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- 2018年07月09日
- 議会(質問・討論)
- 2018年6月議会 「地域材の利用拡大推進を求める意見書(案)」反対討論 中根佐知議員(2018.7.6)
私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました議発第10号「地域材の利用拡大推進を求める意見書」案に反対の立場で討論を行います。
持続可能な長期的な森林経営管理のもと、地元材の活用推進など林業を元気にしていく取り組みは、私たちも大いに推進をめざすものです。
しかし、参議院で5月25日に自民党・公明党などの賛成多数で可決・成立した「森林経営管理法」は、日本の戦後の林政を大転換させるものであるにもかかわらず、衆議院はわずか6時間の政府質疑と参考人質疑のみ。その短い質疑の中でも、法案の大前提となった林野庁の法案説明資料で、森林所有者の経営意欲が低く見えるようにねつ造していることが指摘をされました。
林野庁は森林所有者から経営管理権を取り上げることを正当化するために、8割の林業者は経営意欲が低いとする資料を説明しました。その基となったのは、林業経営規模の移行についてのアンケート調査で、「現状を維持したい71・5%」、「縮小したいが7・3%」でした。これを合わせて8割は経営意欲がないと決めつけたのです。経営を拡大する考えがなければ経営意欲がないとねじ曲げたのは、都合のいい数字を作り上げるためのねつ造としか言いようがありません。こうした指摘を含めて説明資料の訂正は8か所にも及びました。法案審議の根底が崩れたにもかかわらず、政府はこの法律を数の力で押し通しました。
本意見書の前段には、「『新たな森林管理システム』の下で意欲と能力のある経営体に森林の経営・管理を集積・集約化し、木材を低コストで安定供給するための条件整備、木材産業の競争力強化、木材利用拡大のための施設整備など、川上から川下までの取り組みを総合的に推進する必要がある」としています。が、意欲と能力をどう見るのかが根本から問われています。
成立した森林経営管理法は森林管理を大胆に変えるものです。市町村や民間の事業者に伐採のための「経営管理権」や「経営管理実施権」という権限を与えるもので、これまでの林業政策には、まったくなかった制度です。森林の伐採は所有者の同意を前提としながらも、同意が得られないとか所有者がわからなかった場合でも、市町村の勧告や都道府県知事の裁定があれば伐採できる特例を設けています。ここでも林野庁は、恣意的な解釈の下で法案資料を作成し公表ました。「今後の森林経営・管理の目標」の中では、私有人工林約670万ヘクタールのうち森林法に定める「森林経営計画」を策定していない森林450万ヘクタールを管理が不十分と決めつけているのです。そのうち約210万ヘクタールを公的管理に置くほか、残りは伐採業者に「新たな経営管理を担ってもらう必要がある」、として、森林の経営管理権をはがす旨をしるしています。森林面積の規模が同計画の対象外であっても、適切に管理している小規模林業者はたくさん存在しています。法に示された資料に沿えば経営計画がないために「管理不十分」として経営権を奪われてしまう解釈となります。
「新たな森林管理システム」ありきの恣意的な資料がここでも問題になる中、今後森林管理のなかで過剰な伐採が進み、「皆伐された山と小規模林家の排除につながるのではないか」との声が関係者から出ているのです。
84%の森林率である高知県にとっても、形が変わるほどの法律となります。
関係者への周知や意見聴取も不十分で、当事者である全国森林組合連合会が森林経営管理法案の中身を知ったのは国会審議直前だったという声もあります。当事者との意思疎通が不十分のまま、規制改革推進会議と官邸主導で押し通す手法に多くの批判が上がっています。
4月12日の農林水産委員会に参考人として尾崎知事も参加され、自伐林家の育成などに関しても語られていますが、他の参考人からは、ピラミッド型の森林政策は成り立たず、産業として成り立つ林業と森林労働者の育成が鍵であること、加工・流通は儲かる仕組みができても、皆伐によるしわ寄せは山側にいき、山主は木を取られただけでいき詰まっていく、そのことで山が荒れ、環境を保てなくなるのではないかと危惧の声が上がっていました。
本意見書の前提となっている「新たな森林管理システム」は、この森林経営管理法に基づいて、目先の一部メーカーの利益の確保のために山と林業を荒廃に導く大問題をもっているのです。
日本の森林の最大の特徴は、世界にない品質の原木が多数生育しているという点です。戦後植えた人工林が50 年を超え、A 材が生産でき始めた今こそ長期的な多間伐施業による持続的・永続的な森林経営を位置付けるときにきています。6月6日付の農業新聞に「自伐型林業 持続的収入、初期投資低く、環境守る」との記事がのりました。佐川町で、自伐型林業にとりくむ、京都から移住してきた青年がとりあげられています。「地域の人から委託された森林の伐採管理を請け負う。月収は30万円弱。木材の売り上げの10%は山主に返している。 妻と共稼ぎで2人の子育てをし、山に向かう日数は月15日程度。長時間労働が当たり前だった20代の会社員の頃に比べ、ゆとりある暮らしを送っている手応えがある」と紹介をされています。また記事の中で「NPO法人・自伐型林業推進協会によると、高知県内で300人が実践するなど、ここ数年で自伐型林業の担い手が増加している。新たに挑戦する7、8割が若者で、そのうち半数以上が移住者だ」とも紹介されています。地域経済、環境保全、人口減対策にとって、こうした方向こそ、本格的に進むべき道です。
森林政策に必要なことは、森林が持つ公益的機能の発揮、地域の雇用や所得を補償することを通じて林業の再生を図ることです。五十年、百年という長期的な視点が必要です。「新たな森林管理システム」は、これに反して、日本の林業を荒廃させ、日本の山でもうける一部の産業のためのものでしかありません。
森林整備の財源確保は必要ですが、大企業には減税、所得が1億円を超えると税負担率が急減する証券優遇税制を温存する一方で、所得の低い人ほど重くなる間接税を、その財源としていることも大きな問題です。
以上の理由から、「新たな森林管理システム」を推進する立場をとっている意見書には賛成することはできません。同僚議員の賛同をお願いして、反対討論といたします。