議会報告

 

【質問項目】

1、知事の政治姿勢/憲法

2、知事の政治姿勢/TPP

3、知事の政治姿勢/原発

4、地震対策

5、水道事業

6、国民健康保険制度

7、地域医療構想

8、子どもの貧困問題

9、税務行政

10、障害者差別解消法

11、女性差別撤廃問題

 

 

【知事の政治姿勢/憲法】

●中根県議

安倍首相は、3月1日の衆院予算委員会で、将来的には改憲による集団的自衛権の全面的な容認が必要だと答弁しました。全面的な集団的自衛権の行使となれば、国際紛争に武力で対応することになります。 戦後70年余にわたって、一人の戦死者も出さず、平和国家としての日本の歩みを覆すものです。

知事はこれまでも憲法の平和主義について、「日本国憲法前文の中で、世界平和を理念とする平和国家を表明した我が国において、憲法第9条はこれまでの平和の維持や発展に大きく貢献してきたと認識しております。これをしっかり守ることが必要である」「立脚すべき立場である」と重ねて答弁をしておられます。海外で活動するNGOからも、9条があるから活動できる、と高く評価されています。

改憲して、集団的自衛権を全面解禁することは、平和国家の根幹を破壊するものと思うが、お聞きをいたします。

 

■知事

集団的自衛権を全面解禁することは、平和国家の根幹を破壊するものと思うがどうか、とのお尋ねがありました。

我が国においては、日本国憲法のもとで政治・安全保障、経済、文化・人的交流など、あらゆる面で複層的な外交努力と国際貢献が行われてきたことで、戦後70年にわたってひたすらに平和国家としての道を歩んできたものと認識しており、これは今後も歩むべき道であると考えております。

一方、安全保障上の問題が多様化し、厳しさを増す中、いずれの国も一国のみでは自らの平和と安全を守ることができない状況にあることもまた認めざるを得ないところであります。

こうした中、安全保障関連法が成立し、現行憲法9条の下で、あくまでも自衛の目的に限定した集団的自衛権の行使が容認されることとなりました。

しかし、一言で集団的自衛権といっても、その内容には幅があり、国連憲章では国家の国際法上の権利として認められている、いわゆるフルスペックの集団的自衛権の行使は、現行憲法9条の下では当然認められておりません。

今後、仮にも、フルスペックの集団的自衛権を認めるということになれば、我が国が戦後歩んできた専守防衛の枠組みを越えることとなります。そのことが、我が国の防衛力の構成そのものの変更につながり、周辺諸国に大きな緊張を与え、その結果、諸外国の軍事力のさらなる増強をまねくといったことにもつながりかねません。

このため、フルスペックの集団的自衛権については、多方面から相当慎重に議論をしなければならない、あくまで将来的な検討課題だと考えているところでございます。

 

【知事の政治姿勢/TPP】

●中根県議

2月県議会で私たちは、欧米が、どれほど食料自給を国の独立の問題ととらえて支えているのか、実態を示しました。国民の暮らしへの影響、健康と命にかかわる問題なのに、全容がわからないということが、TPPの功罪を議論する以前に、この協定の最大の問題です。秘密保持契約の内容がどのようなものだったのか、という点まで秘密にしています。国会質疑の中で政府は、今回のTPP交渉のような秘密保持契約を交わした前例は、これまでの通商協定ではなかったことを認めています。さらに、重要農産物のうち関税の撤廃は170品目にとどまり、残り424品目は「関税を残したので国益を守った」と強弁をしてきましたが、農水大臣は、「424品目のうち関税維持したものは155品目」だが、国家貿易の枠外で民間が輸入する際の関税、枠外税率など含めれば「変更しなかったものはなかった」と無傷なものはゼロであることを認めました。

重要5項目で無傷なものはゼロということは、国民、県民へのこれまでの説明とまるで違ったものではありませんか。どうお思いか、お聞きをいたします。

 

■知事

TPPに関して、米、牛肉などの重要5品目で無傷なものはゼロということは、これまでの説明と違うものだと思うが、とのお尋ねがございました。

お話にありました内容は、4月に開かれた衆議院のTPP特別委員会において、「重要5品目に着目した時に、関税の撤廃も、削減も、税率の低下も何もしていない、従前どおりの無傷なものはいくつあるのか」との質問に対して農林水産大臣が、「米、牛肉など5つの大きな分類で言えば、変更を加えていないものはない」旨を答弁をされたものと承知しております。

 加えて、その翌日の答弁では、重要5品目の関税区分ごとの細目であるタリフラインでみますと、594のタリフラインのうち、①関税を従来のまま維持したものが155、②関税割当を設定することにより無制限な輸入の増大を防止するものが158、③関税削減などにとどめて関税を守ったものが95など、424のタリフラインについて、関税撤廃の例外を確保したとの考え方が説明されております。

このように農林水産大臣の説明は、例えば、米については、国家貿易以外の民間輸入では現在の関税水準を維持していること、国家貿易では国別の輸入枠の設定にとどめていること、また、牛肉などでは、段階的に関税率は下げていくものの関税を守ったことなど、従来から政府が説明してきた内容と主旨が変わるものではないと認識しているところであります。

 現在、TPP協定承認案と関連法案については、継続審議となっており、秋の臨時国会で議論される予定と聞いておりますので、国会において十分議論していただきたいと考えております。また、併せて、県としても、今後も引き続き、国の動向を注視してまいります。

 

●中根県議

ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学のスティグリッツ教授は、政府の国際金融経済分析会合で「TPPは悪い協定」「新しい差別もたらす」とのべ、同日の別の会合でも「国民の利益にはならず、企業を利するだけ」「不公正を拡大し、環境を壊す」「大きな製薬会社だけがもうかる仕組みになっており、国民の健康が損なわれる」と厳しく批判をしています。クリントン政権で労働長官を務めたライシュ氏も、「TPPのようなグローバルな貿易協定は、ウォール街の金融機関や大企業の利益を押し上げ上位1%の富裕層を一層富ませる」、そうしたものとして警告をしています。1%の富裕層のための協定であり、だからこそ国民には詳細が明らかにできない、というのが真相です。国民には知らせない一方、アメリカでは商工会議所や企業幹部など約700人もの民間人が政府の諮問委員を務めて、情報に接し、交渉に関与しています。しかし日本では、その具体的内容は明らかになっていません。こんなことでどうして判断できるでしょうか。

国民に内容を説明できないような協定は、国民主権とあいいれず、撤回以外にないと思いますがお聞きをいたします。

 

■知事

国民に内容を説明できないような協定は、国民主権と相いれず、撤回以外にないと思うがどうか、とのお尋ねがございました。

 TPPについては、これまでも、政策提言や四国知事会、全国知事会を通じまして、交渉内容等に関する十分な情報の提供と丁寧な説明を求めてきたところです。

 参加国との秘密保護の取り決めなどにより、全ての情報を開示することには、一定の制約があることは承知しておりますが、今後、臨時国会において、TPP協定承認案と関連法案が継続審議される際には、政府において説明手法の工夫を行い、できるかぎり丁寧な説明を行っていただきたいと考えております。併せて、中山間地域を含め、持続可能な農林水産業の確立に向けて、十分かつ実効性のある対策を行っていただきたいと考えているところでございます。

 

【知事の政治姿勢/原発】

●中根県議

 想定外の動きを見せる熊本地震を前にして、改めて、原発の安全対策への懸念が強まっています。

これまでも基準地震動の設定は、スケーリング則という平均像を導き出されたもので過小になっていることを指摘をしてきました。今回の熊本地震は、基準地震動に対する設計方針の根幹部分の限界を明らかにしました。今までの基準地震動の考え方は、単一の大きな地震動に、原子力施設が耐えればよいという考え方に立っているという問題です。

 耐震設計上の重要度の一番高いSクラスを満たすことを義務づけられた設備は、基準地震動によって設備が変形し完全に元に戻らない状態(塑性変形)が生じても、機器、配管などが破損して安全機能を失わなければ良いとされています。

 今回の熊本地震は、強い地震が繰り返し起きています。各々の地震動が弾性範囲、地震力が除去されれば元の状態に戻る範囲にとどまれば、それが数回程度襲来しても耐えられるかもしれませんが、基準地震動未満でも弾性範囲をこえる地震動に繰り返し晒されれば、施設の安全機能が損なわれる恐れがあります。ところが、原発の耐震性に関する評価ガイドは、基準地震動に対して弾性範囲であることを求めていません。

