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- 2016年10月19日
- 意見書・請願
- 2016年9月議会 「臨時国会でTPP協定を批准しないことを求める意見書」への賛成討論 中根佐知県議(2016.10.19)
私は日本共産党を代表して、ただいま議題になりました、議発第10号、「臨時国会でTPP協定を批准しないことを求める意見書」議案に賛成の立場から討論を行います。
安倍内閣は、2013年の日米会談で、「あらかじめ関税撤廃を約束するものでないことが確認された」として、TPP交渉への参加を強行し、大筋合意に突き進み、2016年2月に協定文に署名、2016年の通常国会で、TPP協定批准案と関連法案を提出し、この秋の臨時国会で批准を強行しようとしています。
この間、安倍政権は、交渉参加に際して守秘義務が課せられたことを理由に、TPP交渉の経過を何一つ明らかにせず、表題以外はすべて黒塗りの資料を提出し、ことごとく答弁を拒否しました。まさに、戦後の国会史上でも前例のない異常な秘密主義のもとで批准を強行しようとするものです。「国民への十分な情報提供」を求めた「国会決議」を完全に無視する暴挙であり、情報を公開できないような協定は撤回しかありません。
内容的にも、TPP協定の批准には道理はなく、「聖域を守る」とした国会決議や自民党、自らの選挙公約をも踏みにじっています。政府が、署名をしたTPP協定で日本は、農林水産品2594品目のうち2135品目、なんと82%で関税の撤廃を約束、聖域とした重要5項目でも29%の品目で関税を撤廃、残った品目でも特別輸入枠の設定(コメや麦)や関税の大幅引き下げを受け入れています。国会論戦で政府は重要5品目で無傷の品目はないことを認めました。野菜、くだものなどは、圧倒的な多くの品目で関税撤廃を約束する、まさに農林水産物の総自由化と言えます。しかも日本のみが農産物輸出国との間で、7年後に再交渉するという義務づけをされているのです。これで「国会決議は守った」「聖域は守った」などとは言えないことはあきらかです。
TPPは、もともと多国籍企業の利益を最大化させるために、健康、労働、環境など国民の基本的人権を守るために、積み上げられてきたルールを「非関税障壁」として一掃するという、国民主権、国家主権を否定するところに最大の問題があります。
ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は、日本での講演で「TPPは悪い貿易協定である。国際企業の最悪利己性が強調される」と述べていますが、アメリカや関係国で、市民団体や労働組合が反対の声をあげているのも、そこに原因があります。その反対の声におされて、大統領選選挙も両候補とも反対を述べざるを得ない状況となっているわけです。
食の安全も脅かされています。米国通商代表部は、「外国貿易障壁報告書」(2013年)の「対日要求」の中身で、輸入食品・農産物の検査、遺伝子組み換えなどの食品表示などがアメリカの規制より厳しいと批判し、残留農薬や食品添加物などの規制緩和を要求しています。TPP協定は、これら食品にたいする「衛生植物検疫措置」が「貿易に対して不当な障害にならないようにする」ために、輸入規制に厳格な科学的証拠をもとめています。そのうえに各国の独自の基準を設ける場合に、他国の利害関係者(食品企業など)を検討に参加さなければなりません。遺伝子組み換え産物の表示についても「科学的証拠がない」として削除される危険があります。
また、医薬品の知的財産権の保護を強化するとして、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされ、あわせて、特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、ジェネリック薬の承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けています。これらは、ジェネリック薬品の提供に障害をもたらすもので、日本国内だけでなく、多くの途上国では命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなる状況を生み出すものです。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができることが規定されており、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念をされます。
「投資」「政府調達」の章では、地元から雇用、物品やサービスの調達を求めるなど、「現地調達」を要求してはならないと規定をし、地方自治体が地域の中小企業を支援するためのローカルルールを制定できなくなる危険性があります。その適用範囲の拡大や基準額引き下げのため、発効3年以内に再交渉することまで明記されています。
金融サービスでは、相互扶助機関として保険商品を提供している協同組合である共済について、金融庁の規制のもとにある外資系保険会社と同じ「規制と競争」のもとにおくことを要求しています。日米交換文書では、日本郵政の販売網へのアクセスや、日本郵政グループが運営する「かんぽ生命」が民間保険会社より有利になる条件の撤廃に「認識が一致した」と明記をしています。郵便業務と金融業務が切り離されれば、地方の郵便局は成り立たず、過疎化に拍車をかける懸念があります。
「投資 」の章のISD条項は、外国の投資家が、投資した相手側の国の措置によって損害を被った場合、救済を求めて仲裁手続きを利用することができる制度となっています。TPPの先取りといわれる米韓FTAに踏み出した韓国では、学校給食の「地産地消」をすすめる条例がISD条項に抵触する懸念があるとの通知を自治体に出して、地元食材を使った学校給食が危機にさらされています。ラチェット条項は、発効後の各国の規制や法律の自由化水準を低めてはならないというもので、企業の規制強化や民営化したサービスを再公営化することもできません。
このように、TPPは、国民主権を侵害するとともに、地域経済と雇用、内需に大打撃を与えるものです。東京大学の鈴木宣弘教授が、大筋合意にもとづいた2年前の政府試算と同じ手法で試算した結果、政府が影響が軽微とする農林水産物への影響なども、各県やJAの試算では、政府試算を大きく上回る影響があることも明らかになっています。
安倍政権のもとで、一部の輸出大企業をはじめ多国籍企業だけが巨額の富を蓄積し、国民の所得が奪われ、日本経済全体は長期低迷したままです。TPPは、この悪循環を深刻にするだけであり、日本経済のまともな発展の道を閉ざすものです。TPP協定の批准をただちにやめ、国民生活応援・内需主導への政治にきりかえ、日本経済の健全な成長とつりあいのとれた発展をはかることこそ重要になっています。
臨時国会で、以上TPP協定を批准しないことを強く求め、賛成討論といたします。同僚議員のご賛同をよろしくお願いいたします。