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- 2016年12月22日
- 意見書・請願
- 2016年12月議会 「新たな任務付与をやめ、南スーダン共和国からの自衛隊の撤退を求める意見書議案」への賛成討論 吉良富彦県議(2016.12.22)
私は日本共産党を代表し、ただいま議題となりました「議発第7号新たな任務付与をやめ、南スーダン共和国からの自衛隊の撤退を求める意見書議案」に賛成の立場から討論を行います。
安倍政権による新任務付与の閣議決定に基づき、稲田防衛相は、11月18日、南スーダンPKOに派兵する自衛隊部隊に対し、安保法制で可能になった「駆け付け警護」と「宿営地共同防護」の新任務に関する命令を出しました。現在、南スーダンPKO=UNMISSに派兵されている青森市の陸自第9団第5普通科連隊を中心とする第11次隊は、12月12日から、この命令を遂行するための武器使用権限が与えられました。
PKO法は、ひとつに「武力紛争」停止の紛争当事者間の合意、いわゆる停戦合意、ふたつに紛争当事者のPKOと自衛隊参加への同意、受け入れ同意、三つ目にPKOの中立的立場の厳守、中立性、そして四つに以上の原則のいずれかが崩れた場合の自衛隊の撤収、最後五つに必要最小限の武器使用―という「PKO参加5原則」を定めています。この原則に照らし、南スーダンの現状を見てみますと、新任務の付与どころか、政府自身が決めた自衛隊派兵の前提である停戦合意や中立性など「PKO参加5原則」そのものから逸脱していると言えます。
南スーダンでは、2013年12月のキール大統領派・政府軍とマシャール前副大統領派・反政府派の武装勢力との戦闘が首都ジュバから全土に広がり、深刻な内戦に陥りました。2015年8月には「和平合意」が結ばれたものの、今年2016年7月にはジュバで再び大規模な戦闘が発生。国連報告書は、南スーダン政府軍が、PKO部隊、つまり国連南スーダン派遣団=UNMISS、そして国連施設・国連職員、NGO職員などに対して攻撃を繰り返している。80人から100人の政府軍兵士が国連職員やNGO職員が宿泊するテレイン・ホテルに乱入し、殺人、暴行、略奪、レイプなどを行い数100人が死亡、その後も、政府軍による国連への攻撃という事態が続発している、と述べています。
直近の3つの国連報告書のうち、9月19日の国連報告書は、「7月のジュバでの戦闘を境に、南スーダン政府軍による人道支援の職員を標的にした攻撃の激しさと範囲がエスカレートしている」と述べています。
また、11月15日の国連報告書は、南スーダン政府と軍による「持続的、組織的な地位協定への違反」―南スーダンPKO、つまりUNMISSへの敵対的行為が続いており、「政府軍は、恒常的にUNMISSの任務遂行を妨害している」と述べています。
さらに、11月10日の国連事務総長の報告は、8月12日から10月25日までの約2カ月間で、南スーダン政府と軍による地位協定違反――UNMISSSへの敵対的行為が46件あったことを明らかにしたうえで、「任務遂行中のUNMISSに対する移動妨害」「UNMISSの要員に対する逮捕、拘束、迫害、襲撃、脅迫」などが行われたと述べています。
11月1日に公表された国連特別調査報告書は、この7月の戦闘によって、キール大統領とマシャール前副大統領との「和平合意」は「崩壊」したと断定しています。
こうした事態の下で自衛隊が「駆け付け警護」を行えば、南スーダン政府軍に対し武器を使用することになります。武器使用は、これを「国又は国に準じる組織」に対して行った場合には、憲法9条の禁止する「武力の行使」にあたる恐れがあるというのが、政府の憲法解釈です。ですから、南スーダンにおける「かけつけ警護」の新任務付与をする場合は、自衛隊が武器を使用しないことを確保するため、派遣先国の政府などによる「受け入れ同意が安定的に維持されている」事実がないとダメだと規定されています。