 ガイドは、基準地震動の半分を下回らないようにと定める地震動に対して「おおむね弾性状態に留まる範囲で耐える」ことを求めているに過ぎないのです。

 5月12日に県と四国電力がおこなった勉強会の席で、熊本地震で震度7が2回来たことを受け「650ガルに複数回耐えることができるのか」との県側の質問に対し、四国電力は「複数回の揺れは想定しておらずデータがなく分からない」と認めながら「おそらくこわれないだろう」という無責任な回答におこなっています。

熊本地震で1回目の地震動に耐えても2回目以降の地震動で倒壊した建物は少なくありません。それと同様のことが原子炉施設でも起こりうる、その危険性についてはまったく検証がされていないわけです。

知事は、今議会の提案説明の中で、四国電力との勉強会で「熊本地震のような揺れに対する安全性については、まずは今般と同様の地震が発生した場合でも、安全上重要な機能を喪失することはないと、さらには中央構造線断層帯が一度に動く場合の揺れをも想定して耐震対策を行っており十分な耐震性を有していること、また、こうした揺れが繰り返し起こった場合でも耐えられる設計となっていることなどを確認いたしました」と述べました。

いつ、どのような形で、何を持って「安全性を確認した」と判断したのか、新たなデータが提出されたのか、お聞きをいたします。熊本地震を教訓とするなら、再稼働をする状況にはなく、中止を求めるべきと考えますがいかがですか。また、連続する基準地震動にたえられるよう、基準を改善すべきと思うがお聞きをいたします。

 

■知事

伊方発電所に関する一連のご質問にお答えをいたします。まず、熊本地震のように繰り返し強い地震が発生した場合の安全性についてどのように確認したのか、熊本地震を教訓とするなら再稼働の中止を求めるべきではないか、また、連続する基準地震動に耐えられるよう基準を改善すべきではないか、とのお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えをいたします。

熊本地震のように繰り返し強い地震が発生した場合の伊方発電所の安全性につきましては、先月12日に開催した四国電力との17回目の勉強会において、四国電力から、熊本地震に関する気象庁や文部科学省の地震調査研究推進本部などのデータを掲載した資料をもとに説明を受け、疑問点を質しました。その後、さらに詳細について追加確認を行う中において、安全性の確認をしてきたところであります。

基準地震動は、蓄えられた大きなエネルギーが一度にほとんど放出される場合を想定しており、これが複数回起きることは理論上考え難いとのことでありますが、万が一、仮にも基準地震動に相当する揺れが繰り返し起こった場合についても、国の基準では求められていないことではありますが、あえてその場合の安全性を問い質しております。

その結果、万万が一、仮にも、基準地震動に相当する揺れが繰り返し起こった場合でも、伊方発電所の安全上重要な施設や設備のほとんどは、揺れによる力を受けて変形しても元の形状に戻り、ダメージを受けない弾性の範囲内に留まることから、機能を喪失することがないことを確認をいたしております。

一部の設備や部位については、基準地震動の揺れに対して弾性の範囲内に留まらず、ひずみが残る可能性があり、四国電力に詳細を確認しているところではありますが、破壊に至るまでに十分余裕をもった設計を行っていることから、基準地震動に相当する揺れが繰り返し起こったとしても機能を喪失することはないとの説明を受けております。

 このように伊方発電所の安全上重要な施設や設備は、基準地震動に相当する揺れが繰り返し起こっても機能を喪失することはないとの説明を受けており、今般の熊本地震を踏まえたとしても、伊方発電所の安全性は確保されていると考えておりますことから、現時点では伊方発電所3号機の再稼働をやむを得ないとしてきたこれまでの見解に変更はございません。

 新規制基準について、原子力規制委員会は、熊本地震を踏まえたうえで基準を見直す必要はないとの見解を示していますが、今後、熊本地震の詳細な調査が行われ、分析が進んでまいりましたら、同委員会においてさらに議論を深めていただきたいと考えております。

いずれにしましても、原発の安全対策については終わりがなく、常に最新の知見をもって対策を講じていく必要がありますことから、今後とも疑問点が出てまいりましたら、勉強会の場などを通じて、四国電力にさらに質してまいりたいと考えております。

 

●中根県議

2月議会で、「免震重要棟」建設の計画を四国電力が撤回・修正した問題をとりあげました。県の答弁は、四電の主張を鵜呑みにした伝達でしかなく、そこに県自身の判断はしめされていません。

 福島原発事故で、対策の拠点となった「免震重要棟」は、行政がまったく情報から疎外されたという中越地震の教訓にたって、泉田新潟県知事の強い提案で建設されたもので、完成は、福島事故の8カ月前でした。福島事故では、吉田所長ほか「最大で500~600人が昼夜をたがわず」そこに詰め、対策にあたり何とか格納容器の破裂という最悪の事態、「イメージは東日本壊滅」という事態を避けることが出来た対策の拠点です。しかし、伊方の再稼働にあたっては、免震重要棟の整備は撤回され、緊急時対策所は、建屋内面積わずか160㎡、約48坪という手狭なもので、とても福島事故のような対応ができる施設ではありません。

県は、この施設で、事故対応が十分可能であり、「想定外」の事態に対応できると考えているのかお聞きします。

 

■知事

伊方発電所の緊急時対策所は手狭なものであるが、県はこの施設で事故対応が十分可能であり、「想定外」の事態に対応できると考えているのか、とのお尋ねがありました。

伊方発電所では、新規制基準に基づき、重大事故等が発生した場合においても当該重大事故等に対処するための適切な措置を講じることができるよう、緊急時対策所を設置しています。

 四国電力からは、重大事故時において必要な人員を、事故に対処するために指示を行う災害対策本部員36名、放射性物質の拡散を抑制するための要員61名の合計97名と想定していることから、緊急時対策所では、その人員を念頭において、100名を収容できる広さを確保していると聞いております。

 議員ご指摘の福島第一原子力発電所の事故では、1号機から4号機までが相次いで事故を起こしたことから、緊急時対策所で多くの人員が活動する必要があったと考えられます。

 他方、伊方発電所に設置されている緊急時対策所については、四国電力から、1号機から3号機までの全てに対応するものではなく、3号機のシビアアクシデント対策のために設置したものであると聞いております。

加えて、3号機では、福島第一原子力発電所の事故を踏まえて強化された新規制基準等に基づき、様々な安全対策を実施していることから、重大事故時における現在の対応要員数は適切であると聞いており、原子力規制委員会においても了承されたものと認識しております。

 こうしたことから、県としましては、伊方発電所の緊急時対策所は、重大事故時の対処に必要な人員が活動できる機能を有しているものと考えているところでございます。

 

●中根県議 

「老朽火力の停止による停電の懸念」という四電の主張に対し、2月議会ではそれが虚構であることを私たちは指摘しました。あらためて地域間連系の問題について伺います。

電力の予備率は、気温、日照など天候に左右される分の調整として3%、事故などでの発電所の緊急停止などに備えた分を4-5%と設定し、一般的に適正な予備率を7-8%としています。しかし、100万kWの発電所が緊急停止した場合、最大需要が2500万kwある中部電力と500万kwしかない四国電力では、その重みはまったく違います。中部電力では、4%の予備率で対応できますが、四国電力では20%にもなります。事故対応は、保険と同じでスケールメリットの働く地域間連系を生かした対応こそ、道理にかなった対応です。昨年4月から「電力広域的運営推進機関(広域機関)」が機能を開始しました。同機関は、電力小売りの自由化に対応したもので、発電事業者、送配電事業者、小売電気事業者で構成され、電気の送電網を全国ベースで系統運用する役割をもち、地域毎の営業エリアを超え、電力の過不足を調整して地域間で融通し合うようにするとともに、場合によっては、電力の焚き増しを発電会社に指示する権限をもっています。

四国電力は、地域間連系は「あてに出来ない」といってきましたが、12日の県との勉強会では、この1年も安定供給できていたこと、想定外に気温が高くなり電力不足となった日が1日あったが、同機関を使い問題なく対応できたことを説明しています。

「老朽火力による停電の懸念」という四電の主張は、予備率の考え方や地域連携、広域運営機関の実態からも説明のつかない、原発再稼働をしかたがない、と思わせる主張だったわけです。

