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- 2017年06月30日
- 議会(質問・討論)
- 2017年6月議会 塚地佐智議員の一般質問(2017.06.28)
【質問項目】
1、 政治姿勢/核兵器禁止条約
2、 政治姿勢/改憲・緊急事態条項
3、 政治姿勢/社会保障制度改革
4、 国保行政
5、 教育行政
6、 若者定住対策
●塚地県議
私は、日本共産党を代表いたしまして、以下質問をいたします。
【政治姿勢 核兵器禁止条約】
まず、「核兵器禁止条約」に関して知事にお伺いをいたします。
核兵器禁止条約について国連の第二会期の交渉会議が始まりました。今回の会議で、3月に開かれた第1会議の議論を踏まえ、5月22日に発表された条約の草案を審議をし、7月7日までに採択する予定となっています。人類史上初めて核兵器の使用、開発、移転などを禁止、違法化する条約の採択を目指しています。
5月に日本人女性として初めて国連軍縮部門トップに就任した中満泉(なかみついずみ)軍縮担当上級代表は会議の冒頭、「会議はまさしく歴史的で、核軍縮分野における最も意義ある交渉を象徴している」と強調し、「勇敢でたゆみない被爆者の努力」が国際社会を導いてきたと述べています。
一方、この会議に、唯一の戦争被爆国である日本政府が参加してないことに、被爆者サーロー節子さんは国連の演説で、「自国に裏切られ、見捨てられ続けているという被爆者の思いを強くした」と厳しく非難しました。空席となっている日本政府の席上には、「ここにあなたがいてくれたら」と英文でメッセージが書かれた大きな折り鶴が置かれていました。
条約は前文に「被爆者および核実験の被害者の苦しみに留意」し、「そうした被害が想定される戦闘手段・兵器の使用禁止」がうたわれています。県が積極的に対応しているビキニ核実験の被災者を二度と生まないことにもつながるものです。
知事は、これらの被爆者の切実な願いと運動、今日までの努力を、どう評価されているかお聞きします。
■知事
塚地議員の御質問にお答えをいたします。
まず、核兵器禁止条約に関して、被爆者の切実な願いと運動、今日までの努力を、どう評価するのか、とのお尋ねがありました。
核兵器の廃絶は、国家間で取り組むべき重要な課題であり、世界人類共通の願いであると考えております。
我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の核軍縮・不拡散の取り組みを主導する必要があると考えております。
今般、国連におきまして核兵器禁止条約の協議が開始されましたが、そうした中で、軍縮担当上級代表という核軍縮に向けた国際的な取り組みを推進する役割を担う重要なポストに被爆国である日本から中満氏が選出されたことは非常に意義があることだと思います。
政府におきましては引き続き、核兵器保有国と非保有国の橋渡し役を担っていただきたいと思いますし、核兵器のない世界の実現に向けて、実効性のある取り組みが積み重なるよう期待したいと考えているところでございます。
核兵器廃止に関する被爆者の方々の思いは、核兵器の直接の被害者の声として極めて重く受け止めるべきであると考えております。
さらに、被爆者の方々の行動は、核兵器の廃絶と世界の恒久平和に向けたものであり、深く敬意を表するものでございます。
●塚地県議
日本原水爆被害者団体協議会による「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」が2020年にむけて取り組まれています。その呼びかけには「平均年齢80歳を超えた被爆者は、後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したいと切望しています」と述べられています。
署名は、現在、296万筆が集められ、14の県知事、650の市町村長が署名をされています。県内の全自治体が参加する「平和首長会議」も昨年11月の総会で、ヒバクシャ署名への賛同と協力を決議しています。
長崎県では「ヒバクシャ国際署名をすすめる県民の会」が発足、代表賛同人に、県知事と長崎市長が名前をつらね、県内有権者の過半数を目標に、中村知事、田上市長も街頭に立ち市民に署名を呼びかけています。
高知県でも毎年、非核平和パネル展を県庁のホールで開催をしていますが、被爆者の取り組み、被爆自治体の取り組みに連帯し、さらに充実した取り組みができないでしょうか。
県が実施している非核平和パネル展をさらに充実させ、県内の被爆者の思いの詰まった写真の展示も追加すること、その場に、ヒバクシャ国際署名コーナーを設置することを提案します。
また、知事はビキニ被ばく者の皆さんと過日、面談されていますが、県内の被爆者団体のみなさんからも、知事に直接、切実な思いを聞いていただきたい、との要望もだされていますが、知事の考えをお聞きします。
■県知事
次に、県が毎年実施している非核平和パネル展をさらに充実させてはどうか、また、県内の被爆者団体から、直接、切実な思いを聞いてほしいとの要望が出されていることをどう考えるか、とのお尋ねがありました。
本県では、核兵器の廃絶を強く訴え、全面撤廃を推進するため、県議会におきまして、昭和59年には「非核平和高知県宣言」が、平成9年には「高知県の港湾における非核平和利用に関する決議」がなされております。
広島と長崎に原子爆弾が投下された人類の不幸は、遠く薄らいだ記憶としてはなりません。この悲惨な出来事を二度と繰り返すことのないようにするため、県では毎年、本庁舎及び安芸、須崎、幡多の各総合庁舎におきまして、非核平和パネル展を開催しているところであります。
それに加えまして、私もこれまで、原水爆禁止世界大会へメッセージを送付させていただいたり、全国戦没者追悼式にお伺いさせていただき、核兵器の廃絶や戦争のない平和な世界の実現を願ってまいりました。
引き続き、県といたしまして、非核平和高知県宣言等を尊重しながら、機会を捉えまして県民の皆様の声もお聞きし、様々な取り組みを行ってまいりたいと考えております。
お話の中にございました「ヒバクシャ国際署名」につきましては、「核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを、すべての国に求める」内容となっております。
本県といたしましては、非核平和高知県宣言にありますように、「あらゆる国の核兵器の廃絶を全世界に強く訴え、核兵器の全面撤廃と軍縮を推進し、もって、世界の恒久平和達成を目指すもの」であり、この姿勢に変わりはございません。
他方で、私は、その実現に向けましては、2月議会で米田議員にお答えいたしましたとおり、「核兵器を廃絶するためには、核兵器保有国の同意が必要不可欠であることは言うまでもなく」、政府には「核兵器のない世界の実現に向けて、実効性のある取り組みが積み重なるよう期待したいと考えている」との立場でございます。
こうした考え方を踏まえまして、御提案のありましたことも含め、対応を検討させていただきたいと考えているところでございます。
【政治姿勢 改憲・緊急事態条項】
●塚地県議
知事は、5月3日「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(以下「国民の会」)が主催する公開憲法フォーラム「憲法施行70年、各党は具体的な憲法改正原案の提案を!」にビデオメッセージで出演をし、「過剰な人権制限をもたらすことはあってはならない。賛否両面から徹底的に国民的な議論がなされることが必要だ」としながらも大規模災害時における緊急事態条項の必要性、改憲の必要性を訴えられました。
このことは、単にこれまでの主張を述べた、にとどまらず、特異な主張を持つ改憲運動に事実上のエールを送ったといわざるを得ない性格をもたらせたと指摘しておきます。
まず、最初に、昨年の2月議会でも指摘をいたしましたが、憲法に緊急事態条項を入れる必要性はないことを明らかにしたいと思います。
災害の法律に詳しい弁護士の小口幸人氏は、被災地での復旧支援の経験を通じて、「憲法に緊急事態条項があったら大震災で起きた数々の悲劇を食い止められたのかといえば、そうではない。今の法律を十分に使いこなせてなかったのが問題。被害を最小限に抑えるのは、法整備やその周知、訓練などを含めた事前の準備。大震災を改憲のダシにしないでほしい」と語っています。法整備やその周知、避難訓練、食糧備蓄、電源設備の充実、各自治体への災害対策用の予算・設備の援助などを含めた事前の準備こそが重要で、県も国への提言を含め積極的な取り組みを進めています。
また、岩手、宮城、福島、新潟、兵庫といった大震災を経験した自治体を含む計17の弁護士会も、緊急事態条項の新設に反対する声明を出しています。被災地は緊急事態条項を求めてはいません。
しかも、緊急事態に備えてすでに詳細な法律が整備されています。災害対策基本法は、首相の権限として、災害緊急事態を布告できる、内閣は物価の抑制や債務支払い延期などを政令で制定できる、政令を制定したときは、直ちに国会の臨時会を召集するか、参院の緊急集会を求める。市町村長の権限として、居住者へ避難のための立ち退きを指示することが可能、他人の土地の一時使用が可能など私権の制限の規定も存在をしています。
