-
- 2018年12月13日
- 議会(質問・討論)
- 2018年12月議会 中根佐知県議の代表質問(2018.12.11)
【質問項目】
・知事の政治姿勢・米軍機墜落事故
・知事の政治姿勢・消費税増税
・知事の政治姿勢・外国人技能実習生・外国人労働
・漁業の成長産業化(漁業法改定)
・特別支援学校の増設
・教員の増員(臨時教員、採用審査、産休・育休の代替教員不足、)
・学童保育
・戦争遺跡の保存と活用(旧陸軍第44連隊弾薬庫)
・物部川の防災対策
●中根県議 私は、日本共産党を代表して、以下質問をいたします。
【米軍機墜落事故について】
●中根県議 まず、最初に、米軍機の墜落事故について、知事にお伺いをいたします。
12月6日、午前1時42分頃、夜間訓練中の米軍岩国基地所属の米軍機FA18D戦闘攻撃機とKC130J空中給油機の2機が、本県室戸岬沖南南東99㌔の上空で接触し墜落、そして、当日夕刻には双方の乗組員7名のうち2名は海上自衛隊によって救助されたと報道されました。この11月に那覇市沖で起きた同基地所属のFA18戦闘攻撃機の墜落事故があったばかりです。事故原因が明らかになっていないまま、飛行を容認した日本政府の責任は重大といえます。
岩国基地は、米本土から展開する飛行隊のFA18の10~12機に加え、常駐飛行隊としてFA18、13機を擁し、昨年からは、F35Bステルス戦闘機16機を新たに常駐配備し、今年4月には、FA18を含む米海軍の空母艦載機60機を厚木基地から受け入れるなどし、今や、合計120機、米軍人等9000名を超すアジア最大の戦闘攻撃機の拠点として増強・強化された一大基地となっています。
6月のF15、9月のF35B、11月のFA18、そして、今回と、今年になって墜落事故が立て続けに起こっている背景には、この岩国基地増強による、危険な訓練の激化がある事は間違いありません。
本県での墜落事故は、2年前、今回と一日違いの12月7日、同型のFA18戦闘攻撃機一機が墜落したばかり。1994年早明浦ダム湖への墜落をはじめ、99年の土佐湾沖わずか17㎞への墜落、などと合わせ4回もの度重なる山と海での墜落に、県民の不安と怒りは大きいものがあります。
室戸岬沖99㌔というのは、飛行時間にすればわずかであり、一歩間違えば、陸上での事故にもなりかねません。しかもその時間帯は、日米が合意している滑走路の運用時間午前6時半~午後11時以外の深夜の時間帯であったと考えられます。また、墜落した地点は国土交通省航空局への「申請・承認の手続き」が必要で「使用状況を把握することが可能になる」新たな「臨時留保空域」近辺であるとも思われます。
これら事故に関する連絡・報告は県民の命を守る任にある当該県に速やかにあってしかるべきです。岩国市への中四国防衛局からの第一報が入ったのは、報道によると、発生から5時間たった、午前6時半ころで、墜落ではなく着水との連絡だったとなっています。そこで、知事にお聞きします。
◆本県への連絡はいつどのような内容でなされたのか。滑走路使用時間、墜落した空・海域、申請承認の有無、訓練内容など含めて、お聞きをいたします。
■県知事 中根議員の御質問にお答えをいたします。
まず、米軍機墜落について、本県への連絡はいつどのような内容でなされたのか、とのお尋ねがありました。
今回の墜落事故につきましては、第1報として、発生当日の午前6時55分頃に中国四国防衛局高松防衛事務所から危機管理部に電話で、「午前1時48分頃に四国沖で米軍FA18とKC130が空中接触し、2機とも着水した」との連絡があり、その直前の6時52分には同様の内容でメールも受信しております。
その後、同局からの第2報として、9時43分にメールで、室戸岬の南南東約55マイル付近の海上において、午前1時42分頃、2機とも墜落したこと、海上等における被害情報は現時点でないこと、乗員7名のうち、1名は海上自衛隊のSH-60Jにより救助され、容体は安定していること、米軍と協力して、自衛隊が残る乗員を捜索中であること、の情報提供を受けております。
この後も、中国四国防衛局長が海兵隊岩国航空基地司令官に対し、事故当日の正午過ぎに文書で申し入れを行ったことや、捜索救助活動は継続されており、2名が発見され、1名については死亡が確認されたこと、両航空機は定期訓練を実施しており、空中給油はその一環であること、事故が起きた際に何が行われていたのかは調査中であること、米海軍安全センターのホームページに事故の情報が公表されている、といった情報がメールで提供されました。
国に対しては、既に事故に関する速やかな情報提供を求めているところですが、今後とも中国四国防衛局と連携してまいりたいと考えております。
●中根県議 ◆原因が究明されるまで、滑走路の運用時間外使用の不承認、使用停止や、墜落同型機の飛行停止を日米両政府に求めると同時に、墜落海域の環境汚染、漁業への影響など情報提供を求めるべきだと考えますが、県としてどのような要請と対応をしたのか、事故発生後から、救助、その後の原因究明、再発防止への日米両政府への対応含めお聞きします。
■県知事 次に、事故発生後から救助、その後の原因究明および再発防止への日米両政府の対応を含め、どのような要請と対応をしたのか、とのお尋ねがありました。
今回の墜落事故後からの本県の対応につきましては、中国四国防衛局からの第1報を受けた後、直ちに高知県の漁業協同組合連合会及び無線漁業協同組合へ連絡をし、操業中の漁船への被害が無いことを確認いたしました。
その後、事故情報に関しては、中国四国防衛局から累次の情報提供をいただきましたが、本県からも同局や自衛隊に加えて高知海上保安部からの収集にも努めたところであります。
一方、救助に関しましては、事故当日、海上自衛隊により乗員2名が救出されましたが、本県の消防防災航空隊への出動要請はございませんでした。
また、事故時の訓練の内容については、海兵隊司令部は定期訓練を行っていたと発表しており、通常の訓練であれば日米安全保障体制の中において重要であり、必要であると私は認識をしております。
しかしながら、米軍の運用に当たっては、周辺住民などの安全確保が大前提であり、事故はあってはならないものであります。
今回の事故は県民や漁業者の皆様が抱いている不安を増幅させるものであり、誠に遺憾と言わざるを得ません。
そのため、本県におきましては事故発生の翌日に、外務大臣及び防衛大臣に対し、事故に関する速やかな情報提供・徹底した事故原因の究明、さらには実効性のある再発防止策を行うこと、を米国に申し入れていただくよう要請書を提出したところであります。
事故当日には、中国四国防衛局長が海兵隊岩国航空基地司令官に対し、今回の事故は住民に対して極めて大きな不安と心配を抱かせるものであり誠に遺憾であること、航空機の運 用に当たって引き続き安全面に最大限配慮すること、事故について速やかな情報提供を求めることを文書により申し入れたと伺っております。
海兵隊司令部の発表によると、事故状況は現在調査中であるとのことですが、今後、その推移をしっかり見守り、米軍がどのように原因を究明し、さらに再発の防止に取り組んでいるのか、さらには墜落現場周辺の環境汚染や漁業への影響の有無について、情報収集に努めてまいりたいと考えております。
●中根県議 2016年9月議会で私どもは、艦載機移転による、深夜、土佐湾沖の空母と基地との間を頻繁に往復する着艦資格取得訓練が展開される危険性を指摘、訓練空域拡大と訓練の中止の意思を示すべきと知事に求めています。また、12月議会では、政府の訓練容認姿勢を厳しくただし、地位協定の見直しを求め、本年9月議会でも、全国知事会の地位協定見直しを支持し、その実効に向けた意見書議案を提出もしてきた所です。今回の事故で、我々県民は、米軍機がいつ住家に墜落してきてもおかしくない危険性を痛感しています。
◆リマ海域を含む土佐湾沖の訓練空域撤去と、当面、原因が確認される迄オレンジルートと土佐湾沖での訓練の中止、そして、日米地位協定に飛行運用に関する制限措置を求める条項の新設等、全国知事会の提言の実行を国に強く求めるべきだと考えるものですが、お聞きいたします。
■県知事 次に、リマ海域を含む土佐湾沖の訓練空域撤去、原因が確認されるまでの間のオレンジルートと土佐湾沖での訓練の中止および日米地位協定に飛行運用に関する制限措置を求める条項の新設など全国知事会の提言の実行を国に強く求めるべきではないか、とのお尋ねがありました。
日米安全保障の環境を考えたときに、訓練空域が設定されること自体はやむを得ないことではないかと考えております。
また、通常の空中給油訓練も、日米安全保障体制の中において重要であり、必要であると認識しております。2年前の土佐湾沖における戦闘機の墜落事故については、事故原因が全く不明であり、機体自体に構造的な不具合があるのではないかという不安度が非常に高いものでありましたが、今回の事故については、空中接触が原因であると伺っており、前回とはそういった面で違いがあり、現時点では訓練の中止までは求めておりません。
とはいえ、繰り返しになりますが、米軍の運用に当たっては、周辺住民などの安全確保が大前提であり、事故はあってはならないものであります。
全国知事会の提言においては、日米安全保障体制が我が国にとって重要であることを前提としたうえで、日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることを求めております。
本県では、今回の事故を含め4度もの米軍機の墜落事故が発生しておりまして、県民や漁業者の皆様の不安が払拭されますよう、私といたしましても、この提言の実現に向けて、今後とも全国知事会の一員として要望してまいりたいと考えております。
政府におきましては国民の生命・財産や領土、領海を守る立場から、日米地位協定について日米政府間でしっかり協議していただきたいと考えております。
