議会報告

  • 2018年07月09日
    2018年6月議会「都市計画道路はりまや町一宮線はりまや工区減額修正」提案説明 吉良富彦議員(2018.7.6)

 私はただいま議題になりました議発第3号平成30年度高知県一般会計補正予算のうち、都市計画道路はりまや町一宮線の未着工区間はりまや工区283mの工事の再開に関する歳出予算2億3993万1千円の減額修正を行う修正案の、提案説明を行います。

 本工区は、JR土讃線連続立体交差事業と高知駅周辺土地区画整理事業に関連する街路事業として1995年に都市計画決定された路線です。2003年工事着手とともに新堀川の歴史的景観と希少生物を守れという市民の声が大きくなり、その声を背景に、2006年9月議会、私どもの会派は「都市固有の歴史・文化に重きを置き、史跡・遺跡を生かし、貴重な生態系を守るべし」との立場から代表質問で本事業を取り上げました。
 それに対し橋本知事は「階段護岸は、現在の位置で埋設して保存することとしていますが、よりよい保存の方法を関係者と相談していきたい」また、「交通量の将来推計の検証も行い、追手筋弥生町線から南側、国道32号のかるぽーと前までの区間は、これらの調査や実際の車の流れだけでなく、水辺や掘り割りという歴史的な資産を生かしたまちづくりの視点から、今後の方向性を検討する」と答えました。残念ながら、高知城下の物流を支えた史跡、階段護岸・雁木は埋設され歴史的構造物は市民の目から奪われてしまいました。しかし、2011年3月の北側区間完成後、南側のはりまや工区の工事を県は答弁通りに中断し、今に至っています。
 この12年前の答弁は、本道路工事のありかたを、旧態依然とした車の流れ、交通量を中心にした視点から、自然と歴史的な資源を重視する視点へと転換させた、画期的なものだったと言えます。

 答弁を後押しするかのように、翌2007年に文化庁が、「地域の文化を総体として把握し、社会全体で保護し活用する」ための「歴史文化基本構想」を立案、これをうけて2008年、文化庁と農水省、それに開発推進の中心部局であった国土交通省が加わり、「歴史まちづくり法」が施行されました。その流れは、今第196回国会でさらに強まり、「文化財の滅失や散逸等の防止が緊急の課題であり、未指定を含めた文化財をまちづくりに活かしつつ、地域社会総がかりで、その承継に取り組んでいくことが必要」との趣旨のもと文化財保護法改訂の上程へとつながっています。
 また、生物の減少絶滅を食い止める動きは、答弁から2年後2008年に生物多様性基本法が施行され、2010年、名古屋市でのCOP10で国際的に採択された愛知目標の実践のため、人と自然との共生社会のあり方を示す「生物多様性国家戦略2012-2020」が2012年に策定されました。2014年3月に作成された生物多様性こうち戦略で知事は、「生物多様性が失われることは、自然と共存する私たちの生活基盤を失う事にもつながり、生物多様性の保全は私達に課せられた責務であると言えます」とのべ、「高知市中心部の汽水域は稀なほど、生物多様性に富み、将来にわたって維持できるように、住民と行政が一体となって環境に配慮したまちづくりを進めていく必要がある」と明記されています。
まさにこの12年の間に、「豊かさの物差し」は大きく変わったのです。
 それゆえに、はりまや町一宮線(はりまや工区)まちづくり協議会では、従前の交通量を主にした視点ではなく、水辺や掘り割りという歴史的な資源と、他都市では見られない極めて稀な都心に生息する希少生物を守り生かすまちづくりの視点から、23年前の道路計画を検証する事が期待されました。しかし、県の態度はその期待に応えるものではありませんでした。協議が始まったばかりで十分な論議も行われていない第2回目の協議会の場であるにもかかわらず、県は、唐突に、全て4車線化のみの案を示し、まちづくりでの論議をそれに収れんさせる方向へと主導しました。それは、通行量が9600台を超えているから4車線化だとばかりの提案姿勢は、1995年の計画時点と同じレベルであり、あまりにも時代錯誤です。それは土木行政の21世紀の「まちづくり」についての思想・哲学の貧困さを示したものであり、12年前の画期的な答弁を反故にする許されざるものだといえます。
 昨年9月議会で指摘したように、歴史や史跡を生かしたまちづくりの研究者、希少野生動植物保護専門員など、正式に協議委員として加え新たな二つの視点での検証、論議を今からでもきちんと県民の前で行うべきです。それがなされていない現時点での本工事の再開は、なされるべきではないと考えるものです。