災害救助法は、知事の権限として、医療、土木建築工事、輸送関係者を救助の業務に従事させることが可能、病院やホテルなどの施設を救助のために管理できる、現場にいる者を救助業務に協力させることが可能。
大規模地震対策特別措置法は、首相の権限として、地方公共団体の長や指定公共機関、日本赤十字社やNHKなどへ必要な指示が可能。
自衛隊法は、首相は緊急事態に際し、自衛隊の出動を命じることが可能。警察法は、首相は緊急事態に際し、一時的に警察を統制し、警察庁長官を直接に指揮監督する、などの規定もあります。
そもそも、憲法に緊急事態条項がないのは欠陥ではありません。憲法学者の伊藤真氏は、憲法の制定過程で、GHQと日本側が緊急事態条項を巡って議論した際、日本側は「緊急事態条項のあった明治憲法以上の弊害が起きうる」と主張し、その結果、緊急時に衆院議員が不在でも参議院で緊急集会の開催が可能と憲法54条2項に明記。参院の改選は定数の半分で、国会議員がゼロになる事態は起きないようにし、「緊急時は参院が立法府として対応できる」仕組みにしたことを指摘しています。現憲法は、このように緊急事態の対応と人権保障を両立する仕組みとなっています。
現憲法の制定に尽力した金森徳次郎憲法担当相は1946年7月、帝国議会衆院憲法改正案委員会で「緊急勅令及び財政上の緊急処分は、行政当局にとりましては実に調法なものであります。しかしながら(中略)国民の意思をある期間、有力に無視しうる制度である(中略)。だから便利を尊ぶか、あるいは民主政治の根本の原則を尊重するか、こういう分かれ目になる」とのべ、緊急事態条項が乱用される危険を直視をし、あえて現憲法にそうした規定を入れなかった重要性を語っています。緊急事態条項を入れなかったのは、まさに先人の歴史を踏まえた見識の結果だといえます。
さて、知事がビデオ出演をしたフォーラムの主催団体、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」はそのホームページが、日本会議のホームページ上の「憲法改正」欄から直結しているように、実体は日本会議が展開する憲法改定の運動を担っており、その役員は、共同代表3名中2名が「日本会議」の会長経験者、事務局長は日本会議事務総長、幹事長は日本会議政策委員とその要職をしめています
日本会議のめざすもの、活動方針を拝見すると、戦後政治について「先の大戦を一方的に断罪するわが政府の謝罪外交」「東京裁判史観の克服」と侵略戦争を否定するとともに、「行きすぎた権利偏重の教育、わが国の歴史を悪しざまに断罪する自虐的な歴史教育、ジェンダーフリー教育の横行」「夫婦別姓を導入する民法改正案や男らしさや女らしさを否定する男女共同参画条例」という記述に見られるように、戦後の民主主義と国際的な人権規定を敵視する立場をとっており、海外のメディアからも「歴史修正主義者」として厳しい目をむけられている団体です。県民からは、この団体に賛同して参加をされたのかとの疑問の声が上がっています。
確かに、日本会議も緊急事態条項が必要としています。彼らがなぜ緊急事態条項を重視するのか。日本会議の改憲論の理論的支柱、百地章・日本大学教授はインタビュー(BuzzFeed News 2016/6/18)で、「緊急事態条項は賛同を得やすい」「これで一点突破するんだ」とし、「大事なのは、憲法改正の体験、達成感ですよ」、「成功すれば次だということに当然なる。国民の抵抗感も薄れてくると思います」と語り、憲法9条をはじめ改憲の突破口に利用しようとしているわけです。「国民の会」の主張をみても、東日本大震災について「緊急事態対処の憲法規定があれば、多くの国民を災害から守ることができました」と、現地の現実、努力や取り組みを無視し、改憲の道具にする不真面目な姿勢をあらわにしています。
そこで、知事も、緊急事態条項があれば、東日本大震災から多くの国民を守ることができたという立場とお考えなのかお聞きします。
■知事
次に、憲法に緊急事態条項があれば東日本大震災から多くの国民を守ることができたという立場なのか、とのお尋ねがありました。
私は、内閣府のワーキンググループ等の委員を務める中での経験や、南海トラフ地震対策への取り組みを通じ、我が国の憲法にも緊急事態条項が必要ではないかという仮説を持つに至り、議論を盛んにすべきであるという立場を取ってまいりました。
そのため、平成27年6月に開催された衆議院憲法審査会高知地方公聴会では、南海トラフ地震などが発生した場合に備えて、防災対応上、緊急事態条項が必要ではないかとの問題提起を、具体的な論点を掲げて行わさせていただいたところであり、こうした立場を県議会等でも度々訴えさせていただいてきたところです。
こうした中、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」から、5月3日の公開憲法フォーラムにおいて緊急事態条項について大いに議論を行うので、意見の発表をお願いしたい、との依頼がありましたことから、これは議論を喚起するチャンスであると考え、ビデオメッセージにより、これまでの主張を述べさせていただいたものであります。
東日本大震災において緊急事態条項が必要であったか否かについては、今後様々な角度から検証する必要があるものと考えますが、緊急事態条項の今後の必要性を議論するうえで大切なポイントは、ひとたび南海トラフ地震が発生すれば東日本大震災をはるかに上回る規模の被害が、広範囲かつ同時に発生することが想定されているということであります。
内閣府の発表した想定によれば最悪の場合、全国の想定死者数は東日本大震災の約16倍となる約32万人、経済被害は同大震災の約13倍となる約220兆円、影響は30都府県にも及ぶとされています。
防災対応を行ううえで大事なことは、起こり得る事態を、できるだけリアルに想定し、目をそらさず、これに率直に向き合うことだと考えております。
こうした観点から、東日本大震災をはるかに上回る可能性のある南海トラフ地震の脅威に直面する本県の知事として、緊急事態条項の必要性について議論を行う必要があるとの訴えをさせていただいているところでございます。
●塚地県議
東京裁判は、日本の侵略戦争を引き起こしたA級戦犯を断罪、日本政府はサンフランシスコ条約でこの判決を受諾し、国際社会に復帰しました。
「東京裁判史観の克服」とはこの裁判を否定する議論で、知事が先日訪問された韓国をはじめとした侵略を受けたアジア諸国はもとより国際社会で到底受け入れられないものと思います。また、ジェンダーフリーを目指す「男女共同参画条例」を否定する日本会議の立場を容認されるのか、お聞きをいたします。
■知事
次に、「東京裁判史観の克服」を掲げ、「男女共同参画条例」を否定する目本会議の立場を容認するのか、とのお尋ねがございました。
今回、美しい日本の憲法をつくる国民の会に送らせていただきましたビデオレターについては、この国民の会が緊急事態条項について推進する立場にあることから、かねてからの主張を広く訴える機会であると考え、メッセージを送らせていただいたものであります。
なお、東京裁判史観に関しては、政府のこれまでの答弁にもありますように、我が国としては、サンフランシスコ平和条約第11条によって極東国際軍事裁判所の判決を受諾しており、それに異議を唱える立場にはないものと理解しております。
また、男女共同参画条例については、女性と男性が互いにその人権を尊重し、共に支え合い、責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することは重要なことと考えており、引き続き、その取り組みを推進してまいりたいと考えております。
●塚地県議
先の「国民の会」は、「日本国憲法は、敗戦後、連合国軍の占領下でGHQに押しつけられた『占領憲法』です」国民の会Q&Aに書かれています。これは、二度の憲法調査会でも否定された「押し付け憲法」との立場をとっています。
これは自由民権運動の歴史を誇る高知県民としても看過できない主張といわなくてはなりません。
敗戦後、民主的な憲法の策定を担うことになった時の政府は、民主主義の意味を理解せず明治憲法とかわらないものしか提示をできず、その案は、拒否をされるわけです。
そうした中、格別に日本国憲法に直接的影響を及ぼしたのが憲法史研究者の鈴木安蔵氏が事務局を担当した憲法研究会による「憲法草案要綱」です。その内容には、本県の民権家植木枝盛の理論が圧倒的な影響を与えています。実際、鈴木安蔵氏は、「憲法草案要綱」の発表の記者会見で、植木枝盛等の憲法草案を参考にしたと説明をしています。
同要綱の冒頭の根本原則では、「統治権ハ国民ヨリ発ス」として天皇の統治権を否定し国民主権の原則を採用する一方、天皇は「国家的儀礼ヲ司ル」として儀礼的天皇の存続を認め、また人権規定においては、「国家ノ安寧秩序ヲ妨ゲザルカギリニオイテ」という留保を付すことなく、具体的な社会権、生存権が規定をされています。これらは植木枝盛の展開した理論であり、それをもとにした憲法研究会の憲法草案要綱の基本構造は、象徴天皇制・基本的人権の尊重・国民主権という日本国憲法の基本構造そのものとなっています。