「現時点での再稼働はやむをえない」という県の立場を真剣に再検討すべきだと思いますがお聞きをいたします。

 

■知事

「現時点での再稼働はやむを得ない」との県の立場を再検討すべきではないか、とのお尋ねかありました。

 伊方発電所の全機運転停止以降、四国電力では火力発電の割合が8割を超えている状況にあり、稼働している火力発電所9基のうち、平成28年度末時点で7基が運転開始から40年程度以上経過するなど、火力発電所の老朽化が進んでいます。

 四国電力からは、電力需要が大幅に増加する夏季・冬季の電力需給の安定性を確保するため、火力発電所の定期検査の繰り延べや、通常運転よりも出力を上げて運転を行う過負荷運転を行っていることなどから、従前より不測のトラブルが起こるリスクが高まっている状況にあると聞いております。

こうした状況の中、例えば、予備力が28万キロワットであった平成25年度の夏の最大需要時や、予備力が32万キロワットであった平成26年度の冬の最大需要時などに、供給力45万キロワットの老朽化している火力発電所の阿南3

号機・4号機、坂出3号機などが不測のトラブルにより停止する事態が起こっていれば、電力の需給状況に深刻な影響を与える可能性があったと考えております。

 こうした事態に備えることを目的の一つとして、電気事業法の認可法人「電力広域的運営推進機関」が平成27年4月に設立されております。この機関は、ある地域で電力需給がひっ迫した時に他の地域の発電事業者に電力融通の指示を行うこととなっていますが、発電事業者が融通できる量はその事業者が供給できる量とされております。

このため、四国電力は、他の事業者の需給状況によっては十分に融通を受けられる保証はないことから、管内の電力需要に対しては四国電力自身の供給力で対応する必要があるとの考えであると聞いております。

なお、議員ご指摘の四国電力が電力融通を受けた事例は、昨年9月26日に、最大供給力よりも200万キロワット程度低い供給力353万キロワットを見込んでいたところ、予想以上の気温の上昇などにより、需要340万キロワット、予備力13万キロワットが見込まれたため、電力広域的運営推進機関から最大50万キロワットの融通を受けるようにとの指示を受け、受電をしたというものでありました。

四国電力からは、自社の休ませていた火力発電所を稼働するよりは他社から受電した方が効率的と判断し受電したものと聞いているところでございます。この事例は、当日の予想外の気温の上昇など気候の影響による需要増加に事前に電力融通で対応できたものでありましたが、突然のトラブルによる火力発電所の停止などから起きる瞬時の供給力の低下には、電力融通では対応できない可能性があります。

また、各区域の送配電事業者は、電気事業法の中で、電気料金の全面自由化後も区域内の最終的な供給保障を行うこととされているため、四国においては送配電事業者である四国電力が最終的な供給保障を行うこととなっております。

 こうしたことから、県民の生活や経済活動に不可欠な電力の安定供給のためには、現時点では伊方発電所3号機の再稼働はやむを得ないとの考えに変わりはございません。

 

【地震対策】

●中根県議

 熊本、大分を襲った地震は、最初の揺れより、あと揺れが強かったこと、震度7が二度観測されたこと、熊本市、阿蘇地域、大分県と、震源地が広範囲に広がったことなど、これまでの想定を超えるもので、気象庁も過去に記録なく予測不可能と発表しています。

しかし、私たちがある程度のデータを残している期間は100年ほどであり、地球のいとなみのスケールで見れば決して、想定を超えるものではない、という謙虚な姿勢が必要だと、改めて痛感をいたしました。

まず、今回の地震に対し、南海トラフ地震に対する認識をどう発展させたか、知事にお聞きをいたします。

 

■知事

地震対策について、熊本地震を受けて、南海トラフ地震に対する認識をどう発展させたのか、とのお尋ねがございました。

 南海トラフ地震対策につきましては、東日本大震災の教訓を踏まえつつ、国が公表した全国でも最も厳しい震度や津波高の想定から逃げることなく、正面から立ち向かい、これまでの取り組みを抜本的に強化し、全力で進めてきたところであります。

 今回の熊本地震では、複数回の強い揺れに襲われるなど、想定より厳しい事態が起こりました。改めて、想定外の事態も起こり得ることを想定して、可能な限りの安全性を追求し、対策を積み重ねていかなければならないと認識したところであります。

これまでも南海トラフ地震対策では、大きな余震が起こりうることを行動計画に位置付けていました。今後、応急期の活動時など、様々な場面での余震を想定するなど、より厳しい条件のもとに、第3期行動計画のさらなる見直しを行ってまいります。「繰り返す揺れへの対応」や「避難所の運営体制の充実」、「支援物資等の円滑な配送」の3点については、特に重点的に全般的な見直しをおこなっていきたいと考えております。

 これからも、どのような厳しい条件がつきつけられようとも、この立ち向かう姿勢は崩さないことはもちろんのこと、また、新たな知見が出てくれば積極的に取り入れ、より効果的な対策となるよう、取り組んでまいりたいと考えているところであります。

 

●中根県議

 被災者支援に県としても力をつくすとともに、この災害から、あらためて本県の取り組みを見直すことが求められていると思います。

 今回の熊本地震は、住宅の耐震化の重要性があらためて浮きぼりになりました。

市町村における代理受領制度や、段階的耐震改修への支援制度の普及状況と課題について土木部長にお聞きをいたします。

 

■土木部長

市町村におけます代理受領制度や段階的耐震改修の支援制度の普及状況とその課題について、お尋ねがございました。

 耐震改修を実施する住宅所有者が、設計や工事に要する費用の全額を、一時的にでも用意する必要がなくなる代理受領制度については、現在、類似のものも含めて22市町村で導入されております。引き続き、導入されていない市町村に対し、導入を働きかけてまいります。

 今年度創設した、倒壊しないレベルまでの耐震改修を一度に進めることができない場合に、第一段階として行う一定レベルの改修を支援する段階的耐震改修制度につきましては、既に3町村で制度化さがなされているところでございます。

他方、第一段階の工事が終わった時点で安心されてしまうのではないかという懸念等から、制度の導入に慎重な市町村もありますが、制度の主旨を丁寧に説明し、普及に努めてまいります。

 

●中根県議

 耐震基準は、その後、阪神淡路大震災、中越地震を経て改正がすすんでいます。特に 2000年の改正では、基礎の形状、柱などの接合方法、壁のバランス配置などの仕様が具体的に示されており、81年の改正につぐ大きな改定となっています。

1981年以前の木造住宅の耐震化の推進とともに、19816月~20005月着工の住宅についても、耐震診断、耐震補強を推進する対策が必要ではありませんか。土木部長にお聞きします。

 

■土木部長

1981年6月から2000年5月に着工した住宅についても、耐震診断、耐震補強を推進する必要があるのではないか、とのお尋ねがございました。

 現在、本県における住宅の耐震化に係る支援は、耐震基準が大幅に強化された1981年5月以前に着工された、いわゆる旧耐震基準によって建築された住宅を対象としております。熊本地震では、築年数が概ね40年を超えると推定される木造住宅が多数倒壊していることから、まずは、旧耐震基準の木造住宅への対応を優先的に進めていく必要があると考えております。

1981年6月以降に着工された木造住宅については、現在、国が設置した委員会におきまして、熊本地震の被害の要因分析等が進められていると聞いております。県としましては、この委員会の分析結果を踏まえた国の動向を注視し、対応を検討してまいります。

 

●中根県議

熊本地震でも「飲料水」「生活用水」の確保の重要性が明らかになりました。

「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」などの身体的負担による熊本地震の震災関連死が県内で計11人に上っています。エコノミークラス症候群は、水分不足が大きく関係をしています。また、避難所での手洗いなど、衛生管理にも生活用水は欠かせません。

 高知県では、配水池の耐震化について、市町村の一般会計からの繰り出し分ついて、2分の1は、国が交付税措置しますが、残る市町村負担分を全額県が交付金で手当てする制度を新設しました。津波避難タワー、避難道の整備を一気にすすめた県交付金と同様、積極的な対応だと評価をしています。2014年度末で、耐震化は35.9%となっています。また、基幹管路の耐震化は22.8%、浄水場は14.5%です。県として支援の対象を拡大していくことが必要になってくると思います。

