議会報告

  • 2014年10月15日
    9月議会 「慰安婦問題」について適切な対応を求める意見書への反対討論 中根佐知県議(2014.10.14)

 日本共産党を代表しまして、議題となっています議発第13号、「「慰安婦問題」について適切な対応を求める意見書」に反対の立場で討論を行います。

 質疑を通しまして、意見書が理由としてあげる河野談話作成過程の問題は存在しないこと、朝日新聞の報道した吉田証言の取り消しも河野談話にまったく反映していないことが明らかになりました。同意見書は事実を無視したもので、議決に付す要件を欠いています。

 政府は「河野談話」の継承を国内外に約束をしました。河野談話は、慰安婦問題の過ちを認め謝罪し、二度と繰り返さない決意、人の尊厳を大切にする日本の人権感覚を世界に示したもので、日本と日本人の信頼を高める、明らかに大きな一歩を踏み出しましたものです。その誠実な実行こそが求められています。

ところが、政権党である自民党の外交・経済連携本部国際情報検討委員会は、9月19日、朝日新聞の吉田証言取り消しを「根拠」に、「性的虐待」は否定されたと河野談話の否定を決議しました。同意見書案もこの同じ流れにそったものです。

政府が「継承」を世界に約束しながら、国内で否定の運動を政権党がするという、こうした「二枚舌」的対応こそが、「日本は多くの国益を失うとともに、国民の尊厳は不当におとしめられつづけている」こういう事態を生んでいることを厳しく指摘をしておきます。

同意見書は、「慰安婦」問題の本質、何を国際世論が問題にしているのかまったく理解していないことから提出されたものです。

女性たちがどんな形で慰安所に来たにせよ、それがかりに本人の意思であっても、強制によってであっても、ひとたび日本軍『慰安所』に入れば、自由のない生活を強いられ、強制的に兵士の性の相手をさせられた、性奴隷状態とされた、甚だしい女性への人権侵害、それを先ほどの討論でもお認めになりましたが、その事実が慰安婦問題です。

問題の本質を理解していない典型例は、安倍首相らがアメリカの新聞に出した「慰安婦は公娼制度と同じで問題はない」とする意見広告です。

19世紀半ばから、公娼制度は、人身売買、奴隷制度とする認識が大きく広がっています。イギリスは、19世紀末に公娼制度を廃止しました。アメリカの多くの州にはそもそも存在していません。ですから、「公娼制度だから問題ない」という意見広告が、怒りを呼び、2007年の下院決議になりました。

女性を性の道具として扱うことを、先の大戦で、組織的に実施したのは日本とドイツだけです。日本では、設置計画の立案、場所や必要人数の算定、業者の選定・依頼・資金斡旋、女性集め、女性の輸送、慰安所の管理、建物・資材・物資、すべての提供など、それを軍の管理下または直接実施によって進められています。一般の公娼制度のように「管理」の対象としたというのでなくて、国の意思として政策的に推進しました。だからこそ厳しく世界が批判しているわけです。

戦前、大日本国憲法下でも日本で、「工場で働くのだ」とだましたり、借金漬けで逃げられないようにして国外移送することは「人身売買」として犯罪行為とされていました。1932年、軍の依頼で、上海の「海軍指定慰安所」のために、「女給」「女中」と騙して、「慰安婦」をあつめて移送しようとした業者が検挙・有罪になっています。ところが、取り締まるべき政府が、中国との全面的な戦争に突入する中で、「現地に於ける実情に鑑みるときは、必要已むを得ざるもの」と内務省の警保局がこういっているのですが、こういう黙認をする通達を出しています。さらに、人数を指定して女性集めを指示する文書も出ています。政府に犯罪行為の認識があったために、その中でわざわざ、「何処迄も経営者の自発的希望に基く様取運ぶように」と指示をしています。

また、当時の日本は人身売買を取りしまる4つの国際条約のうち、3つに加盟しており、その1つは「未成年者は、本人の承諾があるなしにかかわらず売春に従事させることは全面的に禁止」するものでした。しかし、多くの「慰安婦」は10代の少女であったことが、被害者の証言だけでなく、公文書でも明白です。

人さらいのような「強制連行」がなければ、問題がないとする見解は、歴史を偽装するものです。

 さらに、戦前の日本は公娼制度を当然視していたというのは、先人を冒涜するものでもあります。女性の人権という発想がなかった男性だけの県会においても“事実上の奴隷制度”の認識が広がっていました。公娼制度を廃止した県は14、廃止決議をあげた県会も20を超えています。高知県会もその1つです。1937年の鹿児島県会の決議は、「公娼制度は人身売買と自由拘束の二大罪悪を内容とする事実上の奴隷制度なり」と厳しく批判をしています。この先人たちの認識に比べても、あまりにも遅れた女性への人権意識に基づいた意見書案となっています。

 人さらいのような「強制連行」がないから、問題ない、性奴隷ではない、という主張は、女性の人権についての歴史の動きを直視しない、国際的にまったく通用しない主張であることを重ねて指摘をしておきます。

最後に、この問題は、現在も続く人身売買や性差別につらなっている今日的問題であることを指摘しないわけにはいきません。

都議会の女性差別ヤジの問題を本会議でも指摘しましたが、日本は、アメリカ国務省が発表している世界186カ国、また地域の「人身売買報告書」で人身売買撤廃のための最低基準を満たしていないとG7の中で最低の評価をされ、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数は136ヵ国中105位に低迷しています。国連女性差別撤廃委員会からは、改善に取り組む姿勢の無さを繰り返し批判されています。女性差別、女性の人権侵害の歴史に正しく向き合えていないことの反映です。

慰安婦問題に正しく向き合い、河野談話を誠実に実行することは、女性差別、女性の人権侵害を克服し、男女がともに輝く社会をつくる前提であり、世界に通用する国際感覚の土台です。その上にたってこそ、高知県も進めている韓国や中国、オランダとの国際交流もさらに発展していくと確信しています。

日本ではじめて女性の参政権を実現したこの高知で、同意見書案を可決することに、高知県連合婦人会をはじめ19の女性団体から、抗議の声明が出されました。本意見書の撤回を求めるとともに、女性の人権、女性の尊厳を回復する課題であり、被害女性たちの高齢化の中で、解決はまったなしの状況だとしています。全く同感です。

歴史の歯車を過去に回し、県議会の先輩をも冒涜をし、汚点をのこすことになる本意見書は、採択すべきではありません。心から訴えて、反対討論といたします。