この要綱にGHQが強い関心を示し、これを英語に翻訳し、民政局のラウエル中佐から参謀長あてに、この内容に詳細な検討を加えた報告書が提出されています。
国会図書館の日本国憲法の誕生・資料と解説の中で、このラウエル中佐の「私的グループによる憲法改正草案(憲法研究会案)に対する所見」が発見をされたことで、「憲法研究会案とGHQ草案との近似性は早くから指摘されていたが、1959(昭和34)年にこの文書の存在が明らかになったことで、憲法研究会案がGHQ草案作成に大きな影響を与えていたことが確認された。」と説明がされています。
まさに、土佐の自由民権運動、その中で培われた理論が、現憲法の源流となっていることは、高知県民の誇りではないでしょうか。
また平和主義についても、軍備の費用は、人民の負担とからんでいることから、国家の軍備が減少すれば、それだけ「福祉を増すべきこと決して疑ひなかるべし」とのべ、軍備の縮小もしくは廃止の有効性を説いています。その内容を具体化した現憲法の9条、特に2項についても、当時の首相である幣原喜重郎の発案であることが、マッカーサーにより1951年5月5日の米国上院軍事・外交合同委員会聴聞会で証言をされています。さらに昨年、第一回の憲法調査会の会長であった高柳氏が、1958年12月10日付けで、マッカーサーに宛てた質問に対し、マッカーサーから「戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は、幣原首相が行ったのです」と明記がされ、「提案に驚きましたが、わたくしも心から賛成であると言うと、首相は、明らかに安どの表情を示され、わたくしを感動させました」と記された返信の存在が、国会図書館収蔵の憲法調査会関係資料にあることが確認をされました。
まさに、日本国憲法は、メイドインジャパンであり、メイドイン土佐だとも言えます。
日本国憲法の源流に土佐の自由民権運動があることは明らかで、「押し付け憲法」論は、土佐の先人の英知、努力をおとしめる暴論だと思いますが、知事の認識を伺います。
■知事
次に、日本国憲法の源流に土佐の自由民権運動があることは明らかで、「押し付け憲法」論は、土佐の先人の英知、努力をおとしめることになるのではないかとの、お尋ねがありました。
国立国会図書館が公表しております「日本国憲法の誕生」によりますと、「(民間の)憲法研究会案がGHQ草案作成に大きな影響を与えていたことが確認された」とされています。
さらに、この憲法研究会案を作成した鈴木安蔵氏は、その作成に当たり、「植木枝盛が著した「東洋大日本国国憲案」などを参考にした」とされています。
憲法制定について、このような経緯があることは、土佐人として誇らしいことだと思います。
一方で、いわゆる「押し付け憲法」論については、平成17年4月の参議院憲法調査会の調査報告書では「現行憲法の制定過程をめぐっては、連合国最高司令官総司令部(GHQ)の関与度は極めて大きく、押し付け憲法であって、自主憲法とは言えないのではないかとの意見がある一方で、日本国民はこの憲法の登場を熱烈に歓迎し、国民の支持の下でつくられたので自主的といって差し支えないとの意見がある。」とされており、様々な意見があるものと承知しております
いずれにせよ、憲法制定過程にかかわらず、制定から70年を経て、大多数の国民が現行憲法を支持していることは確かであり、現行憲法は国民の間に定着しているものと思われます。
ただし、先ほども申し上げました緊急事態条項などのように、現行憲法では、必ずしも対応できない事柄が生じているものと考えております。
このため、このような事柄について、どのような憲法改正が考えられるのか、また憲法改正が必要かどうかについて、国会での議論はもちろんのこと、国民的な議論が大いになされ、積み重ねられていくことが、重要であると考えているところでございます。
【政治姿勢 社会保障制度改革】
次に、社会保障制度改革についてお伺いをいたします。
国保の「都道府県単位化」、「地域医療構想」策定と、都道府県に社会保障抑制の役割を担わすための仕組みづくりが進んでいます。
4月12日の経済財政諮問会議では、医療・介護の抑制で都道府県のガバナンス強化と調整交付金を活用したインセンティブ改革を進めることが議論をされています。
それに対し4月14日の知事会では、山田会長が「財政の引き締めを都道府県に主体的にまかせようとする動きが随分でてきている」「住民サービスを提供する責務を負っているものとして、一番いいところは何かという観点から物事を考えるべきであり、今後非常に厳しい折衝が予想されている」と警戒感を示しています。
5月17日には、知事会、市長会、町村会が連名で「社会保障制度改革に関する緊急要請」を政府におこなっています。
そこでも「今般、政府の経済財政諮問会議や財政制度等審議会において、都道府県の保健ガバナンスの抜本強化や、保険者機能の発揮に向けたインセンティブ改革等の重要な議論が、当事者である都道府県や市町村が不在の場で行われている」と指摘をしています。そして具体的には、国民健康保険の普通調整交付金の配分方法等の見直しについて「標準的な医療費水準に基づく普通調整交付金等の配分により、インセンティブ機能を強化する方向性が示されているが、国民健康保険制度の抱える構造的課題を解消するためには、普通調整交付金が担う自治体間の所得調整機能は大変重要であり、これまでの国と地方との協議により、平成30年度以降においても、その機能は引き続き維持することとなっており、見直しは容認できない。国民健康保険制度改革まで1年を切ったこの段階で、既往の普通調整交付金の役割や配分方法を大きく見直すことは、新制度への移行準備を停滞させることにもつながり、極めて遺憾である。」と強い抗議の意思をしめされています。
高知県は、中山間地が多く訪問介護や訪問診療に物理的な困難をともなうこと、また家庭の介護力が低いといった地域の特性があり施設サービスの比率がたかくなっていることは、県の「地域医療構想」の中でも明らかにされています。知事は、今議会の知事説明の中で、大川村の議会の存続と活性化に、強い決意を示され、「必要に応じて国に対する政策提言も行っていく」と述べられました。私たちも、「小さくても輝く自治体作り」をしっかり応援していきたいと思っています。
そのためにも、地理的、社会経済的な条件を無視し、全国平均や先進地を基準にして、財政インセンティブ、逆からみればペナルティーを課すやり方で、医療や介護のサービスを抑制する方法は、安心して住み続けられる地域づくりをめざしている県の取り組みの重大な障害となるとの声をしっかりと国に届け、見直しを求めるべきだと考えますが、知事のご所見をおうかがいをいたします。
■知事
次に、社会保障制度改革に関し、まず、国の全国平均や先進地を基準とした財政インセンティブによる医療サービスや介護サービスの抑制方法についてお尋ねがありました。
現在国においては、すべての団塊の世代が後期高齢者となる2025年度を見据え、国民の生活の質の向上及び国民皆保険制度等の維持に向け、医療費適正化などの取り組みが進められています。
また、国ではこの取り組みの実現を図るため、医療保険においては、国保における保険者努力支援制度や、被用者保険における後期高齢者支援金の加算減算制度など、保険者機能に応じたインセンティブを設け、特定健診の受診率の向上や糖尿病の重症化予防などの被保険者の健康づくりに向けて、積極的な事業展開を促しています。
本県においても、被保険者の健康づくりやその結果として国保財政の安定化を図るためには、インセンティブ事業そのものは一定の効果があると考えており、国のインセンティブ事業を積極的に活用できるよう、県として健康パスポート事業や血管病の重症化予防など事業内容や支援策を具体的に示しながら、市町村に対して健康づくり事業などの取組の強化をお願いしているところです。
しかしながら、医療費や介護サービス費については、議員のお話にもありましたように、高齢化だけでなく、家庭環境や地域の医療資源の状況などの様々な要因に左右されますが、そうした実情を踏まえない全国一律の成果指標に対して、達成に向けた取組を求めることは適切ではないと考えております。
特に、国保の普通調整交付金が担う所得調整機能は大変重要であり、去る5月に全国知事会、全国市長会、全国町村会で出された「社会保障制度改革に関する緊急要請」にありますように、その見直しは容認できません。
これまでも、国に対しては様々な機会をとらえ、本県の医療や介護における実情を理解していただくための活動を行ってきました。
今後も、地域の実態に応じた医療サービスや介護サービスを受けることができ、安心して住み続けられる県づくりに向けて、国に対しては丁寧に説明を行っていくとともに、全国知事会を通じて地域の実態を踏まえたインセンティブ事業の在り方について提言を行ってまいります。
【国保行政】
●塚地県議
次に国保行政、国保都道府県単位化について、健康政策部長にお伺いします。
