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- 2015年12月28日
- 意見書・請願
- 2015年12月議会 教育予算の削減を行わず充実を求める意見書への賛成討論 吉良富彦県議(2015.12.25)
私は、日本共産党を代表し、議発第7号「教育予算の削減を行わず充実を求める意見書」議案に賛成の立場から討論を行います。
OECDが11月24日に公表した調査結果によると日本は、2012年の小学校から大学までの教育機関への公的支出がGDP比で3.5%にとどまり、OECD加盟国平均の4.7%より1.2ポイントも少なく6年連続で32カ国中最下位となっています。公的支出が少ないため、大学など高等教育への家計支出はOECD平均の2倍以上にものぼっています。
OECD加盟国では半数の国で大学の学費が無償で、ほとんどの国が返済しなくていい給付制の奨学金制度を設けています。高い学費でありながら給付制奨学金がないのは日本だけです。そのため、学生の過半数が「借金」である貸与制の奨学金を借りざるを得えなくなっています。貸与制奨学金の多くは有利子で、卒業と同時に平均的なケースで300万円、多い場合には1,000万円もの借金を負わされることになります。多くの学生がアルバイトに頼らざるを得ず、違法・無法な働き方を強いる「ブラックバイト」から抜け出せない学生も少なくありません。
国立大学の運営費交付金は、法人化以降の12年間で1,470 億円、11.8%も削減され、研究環境の劣化に拍車をかけています。しかし、財務省は「運営費交付金の削減を通じた財政への貢献」を求め、「授業料の引き上げについても一定の議論が必要」「民間資金の導入などを進め、今よりも国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要」として、今後15 年間、交付金を毎年1%削減することで、40万円もの授業料引き上げや産学連携などによる毎年1.6%の自己収入増を求めています。産学連携を進めることは、本来の大学教育・研究をゆがめ、軍産学連携へとつながる危険性があります。そもそも産学連携による収入増には限界があり、交付金削減は授業料の大幅引き上げを招きかねません。現在でも高すぎる学費のため、先に述べたように大学生の2 人に1 人が奨学金という名のローンに頼らざるを得ず、その返済に苦しんでいます。高等教育における私費負担が 65.7%と、OECD 平均 30.3%の2倍以上と異常に高い日本の実態について、OECD のシュライヒャー教育・スキル局長は「日本では大学教育への家庭の負担が大きい。米、英などのように奨学金を活用するなど負担の軽減が課題だ」と改善を求めているにもかかわらず、さらに公的負担を削減し私費負担を高めようとする財務省の姿勢は許されるものではありません。自宅外通学の場合、高校入学から大学卒業まで約1,485万円もかかるとされ、学生をもつ家庭にとって教育費負担は限界に来ており、「0歳児から学資保険をかける」というぐらい、子を持つ親は将来の教育費負担に備え汲々としています。このままでは、子育ては成り立たず少子化を加速することになります。
小中学校の教職員定数では、児童生徒数減を単純に当てはめ、2024 年度までの 9 年間で 3 万 7,000 人を削減可能とし、来年度予算では 3,479人の削減を想定。さらに、小学校の46.5%,中学校の51.6%を占める12 学級未満の学校の統廃合を加速させることを求めています。これは、特別な支援を必要としている生徒が年々増加していることや、いじめ・校内暴力の深刻化、過去最高水準にある不登校、貧困と格差の拡大、学力の向上など新たな課題が山積した深刻な学校の実態に背を向ける暴論です。本県も含め各自治体が進めている30人学級など少人数学級推進や複式学級解消、そして、単純な統廃合で地域から学校を消滅させない努力を一顧だにしないような姿勢は改めるべきです。教職員定数削減で浮かせたいという人件費の国負担分は9年間で約800億円、それは米軍への思いやり予算の1年分1,900億円の半分にも満たない額ではありませんか。
国際調査で日本の教員が世界で最も多忙な状況に置かれていることは財務省も認めています。長時間労働は、OECD平均を300時間も上回る年間1,899時間。その内、初等教育の段階での授業にかかわる割合は39%。OECD平均が49%であることと比べれば、いかに授業以外の実務に日本の教員が追われているかがわかります。学級経営や児童会・生徒会等の各種の委員会活動、部活動指導、さらには進路指導や生徒指導など多岐にわたって児童・生徒の教育活動に携わっており、この解決のためには教員増が絶対条件であることは論を待ちません。さらに、国公立の小中学校の勤続15年の教員の給与は、OECD平均が増加傾向であるにもかかわらず、日本は6%も減っていることも問題です。
世界で最も多忙な日本の教員の状況を改善して、一人ひとりの子どもにゆきとどいた教育条件を保障するためには、OECD 平均より小学校で 6 人、中学校で 9 人多い 1 学級当たりの生徒数を減らすことが重要です。中央教育審議会や国立大学協会、学長など大学関係者、校長やPTAなど学校関係者からも教職員数削減への反対や危惧の声が上がっています。これら国民的世論に応え、安倍首相は衆議院で「35 人学級の実現に向けて鋭意努力していきたい」と答弁なさっています。であるならば、不安定な加配措置ではなく、標準法の抜本的改正にもとづいた 35 人学級の確実な前進を今こそ行うべきです。
財務省は今年3月までの1年間で、企業が得た利益を社内にためた「内部留保」が前の年に比べて26兆円増え過去最高の354兆円に膨らんだと発表し、大企業が儲けに儲けていることを認めています。にもかかわらず来年度予算大綱では、大儲けの大企業の法人税を増税するのではなく前倒しして減税を実施しようと言い、一方、正社員が減って非正規雇用が増加し、年収200万円以下の「働く貧困層」が1,100万人を超え、実質賃金は2年以上もマイナスが続き家計が苦しくなっている庶民に対しては前倒しの減税どころか、消費税の増税を課すなど、国民生活を支える社会保障や、医療、福祉、そして教育などへの配分抑制の姿勢は、容認できるものではありません。
文部科学省の「地方教育費調査」、中間報告によると、2013年(平成25年)度に都道府県や市町村が学校教育などのため支出した地方教育費が4年連続で減少しています。本県も少人数学級や独自の教員加配を行っていますが、おのずと限界があります。地方自治体のこれら努力に対して真に役立つ交付金を増やすべきです。
教育への公的支出をOECD平均並みの4.7%にすれば国と地方で約6兆円の増額になります。計画的に引き上げることで、私費負担を大幅に減らし、ゆきとどいた教育を実現できます。憲法は、第26条で、国民に「ひとしく教育を受ける権利」を定めています。教育の機会均等を保障し、経済的な理由で教育を受ける権利が奪われないよう、国際水準並みに教育費を充実するよう求めるものです。
以上、同僚議員のご賛同をお願いし議発第7号議案に賛成する私の討論といたします。