【消費税】
●中根県議 次に消費税についてお聞きいたします。消費税は1988年に導入の決定が強行され、89年4月に税率3%で開始されて以来、低所得者ほど負担が重い逆進性が高い税制として、税率が高まるごとにその負担により、消費を冷えこませ、経済成長を阻害してきました。社会保障のためといいながら、医療、介護、年金などは改悪の連続であり、実態は、大企業減税のために使われてきたのが消費税の真の姿です。
安倍政権の内閣参与をつとめる藤井聡・京大教授は、消費税10%に反対を唱え、「デフレ状況にある現在の我が国において消費税増税を行うことは、 国民を貧困化させ、日本を貧国化させ、そして、挙げ句に日本の『財政基盤』そのものを破壊する」と強い警告を発しています。
日本経済のメインエンジンであるGDPの6割を占める家計消費を冷え込ませ、その結果、税の自然増収を見込めなくなること、この間消費税が大企業や富裕層の減税のために使われ、消費税収の8割は法人税減税・減収の穴埋めに使われて、税源として役に立っていないことをあげ、「消費増税は確実に、庶民の間の『格差』や『不平等』を拡大させた」と指摘をしています。
◆日本経済の6割を占める家計消費が低迷するもとでの消費税増税は、暮らしと経済を破壊するものと考えないか、お聞きします。
■県知事 次に、消費税の増税について、お尋ねがございました。
国・地方を通じた厳しい財政状況や急速に進む少子高齢化という現況に鑑みれば 社会保障制度の充実・強化を図り、かつ持続可能性を確保するために、消費税率の8%から10%への引上げは、やむを得ないものと考えております。
一方で、経済的に厳しい状況にある方々とマクロ経済全体へのマイナスの影響をできるだけ小さくすることが重要です。
政府におきましては、消費税率の引上げに当たり、軽減税率制度の実施や消費者へのポイント還元支援など、税制・予算面であらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう対応する方針を示したところです。
本県におきましても、国の施策に呼応し、しっかりと一連の経済対策を実行してまいります。
●中根県議 藤井氏は、増税する対象は、消費税ではなく、税率が下げられてきた法人税を上げるべきだと強調しています。
経済のメインエンジンである家計消費を冷やす消費税増税でなく、格差解消の税制改革で経済を活性化させることが、結果としても税収も増収させるとして、法人税増税の他にも、“所得税の高額所得者ほど減税の流れの見直し”や金融所得の税率引き上げなども提案をしています。
◆応能負担の原則にもとづいて、富を蓄積させている大企業、富裕層に応分の負担を求めることが、財政にとっても、経済成長にとっても、今求められていると思いますが、お聞きします。
■県知事 次に、増税の対象は消費税ではなく、応能負担の原則に基づき、大企業や富裕層に求めるべきではないかとの、お尋ねがございました。
消費税は税収が経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく、安定していることに加え、勤労世代などの特定の者への負担が集中せず、経済活動に与える歪みが小さいとされています。
そのため、幅広い国民が負担する消費税は、少子高齢化社会における社会保障の安定財源として、ふさわしい財源であると考えています。
一方で、先程申し上げましたとおり、消費税率引上げに当たりましては、経済的な影響をできるだけ小さくすることが重要でありますことから、政府におきましては、十分な対策を実施していただきたいと考えているところでございます。
●中根県議 安倍政権は、10%増税の際、食料品などの税率を据え置く複数税率導入やカード利用で「ポイント還元」を行うとしていますが、機器の更新の負担増とともに、制度が複雑で混乱が拡大しています。
その中で、インボイス制度の導入は、年商1千万円以下の免税業者となっている中小零細業者の多くが廃業に追い込まれるのではないかとの危惧が広がっています。この構造は農家も同じです。
消費税は販売価格に上乗せした税額から仕入れにかかった税額を差し引いて業者が納税する仕組みです。インボイスとは、税務署が課税業者に付与した識別番号を記載した適格請求書のことをさします。仕入れの際、インボイスに書かれている消費税額は、仕入れ控除できますが、識別番号を付与されていない免税業者から仕入れた場合には、消費税額が控除できずに、仕入れた側が負担させられることとなります。そのため、取引から排除される恐れがあり、それを避けるためには、消費税分をかぶって実質値下げをするか、課税業者となって身銭を切って納税するか、という悪魔の選択をしいられることになります。導入までの猶予期間があっても、この本質は変わりません。
◆中小零細業者、農業者の多い高知県では大きな影響が危惧されます。この点でも、消費増税は導入すべきではないと思うが知事にお聞きいたします。
■県知事 次に、中小零細業者や農業者の方が多い本県では、大きな影響が危惧され、消費税の増税は導入すべきではないのではないか、とのお尋ねがございました。
お話しのありました、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」を導入することは、消費税の適正な課税を確保するために必要な措置ではないかと考えています。
その際、中小零細業者や農業者の皆さんなどに混乱が生じないようにすることもまた大事だと思っています。
政府におきましては、インボイス制度の導入にあたり、年間の猶予期間を設けるとともに、受注や発注のためのシステム改修等を行う際に経費の一部を補助する制度のほか、農協等を通じて取引される農産物等に関する特例などを講じることとしています。
県としましても、国と協力しながら県民の皆さまへの周知・広報に努めるとともに、疑問や不安の声をお聞きした場合には、しっかりと国に届けて参ります。
●中根県議 医療機関の消費税負担については、窓口負担のもととなる診療報酬は非課税ですが、医療材料や薬剤には消費税がかかっていることから、医療機関に負担が強いられていると、当初から問題となってきました。政府は、その分は、診療報酬のアップでカバーしていると主張してきましたが、7月25日、厚労省は、中央社会保険医療協議会の「医療機関等の消費税負担に関する分科会」で、消費税率8%への引上げに伴う補塡状況に関して、これまでの調査結果に誤りがあったとして、再調査した結果を公表しています。それによれば、医療界全体の補塡率は、2014年度が102.07%から90.6%、16年度も92.5%と大幅に不足していたことが示されました。病院も補塡率は100%を超えていたものが14年度は82.9%、16年度は85.0%となっており、高度医療を担う特定機能病院は約6割にとどまっています。
県下では、地域を支えるために医療機関が必死の努力をおこなっていますが、政府がこうした補填不足を4年間も放置したことは、到底ゆるされるものではありません。
◆医療センターや県立病院は、国の試算に当てはめると補填が不十分と想定されます。補填が適切に行われるよう、国に要望すべきだと考えますが、お聞きをいたします。
日本共産党は、仕入れにかかった消費税は還付されるよう医療費「ゼロ税率」の導入を提案しています。
◆消費増税による医療機関のコスト増を、診療報酬で補填するという政府の方針は、結局、消費増税分を、窓口負担、保険料負担として国民に転嫁していることになり、「医療は非課税」の原則に反します。見直すべきだと思いますが、お聞きをいたします。
■県知事 次に、医療センターなどの消費税の補てんに関する国への要望と、消費税増税による医療機関のコスト増を診療報酬に加算する方法の見直しについてお尋ねがありました。
関連いたしますので、あわせてお答えします。
医療機関が行う医療設備の整備や医療機器の購入などに係る費用には消費税が課税される一方、社会保険診療自体は非課税となっており、医療機関は負担した消費税について仕入
税額控除ができないため控除対象外消費税が発生し、それは医療機関の負担となってしまいます。
そのため、国におきましては、医療機関の消費税負担分を診療報酬の増分で対応してきたところですが、議員からお話がありましたように、本年7月の中央社会保険医療協議会の分科会において、前回消費税が5%から8%に引き上げられた際の補てん状況として、医療界全体の補てん不足があること及び医療機関種別ごとの補てん率にばらつきが見られることが報告されました。
言うまでもなく、消費税は本来事業者が負担するものではないことから、医療機関が負担した控除対象外消費税は何らかの形で補てんされる必要があり、現在、国では、来年10月の消費増税に向けて、医療機関等における消費税負担に関して診療報酬における配点方法の是正の検討が行われております。
さらに、政府与党が取りまとめた平成30年度税制改正大綱では、「医療に係る消費税のあり方については、医療保険制度における手当のあり方の検討等と併せて、平成31年度税制改正に際し、税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」こととされております。
他方、全国知事会においても、これまで国に対し、社会保険診療に係る消費税の取扱いについては患者負担の増加や医療機関の経営実態を考慮した上で地域医療体制確保の観点から、速やかかつ確実に対策を講じることを要望してきたところであります。
今後も引き続き、国の議論の動向を注視しながら、必要に応じて国に対し、全国知事会を通じて政策提言を行ってまいりたいと考えておるところでございます。
【外国人技能実習生、外国人労働】
次に外国人技能実習生、外国人労働について、知事にお聞きいたします。
