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- 2015年10月09日
- 議会(質問・討論)
- 2015年9月議会 予算委員会での吉良富彦県議の質問と答弁(2015.10.06)
【質問項目】
1、ビキニ被災船員・遺族の救済
2、学校現場の多忙化の解消
【ビキニ被災船員・遺族の救済】
●吉良県議
厚労省が60年間秘匿していたビキニ水爆実験に関する文書が、本県の太平洋核被災支援センターの取り組みによって開示され1年たちました。
1954年3月1日から2か月半、ビキニ環礁でアメリカは水爆実験を6回にわたって強行し、第5福竜丸を始めとする日本漁船が被災しました。広島・長崎に続く第3の被爆は、国民に衝撃を与え、原水爆禁止を求める声が全国に広がり、今に続く世界的な原水爆禁止運動を生み出しました。アメリカはすぐさま日本政府に圧力をかけ、補償金でも慰謝料でもない、実質「見舞金」のようなわずか7億2千万円、そして未来永劫アメリカの法的責任を免除するとの文書交換をして政治決着を図り、日米両政府の戦後最大級の国家機密となった事件です。両政府の姿勢はマグロ漁業界を縛ってしまい、漁船員には「いうたらいかん」「問題にせられん」という圧力となり、被災者自身が「告発」を自主規制してきたという特異な歴史を持つ事件となりました。
被災船約500隻のほぼ3分の1、117隻、2,300名と推測される高知県の漁船員たちは、その後、次々と元乗組員が癌など若くして亡くなる中、自らも長く続く体調不良や病を患っても、家族にすら被爆の体験を話すことは無かったと、遺族の方たちは話されています。被爆から61年、被災者が高齢となるなか、今回開示された被災船や被災者の被爆状況を記した文書で明らかになった事実をもとに、被災船員と遺族の皆さんの救済に、何とか結び付けたいとの思いで、以下質問をいたします。
まず、文書を秘匿していた国との関係についてです。
昨年、知事に対し私は、開示文書をもとに「高知県関係の船の被害、乗組員の状態、特に、危険区域内にいて高濃度の汚染が心配される船や乗組員の現状把握に努め、県の調査記録として整備を」図ることを求めました。知事は「まず国に対して新たな資料に基づく科学的な検証、これを行うべきではないかということを強く求めていかなければならないのではないか」と、述べられました。そこでお聞きします。
国に対して、県の立場をどのように伝え強く求めたのか、その経緯をお聞きかせ下さい。
■健康政策部長
昨年の9月議会の後、支援を進められておられる太平洋核被災支援センターの山下事務局長とお会いしまして、新たに発見された資料のことなど詳細な情報をいただきました。そして、12月に、厚生労働省健康局総務課長にお会いし、提言を行いました。
提言では、本県には、当該水域で操業していた漁船及び乗組員が多数いたことを説明したうえで、新たな資料に関して科学的検証を行い、被ばくによる元乗組員などへの健康影響について国としての公式見解を取りまとめること、また、健康影響が認められる場合は、適切な救済支援措置を早急に実施することを強く要望したところです。
●吉良県議
すぐさまの対応、本当に心より敬意を表したいと思います。
実はですね、昨年の開示にあたって厚労省は、被爆当時、病院で検査を受けたマグロ船「第13光栄丸」、それから貨物船「神通川丸」の被災船員の血液検査や医師の所見などは黒塗りにして文書そのものが外されたものを提示しました。それらは被爆の実相が把握されるもので、救済を求める上で重要な資料となります。開示請求した太平洋核被災支援センターに、開示するとの連絡があった当初はその部分も開示すると意向を示していたものでありますが、それが、調査に当たっていた課長補佐の突然の交代とともに外されたのです。段ここに至ってなお、全面開示に難色を示す姿勢に非常な疑問を感じていました。
また、厚労省は被災を過少評価させる意図的な文書を、開示請求者には一切見せず、取材記者にだけ配布するという、不適切と思われる対応をしています。その文書には、第5福竜丸の推定被爆をわずか1.68ミリシーベルトと示したり、日米で運営している広島の放射線影響研究所が線量評価をするため用い国際的にも認められている染色体異常と歯による線量推定方法を、推定困難と記すなど、極めて問題がある内容でした。
