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- 2016年12月22日
- 議会(質問・討論)
- 2016年12月議会 「県立学校設置条例の一部改正議案」への反対、「子どもたちにゆきとどいた教育を求める四つの請願」への賛成討論 米田稔県議(2016.12.22)
私は、日本共産党を代表して只今の委員長報告に反対し、第15号議案、県立学校設置条例の一部改正議案に反対、また子どもたちにゆきとどいた教育を求める4つの請願に賛成の立場から討論を行います。
まず、第15号「高知県立中学校、高等学校及び特別支援学校設置条例の一部を改正する条例議案」についてです。
これまでも私たちは、県民合意も子どもたちの納得もなく、そして教育を受ける権利が脅かされる恐れがある統廃合には反対、また県民、子どもたちのニーズ、実状に基づくとは言えない国際バカロレア教育、グローバル人材育成を前のめり、無批判に推進しないように求めてきました。今回の条例一部改正議案は、高知市内2つの学校統廃合の最終決定と、国際バカロレア教育などの導入、推進を標榜する新学校名を決定しようとする内容が含まれており、容認できるものではありません。
国際バカロレアそのものは、「全人教育」を特色としています。思考力・表現力に重点を置いた高い知的水準の達成はもちろんのこと、同時に異文化に対する理解力と寛容性を養うこと、さらに社会の一員としての自覚と責任感を養うことを目標としており、意義あるものだと考えています。
しかし、1点を争う知識注入型の大学入試を念頭に置いた日本の高校教育の在り方を前提に、一部の学校のみに接木したような制度が真に子供たちの未来を開くものになるでしょうか。何より、政府の国際バカロレア構想は、成長戦略実行計画、日本再生の基本戦略などに位置づけられ、成長力強化を支えるグローバル人材を育成する考えのもとで、政府の英語教育強化の一環として登場してきたもので、財界が強く推進をもとめている内容であります。
著名な英語学者、英語教育学者で、岐阜大学名誉教授の寺島隆吉氏は、「競争が激化する世界を日本はどうやって生き抜いていくか。いま一番求められているのが、誰も思いつかないようなアイデア、豊かな発想を生む創造力だと思うんです。それには幅広い視野と、深く考え抜く力が必要ですね。 ところが最近の英語熱は、そのすべての芽を潰しかねない。大学を劣化させ、日本を支える研究の礎を壊してしまいかねません」「私たちは母語である日本語でこそ深く思考できる。母語を耕し、本質的なものに対する知的好奇心を育むことこそが、大学が果たすべき大きな役割なのです」「人間には与えられた時間に限りがあります。まずは考える力、そして疑問をもつ力を育てることにこそ大切な時間を使いたいものです」と昨今の過度な英語教育熱を批判しているのであります。
また、ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏と益川敏英氏も対談の中で、益川氏が「科学の基本は国語ですよ。何にしてもすべて文章の言葉から入ってくる。読んでその世界が頭に思い浮かべられるかどうか。その力があれば、理解していける」と述べ、山中氏も「国語力は全ての基本だと私も思います」と答えていることを紹介しています。
すべての子ども達の成長をしっかり支えていくことが、県民が求めている教育行政ではないでしょぅか。OECDの調査でも、日本の教員は年間300時間も多く勤務していること、しかし勤務時間に占める授業時間の割合が小さいことが明らかになっています。また、日本の校長が「実力を発揮する上で障壁」に挙げたのは「不十分な学校予算や資源」が84%、「政府の規制や政策」が65%と回答しています。「質の高い指導を行う上で妨げになっている」の問いには、日本は「教員の不足」を挙げた校長が79.7%で、参加国平均の38.4%の2倍以上でした。こうした現状の打開にこそ力をつくすべきであります。
次に、すべての子どもにゆきとどいた教育をすすめるための請願、請第1の1号と2号、教育費負担の公私間格差をなくし、子どもたちにゆきとどいた教育を求める私学助成の請願、請第2の1号と2号についてです。
今議会に4万7千人を超える父母、子ども、県民から切実な願いが寄せられています。28年間に及ぶゆきとどいた教育を求める全国署名は、累計4億5千万筆にものぼっています。
ここには第1に、多岐にわたる請願項目の一つ一つに県民、国民の厳しい環境と、そこから生まれる深刻で切実な願い、叫びが込められているのではないでしょうか。非正規雇用が2千万人を超え、また給与所得者の平均給与が17年前と比べて年間50万円以上の大幅な減額となり、そして子どもの貧困率は16.3%と極めて深刻な事態となっています。高知市の就学援助率が、小学生で3分の1、中学生では4割にものぼっていることにも示されています。
暴力行為や、いじめ、不登校など平成27年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査の結果が総務委員会に報告されました。引き続き、全国も含めて厳しい状況にありますが、その根底にこうした問題があることは明らかであります。だからこそ、貧困の連鎖を教育の力で断ち切る、子どもの数の減少を理由に教員を削減するということにはならない等、教育長、知事の前向きな姿勢に反映していると思うところです。
委員会審査の中で自民党議員の方からも、地域住民から負担が重く通学費などの援助を求める声が切実であり、対策を求める等の意見もでました。まさに、請願項目の一つ一つが党派を超えての県民の広く、切実な願いではないでしょうか。
いま、県議会が県の教育行政、県政を支え、後押しすることが何より求められているのであります。二元代表制、車の両輪、といいながら、執行部の容認、追認機関になってはなりません。県民の代表であり、県民の付託をうける県議会が、県民の深刻で切実な願い、叫びに誠実に応えようではありませんか。
第2に、県と教育行政が、子どもや父母、教職員の実態、現場の声、請願に示されている一つ一つの願いを深く、真剣に聞きとらえること、そして知恵と力を総結集して、国への提言も含めて力強く困難を切り開くことが求められているのではないでしようか。
今回の請願審査の中でも、「限られた予算の中では困難」「問題行動への加配や対策などもある」など、残念ながら当局の言い訳、消極的な姿勢が目立っていました。教育行政が、すべての子どもたちの等しく教育を受ける権利を保障するために努力を続けておられますが、困難打開のためのさらなる決意と取り組みが必要ではないでしょうか。こうした視点で一つ一つの請願を解決していく手だてを真剣に、急いでとりくむことを求めるものであります。またその際、国際的にも保護者負担の異常な高さと、公財政教育支出の低さを解決し教育予算を国際水準に増やしていくように、全国と協力、連帯して国に働きかけることを強く望むものです。
毎年の多数の請願署名、県民の声をバックに、県行政を励まし共同してゆきとどいた教育を前進させることが、県議会の重大な役割、使命ではないでしょうか。
以上、第15号議案に反対、ゆきとどいた教育を求める4つの請願に賛成する討論とします。同僚各位のご賛同を心からお願いをいたします。