 水道の耐震化は、避難タワーや避難道の整備と違って住民の目に見えにくく、「対策がとられていない」ことが意識化されず、後回しにされやすいのではないか、と懸念をもっています。

配水池の耐震化の計画の進捗状況、耐震化事業の「見える化」について健康政策部長にお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

配水池の耐震化計画の進捗状況と耐震化事業の「見える化」についてお尋ねがありました。

上水道事業の配水池の耐震化については、国の助成事業に一定の要件があり、水質がよく投資額の少ない県内上水道事業者は補助を受けることはできていません。

また、上水道事業は公営企業会計であるため、料金収入による独立採算の原則があり、県から水道事業者へ直接助成することは困難でした。

 しかし、南海トラフ地震対策の観点において、配水池が災害時に応急給水の拠点となること、また配水池が被災してしまうと復旧に長期間を要することなどから、配水池の耐震化を何としても進めたいと考え、今年度から配水池の耐震化事業へ一般会計から繰り出しを行った市町に対する新しい交付金制度を創設したところです。今回の配水池の耐震化事業では、市や町が地震に備えて優先的に耐震化すべきとしている51基を対象としていますが、制度創設の初年度である今年度は3基の耐震工事にとどまっています。

「見える化」については、水道法において、水道事業者は、水道施設の耐震性能や耐震性の向上の取組などを含む水道事業に関する情報を提供していくこととされています。効果的な情報発信に努めていただくよう働きかけていきますが、水道事業者に配水池の耐震化の重要性を認識していただき、できるだけ早期に取り組んでいただくことが何より大切だと考えています。

 

●中根県議

南海トラフ巨大地震は、その被災範囲が極めて広大になるため、支援の手がなかなか届かないこと、また県内では孤立する地域、集落が多数発生することが予想されており、災害時の飲料水、生活用水の確保策として、日常的な雨水利用を本格的に推進すべきです。

雨水利用で、東京の墨田区が、路地に井戸のような貯めた雨水をくみあげる施設、路地尊(ろじそん)といいますが、この路地尊を設置するなど先進的取り組みをしていることは有名です。その目的は、①貴重な水資源である雨を有効活用すること、②災害には初期消火やトイレの流し水等に活用でき、煮沸やろ過をすることで、緊急用の飲料水にもなること、③ゲリラ豪雨などで雨水が一挙に下水道に流れ込むのを緩和し洪水を緩和する、と位置づけ、条例を策定し補助制度をつくり推進をしています。高知県でも大いに活かすことができる内容だと思います。

  こうした雨水や河川、池、学校プールの水を、浄水装置で飲料水として活用できるようにすることも重要です。また湯を貯める型の給湯装置は、型によりますが満タン時は400-500ℓが非常用生活水として活用でき、ろ過して飲料水にすれば、50人前後の3日間の飲料水にも活用できます。最近では、太陽熱を利用した簡易な浄水装置の研究・開発も進んでいますが、県の防災産業としても重要だと思います。

雨水を災害時の生活用水、飲料用水として活用することを、まずは避難所となっている施設等、計画をもって推進すべきではないか。また、民間住宅での雨水の利用も耐震化とあわせ大いに推進すべきだと思いますが、危機管理部長にお聞きをいたします。

 

■危機管理部長

地震対策について避難所での雨水の利用に関する、お尋ねがございました。

 災害発生時においては、飲料水の確保だけでなく生活用水の確保も重要と考えており、市町村において、水の備蓄に加え、避難所での井戸の整備や谷水の利用による水源確保に努めていただいているところです。

 お話にありました雨水の活用につきましては、井戸の整備などが難しい避難所では、水源確保の有効な方法と考えております。

 今年度から避難所の環境を整備する支援制度を創設しており、その中で雨水を利用するための設備の導入についても補助対象としておりますので、市町村には積極的に活用していただきたいと考えております。

また、民間住宅への雨水タンクの設置につきましては、個人で対応していただくこととなりますが、災害時の生活用水として利用できることから、飲料水の備蓄と併せて雨水の利用についても啓発してまいりたいと考えています。

 

【水道事業】

●中根県議

国は、簡易水道事業を上水道事業に統合するため、2016年度末を制度・財政上の期限とし、全国の自治体にその統合完了を促しています。しかし、統合することで、簡易水道に対する元利償還にかかわる交付税措置のうち給水人口算定分がなくなるなど、国からの財政措置が大きく減少することが各地で大きな問題となっています。

人口減や節水意識の広がりもあり、上水道事業の経営は厳しくなっています。そこに簡易水道への財政措置カットが重なり、県内の自治体で、水道料金の2割アップなど負担増を余儀なくされる状況が生まれてきています。

県内の簡易水道に対して、減少する国の財政措置の影響額はいくらになるでしょうか。この事態をどう受け止め、対応しようとしているのかお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

簡易水道事業の上水道事業との統合による国の財政措置の影響についてお尋ねがありました。

簡易水道事業に対しては、給水人口を基礎とする建設改良に係る財政措置が講じられており、県内市町村の平成27年度の普通交付税の基準財政需要額の算定額は、およそ5億1千万円程度となっています。このうち、上水道事業の要件を満たす給水人口5,001人以上の市町村には普通交付税措置がなくなることから、影響額は、およそ3億6千万円程度となります。

 簡易水道事業の上水道事業への統合により財政措置がなくなることについては、国へ要望した結果、統合の翌年から10年間は、激変緩和措置が設けられることになりました。

水道は、県民の皆さまの生活や社会経済活動に欠くことのできない基幹施設であることから、県としては、安全で安定した水道事業が持続していくために、配水池の耐震化の支援を行うとともに、国の水道関係国庫補助の満額確保や補助要件の緩和などを引き続き国に対して要望していくことにしています。

また、市町村がそれぞれ水道事業を単独で考えるのではなく、広域的視点に立って検討する時期に来ていると考えますので、市町村とともに多様な広域連携についての検討を開始していくことにしています。

 

国民健康保険制度】

●中根県議

2018年度より、国保の「都道府県化」という国保制度の大きな転換を迎えます。国保の賦課、徴収、給付や健診などの実務は従来どおり市町村ですが、都道府県が財政を担うことになります。

4月28日には、「都道府県国民健康保険運営方針策定要領」、通称「ガイドライン」が公表されました。2017年度中に「国保運営方針」を、市町村と協議のうえで策定するなどのスケジュールや、保険料率決定のための考え、手順などが示されています。

ガイドラインは「技術的助言」であり、法的な強制力があるものではありません。運営方針の策定にあたっての基本姿勢についてお伺いいたします。

ガイドラインは、国保の加入者は無職、低所得者が多いことから、保険料負担が極めて重い、という「国保の構造的問題」について一切言及をしていません。

この中心点を避けたガイドラインは、極めて不十分であり、県の運営方針にはしっかり書き込むべきと思いますがお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

国民健康保険制度改革による都道府県単位化に関するお尋ねがありました。

まず、運営方針の策定にあたっての基本姿勢と国保の構造的問題を運営方針に盛り込むことについてのお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えをします。

国保は国民皆保険制度の重要な基盤であるにも関わらず、被保険者には低所得者が多く、また病気になりがちな高齢者も多いことから、保険料負担が重いといった構造的な課題を抱えています。

今回の国保制度改革は、公費による財政支援の拡充等を行うことにより、国保財政の安定的な運営を確保し、国民だれもが安心して必要な医療を受けられるよう、持続可能な医療保険制度を構築することを目的に行われるものです。

 平成30年度以降、県は、保険財政の責任主体となり市町村ともども国保を担っていきますが、国保を安定かつ円滑に運営していくためには、国保の置かれている現状や課題、また改革の目的を県と市町村がしっかり認識し、共有して取り組んでいくことが重要であると考えています。

 このため、国保を運営するための統一的な方針を定める運営方針の策定にあたっては、ガイドラインを参考としながら、県と市町村が緊密な連携のもと十分協議を行い、被保険者の方々が安心して必要な医療を受けられる国保制度の構築を目指して取り組んでまいります。

 また、議員ご指摘の国保の構造問題や策定にあたっての基本姿勢については、運営方針の「策定の目的」の項目でしっかりと記載することを考えています。

 