日本で働く外国人の受け入れを拡大するための出入国管理法(入管法)改定案は、外国人を無権利状態で働かせる実態がいまでも大問題になっているのに、法案は現状にメスを入れるどころか、それを温存し、外国人労働者の「使い捨て」を深刻化させる重大な内容です。
しかも対象業種や受け入れ規模をはじめ重要項目を条文に明記せず、質疑に必要な重要データを出し渋り続けるなど、審議の前提は欠いたまま。「来年4月施行ありき」で、12月8日未明に強行採決をしたことに、強く抗議するものです。
入管法改定案は、新たな在留資格として「特定技能」を設けることなどが柱です。特定技能1号は、在留期間を最長通算5年とし、家族の同行は認めません。「熟練した技能」が要件の特定技能2号は長期滞在可能で、家族帯同も認めるとしていますが、定義や運用は不明確です。1号の対象について政府は農業、建設など14業種を検討しているとしますが、法案には書き込まれてはいません。職場や住居の選択の自由、安定した雇用や賃金の確保、悪質なブローカーの介在排除など、人権と人間としての尊厳を守れるかどうかの保証は全くありません。
なにより問題なのは、国際社会から大きな問題があると批判を浴びている現在の外国人技能実習制度の見直しに手をつけようとしていないことです。同制度は、日本で習得した技能を母国に持ち帰ることが「建前」ですが、外国人労働者を「安価な労働力」として利用しているのが実態です。
過酷な処遇に耐えきれず、「失踪」した実習生は、政府の調査でも昨年で7089人にのぼり、今年上半期でも既に4279人になるなど激増しています。「残業代の時給300円、1日16時間労働を強いられた」「いじめやパワハラにあった。飛び降り自殺も図った」という悲痛な証言は後を絶ちません。来日の際に背負った多額の借金に縛られた上、実習先の雇用主に逆らえない構造などから、非人間的な扱いをされても声を上げられない人たちは、さらに多く存在すると指摘をされています。
法務省は昨年、「失踪」した実習生2892人から動機などの聞き取りを行っており、政府側は当初、実習生の失踪理由の約87%は「より高い賃金を求めて」などと説明をしていましたが、実際はそのような選択肢はなく、それにあたるのは「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」というもので合計は67・2%でした。さらに訂正後資料では「指導が厳しい」「暴力を受けた」との割合も増加しました。人権侵害行為などは「少数存在」としていた政府の説明とも大きく食い違っています。
改定案は現在の技能実習制度を温存し、多くの実習生を新たな在留資格に移すことが想定されています。国会で審議すればするほど、問題点は浮かび上がってきています。2015年からの3年間に69人もの技能実習生が死亡した事実解明もしっかりされていない状況です。実習生の過酷な実態をごまかそうとする政府の姿勢は、外国人労働者の人権をないがしろにし、「安上がりな労働力」「雇用の調整弁」としかみていないことを示したものです。
◆国際的にも問題点が指摘されている技能実習生の実態をどう認識しているか、お聞きします。
■県知事 次に、外国人技能実習生の実態をどのように認識しているかとの、お尋ねがございました。
技能実習制度は、国際貢献のため開発途上国等の外国人を日本で一定期間受け入れて、技能を移転することなどを目的とした制度であり、多くの受入事業者が、目的に沿った取り 組みを行う一方で、全国的に労働関係法令違反が増加するとともに、失踪件数も増加し、中には自殺者も含まれるといった実態があることは非常に残念であります。
本県においても、労働局と警察の資料によると労働関係法令の違反が見受けられ、平成28年度の数字で9事業所、全体の約3%において、労働時間や賃金等に関する違反がございました。また、技能実習生の増加とともに失踪の件数も年々増加しており、平成29年度には、31件で全体の約2.2%となっています。
これらの原因については、国においてしっかりと調査をし、対策を取っていくことがまずは重要と考えます。
国においてば監理団体や受入事業者の義務・責任が不明確であることや、実習生の相談窓口など保護の体制が不十分であるなどの課題を踏まえ、昨年11月にいわゆる「技能実習法」を施行しました。この法においては、法務省、厚生労働省が所管する「外国人技能実習機構」を設置し、受入れ事業者等への管理監督を強化するとともに、母国語による通報や相談の窓口を置くなど 保護の体制を整備したところであり、今後より実効性の高い取り組みが期待されるところです。
県としましては、本年6月に設置された、入国管理局や労働局、「外国人技能実習機構」などからなる「四国地区地域協議会」に参加をするとともに、本県独自で関係機関による「技能実習制度に関する連絡協議会」を設置し、法令違反や失踪の実態、また生活関連の課題などを共有し、各機関の役割に応じて対策を検討しているところであります。
当面、母国語での相談窓口の周知や共通する課題となっている日本語の学習機会の拡大などに取り組んでまいりますが今後とも関係機関と連携して、技能実習制度が適正に運用されるよう努めてまいりたいと思います。
●中根県議 政府が外国人労働者受け入れ拡大へ踏み出す契機になったのは、16年に経団連がまとめた受け入れ促進の提言です。財界に号令をかけられ、悪法強行に突き進むやり方はあまりに異常です。「低賃金と劣悪な労働環境をたださず、“とにかく外国人に頼る”というやり方自体が問われます。
◆外国人労働者の当然の権利を守ることは、日本人の労働者の権利と労働条件を守ることにもつながります。現状の抜本的な是正を抜きにした「受け入れ拡大ありき」のやり方は日本の未来に禍根を残します。どう認識をされているのかお伺いいたします。
■県知事 次に、出入国管理法改正について、どのように認識されているのか、とのお尋ねがございました。
我が国の経済は、緩やかな景気回復基調が続き、生産年齢人口の減少と相まって、全国的に人手不足が深刻化しています。人手不足倒産なども発生する中、喫緊の対策として、一定以上の専門性・技能を持った即戦力となる外国人材を新たな在留資格を設けて受け入れていくことは、国の施策として一つの方向性であると認識をしています。
ただ受け入れに際しては、労働関係法令を遵守することはもちろん、地域住民として共生できるようにすることが重要であります。
新たな在留資格は、その相当数が技能実習制度の修了者から移行していくことが見込まれており、技能実習制度と併せて、改正される出入国管理法が適正に運用されることが必要だと考えています。
今般の出入国管理法の改正においては、年内に「外国人材の受け入れに関する基本方針」や受け入れ見込み数等に関する「分野別運用方針」、また環境整備に関する総合対策などがまとめられ、年度内には、日本人と同等以上とする雇用契約の基準や悪質ブローカーの排除、技能や日本語能力に関する水準などを内容とする省令が定められることとなっています。
今後は、まず国において、来年4月の施行に向けて、こういった制度設計をしっかりと行っていただくことが重要であります。
県におきましても、まずは、現行の技能実習制度を円滑に実施するために、日常生活などで必要不可欠な日本語の学習機会の拡充に取り組もうとしているところです。
さらに今後、国から示される環境整備に関する総合対策を踏まえ、市町村や関係機関と連携して、日本語教育のさらなる拡充をはじめ、社会生活に関わる医療・福祉・教育等の問題に対応していくための仕組みを検討したいと考えており、今後関係者の間でそのための協議の場を持ちたいと考えております。
●中根県議 農業の現場などで県下でも多くの技能実習生が活躍しています。「国際貢献」に相応しい対応で、高知県に来てよかった、と思ってもらうことが大事だと思います。
◆医療や日常生活のサポート、困りごとを気軽に相談できる体制の確立、また地域との国際交流の機会の設定など、行政としても国際交流につながる支援を行うべきだと思いますが、商工労働部長にこの点お聞きいたします。
■商工労働部長 外国人技能実習生が気軽に相談できる体制の確立や、国際交流につながるような支援を行うべきかとのお尋ねがございました。
現在県内では、農業分野をはじめ、製造業等、幅広い分野で多くの技能実習生が受け入れられており、昨年10月時点で、334の受入事業者において、1405名の技能実習生が雇用されています。県においては、高知県中小企業団体中央会と連携して、監理団体や受入事業者へのヒアリングを行い、技能実習生の方々が抱えている様々なお困りごと等について、把握に努めているところです。
技能実習生においては、実習先での主な困りごととして、ゴミ出しや家電の使い方等の生活習慣を覚えることができない、母国語以外が喋れないため実習先で孤立してしまうなどの問題があり、受入事業者においても、技能実習生との業務上の意思疎通で伝わりづらいことがあるなど、日本語でのコミュニケーションに起因するものが多くなっています。
技能実習制度を管理している外国人技能実習機構や、厚生労働省において、母国語による相談窓口を設置しておりますので、まずはこうした母国語相談窓口の周知徹底に努めてまいりたいと考えております。またニーズの高い技能実習生の語学学習の機会を増やすために、日本語支援が実施されていない地域においても、今後の実施を検討しているところです。
今後技能実習生の方々が抱える様々なお困りごとを気軽に身近に相談できるより良い体制の構築に向けて、現在在住外国人へのサポートを行っている高知県国際交流協会や地元市町村等と連携していくと共に、県主催の「技能実習制度に関する連絡協議会」で今後のサポート体制の検討を進めてまいりたいと思います。
