか、大体どれくらいの額が増えそうなのかということも、もし今の時点で分かっていれば、お示しいただきたいと。市町村に結局頼むということで、これはなかなかの困難をきたすということで、現時点で分かっている状況を教えていただきたいということと。
それから、本県も特に子どもの均等割については昨年2月の議会でも、均等割についての見直しの意見書が全会一致であがっているわけで、やはりそのいつになったら、4年前から知事会も含めて、やっているのに、もう子どもも大きくなっちゃって、まったくこれは予想がつかない。知事会も随分頑張ってくださっているんですけれども、その見通しをどう考えているのか、ということと、それから他市では、もう子どもの医療費と同じように均等割をどんどんなくしていく市町村が増えています。第2子に限ったりですね。あるいは、子ども全体で三割減をしたり、というので増えているわけですので、ぜひそういう市町村の取り組み、財政的な規模も大変で国保会計も大変だという市町村の取り組みにインセンティブを与えるような県としての姿勢を示していただければと思うんですけれども、それについての決意を、いかがなのかということをこれも知事にお聞きしたいと思います。
それから、教員の長時間の問題ですけれども、福井県議会が2017年の中学三年生の自殺を契機に意見書議案を出しています。これは改めて皆さんにご紹介したいと思うんですけれども、要は自殺に至ったのは、福井というのは学力日本一というかずっと学テ(学力テスト)で高い位置をしめていまして、そのことがストレスになって学校に、生徒と教員に大きな負担をきたしたんではないかというふうなことで、ということをおっしゃっているんです。平成29年12月19日に意見書議案をあげています。その中では、学校のその学力というものは、単なるその学テだけではなくて、人生を生き抜いていく上で必要な力を身に着けることが目的であることをまず再確認すべきだと過度の学力偏重は避けること、というね、学力という概念について議会の方から、もう一回再考をしてみる必要があるのではないかと、いうことと、それからですね、具体的には、教育大綱は本県全体の教育行政の指針であるが、その基本理念実現のための具体的方策まで教育現場に一律に強制し、現場の負担感や硬直化を招くことがないように改めることといっているんですね。その一環として、第三点目に、現場の多くの教員の声に真摯に耳を傾けて、本来の教育課程に上乗せして実施している、その福井県独自の学力テスト等の取り組みを学校裁量に任せること、そして、部活指導の軽減化もすすめるなど見直しを図ることということで、いわゆる県独自の学テなんかの、もういいんじゃないかと、それは現場の裁量に任せて、傾向はしっかりつかむ必要はあるけれども、ということで、そういうことで、行っているんですね。つまり私が提案したように、研修については一歩踏み出しましたけれども、学テそのものについても、いったんやはり負担を軽くするという意味で、裁量制にするだとか、施策そのものを見直していく動きがあるわけです。そういう面でいうと本県の方も、ご存知のようにアップアップですから、さっきも言ったように一升徳利には二升も入らないわけですから、ひとつそのことも検討課題ではないかということをお聞きして、第二問といたします。教育長にお願いします。
■県知事 まず、会計年度任用職員の皆様方、こちらについて、新たな制度導入に当たって、ぜひとも、国全体で定められていく方向性というもののある訳ではありますけれども、ぜひそれぞれの業務において、力を発揮して頂けるような制度となるよう、色んな方々とのご意見をお伺いしながら、検討を重ねさせていただければとそのように考えています。これは、先程言われた、例えば休暇だとか、更新のあり方こういうことも含めてということだとそういうふうに思っています。
2点目でありますが、今回ですね、国保、こちらについて、市町村の皆さんへの国保事業費納付金この増額をお願いしなければならないことについて、ひとつは何と言いましても、この問題やはり、医療費が非常に増高したという一番の大きな原因だとそのように思っています。合わせて歳入面において、高額医療費負担金、こちらにつきまして、今年度の見積もりが大きかった分、来年度において減額する必要が生じたとかという課題もあるわけでございまして、細かい数字についてはまた担当の方から、もしよろしければ、お答えをさせていただければと思います。けれども、そういう要因も確かにあるところでございます。こちら、国保料が高くなっていくということについて、やはり国に対してもさらなる負担軽減の一連の措置というものを全国知事会としても訴えてきましたし、そういう中において一定、国費の負担というものも拡大をしてきているところでもありますが、さっき申し上げた均等割などについて、引き続きこちらも訴えていくとしか、今の段階では言いようがありません。いつになれば実現できるかどうかというのはわかりませんが、ただやはり地方において、こちらにおいてはこういった問題は深刻でありますから、この点について訴えていくことは非常に重要であります。
先ほど申し上げた医療費が非常に高くなっている原因ということについて、これは県、我々も新たに保険者になりました。市町村においてもこれまでも取り組んでこられております。先程、ご答弁でも申し上げましたけれども、ジェネリックの導入などというすぐさまできることから始まって、さらに言えば地域の医療需要と供給をマッチングさせていくことによって、ある意味適切な医療費の水準に持っていくというような一連の総合的な対策を講じていくという、こういう根本的な対策を講ずるしかないのだとそういうふうに思っています。
この点について日本一の健康長寿県構想の推進を通じて、県と市町村ともに取り組みをすすめていけるようにしていくこと、これが大事だとそういうふうに思っているところです。
■教育長 まず、会計年度任用職員の件につきまして、この会計年度任用職員の主旨は、これを活かしながら、より良いものになりますように、知事部局ともしっかり歩調を合わせて取り組みを進めていきたいというふうに思います。
それから、学テのことですけれど、やっぱり、その学テ自体、その土地の高知県の状況が、どういったものになるのか、という現状を把握するためのものであって、それに対し、どのような改善をしていくかという指標になるものでございますので、現状については、学テについては、継続してやっていくというふうに考えております。
●吉良県議 しかし、学テは、今、学校現場を非常に圧迫しています。本来学校がどうあらねばならないか、学力はどうなのか、ということを哲学的に考える必要があると思うんです。塾と変わらなくなるんですね、今のままでは。正解ばかりを追っていくような、今の学校体制はダメで、オーテピアの前に、「ねえ君、不思議と思いませんか?」という、あの寺田寅彦のあの探求心、不思議だなと思わすこと、そしてそれを分析していくこと、そして分析した後統合していく能力、これを培っていく方向に学校のあり方が変わっていくような方向での施策の精選を求めて、私の全ての質問を終わりたいと思います。以上です。