全日本民主医療機関連合会は、2005年から「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」を実施しています。それによると、15年には63人、16年には58人が経済的理由で手遅れとなり死亡したと報告されています。
高知市でも50代の男性が、無料低額診療所を受診し、入院後2日目に亡くなられています。2年前に事業に失敗をし、借金返済をしながらの月10万円前後のパート生活。国保料の支払いが厳しく、無保険の状態となり、高血圧、糖尿病治療が中断をしていました。症状が悪化する中で、インターネット検索で知り、診療所を訪ねた、とのことです。
また、厚生労働省の調査(16年6月)で、国保料の滞納が約312万世帯、15.9%に上り、滞納を理由とした保険証取り上げが118万世帯に対して行われていることも明らかになっています。そうしたもとで、経済的理由で受診を抑制し、手遅れとなっていのちを落とす人が後を絶たないのです。経済力によるいのちの格差が、深刻化していると言わなければなりません。
今日国保の都道府県単位化に際して、人のいのちと尊厳が軽んじられ、日本一の健康長寿に逆行する、こうした事態を放置させたり、さらに悪化させるようなことは許されません。だれもがお金の心配なく、いつでもどこでも医療を受けることができる社会、地域でなければなりません。そのために、国保の構造的問題、国保の加入者は無職・低所得者・高齢者が多く、保険料負担が重い、知事も言われましたが、まさに負担の限界、この構造的問題の根本的解決を抜きに、国保の改革、都道府県単位化を云々することが出来ないことは明らかです。
3年前には、全国知事会が公費1兆円投入を求めました、また国が構造的問題解決への道筋を明確に示さなければ協議から離脱する、との決議も上げています。
まず、国保の都道府県単位化に関連して、国保の構造的問題解決への知事の決意と今後の取り組みについてお伺いします。
■知事
次に、国民健康保険の都道府県単位化に関して、構造的な問題解決への決意と今後の取り組みについてお尋ねがありました。
国民健康保険は、無職の方やいわゆる非正規労働者の方が多く加入していることもあり、協会けんぽなどの被用者保険と比べて、低所得の方や病気になりがちな高齢の被保険者の方が多いことなどから、財政基盤が脆弱であるという構造的な問題を抱えております。
しかしながら、国保は国民皆保険制度を支える重要な基盤であり、高齢化の進行によりますます医療費が増加していく中においても、国民の方々が安心して医療を受けられるためには、その将来にわたっての安定的な運営が求められます。
このため、今回の国保制度改革にあたっての国と地方の協議において、全国知事会を始めとした地方団体は、国に対して都道府県が財政運営の責任主体となるだけでなく、国費の投入による財政基盤の抜本強化を求めてきました。
その結果、平成27年2月に行われました「国民健康保険の見直しについての議論の取りまとめ」において、約3,400億円の公費の拡充が決定されました。
また、この議論の取りまとめでは、今回の改革後においても、国と地方の協議の場において、国保制度の安定的な運営が持続できるよう、国保制度全般こついて必要な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされたところです。
来年度以降の新たな制度による国保の運営状況を検証しながら、国保の構造問題が解決され持続可能な制度となるよう、必要に応じ、国に対して全国知事会等を通じて提言を行ってまいります。
●塚地県議
次に、国保の具体的な点について伺います。
昨年10月、厚生労働省から都道府県に「事業費納付金・標準保険料算定簡易システム」がおろされ、11月には第1回、今年1月末に第2回の試算結果を国に報告するように求められています。北海道、埼玉、三重、滋賀、大阪などが保険料の試算をし、結果を公表しています。
高知県は試算をされたのか、公表すべきだと思いますが伺います。議論の内容と「納付金・標準保険料」に対する考え方について、健康政策部長にお聞きをいたします。また、第3回の試算がこの8月とのことですが、その対応についても、併せて伺います。
■健康政策部長
最初に、保険料の試算結果の公表と、納付金、標準保険料率の議論の内容及び算定に当たっての考え方、併せて第3回試算について、お尋ねがありました。
平成30年度以降、各市町村が県に納める「国保事業費納付金」や、市町村が保険料率を決める際に参考にする値として県が示す「標準保険料率」については、平成28年10月に国から配布された「国保事業費納付金算定標準システム」や、国から示される各種係数を用いて試算することになっています。
この間行った2回の試算は、事業費納付金や標準保険料率の算定にあたっての、医療費水準と所得水準の反映の程度や、被保険者の保険料負担を現在と大きく変わらないようにするための激変緩和策等について、市町村と県とで協議を行うための基礎的な材料として、平成27年度の決算をもとに、29年度の事業費納付金の試算を行ったものです。
この試算では、保険給付費については直近3年の伸び率を基に、一定の増加を見込んでいますが、本来であれば保険給付費に連動して国から交付される調整交付金については、平成27年度の決算額を増額せずそのまま用いていることや、平成30年度から拡充される公費の1,700億円が反映されていないなど、大雑把な試算結果となっています。
このため、被保険者の混乱を招くだけということになりかねないことから、公表はしていません。
また、事業費納付金や標準保険料率の算定方法については、新制度に円滑に移行するために、被保険者の方々の理解が得られるものとすることを最も重視して市町村と協議を行っているところです。
今後行います3回目の試算結果については、事業費納付金の算定方法の決定の根拠となることから、市町村との算定方法の協議が一定まとまった後、医療費水準や所得水準の反映の程度や、講じることとする激変緩和策と合わせて公表することを考えています。
●塚地県議
次に、県が決める事業費納付金は、いわゆる市町村から県への「上納金」ですが、100%上納が義務づけられ、これまでのように例えば、収納率90%であっても100%県へ納入をしなければなりません。そのために、収納率90%であっても、結果として事業費納付金金額になるように、市町村は保険料賦課額を10%あまり引き上げて設定することとなるなど、
さらに国保料引き上げの恐れが強まるのではと思いますが健康政策部長の見解を伺います。また
これまで累積赤字を抱える自治体もあり、その解消のため、また収納率を上げるために、今まで以上に市町村が滞納処分、差し押さえを強化することになるのではありませんか、併せてお聞きをいたします。
■健康政策部長
次に、市町村が事業費納付金を納めるため、保険料が引き上げられるのではないか、また、累積赤字の解消や収納率を上げるため、滞納処分、差し押さえが強化されるのではないか、とのお尋ねがありました。
市町村が保険料率を算出する際には、保険料の収納率が100パーセントに満たないことから、現行制度においても、保険料収入額が不足しないよう、各市町村は保険料で集めるべき額を実績に基づく収納率で割り戻して保険料を設定しています。
このため、新制度においても、収納率に基づく保険料率の設定方法は現在と同様となり、このことにより、引き上げとなることはありません。
また、適正な収納対策は、国保財政の安定化やきちんと納付していただいている方との公平性の確保の観点からも、今回の制度改革に関わらず、大変重要なことだと考えています。
●塚地県議
次に、国民健康保険運営方針の作成や事業費納付金、保険料の決定など今後のスケジュールをお聞きすると共に、広く県民、被保険者の声を聞くべきだと考えますが、見解を伺います。
■健康政策部長
次に、国民健康保険運営方針の作成や事業費納付金、保険料の決定に向けた今後のスケジュールと、広く県民、被保険者の声を聞くべきではないか、とのお尋ねがありました。
今回の国保制度改革に当たっては、市町村等との緊密な連携を持ち十分な協議が必要なことから、平成27年8月に、県、市町村等による「国保事業運営検討協議会」を立ち上げ、協議検討を行うとともに、今年4月には、学識経験者や国保被保険者などで構成する「国保運営協議会」も立ち上げ、今後国保運営方針等に対するご意見をお伺いすることにしています。
また、国保運営方針や事業費納付金については、8月末を目途として、方針案の作成と事業費納付金における医療費水準等の反映の程度や激変緩和措置などの基本的な算定方法の取りまとめを行う予定で、現在、市町村と協議を進めているところです。
運営方針案については、9月に全市町村に意見照会を行うとともに、併せて広く県民の皆様の意見を聞くためのパブリックコメントも行うことにしています。
そのうえで、「県市町村国保事業運営検討協議会」において10月下旬ごろ運営方針の決定を行い、「国保運営協議会」での答申を経て、12月県議会に事業費納付金等に関する条例議案を提出し、審議をお願いしたいと考えています。