国連の報告書を見れば、任務付与などできないことは明らかだと、12月7日の党首討論でわが党の志位和夫委員長は、新任務付与の撤回を安倍首相に迫りました。首相は、国連報告書への反論や新たな事実など何ら示すことが出来ず、南スーダン政府は「自衛隊のPKO部隊を受け入れることを明確にしている」、だから「干戈(かんか)を交えることにはならない」と、一方的な主観を述べるだけでした。
自衛隊員が“殺し、殺される”現実的な危険が差し迫っており、憲法に違反、抵触する事態を招く危機が差し迫っています。新任務付与と自衛隊派兵ありきで南スーダンの現実を全く見ようとしない政府、安倍首相の姿勢は無責任極まるものです。「PKO参加5原則」の「停戦合意」、「受け入れ同意の安定的維持」、の破綻は明瞭であり、憲法違反の海外での武力行使につながる南スーダンでの「かけつけ警護」を付与した自衛隊第11次隊は、即刻撤退すべきです。
さらに、指摘しなければならないことは、政府は、第11次隊の自衛隊員と家族、国民に、国連報告書で指摘されている事実を隠して、派兵を正当化しているという事です。
我が党の井上哲士参院議員の要求に防衛省が提出した南スーダンPKOへの第10次隊の5月からの派兵を前に行われた隊員の家族向けの説明会資料は、「政府派・反政府派の支配地域」と題する南スーダンの地図があり、「反政府派支配地域」を赤い線で囲み、「戦闘発生箇所」とした地域も示されていました。ところが、11月20日から南スーダンへの派兵を始めた第11次隊に安保法制に基づく「駆け付け警護」などの新任務付与を閣議決定した際、反政府勢力のマシャール前副大統領派は「紛争当事者」には当たらないとしました。そして、第11次隊の派兵を前にした家族向け説明会資料では、「政府派・反政府派の支配地域」という表題や、赤い線で囲んだ「反政府派支配地域」の部分は「反政府派の活動が活発な地域」とされ、「戦闘発生箇所」も「衝突発生箇所」に書き換えられていました。
10次派兵時より状況が極めて悪化し、「7月のジュバでの戦闘を境に、南スーダン政府軍による人道支援の職員を標的にした攻撃の激しさと範囲がエスカレートしている」と国連の報告書で指摘されているにもかかわらず、「支配地域」を「活動が活発な地域」と言い換え、「戦闘」を「衝突」と言い換え、「PKO参加5原則」は崩れていないと強弁して第11次隊を派兵し、加えて「駆け付け警護」などの危険な任務を付与するため、マシャール派・反政府軍には「支配地域」がないかのように資料を改ざんした疑がいが濃厚です。稲田防衛相は「不正確な記述」のため「修正した」と答弁していますが、それは全く逆で、正しい記述を修正して国連報告書の記述にはない不正確な記述にしたと言えます。「戦闘などない、停戦が合意されている」と家族や国民に認識させての派兵強行は、容認できるものではありません。
南スーダン情勢に関する最新の国連専門家委員会報告書(11月15日付)は「さらに一層、悲惨な暴力が激化する可能性が高い」と明記しています。加えて報告書は、政府軍の最高幹部らが国連を敵対視し、PKOや人道支援活動に対し執拗な妨害を繰り返していると指摘しています。
「駆け付け警護」の新任務を付与された自衛隊部隊が、政府軍と交戦する事態も起こりかねません。政府軍との戦闘は、憲法9条が禁止する海外での武力行使そのものです。自衛隊の撤退は急務です。
憲法違反の武力行使につながる新任務の付与はただちに撤回する、自衛隊は速やかに撤退する、そして日本の貢献は、非軍事の人道支援、民生支援に切り替えるべきだということを強く求めて、本意見書案賛成の討論といたします。同僚議員の賛同を宜しくお願いいたします。