議会報告

  • 2015年10月15日
    2015年9月議会 国会議決違反のTPP交渉に抗議し、直ちに中止することを求める意見書への賛成討論 塚地佐智県議(2015.10.15)

私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっています議発第10号国会議決違反のTPP交渉に抗議し、直ちに中止することを求める意見書議案に賛成の立場から討論を行います。   

米国・アトランタで開催されたTPP交渉会合は、10月5日午前から開催された閣僚全体会議をへて「大筋合意に達した」と発表がされました。

安倍政権は、「早期妥結」を最優先にしてアメリカへの譲歩を繰り返し、国会決議や自民党外交経済連携調査会決議も無視した「亡国的」な合意に踏み切りました。いま、農林漁業、医療関係者から、県内でも落胆の声があがり、怒りをこめて抗議することが本県議会に求められています。

農林水産物の重要5品目は、関税交渉の除外又は再協議の対象とするとした約束は完全に無視されました。米はミニマムアクセスの他に米国とオーストラリア向けに7万トン強の追加輸入枠を設定する。麦も輸入枠を拡大するとともに、関税にあたるマークアップを45%も削減します。牛肉は自民党自身が「これ以上は譲れないレッドライン」と公言していた日豪EPAでの最終関税19.5%~23.5%を大幅に下回る9%まで削減とします。豚肉も従価税4.3%を10年間で廃止するとともに,安価品の国境措置となってきた従量税1キロあたり482円を50円まで引き下げます。乳製品でも特別輸入枠を設定して拡大をします。まさに約束違反のオンパレードといえます。重要5品目以外にも、農業分野834品目のうち、オレンジやハム、はちみつなど400品目ほどの関税撤廃、合板・製材など林産品、あじ、さば、さけ、ます、ぶり、するめいか等の水産物も関税撤廃されます。とめどない譲歩を差し出す 一方、唯一のメリットといわれるアメリカの自動車関税撤廃は25年も先送りをされています。

「物品以外の市場アクセス」やルール分野も、国民生活への懸念から、国会や自民党の決議は「食の安全・安心の基準が損なわれない」「国民皆保険,公的薬価制度の仕組みを改悪しない」「国の主権を損なうようなISDS条項は合意しない」「政府調達及びかんぽ,ゆうちょ,共済等の金融サービス等のあり方についてはわが国の特性を踏まえること」という内容が盛られていました。しかし、大筋合意の直後に発表された政府資料は、これらにつて一般的・抽象的に「日本は制度変更を迫られない」「安全が脅かされるようなことはない」と言うだけで、なんの保障もないばかりか、重大な懸念が存在していることも明らかになっています。

「日本の食品の安全が脅かされるようなことはない」と説明されていますが、TPP協定の当該章は「WTO・SPS協定の内容を上回る規定」としかなっておらず、懸念は明確に存在をしています。またISDSの「濫訴抑制」として、仲裁廷への申し立てと言う規定が入っていることを強調していますが、なんら歯止めにはなりません。ISDSという制度の出発となった「国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約」の第25条は「両紛争当事者が仲裁廷に付託することに同意した場合に管轄となる」旨が定められているからです。これではISDS濫訴が「抑制」できないことは明らかです。「政府調達」に関しては、日本の政府調達がどうなるのか、その開放基準額がどうなるのか、中央政府だけでなく地方自治体に及ぶのかどうかといった重大な懸念に何ら答えられていません。

また、政府文書は「サービス貿易」や「金融サービス」の市場開放に対して,公的医療保険を含む社会事業サービスなどを除外しているとして、「国民皆保険,公的薬価制度の仕組みの改悪」への懸念は無用と説明をしています。しかし、日米間の「医薬品及び医療機器に関する手続きの透明性・公正性に関する附属書」で、公的保険への医薬品などへの公定価格について、審議会等での外国企業の意見反映の機会の保証やそれへの配慮、決定事項へ異議申立制度の設立が米国から提案されていることが暴露をされています。薬価が多国籍企業にコントロールをされれば、公的医療が縮小されることは明白となります。

「大筋合意」をうけて、オバマ米大統領は、「アメリカの価値観を反映した協定の交渉を完了した」と宣言したように、TPPは、地域経済・雇用、農業、医療・保険、食品安全、知的財産権など国民の生活・営業に密接にかかわる分野で、日本の国民の利益と経済主権をアメリカや多国籍企業に売り渡すものであり、断じて容認できるものではありません。政府が宣伝する経済効果にも保証はありません。経産省が2010年度発表した「海外事業活動基本調査」によれば,多国籍企業が現地法人から受け取った対外投資収益5兆円のうち96%をわずか3千社余りの資本金10億円以上の大企業が占めています。その利益の「使途」として「雇用関係支出」をあげたのはわずか7%で、「株主配当」が17%、「分からない」が52%となっています。使途が分からない利益は貯め込むしかなく、大企業の内部留保が300兆円,GDPの6割規模にまで肥大化をしています。多国籍企業が利益をあげても,国民、労働者には百害あって一利なし、これがTPPの本質といえます。

広範囲に重大な影響を国民経済にもたらす条約であるにもかかわらず、日本政府の諸提案も、交渉相手国からの要求も、いっさい明らかにせず、「大筋合意」をした。これは自民党が自ら賛成をした「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること」と明記した2013年の国会決議をも踏みにじる国民無視の暴走といわなくてはなりません。

安倍政権は「大筋合意」をしましたが、TPP交渉が決着したわけではありません。「大筋合意」のテキストは存在せず、細部をつめた協定文書作成はこれからです。そして協定文書の各国代表の調印、さらに各国の批准、国会承認という段階が必要です。現時点でも、国会決議違反は明白であり、ただちに交渉を中止することは当然のここと考えます。また、「大筋合意」を口実とした混合医療の拡大、農協解体などいっそうの「規制緩和」、日米協議の内容だけが先行実施される危険性もあります。この点でも、TPP作業を撤退し、中止することが強く求められます。かつて自民党のみなさんが掲げられたポスターには、「ウソをつかない」「TPP断固反対」「ぶれない」「日本を耕す」と記されてありましたし、本議会は、繰り返しTPP反対、交渉からの撤退、国会決議遵守の意見書を可決してきましたが、それが踏みにじられた今、「大筋合意」に抗議し、交渉中止を求める意見書を決議することは県議会の県民に対する責任だと考えます。第一次産業に光をあてた産業振興計画をはじめとした県と県民の努力、県民の暮らしと地域を守るために、本意見書への賛同を心よりお願いをして、私の賛成討論といたします。