-
- 2014年07月07日
- 議会(質問・討論)
- 6月県議会 米田稔県議の代表質問と答弁/全体(2014.06.25)
【知事の政治姿勢①/集団的自衛権】
●米田県議
集団的自衛権について、知事に伺います。
日本は侵略戦争の反省にたち、憲法9条のもとで、一人の戦死者も出さず、平和国家としての国際的地位を確立してきました。ところが安倍政権は、これまで憲法9条のもとで禁じられてきた「集団的自衛権」について「限定的に行使することは許される」との立場で、戦後の平和国家のあり方を大きくゆがめようとしています。積み上げられてきた平和国家のあり方を一内閣の閣議決定で覆すやり方に対し、自民党の歴代幹事長、元内閣法制局長官など立場を超えて「憲法が権力を縛る」という立憲主義を否定する暴挙だと厳しく批判をしています。国民的な議論もまったく不十分です。解釈変更による行使容認には、共同通信の世論調査では、反対は51.3%と半数を超えています。日本経済新聞社とテレビ東京の調査でも、「賛成」は28%しかなく、「反対」は51%となっています。安倍首相が、どうしても集団的自衛権を行使する必要があるというなら、堂々と正面から改憲手続きを踏むべきです。
平和憲法の根幹を、「解釈」で変質させることを国民は支持していないと思いますが、知事の認識をお聞きします。
■知事
憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認についてのお尋ねがございました。
集団的自衛権の行使につきましては、私は、これまでも、科学技術の発達の度合いや我が国を取り巻く安全保障環境の変化に応じて、一定認められるべきであると申し上げてまいりました。
併せて、認められる場合であっても、防衛目的を逸脱するようなことは決してあってはならないとも申し上げてきております。
憲法解釈という点で申し上げれば、私は憲法の本質を解釈によって変更すべきではないと考えております。他方で、その本質に根差して、連続的かつ合理的に展開される解釈の見直しまで否定するものではありません。
集団的自衛権の行使の議論の場合も、憲法9条の要請の本質に根差したうえで、そこから派生する解釈の範囲内に入っているかどうかが重要だと考えております。
具体的には、憲法の9条の下においても認められるとされている武力の行使についての3要件、第一に、我が国に対する急迫不正の侵害があること、第二に、これを排除するために他の適当な手段がないこと、第三に、必要最小限度の実力の行使にとどまるべきこと、これらの要件から連続的かつ合理的に展開できる範囲内にとどまるものであれば解釈の変更で対応可能とみなせるものと考えております。
例えば、「我が国に対する急迫不正の侵害があること」ということについて、これまでは我が国が直接攻撃を受ける事態に限定していたわけでありますが、我が国が直接攻撃を受ける事態ではないものの、Aという事態が起こると確実に我が国に対する直接攻撃であるBという事態が起こるという連鎖が確実に見込まれるのであれば、Aという事態を急迫不正の侵害とみなして良いと考えられる場合もあるであろうということであります。
科学技術の発達の度合いに応じて、このような事態が様々展開されようとしております。
しかしながら、この三要件から連続的かつ合理的に展開される解釈を超えるものを無理に解釈で改憲しようとするものはおかしいことだと思うし、すべきではないと思います。そうしたことからどうしても安全保障上必要とされるのであれば、憲法改正を目指して、改めて改憲手続きにのっとった国民的議論に付すべきであると考えております。
●米田県議
元防衛官僚で、第一次安倍内閣の内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏は、政府の示した事象について「現場的なリアリティーが乏しい」と指摘し、「日本を取り巻く軍事的脅威が高まったのであれば、それは日本の有事ですから、個別的自衛権をしっかり使えるようにすべき、というのがあるべき答えで、集団的自衛権が出てくる余地はありません」と批判をしています。先日、来高した小林節慶応大学名誉教授は、かつて自民党のブレーンを務めてきた方ですが「政府が想定している事態は、すべて個別的自衛権の文脈で十分説明できる」、集団的自衛権は「他国のために日本に無関係でも戦争に参加するものであり、新しい敵をつくる」と厳しく批判をしています。
集団的自衛権とは、「国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利」であり、日本が侵略をされた際に発動される個別的自衛権とは違いますし、国連のもとで発動される集団安全保障とも違います。集団的自衛権の行使の実態は、旧ソ連のアフガン侵略、アメリカのベトナム戦争など少数の軍事大国による侵略戦争や不当な軍事介入です。