また、技能実習生については、このように暮らしのサポートを行っていくとともに、母国に帰った後の国際交流のあり方についても支援を検討しているところです。例えば県内で育成した技能実習生が、帰国後に海外に工場を持つ当該企業において、マネージャーとして活躍している事例など帰国後も実習先の企業との交流が続いているといったお話もお聞きしております。県においては、今後、このような交流事例を他の県内企業においても普及できないか、検討を進めてまいります。
【漁業の成長産業化】
●中根県議 次に、漁業の成長産業化について水産振興部長にお伺いいたします。政府が提出をした漁業法改定=「水産改革」法案は、漁業のあり方やルールを定めた漁業法を「70年ぶりに抜本的に改正」するものですが、農協「改革」と同様、漁民の共同を基本に営まれてきた沿岸漁業と水産資源管理などを、「漁業の成長産業化」を口実に、大企業の目先の利益のために、沿岸漁業の衰退、資源と環境保全の荒廃をもたらす「百害あって一利なし」の大改悪となりました。
そもそも、この法案の枠組みをつくった規制改革推進会議の水産改革ワーキンググループは、漁業の専門家、漁業者はたった一人しかおらず、その報告は結論ありきの極めてずさんな代物です。
「改革」法案の主な内容は、漁獲量による資源管理の導入、船のトン数規制の撤廃、漁業権のルールの根本的な変更などです。
資源管理では、現在8魚種に限られている漁獲可能量制度(TAC)の対象を大幅に増やすとしています。しかし、漁獲量と資源量との関係が証明されているものは極めてすくなく、実施するには調査など膨大な体制と予算が必要なことから魚種か限定されてきた経過があります。対象の大幅増は、現場を知らない暴論です。
またTAC管理の手法の一つである個別割当方式は、北欧を中心に発展したものです。当地の漁は回遊性のない底魚が中心であり、しかも日本のような漁協を軸とした共同管理が存在しないという事情から、船ごとの「個別管理」に至ったものです。多種多様な魚種と漁法があり、禁漁期間や禁漁水域の設定など共同管理で実施してきている日本とは事情がまったく違います。
そうした違いを無視して導入する意図は、クロマグロの漁獲量枠の設定の事例が端的に示しています。漁業者の声を聞くことなく、政府が一方的に設定した枠は、日本海に産卵のための集まる親魚(しんぎょ)や成育途上の個体を一網打尽にする大型船のまき網漁を優遇し、資源保護に留意し、大型の魚のみを対象とする沿岸漁業者に対しては、一回の漁で枠が埋まってしまうなど、生活できない漁獲枠しか与えず大問題となりました。大きな運動で一定是正されたものの、大型の養殖場の設置の障害となる沿岸漁業者、中小漁業者を、資源保護を名目とした「漁獲割当」をもって排除するものだと、強い批判がされています。遠洋・沖合漁業では漁船のトン数規制をなくし、大型化をすすめることも盛り込んでいますが、中小・零細漁業者を締め出すという一連の流れにそった規制緩和です。
◆資源管理は重要ですが、当事者の意見も聞かず、生活を脅かすような一方的な漁獲量割当、科学的根拠のない割当はすべきでないと思うがお聞きします。
■水産振興部長 まず、この度の漁業法の改正における、漁獲割当による資源管理のあり方についてお尋ねがございました。
今回の制度改正は、水産資源の維持、回復を図るとともに、漁業者が将来展望をもって積極的に経営発展に取り組むことができるよう資源管理措置と漁業の許可や免許などの漁業生産に関する基本制度とを一体的に見直すものでございます。
国は、資源管理の基本原則として、漁獲可能量の設定により水産資源の適切な管理を行うとしており、対象魚種を順次拡大するとともに、先ずは経営体が少なく、水揚げ港が比較的限定される沖合の許可漁業、その中でも一隻当たりの漁獲量が多い大臣許可漁業から順次漁獲割当を導入することとしています。
これらの対象魚種の拡大や、漁獲割当の導入を行う際には、丁寧な説明と十分な理解を得ることが不可欠として、最新の科学的知見を踏まえた資源評価の結果なども含めて漁業者への説明を重ねていくこととしております。
さらに、これらの資源管理手法の導入に当たっては、沿岸漁業者の経営への影響を緩和するため、収入安定対策の活用も含め、最大限の配慮を行っていくと聞いております。
県としましては、新たな資源管理手法の導入に際しましては、様々な機会を通じて本県の漁業の実状を訴えていくとともに、地域の特性に応じた漁獲量管理システムとなりますよう国の動向を注視していきたいと考えています。
●中根県議 養殖漁業では、都道府県知事が漁協に一括して与えてきた漁業権を、漁協を通さずに地域外の企業などに個別に与える方式に変更します。しかし、現状でも、企業は、漁協の組合員となり、共同管理を担う一員として参加をしています。それを改悪し、企業への個別の漁業権を付与する目的は、良好な魚場を独り占めにしたい、共同管理に責任を負いたくない、漁業権行使料は払いたくないという企業の手前勝手な発想に基づくものです。
水産「改革」方針は、漁業のポテンシャルが発揮されていないという前提に立っていますが、そもそも養殖に適した静穏な水面は限られ、すでに飽和状態にあります。そのため、「持続的養殖生産確保法」に基づく漁場改善、適正養殖体制の実現がとりくまれており、水産庁は、さらに生産数量ガイドラインにより、供給過多による暴落防止をとっています。水産改革WGの議論では、ノルウェーのサーモン養殖の成功を「典型例」として取り上げていますが、養殖に適した静穏な水面をもつ海岸線が非常に長いなどの地理的条件を無視したものです。
失敗から学ぶことが大事です。世界最大のサーモン養殖業者(マリンハーベスト)が03年に大分県にハマチ養殖で進出しましたが、国外販売、加工工場建設の約束は一切果たされず、5年連続の赤字で撤退した事例があります。宮城県水産特区も、ルールを無視した出荷で地元ブランドを毀損したうえ、多額の税金を投入されながら3年目からは赤字の連続という惨状です。
◆大分の失敗事例、宮城県の水産特区の失敗について、どう認識しているか部長にお聞きしいたします。
■水産振興部長 次に、大分県の企業参入事例及び宮城県の水産特区に対する県の認識についてお尋ねがありました。
まず、大分県の事例については、現行の漁業権制度のもと、平成15年に民間企業が地元漁協の組合員となり、養殖業に新規参入をいたしましたが、赤字や経営方針の変更により、平成20年に撤退しております。しかし、撤退後、この漁場には別の企業が参入して現在も養殖を続けており、漁場は有効に活用されていると承知しております。
現行の漁業権制度のもとで、こうした民間企業の新規参入の事例は、本県でもこれまでに見られております。
また宮城県の事例については、東日本大震災後、宮城県の強い要望によりまして、平成25年に水産業復興特区が導入され、複数の地元の漁業者と水産会社によって設立された合同会社に直接漁業権が免許されたことで、当初は地元漁協からの反対があったとお聞きしております。
しかし、合同会社が新規参入することにより、震災被災者が漁業を円滑に再開することができ、さらに新規就業者などの雇用も生まれるなど、合同会社が地域の復興に貢献したことから、現在は漁協との関係も良好であるとお伺いしております。
企業の新規参入は、地域の漁業就業者の減少や高齢化に歯止めを掛けるための選択肢の一つと受け止めておりまして、大分県や宮城県のような先例も検証した上で、地元の合意を前提として、漁業生産の増大と雇用の創出に繋がるよう、支援して参りたいと考えております。
●中根県議 日本のような多種多様な魚種と漁法がとられている水産業の実態に見合った資源と環境保全の管理方法は、世界的にも高く評価されている共同管理方式です。すでに、この中で、企業も共生しています。この仕組みの中で、課題を解決しながら、ともに繁栄していく道こそ強化すべきではありませんか。
◆共同管理方式は、国際的に高く評価されていると思うがどうか、また、ここに風穴をあけ、浜と沿岸漁業の崩壊をもたらす漁業権ルールの変更は行うべきではないと思うがお聞きいたします。
■水産振興部長 最後に、共同管理方式の評価と漁業権ルールの変更についてお尋ねがありました。
我が国では、地先の漁場における紛争を防止し、資源の持続的な利用を図るため、地元漁業者によって漁場を共同で管理、利用するという方法が形成されてきました。
このような共同管理方式は、漁業者の経験や創意工夫による、実態に即した自主的な資源管理として、国際的にも高い評価を受けているものと認識をしています。
今回の制度改正は、養殖業や定置網漁業を免許する際の優先順位の規定を改め、漁場を適正かつ有効に利用している漁業者については優先して免許する仕組みとし、現に地域の漁業を支えている漁業者の経営安定につなげるというものです。
また、新たな漁場を設定する場合にも、事前に漁業者や漁協など関係者間の調整を図るとともに、海区漁業調整委員会の意見を踏まえ、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許することとなっております。
国では、こうした制度が適切に運用されることにより、地域の漁業者が不利益を被ることがないよう対応することとしておりますし、県といたしましても、新たな漁場の設定や漁業権の免許にあたっては、地元の合意を前提として、慎重に対応して参りたいと考えておりますし、地域に貢献する事業者の参入を積極的に推進したいと考えております。
【特別支援学校の増設について】
●中根県議 次に、特別支援学校の過密解消と増設についてお聞きします。