また、市町村ごとの事業費納付金の額や保険料率の決定に向けたスケジュールについては、10月中旬に国から示される予定の平成30年度の事業費納付金額等を試算するための仮係数を用いた仮試算を行い、11月頃にその結果を市町村に示すこととしており、市町村は、その数値を参考にして、平成30年度の保険料率の検討を進めることになります。
その後、12月下旬に国から示される予定の確定係数を用いて、来年1月頃に平成30年度の事業費納付金の確定額を市町村に示すことにしています。市町村はその額をもとにして、それぞれの議会に諮り、平成30年度の保険料率を最終決定することになります。
●塚地県議
次に、滞納処分、差し押さえの奨励とも言え県国保2号調整交付金のあり方についてお伺いをいたします。
県は国保料の「収納確保対策」の名目で県国保2号調整交付金を市町村に交付しています。「申請者の要件」は、「滞納処分の内差押処分を実施するに当たって、積極的に取り組んでいる市町村であって、新規差押件数が、次の表に掲げる件数以上であるもの。」とし、年間平均被保険者数3千人未満は新規差押え件数10件、3千人以上1万5千人未満は50件、1万5千人以上は100件、と定めています。その上で、交付基準額の算定方法、調整基準額は、新規差押え件数に基準単価(1万5千円)を乗じたもの、つまり1件差押えすると1万5千円市町村に交付する、というものです。
平成27年度では、香美市差押え件数589件交付額883万円、香南市428件642万円、南国市314件471万円となっており、2年前と比べて交付額でそれぞれ11倍、4倍、1.8倍に増加しています。
この5年間、差押をした市町村数、件数、交付金額について健康政策部長にお伺いをいたします。
■健康政策部長
次に、5年間の国保保険料の滞納により差し押さえをした市町村数や差し押さえ件数、また調整交付金の交付額についてお尋ねがありました。
平成23年度から平成27年度の差し押さえは、
・平成23年度が28市町村で1450件
・平成24年度が29市町村で1900件
・平成25年度が30市町村で2777件
・平成26年度が28市町村で3161件
・平成27年度が29市町村で2816件
となっています。
次に、県の国保2号調整交付金のうち、平成24年度から平成28年度に保険料の収納確保対策として交付した金額は、
・平成24年度が11,000千円(10市町村)
・平成25年度は15,000千円(13市町村)
・平成26年度は20,600千円(14市町村)
・平成27年度が46,470千円(21市町村)
・平成28年度が40,905千円(21市町村)
となっています。
●塚地県議
この交付金のあり方は、一件差し押さえるごとに交付金額が増えていくことになり、まさに差押えを露骨に推奨する”差押え奨励金”と言わざるを得ません。差押え金額の多寡にかかわらず住民に不安と恐怖を与えており、滞納者の生活実態にもとづいた丁寧で慎重な対応が求められます。故に、全国でも県としてこうした算定を行っているものはわずか数都県だと承知しています。
県国保2号調整交付金を再検討し、直ちに見直し、この交付のあり方は止めるべきと考えますが、所見を伺います。
■健康政策部長
次に、県の国保2号調整交付金について、再検討して、交付の在り方を止めるべきではないかとのお尋ねがありました。
国保は被保険者の保険料と公費により賄われている医療保険であり、保険料収入の適正な確保は、国保財政にとって重要なだけでなく、国保料を納期内に、きちんと納めていただいている多くの被保険者の方々との公平性を期すためにも、大切な取り組みです。
そこで県では、国保料を納付できるにもかかわらず滞納をしている悪質な滞納者に対して差し押さえを実施する市町村に対し、県の調整交付金により支援してきたところです。
-方、滞納者に対する差し押さえについては、機械的な運用を行うことは適切ではないため、電話や戸別訪問などにより滞納者と接触を図り、被保険者一人一人の保険料の支払いが困難な「特別な事情」の有無を確認し、生活実態等も十分に把握したうえで、実情に応じて適切に実施するよう、これまでも市町村に対して助言を行ってきています。
今後も、きちんと納付していただいている被保険者との公平性を確保しながら、滞納している被保険者の実情に応じた適切な運用を行うよう助言してまいりますが、財政支援の在り方については、都道府県化に合わせて調整交付金の配分方法を見直す必要がありますので、他県の状況も調査したうえで、市町村とも協議をしてみたいと考えています。
●塚地県議
高知県の滞納世帯数は約1万3千、10,8%で全国的に見れば大変少ない状況です。しかし、滞納世帯に対する保険証の取り上げ、短期保険者証と資格証明書の発行は、9900世帯、約75%にものぼり、人権を軽視する、また強権的な対応ではないのか、危惧をするところです。
ある市の国保証ですが、確かに事業の失敗などがあり多額の滞納があるとのことです。しかし、何と交付年月日は10月21日、有効期限も同年10月21日で、一日限りの短期保険証です。その方が債権回収機構との対応で月数万円納付が始まって、一ヶ月の短期保険証に変わりました。これでやっと持病の糖尿病治療ができると喜んでおられますが、国保の担当からは「持病の糖尿病にしか保険証を使ったらダメですよ」と言われたとのことでした。
一日保険証も含めて、明らかに国保法やこの間の国保証交付の国の改善通知などにも抵触するのではありませんか。事実を確認し、法に基づく助言、指導し是正すべきと思いますが、健康政策部長の見解を伺います。
■健康政策部長
最後に、県内の市町村が実施した短期被保険者証の交付について、法に基づく助言、指導を行い是正すべきではないかとのお尋ねがありました。
保険料を滞納している方に対する資格証明書に関する国の通知では、資格証明書は事業の休廃止や病気など保険料を納付することができない特別の事情がないにもかかわらず、長期にわたり保険料を滞納している方について、納付相談の機会を確保するために交付するものであり、機械的な運用を行わず、特別の事情の把握を適切に行った上で行うこととされています。
また、市町村は、滞納世帯に資格証明書を発行するまでには、可能な限り有効期間の短い短期被保険者証を活用し、接触の機会を確保することに努めることともされています。
これを受けて県では、市町村に対して、資格証明書や短期被保険者証の取扱いについては、被保険者の経済状況や病気の実情を把握したうえで適正に行うよう助言を行ってきたところです。
ご指摘のありました事案につきましては、資格証明書を発行されている方に緊急避難的な対応を行ったのではないかと考えられますが、具体的な内容を確認したうえで、不適切な実態があれば、被保険者の実情に応じた適切な取扱いをするよう助言をしてまいります。
【教育行政】
●塚地県議
次に、教育行政について教育長にお伺いいたします。
一昨年9月1日、南国市の15歳の少年が2学期が始まるその日に自ら命を絶った事件は、今なお、保護者であるご遺族や地域住民から、その原因と学校側の対応が明確にされていないと、再調査を求める声が上がっています。
この件については、先の3月議会で我が党の中根議員が取り上げ、自殺の原因究明を行った第3者による調査専門委員会の13回に及ぶ検討内容の議事録が作成されていないという信じられない事実を指摘。「それで、どうやって報告書を作成したのか」との驚きと疑問の声が上がりました。
南国市の市議会でも、この3月議会で議論になり、「文科省に自死の件で報告された中で、議事録を作成してなかったケースは何件あるのか」との市会議員の質問に対し、南国市教育長は、「これは全て県教育委員会を通じて文科省にも当然報告してございます。それで文科省のほうでは、自死に至った事案について、いわゆるいじめが原因なのかどうかということを判定しております」といい、「南国市につきましては文科省のほうでもいじめが直接の原因ではないということでいただいておりますから、全国のその事案について議事録を作ってないというような点については、私の方は確認しておりません」と答弁。その答弁は議会便りにも、議会議事録に現時点でも記載がされています。
そこで教育長に伺いますが、文科省が、このような判定を行うことがあるのか、また、県教委は、各事案に文科省が判定を行うと市町村教育委員会が認識を持つ対応をしてきたのかお伺いを致します。
■教育長
南国市における中学生の自死事件についてのご質問にお答えいたします。
まず、文部科学省が自死の理由の判定を行うのか、また、県教育委員会は、文部科学省が判定を行うと市町村教育委員会に説明してきたのか、とのお尋ねがありました。
南国市教育長が答弁の中で触れられた、文部科学省が行う自死に関連のある調査には、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査」と「児童生徒の自殺等に関する実態調査」がございます。
これらの調査は、児童生徒の自死について全体的な傾向を把握しようとするものであり、個別の事案についての把握や対応を目的とするものではなく、文部科学省において、自死の理由などについて判定を行うことはありません。
