議会報告

  • 2016年03月18日
    2016年2月議会 「TPP協定を国会で批准しないことを求める意見書」への賛成、「TPPの影響に関する国民の不安を払拭し、対策の確実な実行を求める意見書」への反対討論(2016.03.18)

 私は、日本共産党を代表して討論を行います。ただいま議題となりました、議発第8号「TPP協定を国会で批准しないことを求める意見書議案」に賛成し、議発第9号「TPPの影響に関する国民の不安を払拭し、対策の確実な実行を求める意見書議案」に反対するものです。

 安倍政権により、TPPの承認案と関連一括法案が閣議決定、国会提出をされました。TPPはコメや牛肉などの農産物を含め関税を原則として撤廃、輸入を拡大するとともに、食の安全、著作権、雇用、医療などあらゆる分野で多国籍大企業の利益を最大限に確保するため国民を犠牲にするルールを押し付けるものです。とりわけISD条項は、環境、健康、地域経済などを守る国内ルールを一企業が「利潤拡大」を阻害したとして、国家、自治体を訴え、巨額の賠償金、制度改変を迫るという、まさに国家主権を売り渡す売国的、反国民的協定と言わなければなりません。国会決議に違反した協定は国会の責任で批准を拒否し、関連一括法案も廃案にすべきであります。

 TPP協定が、交渉参加にあたって国会が決議した重要農産品を除外するなどの原則を踏みにじっていることは明白です。国会決議は「農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること」「10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」となっています。しかし秘密交渉の結果、日本に全品目で95%、農林水産物で81%、重要5品目だけでも30%の品目の関税撤廃を押し付けるものになりました。これまで日本が締結したEPAはすべて「除外」規定があり、対象にはコメや麦など重要品目が入っていました。しかしTPP協定には国会決議が求めた重要農産品の「除外」という言葉さえ盛り込まれていません。しかも安倍首相は国会答弁で、重要5品目を「除外」するよう要求することすらしていなかったことを事実上、認めています。さらに撤廃を繰り上げる条項、7年後に他国からの要請があれば再協議する条文も含まれており、関税撤廃を加速する仕組みです。TPPを批准すれば、後戻りできない関税撤廃の道に突き進むと言うことになります。

 1月4日の日本農業新聞には、全国のJA組合長を対象にしたアンケートが紹介されていますが、回答した523人の内、92%もの組合長が「国会決議は守れていない」と答えています。国会決議違反が明白なTPP協定の批准は、きっぱりと中止するべきです。

 政府は「違反かどうかは国会で判断を」と無責任な態度をとっていますが、そんな時だからこそ、地方から、「国会決議違反」「批准は許さない」の声を届けることが、きわめて重要となっています。

 TPPの本質は、投資・サービス分野の自由化であり、あらゆる経済活動に影響を与える内容となっています。徹底した検証が不可欠ですが、付属書含め8400ページある協定書のうち、6000ページは、日本語訳もだされていない状況です。また協定には矛盾する内容、記述が多数あり、交渉過程において、どのような具体的な提案と協議されたのか、その中身がわからなければ判断できないと、多くの研究者、専門家から指摘をされています。このような国民が判断のできない状況で、協定を批准するのは、断じてあってはなりません。秘密で交渉し、膨大な協定と11にも上る法案である関連一括法案を突然提出して、短期間で成立させようとすること自体、国会軽視の極みと言わなければなりません。

 TPPの危険性は、そのモデルとなった米韓FTA後の韓国の実態を見ればあきらかといえます。昨年、米韓FTA反対運動を主導する韓国弁護団が来日し講演をしています。発効から1年で畜産業の7割が廃業し、米国からの穀物を除く農畜産物輸入額はFTA発効前と比べて7割以上も増加をしています。しかも輸入品の価格はほとんど変動していません。一方、輸出額も伸び悩み、昨年10月は前年同月比15.8%減と、リーマン・ショック以降で最大の下落幅を記録しています。弁護団は、「韓米FTAはひと言で言うと大失敗。韓国政府が喧伝した目標はことごとく挫折」と断じています。また、韓国の各自治体は条例に基づいて「地産地消」の学校給食を推進してきましたが、米食品会からISD条項で訴えられることを懸念した韓国政府は、先手を打つ格好で、各自治体に給食の「地産地消」優先を取りやめるように指示し、9割の自治体で条例が改定されたとの報告もあります。

 医薬業界も「政府が国民のための適正薬価を決めることができない」事態がうまれています。

 アメリカがカナダ、メキシコと結んでいるNAFTAなども同様です。

 先行する事例からも、一握りの多国籍企業の利益のために各国の国民と国民経済を犠牲にする協定であることは明らかです。現在の日本の状況をみても、大企業は空前の利益をあげ、内部留保は300兆円をこえていますが、実質賃金も、消費支出も低下をし続けています。TPPは、この貧困と格差をいっそう拡大するものです。

 アメリカでは大統領候補の多くがTPP反対をかかげており、議会での議論は、11月の大統領選後になる見通しです。全文の日本語訳もないもとでの審議など言語道断です。協定内容の徹底した精査、先行事例の検証など、徹底した審議をつくすという最低限の国民への責任も果たさず批准することは決して許されません。                        

 高知県議会は2年前の2月議会で、「第1次産業を基盤に産業振興に全力を尽くす高知県議会として、国において国民との約束を守り、TPP交渉からの即時撤退をするよう断固として要望する」との意見書決議を全会一致で採択をしています。その後も、自民党の皆さんをはじめ「国会決議の遵守を求める意見書」を幾度も決議をしています。                                                  

 そして今回の第9号議案は、「関税が即時撤廃となるものや、時間をかけて関税削減、輸入拡大となるものがあ」るとのべ、事実上国会決議が遵守されていないこと、国会決議違反であることを認めています。また「地域への長期にわたる影響が懸念される」とのべ、また知事も議会答弁で、零細な産地が多い県内の中山間地については「TPP影響を大きく受け、人口減少に拍車が掛かり、地域の維持すらできなくなる可能性も否定できない」と危機感を強調されました。TPP協定が国会決議に違反することが明らかになったいま、そして国民の不安や懸念を払拭する上でも、国会で批准しないことこそ唯一とるべき道であります。

 国会決議の遵守を求める決議を行った県議会として、その責任を果たし、県民への約束を守ること、そして賛同した議員、政治家として、誠実に政治姿勢を貫かれることを強く願うものであります。

 以上、第8号議案に賛成、第9号議案に反対する討論とし、ご賛同を心からお願いをします。