 この6月15日に行われたまちづくり協議会は、県の4車線化工事再開を決定し、今年度中に設計を終え、2023年度完成を目指す事を報告するためのものでした。その時に、新堀小OB/OGの会の皆さんが指摘していた事は、県のこの間の手法は2013年に国交省が作成し、透明性、客観性、合理性、公正性、を向上させ道路計画をより良いものにするための「双方向コミュニケーション」を図る「構想段階における道路計画策定プロセスガイドライン」から逸脱しているのでないかという事です。
 第2回目のパブリックコメントを実施した際、はりまや橋小学校区のうち、県は、周辺の9町内会のみを町内会長を通じて意見聴取する一方、町内会以外や道路が隣接する小学校関係者には聴取など行なっていません。その事実は公正性、正当性が欠けるものと指摘。その他、多様なコミュニケーション手法によって情報提供、意見把握、ワークショップやシンポジュームなどが必要とガイドラインは示しているのですが、OB/OGの会が、「県主催の公開説明会の開催を求める申入書」を出したものの、それに応えていません。それどころか、5回目の協議会は十分な間隔を取らずに行ったり、この15日の協議会も、開催の告知を2日前にホームぺージに掲載するなど、県民への情報提供図り、双方向のコミュニケーションを図るガイドラインの精神に則った対応とは言えません。
 将来の高知のまちづくりを担う子どもたちや学校関係者の意見を反映させるなど、ガイドラインの精神を生かす努力をこれから行うべきです。そそくさと工事再開をすることは、許されません。

 本議会には西岡謙一さん、田中正晴さんほか1199名が、都市計画道路はりまや町一宮線の未着工区間の工事再開の延期を求める署名を添えて、請願が出されています。そこには、計画決定から23年もの時代進展で、自然環境意識の高まりや防災水面の確保など水辺空間を活かした都市再生を求める住民意識が変化し、江戸末期から明治にかけての色濃い高知ならではの歴史が息づく景観を守り、希少野生動物のシオマネキやトビハゼ、絶滅危惧種のコアマモなど生息する街中の水族館ともいえる、新堀川を愛し、四季折々に、キャンドルナイトや釣り大会、花火大会等々の催しを住民自らが行ってきている事が記されています。
 事業費39億円、10メートルあたり1億3780万円もかけて、このような新堀川とそのコミュニテーを破壊する4車線化を行う事は、今一度立ち止まって考えるべきです。県は、再開理由の一番大きなポイントとして、狭くて危険な歩道への対応が急務であるとしています。であるならば、電車通りから新堀橋までの東歩道1.2mはつぶして車道にし、その分で西側の歩道を3m幅に広げるなど、今できる事を早急に行い、まず、児童の安全を確保するのが先決ではないでしょうか。
車の流れ、交通量を中心にした視点から、自然と歴史的な資源を重視する視点へと転換させた12年前の答弁の精神に立ち返り、十分な協議が引き続きなされ、将来に禍根を残さない結論が導き出されることを切に願うものです。
 以上、都市計画道路はりまや町一宮線の未着工区間はりまや工区283mの工事の再開に関する歳出予算2億3993万1千円の減額修正を行う修正案の、提案説明といたします。ご審議の程よろしくお願いします。