議会報告

  • 2014年10月15日
    9月県議会 「慰安婦問題」について適切な対応を求める意見書への質疑 塚地佐智県議(2014.10.14)

自民党県議団が提出した、慰安婦問題」について適切な対応を求める意見書への塚地佐智県議の質疑は以下のとおりです。

*質疑への答弁は、提案者の自民党県議団を代表し加藤漠県議がおこないました。

 

●塚地県議

私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま議題となっています議発第13号「『慰安婦問題』について適切な対応を求める意見書案」について質疑を行います。

本意見書案は、1993年8月に政府が出した「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」いわゆる河野談話の見直しを求めるものです。

見直しの論拠として、先に述べられた2点が示されています。

その第1は、朝日新聞が、本問題の根幹をなす慰安婦報道について、根拠とした証言が虚偽であったことを認めたからだとしています。これは全くの事実をゆがめるものです。

朝日新聞が訂正したのは「吉田証言」ですが、当時から研究者の間でもその信憑性が疑われており、官房副長官として「河野談話」の作成に直接関わった石原信雄氏自身も「吉田証言をベースにして韓国側と議論したということは、私にはありません」「繰り返し申しますが、河野談話の作成の過程で吉田証言を直接論拠にして強制性を認定したものではない」とテレビ番組に出演し証言をしています。「河野談話」の作成の際に吉田氏からヒアリングを行っていますが、吉見義明さん、秦郁彦さんなど吉田証言を否定する研究者の意見も聞いており、当時すでに吉田証言は否定的にあつかわれています。

この10月3日の衆院予算委員会では、菅官房長官は「吉田清治氏の証言は客観的事実と照らしてつじつまが合わなかった。他の証言者の証言と比較して信用性が低かったことから『河野談話』に反映されなかった」、安倍首相も「官房長官が答弁した通り」と明確に答弁しています。

提案者は、この管官房長官と安倍首相の答弁を否定するものです。否定した根拠をお示しください。   

■提案者

朝日新聞が訂正した吉田証言と河野談話の関連性についてお尋ねがありました。

 慰安婦問題が日本と韓国との間で、懸案となってきたのはご指摘の通り1990年代頃からであります。1991年12月6日に韓国の元慰安婦3名が、東京地裁に提訴いたしたこと、そして慰安所の設置や募集について軍の関与を示す公文書が発見されたことなどによって、慰安婦について日韓双方の関心が高まってまいりました。朝日新聞はこれら慰安婦に関する報道の中心となって、今回、虚偽を認めて訂正した記事を含めて、日韓双方に大きな影響を与えてまいりました。

こうした一連の経緯の中で、河野談話が作成されるのに至ったのであって、作成の経緯という意味においては、朝日新聞の吉田証言の虚偽報道と河野談話の関連性は大いにあるものと考えております。

一方で、塚地議員がご指摘の通り、河野談話の内容については、政府が吉田清治氏からの聞き取り調査をおこなっておりますが、河野談話自体にその証言は反映されておりません。したがって、河野談話それ自体の内容という点については、今回の朝日新聞による虚偽報道との関連性はないものと考えております。

 

●塚地県議

見直しの論拠の2点目は、いまお話になったとおり「河野談話作成過程等に関する検討チーム」が公表した、「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯」にあるとしています。それは、「調査を踏まえた事実関係を歪めることのない範囲で、韓国政府の意向・要望については受け入れられるものは受け入れ、受け入れられないものは拒否する姿勢で調整した」として、調整された内容だという指摘です。また、韓国人元慰安婦の証言の裏付けをとっていないという点だと受け止めました。しかし、この文面をよく読んでいただくとわかるとおり、日本側は、「調査を踏まえた事実関係をゆがめることのない範囲」と明言しており、日本側はその点を譲らず、自主的に行ったとの見方を確認し、検討報告書も「その内容が妥当なものであると判断した」と結論づけています。

河野談話に先立ち、政府は、92年7月6日、公文書を含む関係資料の調査にもとづき当時の加藤紘一官房長官が「慰安所の設置、慰安婦の募集に当たる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所・慰安婦の衛生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等につき、政府の関与があったこと」を認め「従軍慰安婦として筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられたすべての方々に対し、改めて衷心よりお詫びと反省の気持ちを申し上げたい」と表明をいたしました。また、慰安所の経営・監督にかかわる公文書には、「慰安所規定」も含まれており、「慰安所」における「慰安婦」の生活が自由のない強制的なもの、強制使役であったことも明らかにしています。

