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- 2015年07月10日
- 意見書・請願
- 2015年6月議会 国民主権・国家主権を侵害するTPP交渉からの即時撤退を求める意見書への賛成討論 米田稔県議(2015.07.10)
私は、日本共産党を代表して只今議題となりました、議発第3号「国民主権・国家主権を侵害するTPP交渉からの即時撤退を求める意見書」議案に賛成し、議発第4号「TPP交渉における国会決議の遵守を求める意見書」議案に反対する立場から討論を行います。
アメリカ議会で、大統領に通商交渉権限を与えるTPA法案が成立し、新たな段階を迎えています。
安倍首相は、これをうけて「アメリカとともにリーダーシップを発揮して、早期のTPP交渉妥結を目指していきたい」と述べています。また、甘利TPP担当相も「夏休みに入るぎりぎり前に12カ国の合意を図り、最終的な署名に至るという手順を踏んでいきたい」と語っています。アメリカは「農産物関税を撤廃か、米国以下に」するよう求め、譲らない立場であり、「早期妥結」とは「日本が妥協する」ことに他なりません。国会決議にも選挙公約にも反する、安倍内閣の前のめりの姿勢は到底容認できるものではありません。
同時に今、TPPと諸国民との矛盾が広がるとともに、多国籍企業の利益のためであることが明らかになる中で、諸国民の反対の闘いが強まっています。TPA法案をめぐり審議が迷走したアメリカでは、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、「TPA付与が勝利への気楽な行動だと考えるのは大きな間違いだ」とする貿易専門家の指摘を紹介しています。TPPに反対するアメリカ消費者団体パブリックシチズンは声明を発表し、TPPのような自由貿易協定に多数が反対している、労働や環境、食品安全の基準などを脅かすTPPの中身が公開されれば、反対の世論がさらに強まり、議員の行動と責任が問われるだろうと指摘をしています。またシアトル、サンフランシスコ、ニューヨークなど各地の議会が、TPA法案やTPPに反対する決議をあげています。
その他、後発医薬品・ジェネリック問題、国有企業の保護に関わる問題などでの参加国間、また諸国民との矛盾も深まっており、日本も含め多国籍企業の横暴から国民主権、国家主権を守る事が問われています。
TPPの本質は、これまでの関税を主とした貿易ルールの違い、国民の命や健康、環境あるいは地域や産業・社会を守るために設けられた制度、基準などを「非関税障壁」として否定し、ISD条項・投資家対国家の紛争処理が端的に示すように多国籍企業の自由経済活動を推進することにあります。それは、「自国のことは自分たちで決める」という国民主権と国家主権そのものの否定であります。
そしてTPPへの参加の影響が懸念されるのは、食糧自給率の低下、農業や畜産業など日本の食生活を支える産業の衰退、食の安全・安心の仕組みへの影響、混合診療の解禁による保険外診療の拡大、公的医療保険の給付範囲の縮小、地域医療の崩壊、地域経済を支えてきた中小企業への打撃など多岐にわたっています。とりわけ、雇用と所得を増やし、生活と命を守るために高知県政と県民が取り組んでいる産業振興、健康長寿県づくりなどの努力、営みを根底から台無しにしてしまうものでもあります。
だからこそ当議会は早くから、「TPP交渉への参加に反対する意見書」や「TPP交渉参加表明に抗議する意見書」を可決するなどTPPそのものに反対をしてきました。
この6月、国連の人権問題を担当する専門家グループが、人権に対する否定的影響を懸念する声明を発表しています。貿易や投資に関する協定が、経済の新しい機会を生み出す可能性があるとする一方で、健康保護、食品の安全、労働基準に関する基準を引き下げ、医薬品を独占する権益を企業に与え、知的財産権の保護期間を延長することなどによって、人権の保護と促進に逆行する影響をもたらしかねないと指摘をしています。また極貧問題を深刻化させ、対外債務の公平で効果的な再交渉を困難にし、原住民、少数者、障害者、高齢者、社会的弱者の権利に悪影響するとの正当な懸念があるとしました。
そうした懸念に立って、声明は、条文草案を公開すること、人権の全面的な保護と享受を保障するための確固とした保護条項を盛り込むこと等の勧告を行っています。こうした見地、勧告を真摯に受け止め、TPP反対の立場を堅持すべきであります。
TPP交渉の日米協議で、アメリカが21万5千トンものコメの特別輸入枠を求め、安倍内閣は主食用5万トンを提案したことや、牛肉・豚肉も大幅関税引き下げと報道をされています。そして、コメ問題では甘利大臣は、「米国産米の輸入を一粒もふやすなというのは不可能」だと言い切り、「譲歩の範囲をできるだけ小さな範囲で決着させる」としています。5月の「TPP交渉に関する説明会」で渋谷和久内閣審議官は、関税削減について内容は隠しましたが、交渉のテーブルにのせていることを認めています。国会決議は、米や麦などの5項目を「聖域」として、交渉から「除外又は再協議の対象」としています。安倍内閣がこの国会決議を無視して、交渉の「対象」にしていることは明らかです。本来なら「日本は除外、再協議という国会決議がある。だから協議できない」と言うべきではありませんか。ISD条項問題でも、渋谷審議官は「嫌がっている国も多いが、制限措置をつくっている。理解されると思う」と述べているのであります。
こうした交渉経過は、国会決議を踏みにじり、交渉合意に前のめりの安倍内閣の姿勢を示しており、アメリカ追従ではなく国民主権・国家主権を守るために、いまTPP交渉から撤退する以外にありません。またTPP交渉から撤退することが、国会決議が生きる唯一の道だと確信するものであります。当議会は、2013年9月議会、14年2月議会と全会一致で、交渉からの撤退を求める意見書を可決をしています。今日、ますますこの見地と良識を貫くことが求められているのではないでしょうか。
安倍内閣がTPP交渉の妥結を急ぐのは、「企業が最も活動しやすい国」のための「成長戦略」の柱にTPPがなっているためです。同時に、首相がアメリカ議会で「TPPは安全保障上の意義がある」と述べたように、日米同盟優先の立場からアメリカに奉仕しようとしているからです。このような売国的な態度こそ転換をすべきです。
以上、第3号議案に賛成し、第4号議案に反対する討論と致します。