ですから、被災を過小評価して、再び被災者が切り捨てられるのではないかとの懸念を持たされていたのですが、本県のその強い要請が効を奏したのでしょう。厚労省は本年1月、だから12月ですからすぐですね、翌月、ビキニに関する被爆状況を評価するため「研究班」を立ち上げてくださいました。
現在「研究班」はどのような構成で、どのような分析研究を行っているのか、現時点での到達点をお聞きいたします。
■健康政策部長
研究班は、第五福竜丸の船員のフォローアップを行う独立行政法人放射線医学総合研究所理事長をはじめとする専門的知見を持つ有識者4人により構成されています。
昨年度は、厚生労働省が開示した資料だけではなく、当時の資料の収集、ビキニの実験があった60年前当時ということですけれども、当時の資料の収集・整理を行い、延べ201名分の船具の血液検査記録及び船舶名などを整理し、今後の分析に活用できるようたしたこと、当時の被ばく線量の評価については、更なる調査・分析が必要であることが報告をされています。ただ、これは26年度ですから実質2ケ月間でここまでやったということでございます。
今年度ですけれども、被ばく状況の評価など、引き続き研究を進めていただけるものと考えています。
●吉良県議
太平洋核被災支援センターの山下正寿事務局長らは、開示するといいながら黒塗りとした非開示部分の不十分さを克服するため、開示から1か月たった昨年10月下旬、参議院で問題にして、先に述べたマグロ船「第13光栄丸」、貨物船「神通川丸」の医学的分析部分を含む、合計130ページ分を追加開示させています。静岡「ビキニ研究会」代表の聞間元医師がその追加開示部分を分析し、元乗組員の皆さんが、船員保険適用につながる2つの事実を明らかにしています。
貨物船「神通川丸」では乗組員49名中白血球5,000台の要注意者が11名。そのうち6名が、弥彦丸乗組員で2度の血球検査で白血球減少症の疑いで入院した6名とともに精査を受け、医療費と傷病手当金が船員保険から給付されていることをつかみ、報告されています。
さらに、昭和29年8月3日付、被災から1年5ケ月後の、厚生省保険局船員保険課長から兵庫県民生部保険課長あての回答文書において、「白血球の減少が疾病給付の対象となり得るものであるときは、その疾状がビキニ水爆実験により生じたものであっても、保険事故として取り扱うものとする」と明示されていることを確認しました。この記録は被災船の元乗組員に船員保険を適用して、医療費をはじめとする療養給付、さらには被災関連疾患、当面は各種のがんですが、それで死亡した乗組員の遺族年金の給付申請の根拠になる大変重要な文書と言えます。
以上のように、今回の追加開示文書によって、第五福竜丸以外漁船のみならず貨物船などの乗組員も船員保険加入者であったことから、被ばく関連疾患の船員保険再適用、そして遺族年金適用も含む救済に根拠が与えられたことになると考えております。そして、当時の厚生省から出された通達をよりどころに、ビキニ環礁での水爆実験による被災船の元乗組員や遺族が、今後、申請していくことが可能であろうと、聞間医師は述べています。
そしてさらに、もう一つ、船員保険適用にかかわる厚労省の文書が明らかになりました。それは 厚労省労働基準局労災補償部補償課長名で出された「胃がん・食道がん・結腸がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表~労災請求を受け、疫学調査報告を分析・検討して報告書を取りまとめ~」という、平成24年、これは新しくて今から3年前の9月28日に出された文書です。
厚生労働省の「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」がまとめたもので、当面の労災補償の考え方として、放射線業務従事者に発症した胃がん・食道がん・結腸がんは、被ばく線量が100ミリシーベルト以上から放射線被ばくとがん発症との関連がうかがわれ、被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まること。そして潜伏期間として、放射線被ばくからがん発症までの期間が、少なくとも5年以上であること、として、判断に当たっては上述の本報告書取りまとめにあたった検討会が個別事業ごとに検討するとしています。そこで、健康政策部長にお聞きします。
本医学的知見に関する労働基準局からの文書は、ビキニ被災船員の労災補償に関しても適用されるものであると考えるものですが、どうか、お聞きします。
■健康政策部長