9月県議会で吉良県議が取り上げ、現在の山田養護学校のすさまじい過密化の現状が報告されました。約10年前の2008年2月県議会でも私の質問のなかで、「全国特殊学校長会によるアンケート調査で、効果的に運営できる学校規模として生徒数は71~90名と挙げられていること」を紹介し、当時132名の山田養護学校、115名の日高養護学校の過大規模を解消するために新たな学校の新設を求めました。当時の大﨑教育長は「県の中央部にあります知的障害の特別支援学校の児童生徒数が増加傾向にあることにつきましては、これまで既存の施設の増改築や特別教室を普通教室に転用することで対応してきましたが、こうした対応では限界があると考えており、私たちも大きな危機感を持っています。」と答弁され、加えて「一方で児童生徒の絶対数は減少をしています。こうしたことから、今後の児童生徒数の推移予測が極めて難しいことに加えまして、財政状況が厳しいために、直ちに特別支援学校の新設という解決策が取れる状況に至っておりません。」としたうえで、
「できる限り早い時期に解消していきたい」と述べられました。
その後、日高養護学校の高知みかづき分校、山田養護学校の田野分校が増設されましたが、今年2018年の5月時点で山田養護学校は37学級189名、日高養護学校は22学級102名、高知市立高知特別支援学校は33学級142人と過大規模の解消にほど遠い状況です。職員が一堂に会して意見交換する職員室の机も一部には3人掛けの事務机を使用しています。教室も足りず、こどもも大変ですが先生もすさまじい環境の中で教育に取り組んでいます。
◆教育長は山田養護学校を訪問されています。さまざまな気づきがあったことと思いますが、率直にいかがだったのか。お伺いいたします。
■教育長 まず、特別支援学校の増設に関して、山田養護学校を訪問したことに関するお尋ねがございました。
山田養護学校には10月に訪問し、教室棟や作業棟、寄宿舎、職員室など学校の施設全体を見て参りました。児童生徒の増加に伴い、特別教室を普通教室に転用したり、多目的ホールを有効活用するなどさまざまな工夫の中で、児童生徒の学習に支障がないよう、現場の皆さんにご苦労をおかけする中で、対応していただいていると感じております。
また、議員ご指摘のとおり、職員室はたいへん手狭な状態となっており、先生方にはご不便をおかけしていると感じております。
今後さらに児童生徒数が増加した場合には、現状の施設では、これ以上教室を増設する余裕はなく、また、職員室の改善も併せて、特に県中央部の知的障害児の受け入れ体制等についての対応が必要であるというふうに考えております。
●中根県議 先日10月末に、日本共産党高知県代表団は文部科学省を訪問し、特別支援学校の課題過密解消のためにも、学校の設置基準の必要性や、教職員不足解消などについて要望しました。文科省は、設置基準は1人1人の状況が違うことから柔軟に対応できるようにしていると述べた後で、高知県は教職員定数を満たしておらず、まずは県が教職員定数を満たす努力を求めているとの指摘を受けました。
◆教職員数は標準定数も満たしていないとは、どういうことなのか、足りない数はどのくらいなのかお聞きをいたします。
特別支援教育への研修や学習を積み重ねる先生方の教育環境整備をさらに整えながら、定数確保の努力も避けて通れない課題です。
◆最も支援が必要な子どもたちの下に、本来配置すべき人数が配置できていないのは大問題です。思い切った対策を講じるべきだと考えますが、教育長に伺います。
■教育長 次に、教職員数が標準定数を満たしていないことと、本来配置すべき人数を配置できるよう対策を講じるべきだとのお尋ねがございました。関連しますので、併せてお答えをさせていただきます。
標準定数とは、毎年5月1日の基準日における特別支援学校の学校数、学級数、児童生徒数等をもとに法律で規定された算定基準により算出される教職員数のことであり、本年度、本県の特別支援学校の標準定数に対する教職員の配置割合、いわゆる充足率は、97,1%となっており、標準定数に比べると23人少ない状況となっております。
学校に配置する教職員数については、学校から学級編制資料の提出を求め、児童生徒数や児童生徒の障害の程度などについて、校長とヒアリングを重ね、児童生徒の実態に対応できるように積み上げたものであり、その結果、標準定数の範囲内に収まっているものとなっております。
また、特別支援学校では、年度途中の転入生が多く見られ、その転入生に対応する教員や寄宿舎指導員を増員するための人数や、教職員の病気休暇などの代替教職員を配置するために一定数を確保しておく必要があることも、年度当初に充足率を100%にすることが難しい理由となっております。
県教育委員会としましては、今後とも学校とさらに連携を図り、障害の重度化、多様化が進んでいる児童生徒の実態把握に努め、標準定数をさらに有効に活用して教職員の配置を行ってまいります。
●中根県議 ◆この10年を検証・分析し、今の実態解決のために教育委員会が学校新設にいまや踏み切るべき時だと考えますが、教育長に伺います。
■教育長 次に、この10年間を検証・分析し、実態解決のために学校新設に踏み切るべきではないかとのお尋ねがございました。
平成15年頃からの県中央部を中心とした児童生徒数の増加に対応し、平成23年度には山田養護学校田野分校、日高養護学校高知みかづき分校を開校したことにより、山田養護学校では、平成22・23年度のピーク時の171名から、平成27年度には22名減少し149名に、日高養護学校では平成21年度のピーク時の146名から平成29年、30年度には100名程度まで減少してきたことから、両校の大規模化過密化の解消には一定の効果がありました。
しかしながら、全体的に少子化の傾向が顕著であることや、共生社会の実現に向けたインクルーシブ教育の推進により、地元の小・中学校への就学が増加傾向にあるといった県立特別支援学校の児童生徒数に対する減少要因があるなかで、山田養護学校においては、平成28年度から再び増加に転じております。
この児童生徒数増加の要因として、保護者、関係者等に知的障害や特別支援教育に関する理解や専門的な教育へのニーズが高まり、県立学校では小学部段階など早期からの入学者が増加していること、また、原因はまだ十分に把握できていませんが、小・中学校の知的障害特別支援学級の児童生徒数が増加傾向にあることなど、複数の要因があるというふうに考えています。
県教育委員会としては、今後の知的障害特別支援学校への入学希望者の動向などを見極めながら、将来を見据えた抜本的な改善、解消の方策について、入学者数が増加している高知市や香南市などの関係市町村にもご意見をいただきながら、具体的な対応策を検討してまいりたいと考えています。
【教員の増員】
●中根県議 次に教員の増員について教育長にお聞きします。
まず、「教室に先生がいない」という教員未配置問題についてです。この問題は6月議会でも米田議員が取り上げました。その際、教育長は、4月当初、定員籍で配置されるべき教員が「小学校で17校17人の未配置」となったが、「6月26日時点で全ての小・中学校において配置ができた」と答弁されています。
しかし、その後も未配置校数は増え続けています。11月1日現在、一カ月以上、先生がいないという未配置校は、小学校21校23件(昨年同時期:16校17件)、中学校6校6件(4校4件)、高校6校7件(1校1件)、特別支援学校6校6件(4校6件)と、昨年より増える極めて深刻な状況となっています。
まずは、今年度のような年度当初からの未配置を生まない手立ての一つとして、早くから臨時教員として任用する事を本人にしらせ、他県や他職への流出を防ぐことが大切ではないでしょうか。そのためには、3月末の人事異動以降に行っていた臨時教員の着任内定時期を早めなくてはなりません。他県の例では、12月や1月に来年度の着任内定を通知し、着任校も示していますから、他県にも申請している臨時教員は先に職が決まった他県に行く例も出ています。
◆本県でも着任内定時期を早くするなどし、臨時教員を確実に確保する取組を行うべきと考えますが。どうでしょうか。
■教育長 次に、着任の内定時期を早めることなどにより、臨時教員を確実に確保する取り組みを行うべきではないかとのお尋ねがございました。
本県においては、次年度の臨時教員確保に向けて、従来より、9月下旬から臨時教員募集要項を配布するとともに、県教育委員会のホームページにも掲載して、10月1日から、臨時教員志願書の受付を開始しております。
その後、2月中旬頃から、臨時教員志願書を提出していただいた方に対して直接連絡をとらせていただき、本県での勤務意思を確認するとともに、勤務地についての希望を聞いております。その後、人事異動発表後の3月下旬に、志願者に実際の配置校や採用条件などを提禾し、採用手続きを行っております。
このような手順により、臨時教員の配置を行っておりますが、2月の意思確認の段階で、他県で採用される予定となっていたり、他の職種での雇用が既に決まっているなどの理由から、本県での勤務を断られる事例も近年増えてきております。
また、臨時教員志願者数自体が大きく減少しており、年度当初から必要な教員数を十分確保することができない状況となっています。
このようなことから、教員採用数を伸ばすとともに、現在、臨時教員の確保方法についても検討を進めているところです。具体的には、退職教員の臨時的任用者を増やす取り組みを進めることや、臨時教員の志願書を受け付けた段階で、順次採用の内示を行うことやまた議員のご指摘のような内定時期を早めることについても検討してまいりたいと思います。
●中根県議 次に、採用審査の改善です。審査日を日本一早くしたから受審者が大幅に増えたと言っていますが、事実は違います。小学校の場合、採用予定110名に応募数794、一次合格者は492名。ところが2次審査ではそのうち323名、なんと66%が辞退し、臨んだものはわずか169名、そのうちの不合格はわずか26名で、そのうちの7名を繰り上げて名簿登載しているので、19名しか不合格となっていません。66%もの辞退者を生んだ背景は、一次審査が腕試しとして利用されているからです。