県教育委員会は、文部科学省が行う調査の実施にあたってその調査内容に加えて、調査の目的等についても併せてお伝えしておりますが、当然のことながら、「文部科学省において、自死の理由などについて判定を行う」といった説明をしてはおりません。
●塚地県議
この答弁に疑問を持ったある記者が文科省に問い合わせをし、文科省は個々の問題に「判定は行わない」ことを確認し、南国市教育長にただしたところ教育長は、「新聞記事を見て誤解した」と回答。この6月市議会で「誤解したこと」を謝罪しました。しかし、本当に誤解だったのか、市民からも、「議事録を作成していないことに反省もないまま、問答無用にしようとした」との不信が広がり、ご遺族は、「文科省というビッグネームを出せば、反抗できないのではないか、もうこれで収まるだろうと。南国のトップの人がそういう気持ちを持っていることに対して、ものすごい憤りを感じます。長男を失い、まだこういう風に痛めつけられなければならないのか。自分の発言に対して責任をとってほしいと思っています。」と、インタビューに答えています。
このことは、テレビニュースでも報道されましたがご遺族にとって、まさに決定的な重要問題に対しての答弁であり、「新聞記事を見ての誤解だった」などの弁明で済まされる問題ではないと考えますが、教育長のご所見を伺います。
■教育長
次に、南国市教育長の答弁に対する所見について、お尋ねがありました。
県教育委員会には、6月5日に、南国市から3月定例議会で誤った答弁を行ったこととともに、6月議会でその答弁の訂正を行うとの報告がありました。
南国市教育長からは、「3月議会の時点で、いじめの事案について文部科学省が公表していると誤解していた。また、答弁を行う際に、公表されたと言うところを判定されたと言い間違え、後日、議会だよりが発行されるまで、そのことに気づいていなかった。」とお聞をしております。
議会における誤った答弁は、ご遺族をはじめ市民、県民の皆様に不信感を与えかねないものであり、このような間違いが起こらないよう、再発防止に努めていただかなければならないと考えております。
南国市教育委員会に対しては、ご遺族の心情に配慮しながら、適切に答弁していただくようお願いをしたところでございます。
●塚地県議
さて、この報告書については、調査経過においても、調査結果にもご遺族から「納得できない」との声が寄せられていました。全国各地でも、いじめや児童生徒の自殺という重大事態への学校や設置者の対応に、「いじめ防止対策推進法」施行後も様々な問題が生じ、文科省は本年3月「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を作成をいたしました。その作成理由として、法施行後3年目の見直しに当たり文科省が設置した「いじめ防止対策協議会」が、昨年11月2日に提出したとりまとめに「重大事態の被害者およびその保護者の意向が全く反映されないまま調査が進められたり、調査結果が適切に被害者およびその保護者に提供されない事態がある」との指摘があったとし、ガイドラインの中には、被害者や保護者に寄り添った調査方法がきめ細かに記されています。
私たちは、この南国市の事態も、まさに協議会が指摘した事例に当たると考えるものです。今、南国市では、ご遺族と市民が、ガイドラインの視点に立った再調査を求める署名運動に取り組み、ご遺族は文科省へ直接訴えに行きたいとも述べておられます。その状況について、教育長はどのように把握され、どう受け止めておられるかお伺いをいたします。
■教育長
次に、ご遺族や市民が再調査を望んでいる状況について、どうとらえているか、お尋ねがありました。
ご遺族から再調査の要望があり、南国市長が再調査を実施しないと判断したことに対して、ご遺族が納得されていないということについては、お聞きしております。
また、南国市長におかれては「公正な第三者調査委員会において、調査は尽くされており、新しい事実が明らかにならない以上は、再調査は行わないと判断された」と聞いております。
南国市においては、今後も、ご遺族の思いを受け止めながら、丁寧に対応していただきたいと考えます。
●塚地県議
この問題の最後に、この重大事態の県教委の受け止めの認識があまりにも軽すぎるのではないかと危惧する問題について伺います。
それは、県教委による「教職員表彰制度の中で最も高い表彰」とする土佐の教育功績表彰者として当該校長を昨年10月に表彰したことです。表彰の推薦をされたのは、先に述べた南国市の教育長であり、あろう事かその申請日は、9月1日、自殺された生徒の一周忌の命日でした。
学校側や市教委に対するご遺族や地域住民から不信や抗議の声が上げられている最中のことで、この表彰に、「自殺しなければならなかった生徒の思い、遺族の思いにあまりにも冷たく、配慮がなさ過ぎる」との声が上がるのは当然だと考えます。表彰を決定するに当たりそうした配慮はなかったのか、強く反省を求めるものですが、教育長の答弁を求めます。
■教育長
最後に、県教育委員会が校長を教育功績表彰者として表彰を決定するにあたり配慮が必要ではなかったのか、とのお尋ねがございました。
教職員表彰は、日々の教育活動において地道な努力を続け、優れた成果が認められる教員や職務に精励し、成績及び技能が優れた教員等、全体の奉仕者として他の模範となる職員を表彰することを目的に規則に基づき実施しています。
このうち土佐の教育功績表彰は、長年にわたり重要かつ困難な職務を遂行し、特に顕著な功績を上げた教員等を対象としており、平成28年度は、年度末に定年退職を迎えた15名の管理職の方が受賞をされました。
お話のあった校長は、推薦当時、管理職歴14年、その内中学校3校で11年間にわたり校長を歴任しています。その間、校長として、「ユニバーサルデザインの授業づくりの研究」や「志育成型学校活性化事業」などの県指定を受け、生徒に「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」をバランスよく身に付けることを念頭に、「学習意欲や自尊感情が高まる教科指導・生徒指導」に取り組むなど、生徒指導を基盤とした組織的な授業力・指導力の向上を図りました。
教育委員会としては、こうした長年にわたる管理職としての優れた経営マネジメントカやリーダーシップを総合的に評価して表彰をさせていただいたものです。
【若者定住対策】
●塚地県議
最後に若者定住対策について伺います。
今議会に、移住促進・人材確保のための新たな一般社団法人の設立に向けた補正予算が1543万円が計上され、その新たな組織の提案がなされています。これまでも移住促進には様々な施策に県予算が投じられ、国が進める「まち・ひと・しごと総合戦略」に掲げられた人口ビジョンの達成に向けた取り組みが進められています。私たちも移住促進を進めることに異論はありません。しかしその努力と同等もしくはそれ以上に、高知県で学び高知で育った青年が高知に残り生き生き暮らせる施策の充実に一層努力する必要があると考えるものです。
今回提案された新組織のモデルとも言えるものが島根県にあるのはご承知の通りです。この組織は、「公益財団法人ふるさと島根定住財団」。平成4年に設立し県内就職を促進するための雇用環境整備、UIターンの支援等を実施、平成8年度からは産業体験事業など、定住を促進するための先導的事業にも取り組んでいます。平成16年度には若年者の就職を総合的メニューでサポートするワンストップサービスセンター「ジョブカフェしまね」を開設、17年度にはUIターン希望者に対する無料職業紹介事業を開始、また、平成20年度から、それまでの地域支援事業に社会貢献活動部門を加えた事業を展開しています。
本県が始めようとしている新組織との決定的な違いは、県内の若者の定住支援が大きな柱として位置づけられていることです。今回の新組織には含まれてはいませんが、ぜひとも、高知県に残って頑張ろうとする若者への定住支援を、基本政策に位置づけ、推進をはかるべきと考えますが知事のご所見を伺います。
■知事
次に、本県に残って頑張ろうとする若者への定住支援を、基本政策に位置づけ、推進を図るべきではないかとのお尋ねがございました。
県の基本政策として進めております産業振興計画では、「地産外商が進み、地域地域で若者が誇りと志を持って働ける高知県」を目指す将来像として掲げております。
すなわち、自らの住む地域に誇りを持ち、地域の持つ価値を生かして、地域全体を活性化させるために努力を積み重ねようとする熱意と志をもった県内の若者が、地域で暮らし続けられること、さらには、県外からも若者を呼び込むことを目指しており、まさに若者の定住を県政の大きな柱として位置づけ、その実現に向け、官民挙げて全力で取り組みを進めているところであります。
すなわち、若者の定住支援そのものを県の定住支援の根幹に据えて総合対策として5つの基本対策をすすめていると考えているところでございます。
そうした中、具体的例をあげさせていただければ、地域に残りたいと願う若者の希望をかなえるため、多様な仕事を創り出していくことと、若者のチャレンジを応援すること、この2つのことをすべての分野で強く意識して取り組みを進めているところであります。