労災の適用については、県は、判断できる立場ではありませんが、放射線被ばくを受けた労働者について、科学的知見を踏えて、被ばく線量と潜伏期間、リスクファクターの3項目を総合的に判断し、認定審査会で個別事例ごとに判断されると聞いています。
●吉良県議
きわめてこれは可能性のある文書だと私たちは思っています。これは労働局関係になりますので、残念ながら県の部局にないんで、例えば神奈川だとか静岡を含めまして、各県もこのことについては県の担当としては知らないという部分が随分と多かったと思います。しかしいまこうやって、労働局管轄であっても明らかになったわけですから、これを私たちは非常に重視しているということです。
太平洋核被災支援センターが、開示文書から高知県関係をピックアップした表があります。これがその一覧表なんですけども。染色体異常頻度関係式から推定した被爆物理線量推定によると、爆心地から760㎞の地点で被爆した第5海福丸、これは高知船籍ですけれども、そのAさん、142.2ミリシーベルト、被爆距離1,200キロの第7大丸のBさん、これは176.4ミリシーベルト、そして同じくその第7大丸のCさん、159.6ミリシーベルトと、ピックアップした高知県関係乗組員の9人中4人が先ほどの厚労省検討会の指摘する100ミリシーベルトを大きく超える被ばく線量であったと推定されています。もちろん100ミリシーベルト以下の被ばく線量、低線量であっても発症します。
そこで大事になるのは、追跡調査となります。厚労省がいう被爆時点から5年以上たって発症したということが証明できる診断書等、確認作業、行動をとることができるかどうか。高齢になったご本人や遺族の方々では一般的には大変なことだと思います。先の聞間医師は、比較的低線量の被ばくの影響は漁船員が成人であるために30年から40年たたないとはっきりしないとおっしゃっています。そうなると、やはり、その後の元乗組員の健康調査、がんをはじめとした罹患調査、死亡調査が欠かせないものとなってきます。旧社会保険庁に保管されている船員保険被保険者記録を調べれば、該当被災船の船員を特定でき、物故船員の死亡診断書の調査も可能となってきますが、ただしこれは内閣府の許可が必要となってまいります。
本県ビキニ被災船員の船員保険の適用、休業・医療補償、遺族年金取得の可能性がでてきたものと考えるものですが、被災漁船員の皆さんや遺族の方々にとっては、もう、救済に関しては最後のチャンスになるかもしれません。漁船員の皆さんも高齢となり残された時間が潤沢にあるという状況ではありません。
国の対応はもちろん大事ですが、国待ちにならず、ここはですね、積極的に県としてもう一歩踏み込みで、公共事業体の県としての立場を生かしてですね、労働局など関係機関に積極的に働きかけができないものか、お聞きをしたいと思います。
■健康政策部長
元乗組員の方々の年金や労災の制度ですけども、被災から60年の間に何度も変更がなされており、相談窓口としては、労働局や全国健康保険協会、年金事務所などの国の関係機関が想定されます。発症した時期により対応する機関が違ってくるので、元乗組員やご家族の方々は、相談先を選ぶことにご苦労されると思います。
そのため、それぞれの関係機関に対して情報提供を行い、相談窓口の職員がビキニ被災に関する経過を知ったうえで対応できるよう働きかけていきたいと考えています。
●吉良県議
ありがとうございます。お聞きになっている元乗組員の方たちは、本当に期待をして県の動向を見守っていると思います。
太平洋核被災支援センターは、昨年、2014年4月から広島大学原爆放射線医科学研究所・星正治名誉教授をリーダーに、大滝慈教授、放射線影響評価研究、統計分析、そして田中公男博士、この方は環境科学技術研究所元研究部長、臨床細胞遺伝学、血液分析が専門です。むそして、豊田新教授、岡山理科大の応用物理学、これは歯の分析を担当しています。そして高橋博子講師、広島平和研究所でアメリカの公文書分析をおこないました。そして、太平洋核被災支援センター山下正寿事務局長、かれは被災船員を調査していくと、その陣容で調査分析にこの間取り組んでいます。
被災船員19人、これは76~89歳の血液調査で、異常を持つ細胞の出現頻度が平均3.34%、一般男性同じく75~84歳、9人と比較をすると、その人たちは2.45%ですので、それよりは0.85ポイント高くなっています。最大値は2倍以上で5.17%でした。安定型異常と二動原体染色体異常ともに異常頻度は対象群と比べて有意に高く、実験場により近い船の船員ほど異常頻度は高いことが確認されました。この結果は、加齢による染色体異常の増加を排除したうえでも、推定被ばく線量にして約90ミリシーベルト以上にあたり「明らかに有意差がみられる」と分析をなさっています。つまり、現時点でも血液検査によって被爆量推定ができるという事ですね。