本県で教員として採用される事を希望し、4月から着任し、身を粉にして子どもたちを熱心に指導している臨時教員は、決して辞退などしないでしょう。全く本県で教育に当たる意志などない323名の一次合格者の枠は、この本県臨時教員の2次への道を閉ざしたともいえます。さらに、大量増となった受審者数をこなすために、一次に面接がなくなり、実績のある臨時教員を評価する機会を消滅させた事も、やる気のある有能な臨時教員を現場から去らせる要因となっています。
◆この10年間の小学校採用者に占める臨時教員率の推移をお聞きいたします。
■教育長 次に、この10年間の小学校の採用者に占める臨時教員の割合の推移についてお尋ねがございました。
本県の小学校教員の採用者のうち、県内の臨時教員が占める割合につきましては、今年度分は審査継続中のため、平成20年度から29年度までの10年間の推移についてお答えいたします。
平成20年度実施分は、平成21年度以降と異なり、採用者は24人と少なく、そのうち県内の臨時教員は16人で66.7%でした。
翌年の平成21年度実施分では、採用者58人のうち臨時教員は47名で81.0%となりましたが、その後、全体の採用者数の増加に伴い徐々に低下し、平成29年度実施の採用審査では、採用者118人のうち県内の臨時教員は40人で33.9%となっております。
一方で、受審する県内の臨時教員の数が大幅に減少する中で、県内の臨時教員から採用となった者の数は40人前後で推移しており、受暮した県内の臨時教員からの採用率は、平成
21年度実施の採用審査では、受審者145人のうち採用者47人で32.4%でしたが、平成29年度実施の採用審査では、受審者90人のうち採用者40人で44.4%と上昇しております。
●中根県議 ◆また、教育長は、採用選考審査時期から生じる課題と、臨時教員の教育実践を正当に評価し審査に反映させる課題とにどう向き合い改善なさるお考えがあるのか、お聞きをいたします。
■教育長 次に、採用選考審査の実施時期から生じる課題と、臨時教員の教育実践を正当に評価することについて、どのように改善するのか、とのお尋ねがございました。
まず、採用審査につきましては、平成28年実施分より関西会場を新設するとともに、昨年度から日程を6月下旬に前倒ししたことで、大幅に受審者が増加しました。一方で、議員のお話にもありましたように、本年度実施した小学校受審者の中で、2次審査を辞退した方が、1次合格者のうちの66%となり、十分な2次審査の受審者を得ることができなかったことは、優秀な教員を確保する上で課題であると捉えております。
この原因は、受審者の中には、地元を第1志望とする県外出身者が多くいることに加え、本県の2次審査の日程が、関西圏の12団体のうち大阪府や兵庫県を含む6団体の日程と重なっており、それらの団体を第1志望とする方は、本県の2次審査を受審できなかったことが大きいと考えています。
このため、来年度は、こうした辞退者を減らすために、2次審査の日程を関西圏の団体の日程とずらすことを検討したいと考えております。
次に、採用審査における臨時教員の教育実践の評価につきましては、県教育委員会としましても、臨時教員経験の中で資質や能力が高まるものと考えており、選考にあたっては、その力量は適正に評価されていると考えております。
その結果としまして、1次受審者に占める臨時教員の割合と採用者に占める臨時教員の割合を比較いたしますと、この10年間、何れも採用者に占める臨時教員の割合の方が高くな
っております。
臨時教員の皆さんには、今後も学校現場において実践を積むことにより、専門力を高めて1次審査を突破するとともに、2次審査の模擬授業や面接審査において、臨時教員としての強みを発揮できるよう努めていただきたいと考えております。
●中根県議 次に、産休代替教員確保についてお聞きをいたします。
産休・育休の代替教員が配置されていない小学校が高知市で3校(11月26日現在:朝倉第2小学校、初月小学校、鴨田小学校)発生しています。
「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」の第3条で「公立の学校に勤務する女子教職員が出産することとなる場合においては、任命権者は、出産予定日から起算して十四週間を経過する日までの期間、教職員を臨時的に任用するものとする」と規定。女性が安心して妊娠・出産し、職員も子供たちも保護者も、新たな命の誕生を喜び合うお手本であるべき教育現場が、「妊娠してしまい申し訳ない」というような思いをさせる現場であっていいのでしょうか。
◆現在、県下の学校で、産育休法に則って配置すべき教員が未配置となっている学校数と件数を学校種別にお示し下さい。
■教育長 次に、産休法または地方育休法に基づき配置すべき教員が未配置になっている学校数と件数についてお尋ねがございました。
正教員が産前産後休暇や育児休業を取得する場合には、「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」等の関係法令に従って、その職員の代替となる臨時教員を配置することとなっております。
しかし、臨時教員志願者数が年々減少しており、産前産後休暇等を取得した教員の後補充のための臨時教員を十分に配置できない状況に至っております。
本年12月1日現在、この代替の臨時教員が未配置となっている状況は、中学校、高等学校、特別支援学校においてはありませんが、小学校では、4校で4件の未配置案件がある状況となっております。
●中根県議 団塊世代の大量退職や阪神淡路大震災以降の採用抑制の反動などで、教職員の急速な若返りが進み、育児休業取得者がこの10年で3倍になった神戸市では、育休取得者増加に対応するため、本年度の4月の教職員採用から、代替教員を育休期間3年間の任期付き職員として100名採用し、来年度は180名を採用するとしています。本年度要項によると、この任期付き教員は任期が決められていること以外、原則として正規教員と同様の扱いとなっており、育休前の産前・産後休暇を取得する教員の代替等として配置される場合もあるとしています。
◆今後本県でも増加する産前・産後、育休取得者増への対応を図るためにも、この神戸市教委の取組を研究し、子どもたちの教育に穴が開くことが無いようにすべきと考えますが、教育長にお聞きをいたします。
■教育長 次に、今後増加が予測される産前・産後、育休取得者への対応として、任期付教員を採用することを検討してはどうか、とのお尋ねがございました。教員が大量に定年退職する時期にあたり、小学校教諭を中心に若年教員の採用が増加しており、今後ますます産休や育休の取得者が増加することが予想され、その代替となる教員の確保策を更に講じる必要があると考えております。
議員のお話にありました、代替教員を任期付で採用する神戸市の制度は、県教育委員会としましても、代替教員を確保するための有効な手段の一つであると考えており、先月、同市を訪問して採用審査の実施方法等についてお話をお伺いしてきたところでございます。
神戸市の制度は、最長3年間の任期を付して代替教員を採用し、その勤務条件は基本的に正規教員と同様とするものであるため、同市で勤務している臨時教員はもちろん、神戸市以外で勤務している臨時教員にとっても魅力ある制度となっております。
また、採用する側にとりましても、代替教員の確保につながり、さらに、正規教員にとっては、気兼ねなく産休・育休を取得できる職場環境が整えられることになりますので、今後、制度の導入に向けて検討してまいりたいと考えております。
【学童保育】
●中根県議 次に学童保育について知事にお聞きします。
学童保育は、働く親に代わって小学生の放課後や長期休暇などを安心・安全に過ごす生活の場です。高まるニーズの中で急増し、高知県でも高知市の92クラブとその他の市町村の81クラブで173クラブへと増加してきました。2015年からはそれまでの1~3年生の入所対象枠を4~6年生まで広げ、年齢や家庭環境の異なる子どもたちが集団で過ごすのが学童保育の特徴です。どの子にとっても安心できる生活の場を保障していくことが指導員の大切な役目であり、学童保育があるからこそ保護者も安心して働くことができます。
指導員には固有の専門性が求められ、「ただ、こどもと遊んでいればよい」「けがのないように見ていればいい」というものではありません。
長年の運動の結果、2015年、厚生労働省は省令63号で初めて市町村責任を明記し、市町村の条例の下で指導員の専門性、支援の単位(クラス)ごとに複数を配置し、そのうちの一人は放課後児童支援員の資格を持つ指導員とすることが「従うべき基準」とされました。やっと明記された国基準であり、すべての学童保育に通じて今後さらに積み上げていくべき最低の基準です。
先日、知事は、内閣府の地方分権改革有識者会議、提案募集検討専門部会に出席し、「従うべき基準」の見直しについて提案され、職員確保に苦しむ地方からの「提案」として「従うべき基準」を拘束力のない「参酌すべき基準」に変更しても安全性と質の確保は十分だと発言されています。今後、市区町村が条例改定を行って、職員数などを自由に決めるとなると、放課後児童支援員の現行資格のない職員が一人で学童保育を担うことも可能となります。「安全の確保」について、児童クラブの求めに応じて、学校や教育委員会の複数の目があり、教員などが駆けつけることができるとしていますが、現場にそれほどの余裕がないのはご存知の通りです。規制緩和で、こどもたちの命と安全と安心が守れないと心配する声が関係者からわきおこっています。関係者が求めているのは、子どもの安全を確保できる学童保育のあり方です。
◆安全・安心の学童保育を継続・実施していくために、高知県として今後どのような支援をしていくのか、知事にお伺いいたします。