●中根県議

 さらに危惧するのは、「ガイドライン」の「財政収支の改善に係る基本的な考え方」では、「決済補填等を目的とした」、法定外の一般会計繰入について、「解消又は削減すべき対象」と述べていいます。

 しかし、政府の国保への財政措置は、今後の分を含めても3400億円で、全国の法定外繰入、2013年度の3900億円より少なく、法定外繰入を止めれば、保険料は低減どころか、いまより高騰します。

国が財政措置を強化したのに、従前の市町村一般会計からの法定外繰入を解消・削減し、国保加入者の負担が増加するような対応は、不適切と思いますがお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

国保運営における法定外の一般会計繰入の取り扱いについてお尋ねがありました。

一般会計からの法定外の繰入は、政策的経費を除き、市町村が国保財政の赤字を回避するため、やむを得ず行なってきたものであり、今回の制度改革の協議において、この繰入を解消し財政基盤を強化するための公費の拡充が大きな課題となったところです。

 その結果、一般会計からの法定外繰入、総額3900億円のうち、政策的経費である保健事業分を除く約3400億円の公費の拡充を行い、国保財政の安定化を図ることとされました。

 今般示されました国のガイドラインでは、国保財政を安定的に運営していくために必要な支出は、保険料や国庫負担金等により賄うことが重要であり、これ以外の決算補填等を目的とした法定外の一般会計繰入金については、解消又は削減すべきであるとの考え方が示されていますが、解消、削減すべき繰入金の範囲は、現在、国と地方とで協議中であり明確にはなっていません。

 したがって、国における検討状況も見ながら、被保険者への影響なども考慮し、国保財政の安定した運営に向け市町村と十分検討を行っていきたいと考えています。

 なお、平成26年度に行なわれた、国の「国保基盤強化協議会」では、改革後の運営の状況を検証し、その結果に基づき所要の措置を講ずることとされていますので、県としても、財政運営の状況などを踏まえながら、必要があれば、全国知事会を通じて、国に対し財政措置の更なる強化について要請していくことにしています。

 

●中根県議

また、「ガイドライン」では「統一保険料率」にも踏み込んでいます。2月2日に開催された厚労省の「市町村職員を対象とするセミナー」で、報告にたった国保課課長補佐は「医療費格差が大きい場合は、原則として医療費水準に応じた保険料率とならざるを得ないと思っている。ただし将来的には地域の実情を踏まえつつ、都道府県で一本化した保険料率をめざすこととなる」と述べています。

高知県では、中央圏に医療機関が集中しており、一人当たりの医療給付の実績では、市町村間で大きな乖離があります。

一本化した保険料率は、県内の実態にあっておらず、国に対しては強制することはあってはならないことを、強く求めるべきと思いますがお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

保険料率の一本化についてお尋ねがありました。

今回、国において定められた、「国民健康保険事業費納付金及び標準保険料率の算定方法」では、保険料率については、各市町村の医療費水準の違いを反映させ、市町村ごとに設定することを原則としています。

 保険料水準の統一については、医療サービス水準の均質化などとともに今後の課題とはされていますが、統一する場合でも、市町村の意見を十分踏まえることとされており、決して強制するものとはなっていません。

市町村との協議において、保険料水準の統一についても十分ご意見をお伺いしていきたいと考えています。

 

●中根県議

国保の広域化の真の目的は、医療介護総合確保法により、都道府県に、医療供給体制の「適正化」をもとめた「地域医療構想」と一体で、医療費抑制を進めることにあります。国保財政に2017年度から措置させる1700億円のうちの700から800億円は、医療費削減に「努力」した自治体に優先配分される内容となっていることからも明らかです。

 これまでも、私たちは、国保の重い負担や無料低額診療の取り組みを例に、医療から排除された県民の実態を取り上げてきました。県はそのたびに、医療が必要な人が必要な医療サービスを受けられない事態はあってはならない、との決意をかたってきました。

国保の運営方針の策定にあたっても、医療から排除される人をつくらない、このことを大きなテーマの1つとすべきと思いますがお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

医療から排除される人をつくらないことを大きなテーマとするべきではないかとのお尋ねがありました。

今回の国保制度改革の大きなテーマは、将来にわたって、国民だれもが必要な医療を受けられる持続可能な医療保険制度を構築するために、国民皆保険制度の重要な基盤である国保財政の基盤強化を図ることだと考えています。

 このため、運営方針の策定や改革後の国保運営にあたっては、このテーマをしっかりと認識し、また市町村ともこの考えを共有しながら、誰もが安心して必要な医療が受けられるよう、取り組んでまいります。

 

●中根県議

あと、運営方針にかかわって、地方単独事業波及分、いわゆる窓口負担分の軽減に対するペナルティ分の扱いについてお聞きいたします。

これまでは、県制度分もふくめて国保の国庫負担金等の減額分はすべて市町村が負担してきました。現在、子どもの医療費のペナルティについては政府でも議論をしていますが、県全体のペナルティ分は約4億円で、内訳はおよそ重度障害者分が4分の3、子どもの医療費と1人親の医療費軽減分が8分の1ずつであり、子どもの医療費助成分のペナルティがなくなっても、依然大きな国庫負担金等の減額が存在をいたします。

この減額分は、どう対応するつもりか、県も応分の負担をすべきと思いますがお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

地方単独の医療費助成事業による波及増分に対する国庫負担金等の減額分への対応についてお尋ねがありました。

国においては、子どもの医療費助成などの地方単独事業により医療費の窓口負担を軽減した場合、軽減しない場合と比べ医療費が増加し、医療費に対する国の負担も増加するとの考えから、限られた財源の中で公平に国費を配分するという理由により、国庫負担金の減額を行ってきています。

 一方、全国知事会では、こうした地方単独事業は、本来であれば、国が全国統一的に行うべき子育て・少子化対策や重度心身障害児者への支援策を肩代わりするものであり、この減額措置は、地方の独自施策の実施を制限するとともに、地方の努力に反し、地方にのみ責任を負わせるものであることから、廃止するよう国に求めてきたところです。

このことについては、今回の国保制度改革の国保基盤強化協議会における国と地方との協議においても、議論が重ねられ、今後も引き続き議論していくことが確認されています。

 本県としても、この減額調整は地方の取組を阻害する不合理なものであり、早急に廃止されることが重要ではないかと考えており、引き続き全国知事会を通じ、国に対して強く廃止を求めてまいります。

 

【地域医療構想】

●中根県議

2016年度前半に「地域医療構想」策定するために行った療養病床実態調査結果がこの3月に公表されました。調査は、昨年12月に県内89の病院・診療所(計6773床)の入院患者5374人について、「望ましい療養環境」を医療機関と患者・家族の双方に質問をしたものです。

医療機関側が「望ましい」とする形態は、療養病床63.4%、特養ホーム10%、自宅5.6%、老健施設3.3%となっており、圧倒的に入院・入所が望ましいとの回答となっています。

患者側が「希望する療養環境」は、療養病床が75.9%、特養ホーム5.4%、自宅5.3%、老健施設1.8%と、ここでも圧倒的に入院・入所であり、両回答とも自宅は、わずか5%にすぎません。

患者の家庭環境、所得状況の分析では、約半数が1人暮らしか高齢夫婦のみの世帯であり、8割近くは日中・夜間とも介護してくれる人が不在、低所得層も6割前後となっています。

低所得者や1人暮らしの高齢者の多さ、また中山間地が多く訪問サービスに限界があるなど、高知県の実態が現在の病床数となっていることを示したものと言えます。一方、政府は2025年時点で必要とされるとした「必要病床数」は、現状より4割近く少ない4260床以下と報道がされましたが、昨年6月18日の通知では「機械的な試算」による「参考値」であり、「あくまで自主的な取り組みが基本」であり、「需要に応じた適切な医療供給体制」となることを求めています。

まず、療養病床実態調査結果についての県の受け止めをお聞きいたします。

 

■健康政策部長

地域医療構想についての一連の質問にお答えします。

まず、昨年度に実施しました療養病床実態調査の調査結果に対する県の受け止めについて、お尋ねがありました。

今回の調査結果において特徴的であった点としては、介護療養病床において、全国の値に比べ、医療の必要度が低い患者の割合が22.3ポイント高く、介護の必要度が高い患者の割合が5ポイント高いこと、低所得に該当する患者が全体の約63%を占めていること、療養病床への入院が望ましいと考える割合が、患者・家族側に約76%、ある一方で、厚療機関側は約63%と、認識にずれが生じていることといったことが挙げられます。