そして歯の方はですね、高知県、宮城県の被災船員2名から提供されたものを分析しました。放射線が当たると歯のエナメル質の化学結合が切れて、被ばく量に応じてその損傷部分も多くなって、その「傷」が残り続けるわけです。高知の第5明賀丸の被災船員の歯の被ばく線量は、自然放射線・歯のレントゲン影響を差し引いて、319ミリシーベルト、これは広島原爆爆心地から1.6キロの被ばく線量に値し「普通の人ではありえない数値だ」と分析しています。
このように、血液と歯の検査によって、被ばく線量を推定し、労災補償適用の有力な資料とすることが可能となってきた、そういう技術を持つようになったと言えます。
被災者が顔を合わす地域の医師や歯科医師、保健士の皆さんに対して、これらのことを理解していただき、歯の提供など必要な措置が日ごろの接触の中で行われるよう、歯科医師会などに働きかけることが出来ないかのか、お聞きをいたします。
■健康政策部長
被ばく線量の推定に歯を用いる研究については、広島大学星名誉教授からお話をお聞きをしています。
歯科医師の方々に、この研究を知っていただき、元乗組員から申し出があった場合は、抜歯の際などに配慮いただけるように、県歯科医師会に対し、会員の皆様に情報提供いただくよう依頼をしていきます。
●吉良県議
ありがとうございます。死亡なさったときに、歯科医師でも、本人の意思がない限りそれを提供させることができない、だから、生存なさっているときに提供して頂かないとこれは資料として有効に活用できないということですので、ぜひ取り組みを進めていただきたいと思います。
さて、県は今年の3月16日、第1回健康相談会を室戸市で開催してくださいました。広島より鎌田七男・広島原爆被爆者援護事業団の理事長、そして先ほど健康政策部長からお話のありました星正治・広島大名誉教授、田中公夫・環境科学技術研究所前研究部長の3氏をお招きして、そしてその講演会には医療機関の関係者の参加も県は呼び掛けてくださっています。来る11月1日には、第2回「の健康相談会」を土佐清水市で、室戸の時と同様、その鎌田、星、田中の3氏を招き実施するとお聞きしています。
室戸での取り組みの概要、および、その経験をどう活かして、土佐清水での開催を準備なさっているのか、お聞かせください。
■健康政策部長
室戸市で開催した相談会では、午前中は講演会、午後から個別相談会を行いました。講演に参加した40名のうち、元乗組員とご家族は、14名でした。個別相談には6組8名の参加があり、ご高齢ながらも元乗組員の方が、5名参加されました。
相談会では、「海域で獲った魚を食べた。内部被ばくしていないか心配している」や「子どもの健康に影響しないか心配だ」といった、長年抱えていた不安な思いをお聞きをしました。
こうした不安な思いに対し、直接、専門家から説明をすることで、正しい情報を入手し、不安の軽減につながったと考えています。
土佐清水市で開催する相談会においては、日ごろの健診結果を持ってきていただき、健康の状態に沿った相談を受けられるようにしました。また、日曜日の開催とし、ご家族が参加しやすいよう配慮しました。
また、室戸市と同様、ご家族のみでの参加や日ごろから支援に当たられている医療機関や市町村にも参加を呼び掛け、健康相談会後にも継続した支援につながるようにしております。
●吉良県議
ありがとうございます。その取り組みが功を奏して、第1回の室戸での相談会の後に、室戸の船員組合から全面的に協力するという連絡が支援センターに入るなど、漁業関係者は県が動き始めたことに本当に大きな期待を寄せています。
2回目の開催地、土佐清水は、幡多高校生ゼミナールの活動フィールドです。30年前、1985年から始まった高校生たちの地道な聞き取り調査が、元乗組員を探し出し、そして重い口を開かせ、社会に問わせたのです。顧問の山下先生は次のように記しています。
