-
- 2017年03月21日
- 意見書・請願
- 2017年2月議会「南スーダンPKOに派遣されている自衛隊の撤退を求める意見書議案」への賛成討論 中根佐知県議(2017.03.17)
私は日本共産党を代表し、ただいま議題となりました議発第8号「南スーダンPKOに派遣されている自衛隊の撤退を求める意見書議案」に賛成の立場から討論をいたします。
安倍政権は、南スーダンPKOに派兵をしている陸上自衛隊部隊を、5月末をめどに撤収させることを決めました。
深刻な内戦状態が続く南スーダンに派遣されている自衛隊員が戦後初めて「殺し、殺される」という危険に置かれており、5月末とはいわずに、即座に撤収させるべきです。日本は、憲法にもとづく平和主義にもとづき、広がる飢餓、難民への支援、武器の輸出禁止、武器購入資金となっている「紛争資源」の輸出規制など、紛争解決への外交的努力、民生的支援に力をつくすべきです。
安倍政権はこれまで、内戦状態が続き、戦闘が繰り返されている南スーダンの状況が、PKO法の「参加5原則」に反していることを隠し続けようとしてきました。その象徴が、南スーダンの陸上自衛隊派兵部隊が作成した「日報」の隠(いん)蔽(ぺい)疑惑です。
防衛省・自衛隊が組織的に隠蔽しようとした疑惑のある「日報」などの報告文書は、公になった後も大部分が黒塗りにされています。それでも、昨年7月、南スーダンの首都ジュバでの、政府軍と反政府軍との間で起きた大規模戦闘について、陸自宿営地近くでも「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」が繰り広げられていたことが生々しく明らかにされています。しかし、安倍政権は当時、「散発的な発砲」と偽り続けました。
南スーダンの反政府軍についても、国内に支配を確立した領域を持たないなどとし、「紛争当事者」ではないとか、「国家に準ずる組織」ではないからといって、稲田朋美防衛大臣は、7月の大規模戦闘も「法的な意味での戦闘行為ではない」、こういう独善的な解釈を続けてきました。それなのに、一方では、南スーダンに昨年5月に派遣された自衛隊員の家族説明会の資料では「反政府派支配地域」や「戦闘発生箇所」が地図で明示されています。
さらに「駆け付け警護」の新任務付与に関しても、同年8月の家族説明資料では、「南スーダンがPKOの活動に同意し、受け入れている状況では、武力紛争に巻き込まれることはない」と“安全”を強調しました。
ところが、説明以前の7月の大規模戦闘時の「日報」は「(ジュバ)市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」と明記しています。 国連は、南スーダン政府軍がPKOに対しさまざまな任務妨害や要員への襲撃など敵対行為を繰り返していることを報告しています。
このように、この間の政府の説明は、矛盾だらけです。こんなごまかしや隠蔽で、自衛隊員の命を危険にさらし、その家族と国民をだますことは到底ゆるされません。
7月の大規模衝突以降も事態は深刻化しています。
9月19日の国連報告書は、「7月のジュバでの戦闘を境に、南スーダン政府軍による人道支援の職員を標的にした攻撃の激しさと範囲がエスカレートしている」と述べています。11月15日の国連報告書は、南スーダン政府と軍による「持続的、組織的な地位協定への違反」―いわゆる南スーダンPKOであるUNMISS(アンミス)への敵対的行為が続いており、「政府軍は、恒常的にUNMISSの任務遂行を妨害している」と述べています。
さらに、11月10日の国連事務総長の報告は、8月12日から10月25日までの約2カ月間で、南スーダン政府と軍による地位協定違反であるUNMISSへの敵対的行為が46件あったことを明らかにしたうえで、継続的な「UNMISSの要員に対する逮捕、拘束、迫害、襲撃、脅迫」などが行われていると述べ、南スーダンの政府と軍によって、UNMISSへの敵対的行為が、克明に述べられています。こうした状況だからこそ、国連は、住民保護のために4000名の先制攻撃を辞さない部隊の増派を決定したのです。
こうしたもとで「駆け付け警護」を行えば、自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになり、憲法が禁止する海外での武力行使となる危険性があることは明らかです。
この情勢の中、安倍政権は、昨年12月、大量虐殺を回避するために国連安全保障理事会に提出された南スーダンに対する武器輸出を禁止する決議案に、中国、ロシアなどとともに棄権し、廃案にしてしまいました。アメリカのパワー国連大使は、「棄権した国々に対して歴史は厳しい審判を下すだろう」と批判しました。大量虐殺の悲劇を抑え込むための国際社会の協力を妨害するとは、理不尽きわまりない態度といわなければなりません。また、日本は欧米ではじまっている「紛争資源」の規制にもまったくとりくんでいません。
武装解除などで、紛争地で活躍された伊勢崎賢治さんは、PKOを巡る国際情勢は、日本が初めて自衛隊をカンボジアに派遣した1992年とは大きく変わっている。かつてのPKOは中立を守るため、停戦合意が破られればすぐに撤退しましたが、94年にルワンダで住民虐殺が起きた際、PKO部隊が現地にいながら阻止できなかったことに対する国際社会の批判を背景に、これ以降、PKOの最優先任務は『住民保護』になり、先制攻撃をふくめ交戦主体となることをためらいません。憲法上、交戦権のない自衛隊を、その現場に送り続けたことに無理がある、と指摘をしています。現在のPKOに、海外での「武力行使」を禁止した自衛隊を送る条件はありません。
また、PKO部隊のリスクが高まったことに伴い、先進国主導の部隊編成から、紛争国周辺や発展途上国から参加を募る流れも加速をしています。日本が初参加した92年末、PKO派遣人数の上位10カ国のうち6カ国を英仏加など欧米諸国が占めましたが、南スーダンでは、60カ国以上が協力しているといいます。が、部隊を派遣している13カ国の内訳は、日本以外には、工兵部隊としてインド、韓国、中国、バングラデシュの4カ国で、残りの歩兵や航空部隊の主力はアフリカやアジアの発展途上国です。先進国は、軍ではなく行政組織の構築や技術の支援など途上国ではできない分野で役割を発揮しています。現地でも活動するNGO日本ボランティアセンターの谷山氏は「日本はいいかげん、PKO・国際貢献=自衛隊派遣という凝り固まった考えを捨てるべきです」と指摘をしています。
首相は今回の撤収方針について、「自衛隊の活動に一定のくぎりをつけることができると判断した」などと苦しい弁明をするよりも、派兵の誤りを認める時です。2ヶ月半も先の5月末ではなく、ただちに南スーダンから自衛隊撤収を行うことを強く求め、本意見書案に賛成の討論といたします。
同僚議員の賛同を、どうぞよろしくお願いいたします。