 この調査結果は、高齢化が進んだ中山間地域を抱え、独居高齢者が多く家庭の介護力が脆弱であるといった背景から長期療養の入院ニーズが高いという本県の特徴の一端を示しているものと考えます。

 したがって、単に病床を減らすのではなく、「患者さんや利用者にふさわしいサービスが提供できる受け皿を確保する」「行き場のない入院患者を出さない」ことを前提として、住み慣れた地域で療養が可能な体制を構築するよう、今後の地域医療構想の策定に反映していきたいと考えています。

 

●中根県議

医療の供給体制を考えるうえで、2018年3月末で廃止が予定されている療養病床削減の影響はきわめて深刻です。

政府の「療養病床の在り方等に関する検討会」は1月28日に「新たな選択肢の整理案」で、療養病床13万7000床廃止の受け皿として新たな2類型を提示しました。新類型は、は長期療養に対応したプライバシーの尊重など「住まい」の機能を強化しつつ、 「医療機能を内包した施設系サービス」と「医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設」が柱となっています。前者は施設内に医師や看護職員が常駐する特養ホームのイメージで、後者は住宅と病院等が同じ敷地にあるイメージと説明されています。これで本当に、行き場のない人がうまれないのでしょうか。

まず利用者負担ですが、整理案は、「利用者にとって負担可能なもの」と記述されていますが、制度の詳細は決まっていません。現行の制度は、補足給付といって低所得者への食費・居住費に補助がなされていますが、厚労省は「経過措置や可能性を考える必要がある」として、存続は明言していません。低所得者が利用できる施設は極めて限定されており、負担増になれば、「介護難民」が大量に生まれることが危惧されます。

検討会で、医師会の委員は「今後、高所得者用の施設はいくらでもできるが、低所得者の受け皿の整備が必要」と繰り返し求めています。

低所得者が利用できる制度を整備することが重要だと思いますがお聞きをいたします。

 

■健康政策部長

低所得者が利用できるように制度を整備することが重要ではないかとのお尋ねがありました。

現行の公的医療保険、介護保険制度では、低所得者に対して所得に応じた保険料や自己負担額の減免の制度が設けられており、この考え方は制度の見直しにおいても維持されるべきものと考えています。

 国の「療養病床の在り方等に関する検討会」で提案された「内包型」「併設型」といった2つの類型の「新たな選択肢」では、それに求められる条件の一つとして、「費用面からみて、利用者にとって負担可能なものであること」が挙げられています。

これに対して検討会の構成員からは、新たな類型については、低所得者の受け皿となることが考えられるため、補足給付のような低所得者対策を認めることが必要、低所得者への住宅手当等の議論も含めて社会保障の中でどのように対応していくのか検討していくことが必要といった、低所得者対策の必要性に関する意見も出されているところです。

新たな選択肢」については、本年6月に設置された社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」において、年内の取りまとめを目指して具体的な制度設計が議論されることになっています。現行制度に準じた低所得者対策を講じていただくことが重要であり、注視していきたいと考えています。

 

●中根県議

次に、重症・重度者の居場所の問題です。

新類型は、医療区分1を中心とした利用者像を想定していますが、現在の利用実態は、医療区分2・3の患者が医療療養(25対1)で56.4%、介護療養で20%前後います(1月28日厚労省資料)。これらの患者の大半を20対1の医療療養で対応するとなると、大量の看護職員の確保が必要となりますが、一方、国は「地域医療構想との整合性」を確保するとして、医療供給を抑制する方向で検討しており、施設の整備が抑制され、行き場が無くなることが懸念されるのです。

検討会では、日本医師会と四病協の連名で、「移行先となり得る選択肢の拡大は必要とする一方、あくまで、現行制度の存続を『第一選択肢』として検討すべき」と強調しています。

現行制度の存続も視野に入れないと、「医療・介護難民」が出る危険性があると思いますが、対応についてお聞きします。

 

■健康政策部長

医療・介護難民がでる危険性への対応についてお尋ねがありました。

 平成29年度未に廃止となる療養病床に入院している患者のうち、在宅への移行が難しい医療区分2・3の方々については、引き続き残ることとなる現行の医療療養病床で療養を継続していただくことになります。

-万、医療の必要度が低い医療区分1の方々は状態像に応じて、介護保険施設や居住系サービス、あるいは介護療養病床等からの転換が見込まれる新たな類型での療養を選択していくことになりますが、現に入院しておられる医療区分1の方々が行き場をなくしてしまわないようにしていく必要があります。

 療養病床からの移行を円滑に進めていくためには、施設基準のあり方や経過措置等が、本県のように高齢化と人口減少が進行し、家庭での介護力が脆弱で、地域で療養を続けることが困難な中山間地域を多く抱えているなどといった地方の実情を踏まえたものとなるよう、引き続き国に対して提言を行っていきたいと考えています。

 

【子どもの貧民問題】

●中根県議

4月14日、ユニセフが、「先進諸国における子どもたちの幸福度の格差に関する順位表」というレポートを発表しました。調査は、EUまたはOECDに加盟する41カ国について、底辺に置かれた子どもたちが「平均的」な子どもたちからどの程度取り残されているか、に基づいて順位付けしたものです。

報告書はこれを“底辺の格差”と呼び、所得、学習到達度、主観的な健康状態、および生活満足度に関してそれぞれ分析を行っています。

レポートは日本について、「相対的所得に関する“底辺の格差”の順位では、41カ国中で下から(格差が大きい方から)8番目」で、アメリカや韓国より格差が大きいこと。「所得分布の下から10%にあたる子どもの世帯所得は中央値にあたる子どもの約40%」しかないこと。「学習到達度における“底辺の格差”の順位では、37カ国中で下から11番目」となっています。

そして、レポートは「子どもたちの幸福度を高めるため、政府の取り組みを提言」しています。その内容は、最も貧しい子どもたちの世帯の所得を改善する、全ての子どもたちに対して健康的な生活習慣を促進・支援する、主観的な幸福度を重視する、公平性を子どもの幸福度の課題の中心に位置付ける、不利な状況に置かれた子どもたちの学習到達度を向上させる、となっています。

この調査のポイントは、「平均的」な子どもたちからどの程度取り残されているか、を調査している点です。子どもの貧困をめぐっては、発展途上国や日本の戦争直後と比べて「貧困と言えるのか」という主張がなされますが、20世紀半ばに、イギリス研究者のタウンゼントが、食うや食わずという貧困だけではなく、みんなが普通に持っているものがないとか、家族旅行や誕生会のプレゼントという経験がないとか、そうしたことで社会で居場所がないとか、自己肯定感が持ちにくいことなどを「相対的剥奪」としてとらえ、貧困の概念を大きく発展をさせました。

このレポートの提言とも一致する方向で県は学習、健康分野で、厳しい環境にある子どもへの対策を強化していることは、評価をしています。

日本財団による「子どもの貧困の社会的損失推計」レポートの第二弾は、各都道府県における課題の深刻度と、対策がどれだけ行われているかの指標化を試みています。高知県は、貧困状態にある子どもの割合は19.5%と全国第4位、課題対策度という予算支出の高さでは、東京、鳥取、島根、青森についで5位と、厳しい財政状況の中で奮闘していることが示されています。また沖縄に続いて、子どもの貧困率を指標として取り入れることを明確にしている都道府県のひとつであることも東京新聞が報道(5/17付)しています。

そのうえで、提言が示している「主観的な幸福度を重視する」「公平性を子どもの幸福度の課題の中心に位置付ける」という点は、県の子どもの貧困対策推進計画にとっても極めて重要な視点だと思いますが、お聞きをいたします。

 

■地域福祉部長

子どもの貧困問題に関して、ユニセフの報告書にある「主観的な幸福度を重視する」「公平性を子どもの幸福度の課題の中心に位置付ける」という点は、本県での子どもの貧困対策推進計画においても重要な視点ではないか、とのお尋ねがございました。

 県では、この3月に「高知家の子どもの貧困対策推進計画」を策定し、生活の困窮という経済的な状況だけではなく、学力の未定着や虐待、非行、いじめなどといった子どもたちの置かれた様々な困難な状況を踏まえ、出生前から就職に至るライフステージの各段階に応じた切れ目のない支援策を強化しております。