「高校生たちは、高知の港を歩きはじめた。彼らは、よくノートをとった。一言も聞きもらすまいとする態度にうたれたように、漁民は語ってくれた。高校生だから、この巨大な事件に光をあてることができたのかもしれない。『放射能で死んだ者など、この町にはいない』、この厚い壁の後ろに、被災の事実を認めさせまいとする無言の圧力があった。『ビキニ事件は今も生きている。過去の出来事だけではない』。高校生たちの調査は一軒一軒ねばり強くつづけられた。一人一人の証言が、ビキニの海をよみがえらせた。光った海、立ち上がった雲、死の灰のこと──。そしてマグロ漁業のすさまじい労働の場面も記録化された。ビキニの海を語りながら、元乗組員らはマグロ漁民の誇りをとりもどしていった。そして、『二度とあんなばかげた実験で海をけがしちゃいかん』『被ばくしているなどとは考えとうない。しかし、昔の仲間が次々に倒れていく。自分の体もまともじゃない。不安だ』と声を出しはじめた」と記しています。
そんな中、重い放射能障害に苦しみ急死した自分たちと同年代だった室戸岬水産高校3年生、その当時です、谷脇正康さんの被爆の真相も突き止めています。1988年に書籍「ビキニの海は忘れない」を出版し、1990年には同名のドキュメンタリー映画もつくられています。
土佐清水の相談会に向けて、その当時一緒に活動した先生が、当時回った60件の名簿をもとに、一軒一軒いま個別に案内して回っているとお聞きもしています。また、黒潮町からは、明神水産の前会長が働きかけて、遺族の皆さんを連れて、その県の講演会、相談会に参加してくれるという情報も伝わってきています。
山下事務局長は、「やはり亡くなっている方が多く、生存している方も、寝たきりになってしまい、出てこられる人が少ない。でも、遺族の方の関心は非常に強い」と話されています。県実施の健康相談、講演会の案内文書を作成しているとお聞きしていますが、それに加え、新たな段階を迎えたいまこの局面をとらえて、支援センターが労災補償、遺族年金など救済含めた生活相談に乗ることを広めているとお聞きもしています。
今後、被災者救済の相談者がどこへ行き、どのようなことをしたらいいのか道筋がつかめる、わかるような情報を提供する取り組みが県としてもできないのか、お聞きをいたします。
■健康政策部長
先ほどもお答えしましたように、発症した時期により相談先が異なるため、元乗組員やご家族の方々は、相談先を選ぶことにご苦労されることと思います。
このため、県としてですね、県内の相談窓口についての情報提供を行っていきたいと考えております。
●吉良県議
具体的に本当に大変だろうと思います。もともと部局がないわけですから。しかし、健康の問題と言うのは健康政策部が担当でありますので、ぜひともよろしく対応していただきたいと思います。
アメリカ人研究者スティーブン・サイモンさんからビキニ被災船員の血液検査の希望があって、広島大調査チームも協力して、11月以後に神奈川・静岡・高知を中心に重要な被災8船、被災船員20人、そして一般男性20人の血液採収が支援センターで検討されています。厚労省の研究班でも、部長の答弁でありましたように、国際的な調査が取り組まれることになります。間違いなく、今後、大きく注目されることとなる本課題に対し、取り組みの先進として本県が引き続きリーダー的役割を果たすことが期待されます。
また、太平洋核被災支援センターでは、今までの血液・歯の検査記録、被災資料を整理して重点的な被災船員の第1次申請をする準備もすすめているとお聞きしております。県としてのバックアップがますます期待されるところです。
この機をとらえ、県として、健康政策部と水産振興部との連携を図り「太平洋核被災支援センター」や「日本かつお・まぐろ漁協」、各漁協や船員組合など関係団体・機関と協力し、広く情報を共有しながら救済を求めていくべきだと考えるものですが、お考えをお聞きします。
■健康政策部長
労災や船員保険などの制度の適用については、今後、国の研究班等による分析結果を踏まえ,それぞれの国の関係機関によって判断されると考えています。
県としては、相談が円滑に進むよう、また、窓口となる国の機関の職員が、ビキニ被災に関する経過を知ったうえで対応できるよう、連絡会を持つことを検討していきたいと考えています。
また、関係団体においては、操業した船舶の記録や乗組員名簿などの、有用な情報を持っている可能性があり、各団体を所管する関係部局とも連絡を取りながら、関係団体に対して協力を依頼していきます。
●吉良県議
この項の最後になりますけれども、先にも指摘したように、船員保険被保険者記録を調べるにも、内閣府の協力が必要だと言われております。引き続き、国への働きかけが大変大事になってまいります。