これまで行使されてきた集団的自衛権行使の実態について、どう認識しているか、知事にお聞きします。
■知事
これまでの集団的自衛権行使の実態について、どう認識しているか、とのお尋ねがございました。
国連安全保障理事会に集団的自衛権行使として報告されたものは過去に14事例ございますが、こうした事例の中には、旧ソ連によるハンガリーやアフガニスタンへの侵攻のように国際社会から非難を受け、国連による撤退要請の決議を受けた事例もあると承知しております。
他方、湾岸戦争における集団的自衛権の行使のように、国連で武力行使が認められた事例があると承知をしておるところでございます。
●米田県議
政府はこれまで、「9条は、我が国自身が外部から武力攻撃を受けた場合における必要最小限の実力の行使を除き、いわゆる侵略戦争に限らず国際関係において武力を用いることを広く禁ずるものである」と説明をしてきました。
集団的自衛権行使の容認とは、「海外で武力行使をしてはならない」という憲法上の歯止めを外すことであり、日本の国のあり方の文字通りの大転換です。
また、「戦闘地域にいかない」という歯止めは、9条の制約のもとで、国際貢献としてどこまで可能かと整理してきたものだと阪田雅裕・元内閣法制局長官は説明をしています。他国の軍隊に対する補給、輸送、医療などの「後方支援」も、他国の軍隊の武力行使と「一体化」する活動は、海外での武力行使を禁ずる憲法9条の下で許されないというものです。これは「武力行使をしない」ことを担保するものでもあります。
アフガン、イラク戦争にさいして、日本は、アメリカの強い要請に応じて、自衛隊を送りましたが、その根拠となった特別措置法には、第2条で「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施する」という、「武力行使はしない」「戦闘地域にはいかない」という歯止めがありました。だから自衛隊の実際の活動も、インド洋での給油活動、イラクでの給水活動や空輸活動にとどまりました。
集団的自衛権の行使とは、この2つの歯止めをなくすことです。日本共産党の志位和夫委員長が5月28日の衆院予算委員会で追及しましたが、安倍首相は、この2つの歯止めを残すとは決して言いませんでした。
安倍首相は「武力行使を目的とした参加はしない」と「目的」という言葉を入れて、まったく違った中身に変えてしまおうとしています。また「戦闘地域に行かない」も「現に戦闘が行われている地域」に限定し、砲弾が飛び交う最前線でなければ、武器や資材の輸送など兵站活動も可能、人員救助は最前線でも可能にしようとしています。「戦闘地域に行ってはならない」という歯止めを外したら、アフガン戦争に参加したNATOと同じになってしまいます。アフガン戦争でNATO諸国が決定した支援は「燃料補給」などの「後方支援」であって直接の戦闘行為は目的としていません。しかし、犠牲者は21カ国1,031人にのぼりました。2つの歯止めをなくせば、後方支援も相手側の攻撃の対象となって、反撃を余儀なくされ、殺し殺される関係、戦争の泥沼にはまりこんでしまいます。
「海外で武力を行使をしない」「戦闘地域にいかない」というこれまでの歯止めを堅持すべきと考えますがお聞きします。
■知事
「海外で武力行使をしない」など、これまでの歯止めを堅持すべきではないか、とのお尋ねがございました。
私は、集団的自衛権の行使によって、仮に、海外で武力が行使される場合があったとしても、先ほど申し上げた3要件から連続的かつ合理的に展開できる範囲内で、あくまで我が国の自衛のために行使されるということが重要だと考えております。
また、国際協力の枠組みに参加する際には、PKO協力法やその都度制定される特別措置法により自衛隊の活動内容が決定されるなど、これまでも歯止めがかけられてまいりましたが、今後も、歯止めが必要であると考えておるところであります。
●米田県議
2つの歯止めをなくすことと一体で、与党協議にしめされた自衛権行使発動の「新3要件」は、日本への攻撃がなくても、「他国に対する武力攻撃が発生」し、日本の存立が脅かされる「おそれ」があると政府が判断すれば武力行使ができると明記しています。地理的な限定もありません。
限定どころか、無限定、従来の自衛権発動の3要件とまったく異質のものではないか、お聞きをします。
■知事
自衛権発動の要件について、お尋ねがございました。
与党協議会で高村座長が私案として示したいわゆる新3要件については、昨日修正案が示されたところでございますが、従来の自衛権発動の三要件をベースとして、集団的自衛権の行使の範囲を限定しようとするものであり、私が従前より申し上げてきたことと方向性は同じものだと考えています。