 計画では、「全ての子どもたちが、子どもたち自身の努力の及ばない不利な環境により、将来への道を閉ざされることのないよう、夢と希望を持って、安心して育つことのできる県づくり」を基本理念として位置付け、お話のありましたユニセフの報告書にある、「主観的な幸福度を重視する」「公平性を子どもの幸福度の課題の中心に位置付ける」という2つの視点も、同じく報告書にある他の「最も貧しい子どもたちの世帯の所得を改善する」「不利な状況に置かれた子どもたちの学習到達度を向上させる」「全ての子どもたちに対して健康的な生活習慣を促進、支援する」という3つの視点と同様に、大切な視点として、それらを踏まえた計画になっているものと考えております。

 さらに、本年度は、子どもの生活実態調査を実施することとしており、その中で、保護者だけでなく、小・中・高校の子どもたち自身へのアンケートを行い、自分たちの置かれている状況や自己肯定感などを把握することとしております。

この調査結果をしっかりと分析し、計画のバージョンアップにつなげ、よりきめ細かく、実効性のある施策を関係部局と連携して進めてまいります。

 

●中根県議

 また、トップにあげられた「最も貧しい子どもたちの世帯の所得を改善する」点で、極めて重要なのが就学援助制度です。

 県計画は、生活保護世帯や児童養護施設、ひとり親世帯(児童扶養手当の受給世帯)をもとに、「環境にある子どもたちの18歳以下の子どもたちに対する割合は、全国の8%に対し、本県では12.4%と厳しい状況にある」としています。しかし、マーケットバスケット方式を採用して最低生計費を算出した仏教大学の金澤誠一氏の研究では、標準3人世帯の保護基準を1.4 倍するとほぼ年収300 万円となる。この生活水準は、生活保護受給世帯とほぼ同一水準とみることができる、と指摘をしています。生活保護受給世帯の場合には、税金や社会保険料、NHK受信料、現物支給される医療扶助相当額が免除され、働いている場合には勤労控除があり、実質的には保護基準以上の収入があるからです〔金澤誠一「『構造改革』の下での『生活崩壊』と最低生計費」「賃金と社会保障第1421号」2006年7月)。
 就学援助の県内の認定基準は、生活保護基準の1.0~1.3倍であり、2013年度の利用率は25.37%、要保護を除いた数字は22.78%となっています。高知県内には、実質的に、生活保護基準以下で生活している多数の子どもがいると思われます。

そのことを、きちんと視野にいれた対策、具体的には就学援助制度が、生活保護基準以下で生活する子どもを解消できるよう、改善・充実することが求められていると思いますが、教育長にお聞きをいたします。

 

■教育長

就学援助制度の改善・充実について、お尋ねがございました。

就学援助制度は、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対して、市町村は、必要な援助を与えなければならない」という学校教育法の規定に基づいた国の制度であり、市町村が実施主体として、この制度運用を行っております。

 また、国の財政支援の対象費目については、従来からの学校給食費、修学旅行費、学用品費などに加えて、平成22年度からは、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費が追加され、援助の拡充がはかられております。

就学援助の実施状況につきまして、平成26年に国が全国の都道府県を対象に実施しました「平成25年度就学援助実施状況等調査」の結果から見ますと、本県の就学援助率は、25.37%となっており、全国で最も高い割合となっております。

このことは、本県においては、経済的に厳しい状況にある世帯の児童・生徒が多いことを反映しておりますが、一面では、各市町村が就学援助に対して、積極的に努めていることの表れとも受け止めております。

 ただ、こうした制度があるにもかかわらず、就学援助の対象となる世帯の中には、制度そのものを認識していなかった等の理由から、申請が出来ていないケースがあるといったお話も聞いております。

このため県としましては、就学援助制度がその趣旨に沿って有効に活用されるよう、市町村に対して、対象世帯にしっかりと制度周知がなされるよう、様々な機会を通じて要請したところであり、その点につき今後とも務めてまいります。

 また、市町村が安定的かつ充実した就学援助制度を運営していけるよう、「全国都道府県教育長協議会」等とともに、十分な財政措置が講じられるよう国に対する要望を続けていきたいと考えております。

 

【税務行政】

●中根県議

「下流老人」「老後破産」「子どもの貧困」「ワーキングプア」など、様々な角度から「貧困」問題が大きな社会問題となっているもとで、税金や保険料を、払いたくても払えないという状況も広がっています。

 これまでの質問でも地方税滞納などを理由とした、児童手当や年金の一方的な差し押さえの問題点を取り上げ、税務行政は「親切な態度で接し、納税者の主張に十分に耳を傾け、一方的であるという批判を受けることがないよう細心の注意を払わなければならない」(国税庁の税務運営方針)との立場を確認し、知事からも「「生活が困窮しておられる滞納者の方については生活の再建をしながら納税をしていただくという配慮が必要だと思います。生存権まで脅かすような税の徴収というのはあってはならない」「そのような点をしっかりと徹底していくようにしたい」〔2010年6月議会〕と明確な答弁をしていただいています。

税や公共料金の滞納している世帯をどうとらえるか、ここが重要だと思います。今、行政としても、子どもや高齢者への虐待や自殺の防止、多重債務など消費者行政、生活困窮者の自立支援など、様々なリスクに対して積極的に介入して課題を解決していこうとしています。

 そうした視点に立てば、滞納がある世帯というのは、経済的困窮を背景に、様々なリスクが表れているととらえて、積極的に介入していく、そして、就学援助制度などが活用されているのか、介護認定を受けている方があれば、税の障害者控除を受けられる可能性があるとか、利用できる様々な制度などにつなげていく必要があると思います。

また、今年4月から、地方税においても、納税者の申請に基づく換価の猶予制度を創設されました。納税したくても事業の継続が困難になったり、生活の維持が困難になったりした場合に、毎月の分割納付を条件に、1年以内の期間、財産の換価を猶予するものとなっています。

貧困が広がるもとで、滞納に対して、福祉の視点にたって対応をすることが、ますます重要になっていると思いますがお聞きをいたします。

 

■総務部長

税務行政について、滞納者に対して、福祉の視点に立った対応をすることが重要になるのではないかとのお尋ねがございました。

 県税事務所では、自主財源である税収の確保に向けて、公正で公平な賦課徴収に取り組んでおり、担税力がありながら納税に応じていただけない滞納者に対しては、財産の差し押さえなどの厳正な滞納処分を行っております。

 一方で、生活が困窮している納税者のみなさまについては、生活の再建をしながら納税していただくという配慮が必要でございますので、生活実態に即した分割納付等のご相談もお受けしているところでございます。

そのようなご相談の過程で、多重債務を抱えていることが判明した場合には、消費生活センターや法テラス等の窓口を紹介するなど、関係機関と連携した取組も行っております。

 また、議員ご指摘のとおり、納税について誠実な意思を有する納税者の方が、県税を一時に納付することにより事業継続又は生活維持を困難にするおそれがあるときは、納税者の申請に基づき、既に差し押さえた財産の換価や新たな差押えを猶予する制度も、本年4月から新たに創設されております。

 現在のところ、この制度の申請はありませんが、ホームページにその内容を掲載するほか、今後、県税事務所への配置を予定しているパンフレット「くらしと県税」において、制度の詳細を記載するなど、制度の周知に努めているところでございます。

 もとより、生存権まで脅かすような税の徴収というのはあってはならないことでございますので、こうした制度も適切に運用しながら、税収の確保に取り組んでいく必要があると考えております。

 

障害者差別解消法】

●中根県議

障害者差別解消法が、この4月に施行されました。解消法は、行政機関等は、 障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合 その実施に伴う負担が過重でないときは合理的な配慮をしなければならない」ことを義務づけています。

基本方針では「法の対象」となる障害者の範囲ついて「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害を含む。その他の心身の機能の障害がある者」としており、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能の障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとの、いわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえていると、「障害者手帳の有無に限らない幅広い対応」を求めています。今回は、この問題で1点だけお聞きします。

職員採用において、高知県は、全盲の若者など身体障害者の採用拡大にとりくんできたわけですが、今回、発達障害を含む精神障害も法の対象となりました。一方、障害者雇用促進法は、身体・知的と精神疾患のある障害者の雇用が義務付けられていますが、その対象には、発達障害や難病患者は含まれていないという問題点が存在します。兵庫県明石市は、今年度の職員採用試験から障害者の受験資格を、発達障害者や難病患者にも拡大しています。