■県知事 次に、安全・安心な学童保育を継続・実施していくために今後どのように支援していくのか、お尋ねがございました。
一般に学童保育とも呼ばれる「放課後児童クラブ」の設備運営基準につきましては、国が定める基準を踏まえ、それぞれの市町村が条例で定めることとされており、先月、内閣府の地方分権改革有識者会議において、厚生労働省より、2名以上、うち、1名は資格を持った支援員を配置しなければならないという現行の基準を緩和する方針が示されたところであります。
私は、本年5月にこの会議の提案募集検討専門部会に全国知事会の代表として出席し、全国的な状況として、放課後児童クラブの利用ニーズが年々高まる一方、受け皿拡大に必要な人材の確保がボトルネックとなっている現状を申し上げ、全国一律の基準を適用することで、利用児童数に応じた柔軟な配置ができない、国の定める内容の研修がなかなか受講できず、長年児童クラブに従事していても資格が取得できないなど、様々な支障が生じている問題を提起しました。
そのうえで、この基準の目的である放課後児童クラブにおける「安全性」と「サービスの質」を確保するための手段は決して全国一律の基準のみにとどまるものではなく、地域の実情に応じた多様な対応が可能であり、地方が自らの責任において、しっかりと安全性と質を確保しながら受け皿拡大を図ることが望ましいと説明をさせていただきました。
本年4月に、県教育委員会が行いました、基準が緩和された場合の対応に関する調査の結果によりますと、全ての市町村が、有資格者の配置については柔軟な対応をしつつも、現行の職員数を維持する意向であるとともに、独自の研修の充実や、近隣にある保育所・小学校等との連携によるバックアップ体制の構築などといった対応を考えられているとお聞きしておりまして、安全や質の確保は十分可能だと考えております。
県教育委員会には、これまで通り、子どもたちが放課後、安全・安心に過ごすことを最優先に、職員を対象にした様々な研修の実施、職員の処遇改善や新たな施設整備への助成、さらには、活動内容の充実に向けた市町村訪問による助言などを通じて、安全面やサービスの質が低下することのないよう、しっかり取り組んでいただきたいと考えているところであります。
【戦争遺跡の保存と活用】
●中根県議 次に、戦争遺跡の保存と活用についてうかがいます。
県議会総務常任委員会は、本年度の県外調査で、沖縄県八重瀬町にある戦没者慰霊碑「土佐の塔」、また沖縄県平和祈念資料館を視察しています。
「土佐の塔」は、沖縄戦でなくなった高知県の方々832人を含め、毎年、追悼行事が行われ、日頃は、地元の方々が清掃などの管理をしてくださり、姉妹都市となっている香南市の子どもたちとの交流も続いています。
戦争体験を次世代に引き継いでいくことが、戦後73年経った今、今を生きる私たちの世代の歴史的使命でもあります。県としてもそうした観点から、今年開かれた「戦没者追悼式」において、大川中学校のみなさんの献花や作文朗読など、伝え引き継ぐ努力をされています。
「人から物へ」戦争の語り部が移りゆく中、県内各地でも戦争遺跡の掘り起こし、保存、活用の活動が広がっています。
◆まず、教育長に、次の世代に本県における戦争の歴史や体験を引き継ぎ伝えることの重要性をどのように考えておられるのか、ご所見を伺います。
■教育長 次に、本県における戦争の歴史や体験を引き継ぎ伝えることの重要性について、お尋ねがございました。
戦後73年が経過し、戦後に生まれた世代が大半を占めるようになりましたが、この悲惨な戦争の教訓を風化させることなく、しっかりと伝えていく必要性を感じています。
特に、日本の将来を担う子どもたちには、まず、日本の歴史をしっかり学んでほしいと考えています。現在、小中学校におきましては、先の大戦に係る学習も含め、平和を希求する学びが道徳や特別活動を中心に行われており、その中で、例えば、修学旅行先で語り部から話を聞いたり、地域に住む戦争を経験された方をお招きし、平和や人権について学んだりするなど、それぞれの学校が工夫しながら、戦争の歴史や体験を引き継ぎ伝えていると聞いております。
また、郷土に対する誇りや愛情を育むことを目的としまして、県教育委員会が昨年度末に中高生を対象に配付しました、高知県の歴史を学ぶ副読本「中高生が学ぶふるさと高知の歴史」には、旧陸軍歩兵第44連隊や高知空襲等に関して詳細に掲載しています。
今後も、二度と悲しみの歴史を繰り返さないよう、戦争の悲惨さや平和の尊さを次の世代に引き継いでいくことが、私たち大人に課せられた重要な責務であると考えております。
県教育委員会としましても、引き続き、社会科や道徳、特別活動などを通じて、戦争が人類全体に惨禍を及ぼすことや、平和で民主的な国際社会の実現に努めることの重要性などについて、児童生徒の理解が深まるよう努めてまいります。
●中根県議 ◆2017年9月議会で、教育委員会として、県内戦争遺跡の悉皆調査に取り組まれる、また、2018年2月議会で戦争遺跡を文化財として明確に位置づけるための文化財の指定基準の見直しの検討を行うとの答弁を戴いていました・その後どのような取り組み状況となっているのか教育長に伺います。
■教育長 次に、県内戦争遺跡の悉皆調査と文化財指定基準の見直しの状況についてお尋ねがございました。
戦争遺跡の分布状況の情報収集については、平成12年度から2カ年をかけて県が実施しました「高知県近代化遺産総合調査」の成果と民間関係団体からの情報提供をもとに、戦争遺跡のリストを本年4月に作成いたしました。このリストをもとに県内全市町村を対象として、5月に8月末を提出期限として現状等を把握するための悉皆調査を行いました。
これにより、これまで県内11市町で41箇所を把握しておりましたものが県内13の市町で92箇所に増加するなど、新たな資料を収集することができております。
今後、この92箇所の内容について、遺構の残存状態や聞き取りなどの現地調査を市町と一緒に実施するとともに、必要に応じて詳しい調査を専門家に依頼して、意見もお聞きしながら精査してまいります。
また、戦争遺跡に該当する「古戦場から戦跡」への文化財指定基準の見直しにつきましては、7月に各県の指定基準について照会を実施しており、31年2月には文化財保護審議会での検討をおこない、改訂してまいりたいと考えております。
●中根県議 12月2日高知大学で、旧陸軍歩兵第44連隊弾薬庫等の保存と活用を考えるシンポジウムが開催されました。その中で、高知大学人文社会科学部小幡尚教授が、この間新たに確認された資料を基に「旧歩兵第44連隊と高知」と題した報告をされました。
その資料では1943年に安芸郡安田町と合併した旧中山村の役場資料で、日露戦争期を中心に、同村出身の兵士たちに関する様々な文章、徴兵、出征の見送り、安否確認、遺骨の帰還・引き渡し等に関する多数の文章が綴られている物を紹介されました
それらの中には、遺骨、または遺髪が朝倉連隊に到着したという通知や、応召軍人見送りの件として歩兵第44連隊から出発する日時を記し、見送りに集合するよう通知する文章、また、朝倉の兵営にあった朝倉忠魂社に戦死者を合祭することを通知する文章が確認されています。
小幡教授は「朝倉兵営は高知県民の生と死が交錯した場所」と述べられました。
本年1月25日、高知県文化財保護審議会は、この跡地と弾薬庫、講堂について「建物は県指定か国登録文化財に値する。跡地も平和学習等の教材、学びの場として意義がある」と答申。この間、県として「文化財保存を前提に様々な選択肢を検討する」と四国財務局高知財務事務所に売却手続きの再延期を求めてきました。その期日は来年の2月28日と目前に迫りました
◆そこで教育長に、此まで、どのような部署でどのような関係者と保存と活用について協議をされてきたのか、具体的にお示しいただきたいと思います。
■教育長 最後に、保存活用についての協議の経過についてお尋ねがございました。
高知財務事務所から平成31年2月まで土地の処分留保の延長をいただいて以降、本年1月の高知県文化財保護審議会の答申の内容を踏まえ、建造物の保存方法や周辺地域を含めた活用方法、関連する施設等のリストアップとその利活用の可能性などについて、様々な視点から検討を進めているところです。
これまで議会で知事が答弁して参りましたとおり、県が土地と建物を取得するには相当ハードルが高いことから、高知財務事務所とは、土地を購入しない方法での活用など国有財産の取り扱いについて協議を重ねているところであり、また、文化庁とは、文化財としての保存活用を図る場合の手続きや保存と活用計画についての課題等について協議を行うとともに、御助言もいただいているところです。
このほかにも、戦時資料や遺族会を通じて寄贈されました遺品等の収集保存を行っている県立歴史民俗資料館との協議を行いますとともに、民間の団体の方からも、保存・活用に向けた具体的な提案をいただいていますので、その内容等についての検討を行っているところです。
今後とも、財務事務所や文化庁など関係機関のご理解、ご協力が得られて、土地や建物などの有意義な活用が可能となるよう協議を進めて参ります。
●中根県議 高知市において、都市計画の見直しによる都市公園区域指定を外す代替地として、この44連隊跡地を都市公園用地として取得してほしいとの要望も寄せられています。
◆用地取得費は約4億円とされ、高知市は購入を断念した経緯がありますが、高知県文化財保護審議会の答申を真摯に受け止め、奇跡的に残った貴重な戦争遺跡を、後世に残し伝えていくために、知事に対応を急いで行っていただきたいと考えますが、ご所見を伺います。
■県知事 最後に、戦争遺跡を後世に伝えていくための対応についてのお尋ねがございました。
高知県文化財保護審議会の皆様からご提出された答申については、専門家の判断として大変重く受け止めさせていただいております。
