-
- 2015年12月28日
- 意見書・請願
- 2015年12月議会 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の合意内容についての情報公開と徹底的な検証及び議論を求める意見書への賛成討論、および、環太平洋経済連携(TPP)協定交渉の大筋合意後の対応に対する意見書への反対討論 米田稔県議(2015.12.25)
私は、日本共産党を代表して、只今議題となりました議発第5号「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の合意内容についての情報公開と徹底的な検証及び議論を求める意見書」議案に賛成し、議発第6号「環太平洋経済連携(TPP)協定交渉の大筋合意後の対応に対する意見書」議案に反対する立場から、討論を行います。
国会決議は、「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目を関税交渉の除外又は再協議の対象とする」、すなわち重要5項目は関税の撤廃・削減の対象としない、交渉を先送りする、そして聖域を守れないときは交渉撤退も辞さないと極めて明快です。
いま公表されている大筋合意では、農産物重要5項目、586品目のうち174品目、約30%で関税が撤廃されます。また関税が残った品目でも、コメの特別輸入枠の新設、牛肉・豚肉で関税の大幅削減です。そして、農林水産物全品目の関税撤廃率は81%となり、かつてない規模での総自由化が推し進められようとしています。大筋合意が、国会決議に違反していることは余りにも明らかではありませんか。安倍首相は、合意後も「関税撤廃の例外はしっかり確保できた」「国益にかなう最善の結果」と強調していますが、そのような弁明が到底通用するものではありません。日本農業新聞が行った農政モニター調査、10月28日付けで、回答者の69%が「国会決議違反」としているのは当然であります。
さらに、発効7年後にはアメリカなどから要請があれば、関税率や緊急輸入制限について再協議に応ずる取り決めが含まれています。今回は残ったコメなど重要農産物の関税についても撤廃が改めて迫られるのは必至です。安倍政権は日本農業をアメリカなどに限りなく売り渡す道に踏み込んだものと言わなければなりません。
昨日、政府がTPPの効果、影響への試算を発表しましたが、東大大学院の鈴木宣弘教授は「大筋合意」によってコメでは約1,100億円、牛肉3,262億円、豚肉4,141億円、乳製品約960億円あわせて1兆円を超える被害が農業分野で出ると試算しています。農水省自身も、多くの品目で「当面影響は限定的」としながらも、「長期的には価格下落が懸念される」と分析、公表をしています。先の農政モニター調査でも、合意内容が農業経営の影響について「悪化する」「やや悪化する」との回答が73%に上るなど日本農業に打撃を与えることは明らかです。
先日発表された「農林業センサス」では、全国の農業就業人口はこの間19.8%、516万人減少、30年前と比べ60%減少し209万人、高知県ではこの間20.6%、約7千人減少、30年前より57%減少し6万4千人から2万7千人となっています。これは、我が国の農業が長年にわたる歴代自民党政治のもと、食料の外国依存、農産物輸入自由化によって農業が成り立たなくされ、高齢化や担い手の減少が限界にまで進み、崩壊の危機が広がっていることを示しています。TPPは、それに決定的な追い打ちとなるでしょう。それは単に農家にとどまらず、農村社会の崩壊、国土の荒廃、国民の安全・安心を脅かし、生存基盤を根底から脅かすものとならざるを得ません。「地方創生」と県の産業振興の営みとも逆行するものであります。
次に、非関税障壁、共通の基準・ルールの分野について、ISDS条項では、政府は濫訴防止措置が盛り込まれたと強調をしています。しかし、政府が発表した「総合的なTPP関連政策大綱」の参考資料は、「協定発効後には…更なる訴訟を招く可能性がある」とも述べています。
「食の安全」の問題でも、輸入食品の検査率が8.8%へと低下の一途でさらにさらに下がるのではないか、また日米並行交渉の交換文書によると、収穫後の使用する農薬や、日本で認められていない食品添加物の承認に日本政府が誠実に取り組むことなどで一致したとされています。
まさに「食の安全・安心の基準が損なわれない」「国の主権を損なうISDS条項は合意しない」との国会決議に基づく検証が求められているのであります。
ニュージーランド政府が合意1か月後の11月5日には、1千ページに及ぶ膨大な協定文書案と関連文書を公表をしています。一方、先日18日の参議院環境委員会での川田龍平議員の質問に、環境大臣も、厚生労働副大臣も国会答弁で、TPP全文を読んでいないという驚くべき実態も明らかになりました。
いま必要なことは、議発第5号議案が示すようにTPP大筋合意と協定案の全体、交渉経過などの情報を全面的に公開し、国会、国民の中で徹底的に議論を行うこと、そして国会決議に違反していないか、日本の経済と国民の暮らしにどう影響するかを検証することではありませんか。
次に、議発第6号議案に同意できない理由の一つは、大筋合意があたかも交渉決着かのように述べており、全くのごまかしと言わなければなりません。今後協定書の完成と署名、各国の批准などが必要です。アメリカ議会では「大筋合意」への不満が噴出、カナダでは合意直後の総選挙でTPPを批判してきた野党が政権につくなど、また何より各国国民の根強い反対世論、日本国内での怒りと抗議、検証を求める声が広がっており、まさにこれからが正念場です。
第2は、決着を前提にした「総合的なTPP関連政策大綱」の強化、実施を求めており、TPP反対の国民運動に対する懐柔であり、参議院選挙対策と言わざるを得ません。「農業者の将来への不安を払拭する対策は」、TPPからの撤退こそ最良の対策です。輸入「自由化」による打撃を「国内対策」で防げないことは、20年以上前の牛肉・オレンジの「自由化」でも、コメの市場開放でもすでに経験済みではありませんか。そして大多数の家族経営が成り立つ方向への農政の転換です。価格保障・所得補償の抜本的な充実、新規就農者の確保・育成などに、政府が本腰入れて取り組むことです。
第3は、当議会決議は、国会決議の遵守、また交渉撤退を求めたものですが、安倍政権によって県議会決議が踏みにじられたことは明らかであります。国会決議違反を追認、容認する第6号議案は到底認められるものではありません。議会決議の重みと、県民との約束を誠実に実行するかどうか、いま高知県議会と議員一人ひとりが問われていることを訴えるものであります。
以上議発第5号議案に賛成、議発第6号議案に反対の討論といたします。