障害者差別解消法の施行をうけて、職員採用について、どのような改善を検討しているかお聞きします。

 

■総務部長

障害者差別解消法の施行を踏まえての職員採用について、お尋ねがございました。

 知事部局における障害者の雇用については、平成19年度に身体障害者を対象とした採再試験を初めて実施し、これまでに19名を採用してきたところでございます。

知事部局における障害者雇用率は、平成19年度に2.13%であったのに対し、平成27年は、法定雇用率の2.3%を大きく上回る2.66%まで伸びておりまして、全都道府県でも第9位という上位に位置しているところでございます。

 こういった状況の下、本年度においても実施する身体障害者を対象とした採用試験では、「自力による通勤ができること」「口頭による試験に対応できること」の要件を受験資格から取り除くこととしております。

また、口頭による受験が難しい場合には、手話やパソコン表示を行う対応によりまして、受験の門戸をできる限り広げることとしたところであります。

お話のありました身体障害者以外の障害者の職員採用につきましては、先行して取組を行っている自治体の例に学びながら、本県において、どのような職務に従事していただくことが可能かということをまずは研究してまいりたいと考えております。

 

【女性差別撤廃問題】

●中根県議

この3月7日、国連女性差別撤廃委員会の日本政府審査の最終見解が発表されました。前回2009年の勧告でも、2003年の審査で勧告された問題を6年間放置し続け、あたかも条約など実行する必要のない口約束に過ぎないような態度をとってきた日本政府の姿勢そのものを、厳しく問い質す内容となっていました。が、今回の勧告も、これまでの勧告が、いまだ大きな進展をみていなことから「条約の完全実施を求める強い勧告」ではじまっています。

 「最終見解」には、“日本の法律には条約が掲げる差別の定義がない”ことをはじめ、いくつもの課題で、“前回勧告を繰り返す”“前回勧告を想起し”と表現した上での指摘が目立つのも特徴の一つです。具体的に改善が求められた課題は多岐にわたります。賃金格差、管理職への登用、マタハラ(妊娠・出産にかかわるハラスメント)、セクハラ、非正規雇用など雇用の場での平等、2020年までに政策意思決定の場での女性比率30%目標の達成、女性への暴力、マイノリティーなどの人権の問題、「慰安婦」問題の真の解決、貧困の解決など、どれも繰り返されてきたテーマです。こうした事態になる根本は、女性差別の定義がはっきりしていないからです。

 国連の差別撤廃委員会の指摘は、世界標準、グローバルスタンダードでというべき内容です。

国連の女性差別撤廃委員会の指摘を、知事はどう認識されていますか。

 

■知事

国連の女子差別撤廃委員会の最終見解に対する認識について、お尋ねがありました。

今回の最終見解では、前回の勧告以降、国において行われた、女性活躍推進法やストーカー規制法など多くの法律の制定・改正等の進展や、第3次及び第4次男女共同参画基本計画の策定等の政策枠組の強化について、「肯定的な側面」として評価されております。

 他方、女性だけの再婚禁止期間の廃止など民法の改正をはじめ、様々な分野に関して勧告がなされており、国際社会の視点からみて、我が国には、男女共同参画に関する多くの課題が残っているものと認識しております。

 この最終見解そのものに法的拘束力はないというのが国の見解ではありますが、男女共同参画の実現に向け、国として取り組むべきものについては、引続き、着実に取り組んでいただきたいと考えております。

 また、県としても、性別による固定観念や、女性に対する暴力など、取り組むべき課題の解決に向け、昨年度改定した「こうち男女共同参画プラン」や、本年度改定を行う予定の「高知県DV被害者支援計画」などに基づき、取り組みを進めてまいります。

 

●中根県議

男女共同参画の推進を掲げるのであれば、少なくとも知事をはじめ県の幹部職員が、その指摘の内容を生かしていくためにも、国際的な動向について学ぶ仕組みが必要だと思いますがいかがですか、お聞きします。

 

■知事

県の幹部職員が、国連の女子差別撤廃委員会の指摘内容を生かしていくためにも、国際的な動向について学ぶ仕組みが必要ではないか、とのお尋ねがありました。

県では、各所属の業務に男女共同参画の視点を生かすことを目的として、毎年、職員を対象に、男女共同参画や女性問題に関する研修を実施しているところです。

 今後はこうした研修におきまして、また、私が本部長をつとめる高知県男女共同参画推進本部会議などを通じまして、幹部職員に対しても国際的な動向を周知する機会を設け、男女共同参画の取り組みに活かしてまいりたいと考えております。

 

【第二問】

●中根県議

 知事に、度々で恐縮ですが、原発の問題です。

 本当に、一旦事故が起こってしまえば大変なことになるという状況の下で、また原発を稼働させるということは、そこに原発による負の遺産も出てくると、それを如何に処理をしていくのか、この点についても世界的な課題にいまだになっているわけです。そんな中で、伊方原発の再稼働というのは、本当に慎重に慎重を期すという、知事の想定外を想定するという考え方からすれば、もっともっと四国電力に対しても専門的知識をもってお話し合いをすべきではないかと思います。

 2月の県議会で、吉良富彦県議が、地域連携が出来るのであれば、わざわざ原発を動かさなくてもいいのではないかというお話をしました。地域連携を使えば、少々足りない時が年に1回、2回あったとしても乗り越えられるのではないかと言ったときに、四国電力からのお話は供給力を確保する必要があると四国電力は言ったので、やっぱり地域連携を使うことはできないのですというお話を県がされたのです。

 ところが、今回の5月12日の四国電力との話では、一時的に買うことによって乗り切っていますとおっしゃられている。大変複雑なことが沢山ありますけれども、これまで県は県民の目線でより分かりやすい言葉で聞き、そしてお答えを頂いて、お知らせをしていくというスタンスを取ってらっしゃいましたけれども、やっぱり専門的な知見を持っている方と県そのものがしっかりとまず学習をして、四国電力と対話をするということが大変大事ではないかと思っています。

 専門家を招へいをしながら、県そのものも想定外を想定をしながら、再稼働の根拠そのものが一体どうなのかをもう一度やっぱり考えるべきべきだと私は強く思っていまして、知事はいまの時点では様々な点から見て再稼働はやむをえないとおっしゃいますけれども、県民にとって危険なものはいらないと、また原発は徐々に徐々に頼らない方向にもっていくという知事のスタンスからすれば、四国電力の言うことをそのまま受け取る今の状況よりも、もう少し専門家との知見を基にした対話を推し進めてほしいという強い要請をしたいと思いますが、それについてお願いをいたします。

 国保の問題、地域医療構想の問題、本当に大切な問題で、これまでずっと社会の中で生きてそして終末を迎える高齢の方たちや、また色々な意味で弱い立場にいる人たちの生存権そのものにかかわる問題だと思います。先ほど来お話があったように、根拠そのものをしっかり示しながら、ガイドラインの中にも入れていってもらいたい、この要請をしておきたいと思います。

 

■知事

 核の使用済み燃料の問題なども考えていけばですね、やはり本当に原発への依存度というのは徐々に徐々にではありますけれども低減をさせていくということをしっかりと進めなければならないだろうと、それは本当にそのとおりだと思ってます。

 そしてまた、安全性を確認するという意味においてもですね、かなり厳しい条件の下でどうかということ、先ほどもおっしゃられましたし、私も後の答弁で申し上げましたが、想定外を想定するということもふまえての対処は必要だと思います。そういうこともありますので、理論的にはありえることではなかなかないだろうということではありますけれども、基準地震動、これが2回生じた時にどうなのかということについても問い質しを徹底しておこなっているということでございます。

3点目として、おっしゃるとおり、やはり四国電力の言うことを鵜呑みにしないためにも、やはり専門家のアドバイスを受けて、我々としての知見も高めていくべきではないか、それはおっしゃるとおりだと、そのように思います。これまでも様々に専門家のみなさまにもお話を伺ってきたつもりですし、職員もそうとう習熟してきておりますので、かなりの知識をためてきていることも確かだと思いますけれども、やはり我々自身として、専門家のお力も借りながら知見を高めていくという方向での努力というのは引き続き続けてまいりたいと考えております。