また、現在、教育委員会において様々な検討が行われているところですが、遺存する講堂・弾薬庫を単に保存するというだけではなく、明治中期から昭和前半にかけて、高知の若者がこの地から出征し、その多くが帰らぬ人となったという、高知県民にとっては歴史的におおきな意味のある地域でもありますことから、財務事務所や文化庁など関係機関のご理解、ご協力が得られて、土地や建物などの有意義な活用が可能となるよう、今後も引き続き、教育委員会としっかり協議して参りたいと考えているところでございます。私からは以上でございます。
【物部川の防災対策】
●中根県議 最後に、物部川の防災対策について土木部長にお伺いします。
今年7月の豪雨により総降水量が多いところで1600ミリを超え、平均で約1200ミリを観測いたしました。香南市の深渕水位観測所において、無堤の危険氾濫水位4.25mを超え氾濫、そして最高水位4.52mにまで達し、有堤の氾濫危険水位4.55mまであとわずか3cm、あわや大惨事という事態となっていました。
もし決壊した場合は浸水面積3,144ha、被害額約300億円に及ぶ浸水が発生する可能性があった、と述べられています。
◆最近の頻発する異常気象を想定したとき、最悪の事態に至っていた可能性も認識することが必要です。今回の7月豪雨などをふまえ、ソフト対策の促進・強化とともに、河床掘削など流下能力向上など「洪水氾濫を未然に防ぐ対策」が急がれますが、物部川の防災対策の重要性や今後の対策について、お伺いします。
■土木部長 まず、物部川の防災対策の重要性や今後の対策について、お尋ねがありました。
物部川下流域の香長平野は扇状地形となっており、地盤が、洪水時の水位より低いことに加えて、川から離れるほど、さらに低くなる特徴があり、右岸側で氾濫した場合には洪水の影響が高知市にまで達するなど、影響の及ぶ範囲が広く、大災害が発生する恐れがあります。
国の試算では、想定される氾濫区域内の人口は6万9千人と、県内人口の約9パーセントにも及び、人や物流の拠点となる高知龍馬空港なども、浸水の怖れがあることから、物部川の治水対策は極めて重要であると考えております。
そのため、これまでにも物部川は河川改修事業を実施してきており、今回の記録的な豪雨におきましても、家屋の浸水被害は発生いたしませんでした。
しかし、合同堰下流の国管理区間では、堤防の漏水や護岸侵食など16件の災害が発生したことから、現在、その災害復旧費を補正予算として計上していると聞いております。
県といたしましては、これらの災害復旧が完了した後も洪水などによりダメージが蓄積されないよう、河床掘削などの適切な維持管理を国にお願いしてまいります。
●中根県議 また、様々な点がありますが、永瀬ダムの機能なども含め、◆国交省、農水省、流域自治体、県、住民などの協力、連携を今後どのように強めていくのかお伺いいたします。
■土木部長 次に、国土交通省や農林水産省、流域自治体および住民などとの協力、連携をどう強めていくのか、とのお尋ねがありました。
現在、物部川流域では、関係機関が物部川に関する諸問題に対して、協力、連携し、効果的な取り組みを進めるための3つの会議がございます。
1つめとして、上流域の崩壊地対策や堆積土砂の除去、濁水対策について連携して取り組む「物部川濁水対策検討会」であります。
この検討会は県のほか、流域市、国土交通省、林野庁、物部川漁協などの関係者に有識者を交えて構成され、濁水の軽減に向けて関係機関の役割調整を行っております。
2つめとして、県管理河川の減災対策を推進するための「中央東土木事務所管内 豪雨に強い地域づくり推進会議」、3つめは、物部川下流域における「物部川大規模氾濫に関する減災対策協議会」であります。
これら2つの会議は県のほか、流域市、国土交通省で構成され、「逃げ遅れゼロ」を目指し、関係機関が減災のためのハード対策やソフト対策に取り組み、いざという時に住民が確実に避難できることを目標に取り組んでいるものです。
この取り組みの一環として、今年5月には、消防関係者や地域住民など約700人が参加する「物部川・仁淀川合同水防演習」を物部川で開催し、自主防災組織による避難訓練なども行っております。
7月豪雨では、物部川流域において護岸侵食などの河川施設災害に加えて、新たな山腹崩壊や河川への土砂堆積なども発生していることから、先ほどの3つの会議の情報共有を行うなど、連携を強化しながら、住民の安全・安心を守るための一体的な取り組みを進めてまいります。
また、永瀬ダムについてですが、堆砂量は、発電開始から50数年で100年計画の115%に達しています。現在、ダム上流において、ダム湖に流入する土砂を抑制する、いわゆる「貯砂ダム」の整備を進め、これ以上、土砂の堆積が進まないような事業を実施しているところだと聞いています。
◆永瀬ダムの南側に、日本最大級の仏像構造線が走っていることも心配の一つです。南海トラフ地震による影響を早急に調査し、科学的検証に基づく見解を示すことを求めて、第一問といたします。
■土木部長 最後に、永瀬ダムの南側に日本最大級の仏像構造線が走っているが、南海トラフ地震による影響を早急に調査し、科学的検証に基づく見解を示してはどうか、とのお尋ねがありました。
永瀬ダムの耐震性能につきましては、国の基準となる「大規模地震に対するダムの耐震性能照査指針(案)」に基づき、平成25年に照査を行いました。
照査にあたっては、ダムの南側を走る仏像構造線をはじめとするダム周辺の断層についても考慮しており、とりまとめた資料は、国の専門機関である国土技術政策総合研究所や、国立研究開発法人土木研究所にも確認をいただいております。
その結果、南海トラフ地震に対して耐震性能を確保しているとの結論に至っております。
【第2問】
●中根県議 はい。御答弁ありがとうございました。二問を行います。
米軍の墜落事故についてです。本当に、4回も次々ということになりますと大変心配です。そして、知事会も全国的にもその元凶である地位協定の見直しについても提言をされているところですし、今回の事故も通常の訓練というふうに知事はおっしゃいますけれども、真夜中の深夜の時間帯に通常訓練をしているような状況なのかということについても、私なども大変驚きました。慣れにはならないで、本当に県民の安全、安心を図るためにしっかりと国に対して、もの申すとそして米軍に対してもそれを伝えるという中身を知事としても貫いていただくように再度要請をしたいと思います。
それから、特別支援学校について教育長からお話がありました。この10年間努力はしてきたけれども、結果的に、今の現状では抜本的に変えるしかないという想いは皆さん一致しているのではないでしょうか。具体的に考えていくというご答弁をいただきましたので、本当に、10年経過してやっぱり改善をされていないという10歳年を取ると、子どもたちはもう青年になってしまいますので、この点をぜひ考えていただければと思います。ぜひとも新設を要望して再度ご決意を伺いたいと思います。
それから、教員の採用試験についてです。二次審査の時期を変えるというお話がありました。しかしですね、一次審査の中身も変えないと、本当に県内で努力をしている臨時教員の皆さんにとっても不利な条件が続くということになります。そうした点で、再度、これもそのちょっとやってみて、またちょっと変えるではなくて、抜本的に採用のあり方を考え直すという点でご努力をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
最後に、戦争遺跡の問題です。知事からのご答弁も、教育長からのご答弁も努力をし、この間協議を重ねてきたというお話でした。文化財の審議会の決定も重いものだと思います。この間の調査のまとめ、それから、ご努力も含めて、再度、もう時間がありませんので、2月28日までの決断をどの時点でしていくのかその点をぜひご答弁、教育長にお願いして、二問といたします。
■教育長 特別支援学校の部分についてですけれども、まずこちらにつきましては、ご答弁も申し上げましたとおり、本来は子どもが減っていく状況にあって、様々な要因があって特別支援学校に通う子どもさんが増加をしておる。そこは様々な要因といいますか、それぞれの原因に対して適切な対応をしていく必要があるというふうに思っていますので、しっかりと対応を図れるように、抜本的な対応をはかっていきたい。これについては、10年というお話がありましたけれど、それは急いで取り組みをしていきたいというふうに考えております。
それから、採用の関係ですけれど、今回、2次の辞退者がたくさん発生したということについては、昨年と比べてたくさん発生しておりますけれども、他県の、関西地域の他の多くの府県との日程がぶつかってしまって、どうしても他県出身で他府県を第一次志望としている方がそちらにいったというような分析になっておりますので、来年はそういったところを他県と被らないように。どの県も教員不足というなかで、いかにして教員を集まるかということであの手この手でやっておるところがございます。けっして、高知で臨時教員をされている方々に、不利な状況ということにはなっていないと思っておりますので、来年度はそういった日程を重ねて受審者が減らないような形にもっていきたいというふうに考えております。
それと戦争遺跡の部分につきましては、先程ご答弁いたしましたように、それぞれ関係の所にご意見もいただきながら、利活用について検討を進めております。現状2月28日まで、ということで留保していただいておりますので、その日程をにらみながら、お約束の状況に合わせるような形での結論をだしていきたいというふうに考えております。
●中根県議 ありがとうございました。最後ですけれど、神戸方式の採用についてもぜひ、前向きのご検討期待をして今回の質問をすべて終わります。ありがとうございました。