今後、国に対して、研究成果の速やかな報告を求めるなど、本県の被災した元乗組員の皆さん、遺族の皆さんの願いにこたえる取り組みを求めるものですが、知事のお考え、決意をお聞きしたいと思います。
■知事
元乗組員の方々はですね、大変ご苦労してこられたことと思います。
今年の1月にですね、厚労省の方において、研究班が設置をされたわけでありまして、現在様々な分析・検討が行われているわけであります。
こちらにつきましてはですね、まず第一にしっかりと研究をしていただいて分析をしていただければなと、そして出来る限りですね、早くその情報を提供していただくようにしていくことが、まず大事なのだろうなとそのように考えているところであります。
県としましてもですね、健康に対する不安の解消に引き続き取り組むこと、さらには国における相談窓口などの情報を整理して提供を行わさせていただくこと、また関係機関に対して真撃に対応していただくよう働きかけることなどですね、こういう形でのサポートをしっかりできるよう取り組んでまいらなければならんと考えているところです。
●吉良県議
開示された厚生省の記録を見るとですね、被災直後は、厚生省と医学者や科学者は広島・長崎の原爆被害とビキニ事件の被害を、放射線被害としては一体のものとして考えていた事がわかる記述があります。
ビキニ水爆実験で放射能被災を受けたことが明らかな第5福竜丸の乗組員さえ「被爆者手帳」を交付されていません。被爆認定をされない状態が今も続いているわけです。それは、ビキニ水爆による被災などなかったと被災漁船員が意図的政治的に消されてきたことによるものです。
今、私たちの国は福島原発の事故に対しても、このビキニ同様、もうなかったかの如く振舞っているのではないかと思われます。ビキニ事件をあいまいにせず、歴史事実として誠実に向き合い被爆の実相に迫り、被害者を救済することは、本県の漁船員の歴史、人生をとり戻すことにほかなりません。知事のバックアップを大いに期待したいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
【学校現場の多忙化の解消】
●吉良県議
7月27日、文科省は「学校現場における業務改善のためのガイドライン=子供と向き合う時間の確保を目指して=」を発表しました。
2014年11月、全国の公立小学校250校、中学校201校、合計451校を抽出して、在籍する全職種の教職員を対象とし調査したものです。文部科学省は3年前の2012年12月24日にも「平成23年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」を発表しています。その内容は、2011年度の教職員の病気休職者数が8,544人、そのうち精神疾患が5,274人となっています。病気休職および精神疾患における若干の減少があるものの、6年連続で精神疾患が病気休職者の60%を超えている「高止まり」状態は、まさに異常です。また、2011年度の新採教員で、条件付採用期間を経て正式採用とならなかった者が315人で、うち103人が精神疾患で退職しています。
子どもたちとふれあい、その成長にやりがいを感じている一人ひとりの教職員を支えるためには、第1に政府・文科省が教職員に対する管理統制を強めるのではなく、教職員が子どもたちの教育に専念できるその権利と自主的な権限の保障を内容とする条件整備をおこなうことが何よりも大切だと私は考えるものですが、今回の調査は、それら教職員の異常な状態を是正するガイドラインを示して子供と向き合う時間を確保するということを標榜しています。そこで、お聞きします。
管理職及び教諭が最もこの調査で負担感率が高いと感じている業務は何となっていたでしょうか。
■教育長
お話しにありました文部科学省調査によりますと、管理職及び教諭が「負担である」または「どちらかと言えば負担である」と回答している割合が最も高い業務は、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」ということになっています。
その他にも、「研修会や教育研究の事前レポートや報告書の作成」ですとか、「保護者・地域からの要望・苦情への対応」などが高い割合となっています。
このことは、本県においても、同様の状況であろうと考えています。
●吉良県議
