議会報告

  • 2015年10月15日
    2015年9月議会 マイナンバー制度の来年1月からの運用中止と再検討を求める意見書への賛成討論 中根佐知県議(2015.10.15)

私は日本共産党を代表して、ただいま議題となりました議発第9号、「マイナンバー制度の来年1月からの運用中止と再検討を求める意見書案」に賛成の立場で討論を行います。

すべての国民に番号をつけ、税や社会保障の情報を国が一括管理する共通番号制度、マイナンバー制度が、10月から国民への通知、平成28年1月からの一部運用が開始されることになっています。安倍内閣は本格運用もしていないのに、2018年から番号利用範囲を利用者の同意を前提に、預金口座へ適用を拡大するほか、特定健診や予防接種の管理にも使えるように拡大する改訂法を国会で成立させたのに続き、10月5日からの通知作業に着手しました。政府はより公平な税制や社会保障制度の実現を図るとして、さらなる拡大を検討し、預金口座は2021年をめどに義務化を目指し、健康情報についても健康保険証の役割を付加して病歴の把握まで視野に入れようとしています。次々に対象を広げていけば、政府は番号一つで国民の究極のプライバシーを把握できるようになっていくことでしょう。

政府の言うメリットの公的年金の申請の際の手間が省けるというようなことは、多くの人にとっては、年一度あるかないかのものです。「不正受給や脱税の対応に使える」という意見もありますが、その対応とは比較にならないほどのリスクと経費の大きさから考えれば、むしろ他人による番号の不正利用や個人の情報の大量流出によってもたらされる被害の方がはるかに深刻です。

2013年5月に成立したマイナンバー法の附則第6条では、施行後3年を目途に国民の理解を得つつ利用範囲を見直すものと規定されており、検討の前倒しは法の附則や当初の約束を反故にするものです。また、個人情報は本来政府が勝手に管理していいものではありません。プライバシーの権利は、憲法第13条に明記された幸福追求権に含まれます。自分に関する個人情報は、漏洩を防ぐだけではなく、自分の情報の開示や訂正の権利も含めてその運命を自分で決め、コントロールする権利があるという考え方です。この憲法に照らせば、プライバシー権を個人から奪う制度設計は民主主義的な国のあり方として本来許容できないものなのです。この制度は、中心的システム構築に約3,000億円、ランニングコストとして年間約300億円程度かかると言われていますが、これらの費用がこの程度に留まるかさえも定かではありません。日本経済新聞は「マイナンバー市場、最大3兆円 システムやカードに特需」とのタイトルで「虎視眈々と準備を進めている」「業界にとっては大きな特需となる見通し」と報道し、すでに関連企業と厚生労働省の職員の汚職事件も起きています。巨大な「ITハコモノ」となる可能性が極めて高いシステムとなっているのです。

 

国民の中には、情報流出への大きな不安があります。

今年5月、日本年金機構において約125万件もの大量の個人情報流出が起こりました。マイナンバー制度でも同様の情報流出が起こらない保証はありません。政府の情報管理への不安が強まる中、当初予定した基礎年金番号とマイナンバーの連結は、最長1年5ヶ月延期しました。しかし、年金機構以外の公的機関などで万全の対策が作られている状況とはいえませんし、マイナンバー制度のように、より多くの情報が集積されれば、サイバー攻撃などのリスクも高まり、もしも流出すれば、国民に与える被害の大きさと深刻さは計り知れません。
 現在、地方自治体は、システム変更や各種準備、予算や人員、制度の理解不足による周知など多くの問題を抱えて膨大な業務に携わっています。9月に共同通信社が行ったマイナンバー制度にかんする全国自治体調査では、94.8%にあたる1,651市町村が回答しました。それによると、国からの状況提供が不十分とした自治体が600と最も多く、セキュリティー対策に必要な予算不足が568、専門知識を持つスタッフを確保できないが454、事務作業が煩雑でセキュリティー対策に手が回らないが373、その他181自治体と、複数回答を可とする結果でしたが、こういう状況になっています。高知県内でも、33自治体が回答し、セキュリティー対策の準備状況に21自治体が「やや不安」、3自治体が「大いに不安」、「問題ない」と答えた自治体はたった7自治体にとどまり、県内でも安全対策を不安視する声が大きいことが読み取れる結果となっています。国の前のめりの制度設定によって、国民との最前線で安全対策を迫られる自治体は、対応に苦慮しています。こんな中での実施は、一旦中止して、丁寧な対応をとるべきだと考えます。

また、マイナンバー制度では、従業員の給与から税や社会保障の天引きを行うすべての事業所で個人番号を使うことが義務づけられていることから、中小零細な事業所では、システム変更や整備、情報管理の費用など多大な負担となることなどの問題点が明らかとなってきています。「マイナンバー増税」という言葉も出るほど、事業者の負担は重くなっています。この制度導入で、従業員を雇う事業主は「個人番号関係事務実施者」として運用の義務を負うことになります。マイナンバーが目的外使用や外部流出しないように今まで以上の管理が必要になり、ウィルス感染や不正侵入の対策などセキュリティー強化やマイナンバーに対応したソフトの切り替えが必要になります。そのための経費は、国の試算によると従業員数「5人以下」「6~20人」で40万円、「21~50人」で66万円、「51~100人」で99万円です。その他、マイナンバーが流出した場合の損害賠償に対応するための保険加入など経費はかさみます。さらには、重い罰則があり、従業員が故意に流失した場合も従業員だけでなく事業主も「両罰規定」が設けられています。その罰則は重いもので「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」などです。罰則のつく厳重管理に不安や戸惑いを持ちながら、対応はこれからという事業所も多いのが実態です。

住所外受け取りも期限の9月25日時点で26万5千件ちかくあり、申請受付を継続することになりました。また、5人に1人という認知症対策も深刻で、適用拡大により、今後これなしには生活できないように半ば強制される恐れもあるマイナンバーカード、現在は任意発行の管理をどうするのか。超高齢化社会を向かえ、まったく真剣な検討がなされておらず、正確に届け、対応できるのかという点でも、不安が広がっています。

 すでに、茨城県取手市では、住民票を発行する自動交付期の設定ミスで、謝ってマイナンバーを記載した住民票69世帯100人分が発行され、市は、再発防止に努めるというコメントが出されました。

うっかりでは済まされない事態にならないよう、駆け込みではなく、十分時間をかけて制度の対応に当たるべきです。

よって、国においては、マイナンバー制度の来年1月からの運用を一旦中止し、再検討することを強く求め、私の賛成討論といたします。