 提案者は、この、慰安所について軍が全面的に関与したこと、「慰安婦」の生活に自由がなかったことが、確認された事実はお認めになるのか、お伺いをいたします。

 

■提案者

慰安所についての軍の関与、また慰安婦の生活に関する認識についてお尋ねがありました。

 議員がご指摘の通り、河野官房長官の前任者である加藤官房長官は記者会見で、慰安所の設置や経営、監督、衛生管理などについて、政府の関与を認めております。このことは河野談話においても同様に旧日本軍が直接、あるいは間接的に関与したとされております。

また、慰安所における生活については、外出の時間や場所を制限されていたところもあったことが、政府資料からも確認されており、戦地においては軍の管理下で、軍とともに行動させられるなど、強制的な状況のもと、痛ましいものであったと認識をいたしております。

 

●塚地県議

この調査では、募集については強制性を示す当時の政府の公文書、命令書を見つけることができていません。それは不思議でも何でもありません。拉致や誘拐などの行為は、当時の国内法や国際法でも、明白な犯罪行為であり、それを命令する公文書など発行するはずがないからです。たとえ当時存在していたとしても、そのような証拠をそのままにしておくことは考えられません。故に、募集の強制性の最終的な判断を下すため、政府として直接に元「慰安婦」からの聞き取り調査をおこなったわけです。談話作成に直接かかわった石原元官房副長官は「ヒアリングの結果は、どう考えても、これは作り話じゃない、本人がその意に反して慰安婦とされたことは間違いないということになりましたので、そういうことを念頭において、あの『河野談話』になったわけです」と聞き取り調査による信憑性を強調しています。「河野談話」は募集の強制性について「本人の意思に反して」と規定をしています。狭義の強制連行だけでなく、甘言やだまし、脅迫や人身売買などによって「慰安婦」とされた場合全体をさしているのです。

 日本の司法は、2004年12月の東京高裁判決を初め、元「慰安婦」の訴えにもとづく8つの裁判で、35人の原告全員に、本人の意図に反した「強制」があったことを事実認定しています。裁判記録で確認できるだけでも35人の内、26人が10代の未成年だったことも明らかとなっています。

日本の司法における事実認定は「強制性」の明白な証拠ではないとの認識か、お伺いをいたします。

 

■提案者

司法による事実認定は強制性の明白な根拠ではないかという認識とのお尋ねがありました。

 議員からご指摘のあった戦時中の責任を問う裁判の判決では、慰安婦とされた過程に強制性があったことの事実認定がおこなわれております。このことは戦後補償を巡る裁判については、日韓請求権協定や日韓平和条約等によって、すでに解決をされており、最終的に棄却されることが明らかな裁判であるという認識のもと、被告側の日本政府が事実関係について反論をおこなっていないことによるものであります。

 これらの裁判において朝日新聞が今回虚偽報道であっことを認めた吉田清治氏が事実の承認者として法廷で証言していることが根拠になっている事例もあります。また、いずれの裁判においても、原告らの申し立ては棄却をされております。

 わかりやすくいえば、片方が車の事故を起こして、もう片方が何も言わなければ、車の事故が起こったことが事実となるわけでございます。つまりいわば国の冷静な対応の結果であります。したがってただちにこの裁判の判決が、歴史的な証拠につながるものではないと認識をいたしております。

 また、河野談話においてもご指摘の通り慰安婦募集の強制性については記載があり、いかなる経緯であったとしても全体として個人の意思に反しておこなわれたことが多かったという趣旨で、強制性があったと理解をしております。

 

●塚地県議

「証言に裏付け資料がない」との指摘ですが、河野談話の作成過程を今回再検討した管官房長官は、河野談話を「継承するという政府の立場は変わらない」と発表いたしました。

この政府の、見解が誤りだとお考えか伺いをいたします。

 

■提案者

河野談話を継承するという政府の立場について、お尋ねがありました。

 提案説明でも申し上げましたとおり、河野談話の文章は軍による強制連行を認めておりません。また、強制連行の裏付けとなる資料がないことは改めて閣議決定もされております。そのため本意見書では、今回政府によって検証された報告書の内容等を踏まえて、未来志向の新たな談話の発表を提案しています。