多様な仕事の創出に関しましては、例えば、地域産業クラスターの形成や地域アクションプランの取り組みなどを通じまして、中山間地域をはじめ、地域地域に魅力ある仕事を数多く生み出すことに全力で取り組んでおります。
加えて、コンテンツ産業やコールセンター、バックオフィスなどの事務系職場の誘致や育成、さらには、遊漁や体験漁業の振興による漁村へのサービス産業の創出など、県内に雇用の場が少ないが故に県外に流出している若者の雇用の受け皿づくりに力を入れているところであります。
また、若者のチャレンジへの応援に関しましては、例えば、起業や新事業展開を志す若者には、土佐まるごとビジネスアカデミーやこうち起業サロンなどにより、学びから事業化まできめ細かなサポートを行っておりますし、第一次産業を志す若者には、林業学校や農業担い手育成センターなどでの研修の機会を提供しているところであります。
お話のありました、新たに立ち上げる一般社団法人におきましても、後継者不足により事業の継続や拡大に躊躇しておられる事業者の皆様の人材ニーズを事業戦略の策定などを通じて掘り起こし、県外だけでなく、県内の若者に対しても、その情報を仕事の魅力ややりがい、受入側の想いなどの情報などと併せて効果的に発信し、人材ニーズと若者の志とのマッチングを図っていくことを意図しています。
加えて、本県出身の県外大学生や県外企業に一旦就職した若者が、県内にUターン就職をできるよう、新たな法人と庁内各部局が連携して、様々な情報提供などを行ってまいります。
地域地域で多くの若者が暮らし、地域が持続的に発展し続けられるよう、今後とも、産業振興計画などさらなるバージョンアップを図りながら、若者の定住を強力に進めてまいりたいと考えております。
●塚地県議
さて、その見地に立てば、当然必要となるのが、高知で学び、働いている若者の生活実態や意識、希望を把握することです。先日、民青同盟高知県委員会が学生を含む県内在住の18歳から40歳までを対象に対面聞き取りや郵送によるアンケートを実施、107人の若者からよせられた回答をまとめ発表しました。学生以外は77人が回答うち26人は非正規の雇用。正規雇用の平均月額賃金は手取り19.5万円、非正規は15万円。正規雇用を望む声が圧倒的で、国や地方自治体に望むことの第1と2は、正規は基本給を上げる、最低賃金を上げる、非正規は最低賃金を上げる。基本給を上げる。となっており、低賃金の改善を求める声が多くを占めています。
この要望にどのように応えるかが問われる結果となっています。知事は、本県の青年のこうした声をどのように受け止められるか伺います。
■知事
次に、低賃金の改善を求める声をどのように受け止めるかについて、お尋ねがございました。
国が、5人以上の常用労働者を有する事業所を対象に行った、毎月勤労統計調査による一人当たりの現金給与総額の平成27年度と20年度の比較では、本県はプラス4.9%と、全国平均のマイナス5.3%を大きく上回る伸びとなっています。
これは、官民が一体となって産業振興計画に全力で取り組んできた結果、各産業分野における産出額や有効求人倍率の上昇などに表れている、本県の経済状況の改善を反映しているものと考えております。
しかしながら、お話のありました調査にも表れておりますように、低賃金の改善を望まれる皆様もまだまだ多いと思われますことから、さらなる努力が求められている状況だと考えております。
県としましては、産業振興計画に基づいて、県内企業の地力を強化し、収益力を高めていくことが、働く方々の賃金水準の上昇につながると考えており、PDCAサイクルを重ねながら、産振計画の様々な取り組みを強化している、ところでございます。
あわせて、若者の県内就職や定着に向けて、本年度から県内企業を対象に、賃金等の労働条件とともに働き甲斐のある企業経営を目指した取り組みを促すセミナー等を実施することと致しておりますし、企業の力強い発展を目指すための事業戦略や経営戦略の策定実行を支援する体制も整えております。こうした取り組みを通じてより若者の期待に沿った就労が実現できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
●塚地県議
先に紹介した、「ふるさと島根定住財団」がホームページにアップしている島根県の定住施策と題する一文の中では、「定住対策は総合対策」という項目が設けられ、示唆に富んだ考え方が示されています。少し長くなりますが引用させていただきます。
「定住対策は総合対策だ。『衣食住』が中でも基本だ。」とし、「若者の給与実態はここ10年ほとんど上昇が見られない中で(むしろ勤務条件は劣化傾向にある中で)、生活費は確実に増加している。善悪は別として、車もスマホも必需品だし、公租公課や公共料金の占める割合も負担感が強い。例えば住居費だ。(中略)、かつて、『若者定住住宅』を県の定住対策として整備を積極的に進めたことがあった、今も市町村で整備する好条件の定住住宅は”超人気“だ。『どういう規模や規格の住宅が求められているか、公共か民間住宅への支援か』など調査・分析し、『少子化対策における住宅政策』を早急に構築すべきと思う。」というものです。
県内でも、四万十町や仁淀川町など、「定住促進住宅」施策に取り組んでいる市町村もあります。しかし、多くの若者が働く都市部での対策はきわめて不十分な状況です。先日、佐川町から大阪に働きに出る青年とお話しする機会がありました。「できれば高知で働きたい。でも賃金は安く、アパート代は高い。どうせ佐川を出るなら、賃金の高いところを選ぶことになった」という声でした。「若者定住住宅政策」は、人口流出に歯止めをかけ、強いては少子化対策に資する柱だと考えます。
そこで、これまで若者定住に対する県の住宅政策について、どのような検討がなされてきたのか。また、ニーズを踏まえた住宅政策のさらなる充実が必要だと思いますが、土木部長に伺います。
■土木部長
これまでの若者定住に対する県の住宅政策について、どのような検討がなされてきたのか。また、今後、ニーズを踏まえた住宅政策のさらなる充実が必要ではないか、とのお尋ねがございました。
若者定住については、産業振興計画などにおいて「県外からの移住促進」と並んで「県内高校生等の県内就職の促進」が位置づけられており、県勢浮揚にとって重要な課題であると認識をしております。
また、「高知県住生活基本計画」においても、13ある目標の一つである「魅力ある地域の実現」のための取り組みとして、「住宅や宅地の供給、既存住宅ストックの活用による定住の促進」を位置づけ、市町村が実施する地域優良賃貸住宅の整備や空き家の再生・活用への支援を行ってまいりました。
これらの取り組みにより、24の市町村で242戸の住宅が整備または再生され、現時点で、そのうちの138戸に30代以下の若者世帯が入居しているなど、若者の定住に一定の貢献をしてきたものと考えております。
若者定住対策は総合的な対策であると考えます。
このため、若者定住については、産業政策や雇用労働政策などを進める中で見えてくる、住宅に対するニーズを丁寧に汲み取りながら、今後の住宅政策のさらなる充実を図っていきたいと考えております。
●塚地県議
低賃金の中、住居費のしめる負担は大きなものがあります。先に紹介したアンケートでも、自宅通勤者を含む77人のうち20名が家賃補助を要求しています。
小規模、零細な事業所では社員寮を構えることも、十分な住宅手当を出すことも経営上困難です。いくつかの事業所が共同して従業員用のシェアハウスを設置するための支援や、若者向け家賃補助制度の創設などすぐに着手可能だとおもいます。その施策の打ち出しも必要だと思いますが商工労働部長に伺います。
■商工労働部長
まず、若者定住対策として、住居に関する議論について、すぐに着手可能な施策の打ち出しが必要性ではないかとの、お尋ねがありました。
住居に係る経済的な負担が大きいことが、若者の県内定着を阻害する要因の1つであることは、県内高校の進路指導を担当する教員へのヒアリングでありますとか高校生へのアンケートなどから、県としても認識をいたしております。
また、県が実施しましたアンケートによると、県内の事業所において住居手当や社宅等の制度を設けているのは約40%にとどまっている現状がございます。
一方で、本年3月の高校卒業者の県内求人倍率は2.5倍を超えておりますし、県内の経営者の方々からは、人材確保の目途が立たないため事業の拡大になかなか踏み切れないといったお声も数多くお聞きをしておりますので、県としても若手人材の確保は喫緊の課題であるというふうに考えております。
お話しのありました、事業所が共同して従業員用のシェアハウスを設置することや、家賃への補助、つまり住宅手当の支給は、本来事業者が自社の事業を支える人材を確保するために、自ら取組むべきことでありますし、若者の定住が目的とは言え、既にこれらを実施している事業者がおられることを考えると、公平性の観点からも、行政の施策として実施することは難しいと考えております。
しかしながら、先ほど申し上げましたように若者の確保定着をはかることは喫緊の課題でありますので、例えば現在、県の教職員住宅や県内自治体の公的賃貸住宅の空室を移住者向けに提供しておりますように、これらの一部を社員寮として活用するといった方法などを県内事業所のニーズも把握をしながら、研究すすめているところでございます。