お示しいただいたように、負担感が大きいものに、何をいわんやという感じなんですけれども、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」がダントツなんですね、80%を超えている、管理職もそうなんですね、校長や教頭もみなさんそうお答えになっている、まずこれは教育委員会自体が、現場のせいじゃなくてですね、教育委員会自体が見直す部分がずいぶん大きいと言うことを、文科省自身のこのアンケート調査で表しているわけです。
実は、高知県教組が、2012年に県内教職員の実態調査を発表して、高知新聞は「過労死ライン超す」「県内教員、残業、月86時間」との見出しをとって報道しています。そして、近年特に多く時間をとられて負担に感じること、やはりここでも教育委員会などが実施するアンケートなどの事務作業の多さを指摘しています。「個々の事務作業は短時間で終わるが、常に時間に追われているだけにストレスになる。子供が興味を持てる授業をするためにももっと授業の準備に時間を割きたい」と述べて約8割の教師が「授業の準備時間が足りない」と指摘しています。
学校の敷地に外に借りている農園へ水やりの作業を子供たちと一緒に行くのに、校外勤務伺いや報告書を書いて出さなければならないという実態があります。これは本当に負担です。書類の多さ、様々な調査に対応する報告書の多さに子どもに向き合う時間がとられる実態も出されています。今回の調査でも、同様なことが裏付けされたという事で、本気になって、この事態を解決する姿勢をまず、県教委自身が示さなければなりません。
今回のガイドラインの実効性をどう担保しようとなさっているのかお聞かせください。
■教育長
文部科学省のこの今回出されたガイドラインでは、業務改善を行う上での方向性としまして、校長のリーダーシップによる学校の組織的マネジメントの強化、また教員と事務職員等の役割の見直し、校務の効率化・情報化や地域との協働の推進、教育委員会による学校サポート体制の充実などが示されております。
これらの中には、本県で既に取り組んでいるものも多く含まれております。
今後は、校長のリーダーシップのもと、学校の組織マネジメントを更に充実していくとともに、外部の専門スタッフの活用ですとか、地域の人材をお借りするといったことなども更に広げていきたいと思います。こうした、いわゆる「チーム学校」の取組を推進していくことで、全ての学校で教員が授業や子どもへの指導に一層集中できるような環境が整うようにしていきたいと思っております。
●吉良県議
5つの留意点を示しています。そのなかにも、委員会自らのですね、改革もあると思いますけれども、教育長、アンケートだとかね、その事務量、管理職も現場の教職員も、これが一番の負担なんだとおっしゃっていることに対して、
具体的にいま教育委員会の事務局でどう対応するのかということをお考えになっていませなんか。もしありましたらお答えをしていただきたいのですけれど。
■教育長
この調査・アンケートに伴う負担感ということは、これは教育委員会としても以前から認識はしております。そういったことで、その調査・アンケートに対するその教育委員会としてのガイドラインも作成をしております。
そういう中で、必要最小限の調査に絞ってやることとか、年間予定している調査・アンケートについては、事前に市町村教育委員会にお知らせをするだとか、あるいは、外部からの調査・アンケートについては、学校に回さずにできるだけ、教育委員会が直接お答えさせていただくような方向は出しております。
ただ、どうしてもですね、アンケート・調査というのは、ある一定数はございます。ですから、このアンケー卜調査についてですね。今後、I CT化とかいったことでの効率化といったようなことも取り組んでいく必要があるのかなというふうに思っております。必要最小限に絞るというととが必要だと思いますけども、そういった方向も考えていくことかと思っています。
●吉良県議
効果を私は期待して、また次回どれぐらい減ったのかを、お示ししていただきたいと思います。いずれにしても、このガイドラインを含めて、トップダウン的な解決策、やり方ではこれは解決できないと思います。
今後、若返りが図って、5割6割変わってくるわけですから、やはり現場の創意工夫をしっかりとできる時間的な保障、物理的な保障、そして心の保障をしっかりしていくことが、私は本来のあるべき姿だと思います。
上からいくら言っても、これは、なかなか、なおるものではありません。是非ガイドラインを受けて、現場の工夫を大事にするスタンスを持って取り組むことを心からお願いいたしまして、私の質問を全て終わります。