この提案は事実とは違う言われなき中傷によって、不当に貶められた先人の名誉を回復すること、現在そして未来に生きる日本人の誇りを守ること、さらには世界の平和と繁栄に寄与していた戦後日本のたゆまぬ努力や人権を重んじる姿勢を内外に発信することが必要であるとの考えから政府に対して提言をするものであります。

 来年は終戦70年、日韓基本条約締結から50年の節目となります。来年に向けて安倍政権のもと新たな談話が発表されることを強く期待するところであります。

 

●塚地県議

検証報告書ものべているように、「慰安婦問題」が国際化したのは91年に韓国の元「慰安婦」が名乗り出て、その過酷な人権蹂躙の実態を告発したことにあります。その後、韓国、フィリピン、インドネシア、東チィモールなど各地の被害者が次々と名乗り出たのです。「慰安婦」問題の国際世論化は、朝日新聞報道に端を発したのではなく、なにより当事者の告発であったことは、国連を含め世界の常識です。

 その 日本軍「慰安婦問題」の本質はなにか。それは、女性たちがどんな形で来たにせよ、それがかりに本人の意思で来たにせよ、強制で連れて来られたにせよ、ひとたび日本軍「慰安所」に入れば、自由のない生活を強いられ、強制的に兵士の性の相手をさせられた、性奴隷状態とされたことです。そこが、世界からきびしく批判をされているのです。

 米国下院、オランダ下院、カナダ下院、欧州議会、韓国国会、台湾立法院、フィリピン下院外交委員会と、7つの国・地域の議会から抗議や勧告の決議があげられていますが、そのいずれもが問題にしているのは、「強制使役」の実態であり、募集の過程の狭い意味での「強制連行」の有無ではありません。  提出者は、慰安婦問題の核心をどのように考えておられるか。「人さらいのようのような強制連行」以外は問題ではないというお考えか、お伺いをいたます。

 

■提案者

慰安婦問題の核心をどのように考えているのか、人さらいのような強制連行以外は問題ではないという考えなのかとのお尋ねがありました。

 先ほども申し上げましたが、慰安婦の方々が当時の社会情勢の中で、きわめて辛く厳しい状況に置かれていたことについては、心が痛みますし、深甚な思いをはせたいと思っております。また、これまでの歴史の中では、多くの戦争があって、日本だけにかかわらず世界中にも女性の人権が侵害されてきた時代がありました。そしていまもなお、紛争時には女性の人権侵害が存在しており、こうしたことは絶対に認めてはなりません。われわれは人権侵害のない社会を目指していくことが大切であり、そのことに向かって全力を尽くしていかなくてはならないものと考えております。

そうした前提に立った上で、例えば塚地県議がおっしゃったアメリカ議会下院での決議等の内容にも事実と異なった表現が含まれておりますし、日本国内においても高等学校の教科書の中にも不適切な誤った記述がされている事例もあります。事実と異なるいわれなき中傷や間違った情報に対してはしっかりとした対応をしていかなくてはならないものと考えております。

したがって慰安婦問題の核心は、事実は事実として認め、正すべきを正すということだと思っております。

 

●塚地県議

今求められるのは、政府も「継承する」とした「河野談話」にもとづく誠実な対応です。河野談話は「われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろ歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。」と宣言をしています。

 あやまちはあやまちとして、しっかりと向き合うことが、人の道であり、そうしてこそ、女性の人権を尊重する、諸外国の真の友好を築くことができるのではないか。お伺いをします。

 

■提案者

最後に過ちは過ちとしてしっかりと向き合うことが人の道であり、そうしたこそこそ諸外国の真の友好を築くことができるのではないかとのお尋ねがありました。

おっしゃるとおりだと思っております。過ちは過ちとして、事実であれば謝罪すべきであります。それと同時にこれまでも繰り返して申し上げましたとおり、事実と異なるものに対してはこれは断固として正しいことは正しいと主張をしていかなければならないと考えております。また、日本国としてそういう態度で諸外国と接していくことがあるべき姿だと考えております。もし叶うことであれば諸外国においても同じ姿勢であってほしいと心から願っております。