また、県内新入社員を対象に国が実施した調査によれば、就職先の選択理由の上位には、会社のイメージ、働きがい、会社の将来性・成長力への期待、といった項目が上位を占めておりますことから、これらの必要性・重要性についても、事業者の皆様に理解を深めていきたいと考えております。
このため、本年度から県内企業を対象に、働きがいのある企業経営を目指した取組みを促す研修会等を開催することとしております。また、企業の力強い発展を目指すための事業戦略や経営計画の策定・実行も支援することとしております。こうした取組みにより、若者の地域への定着を促進し、人材の確保につなげてまいります。
●塚地県議
高知で頑張る若者支援で、大変小さなことなのですが、1点提案をさせていただきます。先の出先機関の業務概要調査の折、高知県中村高等技術学校に伺いました。現場で不足している大工や左官を養成し、即戦力として送り出すきわめて大事な役割を担っておられることを実感しました。高知高等技術学校も職種は違っても同様の役割を担っています。しかし、それぞれ募集をしても定員に満たない状況が続き、今後、ジョブカフェとの更なる連携、幡多若者サポートステーションからの紹介などに力を入れたいとの説明でした。その中で、せっかく入学を希望しても、入学時に払う実習用具費が構えられずあきらめる若者がいるとのことでした。受講料には減額制度がありますが、4.5万円から9万円程度の実習用具費には適用されていません。
貧困の連鎖を教育の力で断ち切るという観点からも、補助制度を是非検討していただきたいと思いますが、商工労働部長にご所見をお伺いし、第一問といたします。
■商工労働部長
次に、県立高等技術学校の実習用具費への補助制度について、お尋ねがありました。
県立高等技術学校の普通課程への入校生及び在校生に納入いただく経費として条例で定めているもののうち、授業料については、生活保護世帯や県・市町村民税所得割額の納付を必要としない世帯である場合など知事が特に必要と認めたときは、その全部又は一部を免除することができるとされております。平成28年度は、在校生のうち約4割の方が授業料減免の対象となっております。
お話にありました実習用具費は、作業服や教科書、工具等、個人の持ち物として個人が使用するものや、講習受講料、技能検定試験受験料といった個人の資格取得に係る経費など個人で負担することが相当と考えられる費用の実費額を、入校時にお預かりをしているものです。他県の取り扱いを見ましても、これらを減免措置の対象としている事例は見当たらないことから、現状では補助制度を設けることは難しいと考えています。
ただ、議員のお話にありましたとおり、高等技術学校は、地域で必要とされる技術者を養成する重要な役割を担っておりますので、入校生をしっかり確保し育てて、地域に送り出すことが求められています。
このため、本年度、中村高等技術学校では、新たに地域の関係者との協議の場を設け、地域の方々と協力してPR活動を強化し、学ぶ意欲のある人材の掘り起こしを行いますとともに、専門知識と技術を持った人材を育成して、地域の産業界が求める人材とのマッチングを図る取り組みを進めようとしているところです。
今後この新たな取り組みの中で、経済的負担を含め入校の障害になっている事項についても、関係者のお声をお聞きしながら検証したうえで、他の都道府県の状況や取り組みなども参考にしながら、必要に応じて対応策を検討してまいりたいと考えております。
【第2問】
●塚地県議
それぞれご丁寧な答弁をいただきまして、ありがとうございました。一定程度前向きに検討して頂けるお話もございましたので、ぜひ、そちらの方はよろしくお願いしたいと思います。
再質問をいくつか、教育長と知事にお願いしたいと思います。
先ほど、知事の方は今回の核兵器禁止条約が結ばれる画期的な状況が世界的に進んでいることも一定評価をされました。そのうえで、ただその条約の参加国が全地球規模に広がるかどうか、これが一つの課題だというお話もございました。条約はもう発効をされたのち、各国でその条約を批准しようという運動はこれから大きく広がっていくだろうと思うので、そこは知事が心配をされなくてもいいんじゃないかという課題だと思っております。
それで、やっぱり、この条約が結ばれることは私たちは切望しておりますけれども、その条約に対して、それを結ぶためのヒバクシャ署名が果たす役割について、知事が少し検討していきたいというお話でしたが、ぜひその部分は、直接高知県の被爆者の皆さんにお会いになって実際のお話を伺って、それを参考に検討して頂くということが私は大事だと思うので、ぜひお会いして頂くという点については具体的にお願いをしたいと思うので、そののち署名にどう対応するかということは被爆者の皆さんのお声をきいて知事のお考えを変わるかもしれないし、変わらないかもしれないけれどもお会いするということはやっぱり必要じゃないかと思うので、その点をお願いします。
それと、教育長、私は本当にこの大事な一人の15歳の死を、ここまで教育長が重く受け止めていないのかとあらためて愕然と、いたしました。先程高知県の表彰の件についても、長年の功績を認めて表彰したんだとおっしゃいました。私もこの表彰の中身を見て、ちょっと目を疑いましたけれども、この表彰の中身に、なんと自尊感情を大事にした教育をすすめてきたということがあります。児童生徒が、自ら命を絶つときに自尊感情がないというのがその最大の原因であり、それをどう克服するかということが教育の主たる責任でもあるというのは、教育長もこれまでいってきたことです。
その自死に至った状況、そしてその後の対応も私は大変問題があるというふうに思っています。保護者の皆さんも、地域の皆さんも今となってはじめて、議事録もなければしかも録音もないとそれじゃ新しい事実の出てきようもないじゃないかと、確認のしようもないじゃないかという思いで、おられるわけですね、そういう中で再三にわたってご遺族からは、もっと調査をしてほしい、説明をしてほしい、保護者の声を聞いて欲しいということを昨年の表彰を受ける年の4月、6月にも直接教育長にも申し入れもしているわけです。
そこで、突っぱねられて、地域からもそういう声が上がっている、まさにそういう時に、そんな表彰を与えてそれが正しかったと配慮は必要なかったという答弁は、私はあまりに教育をつかさどる長として冷たい答弁だといわなくてはならないと思います。
その点もう一度答弁を求めます。
■知事
先ほどご答弁いたしました通りですね、非核高知県宣言にありますように、あらゆる国の核兵器も廃絶を全世界に強く訴えると、核兵器の全面撤廃軍縮を推進する、もって世界の恒久平和達成を目指すということは、高知県としての明確なスタンスだとそのように思っています。問題はその目的を達成するために、どのような手段をとって、どのような道筋をいくべきなのかということについて、そこらへんやはり様々な議論があるんだろうと思います。
この条約に対する態度というものも、どういう手法をとるかというその考え方の違いによって、この条約に対する態度というのも違ってくるということなのではないかなとそのように思っております。
核保有国と非保有国との間ですさまじい立場の対立があるという中において、橋渡し役を果たそうとするということもひとつ非常に重要な現実的な手段方法、そういうことではないのかなと私はおもっているところでありまして、そこは様々な立場から議論もなされていくことでありましょうし、今後も長く様々な対応について、様々な議論が重ねられることだろうとそのように思います。
お話のありました、その署名、するかどうかということの前に、その関係の皆様にお会いするかどうかということについて、先程ご答弁いたしましたように、少し考えさせていただきたいとそのように思います。
■教育長
ご遺族の心情を考えますと、お話しにありましたようなご指摘もあろうかというふうに思います。そういう意味で言いますと大変悩ましいことかとは思っておりますが、県教育委員会と致しましては、先程もご説明させていただきましたように、この校長、長年にわたって大変頑張って頂いて、実績も残していただいております。私も前任校ではありますけれども、直接学校にお伺いして、大変厳しい学校を素晴らしい学校にしているということに感銘も受けたそういった校長でございます。そういった校長の定年の年にあたってなんとかその頑張りに報いさせていただきたいそういう思いで表彰させていただいたということでございまして、その点ご理解を賜りたいというふうに思います。
●塚地県議
知事には早急に検討して頂いて、ご返事を差し上げていただきたいというふうに思います。
で、教育長、やっぱり、何が教育の根本かということが私は今この表彰で問われると思うんですよ。だされてきている保護者のご意見は、学校側の対応に問題があったかなかったかも判然としないということも問題にしているんです。そういう時に表彰をする態度は断じて許せませんということを申し上げて、私の一切の質問といたします。