この間、「他国に対する」とか、「おそれ」といった点について、曖昧さが残るとして議論がなされ、限定をより明確にする方向で議論が進んできております。今後、個別事例に則した議論をさらに深めていくことにより解釈の曖昧さ故に後世に禍根を残すことのないようにしていくこと、そして丁寧に国民に理解を求めていくことが大事だと考えております。
●米田県議
安倍総理は04年の著書「この国を守る決意」の中で「自分の世代には、自分の世代の歴史的使命がある。それは、日米同盟を完全な双務性にしていくことだ。アメリカが血を流すなら、日本もアメリカのために血を流し初めて、日米は対等になる」「軍事同盟というのは“血の同盟”」とまで述べています。
先の柳沢氏は、「つまり、北朝鮮や中国の脅威は後付けの理屈で、本音は、『十年前からこれをやりたい。だからやる』」という情念でしか説明できないと述べ、その危険性について「集団的自衛権を行使できる立場になり、アメリカがまたイラク戦争のような戦争を始めた場合、こんどは戦闘への参加を断われない」「今度ははっきりと、犠牲を想定しなければいけない」と批判しています。石破自民党幹事長も「自衛隊が他国民のために血を流すことになるかもしれない」と認めています。
第二次世界大戦後、アメリカはイラク戦争、ベトナム戦争など何十回となく戦争を実行してきましたが、日本政府は一度も反対したことがありません。その政府が「血の同盟」を目的に「海外への武力行使」に道を開こうとしているところに、ことの本質、危険性があります。
アメリカのために日本の若者の血を流させることに道を開くものであり、国民の望みとは逆行するものと思いますが、知事の認識をお聞きします。
■知事
アメリカのために日本の若者の血を流させることに道を開くものであり、国民の望みとは逆行すると思うがどうか、とのお尋ねがございました。
繰り返しになりますが、私は、集団的自衛権の行使は一定認められるべきだと考えておりますが、これは、我が国の安全保障が国際社会の協調の上に成り立っている現実を踏まえ、憲法9条の定めという制約の中でその協調関係を強化していくことにより、日本国民の安全・安心を将来にわたり確保したいという理由からであります。
集団的自衛権の行使は、アメリカに引きずられて行使するといったようなものではなく、国民の生命・財産を守るため必要な場合に、我が国として主体的に判断すべきものであって、あくまで、日本国民のために集団的自衛権を一定の制約の下で認める、そうであるべきだと考えております。
●米田県議
日本共産党は、安倍政権の「戦争する国」づくり、軍国主義の復活には断固反対するとともに、「紛争があっても戦争にしない」という外交努力が何よりも大切であり、北東アジアにおいてもアセアンのように平和の共同体の構築を提案し、努力していることを述べ、次の質問に移ります。
【第二問】
●米田県議
いま憲法の解釈による変更によって、禁止された集団的自衛権行使の動きに対して、大きな批判の声も広がって、遺族会の中からも、もうこれ以上、再び戦争遺族をつくらないということで、批判や反対の声も強まっていると伺っております。
知事にお聞きしたいのは、1972年10月、いわゆる政府見解、長らく知事が政府機関の一員としておいでておられましたので、これに関わってお聞きしたいんですけど、結局、高村座長私案は、この見解を捻じ曲げて、こじつけしながら、新しい色んな言葉を出してきているわけですけれど、この政府見解の必要最低限度云々だとかの最後にやはり、わが憲法のもとでは他国に加えられた武力攻撃を阻止するという集団的自衛権の行使は憲法上許されないと言わざるを得ないというのが政府見解でしたよね、これは長年自民党政権のもとでも、国会論戦も踏まえて、築き上げた見解だというように私は思っているのですが、知事はこの見解についてどのように受け止めていたのか、いま、集団的自衛権の行使は一部容認すべきだというふうにいわれていますけど、そういうふうに変化した要因についてお聞きしたと思います。
■知事
1972年、私は5歳でございました。その当時以降、解釈はですね、ずっとこれをベースにしてこられたわけでありますが、ふたつございます。なんといってもですね、科学技術の発達、著しいものがあります。当時は、例えば日本上空を弾道ミサイルが高度の制度をもって飛んでいく、それをたとえば撃ち落とすというようなことについて考えられるような状況ではなかった。だから、相互確証破壊とか、そういう議論が展開されてきたわけでありました。
そのほか、様々な形で、急迫不正の侵害が展開しうるコンビネーションというのが全然変わってきている、それがまず第一、非常に大きいことだと思います。
そういう状況の中でもう一つ、一国の安全を一国のみで守ることができるのかということです。相互の連携、国同士の安全保障のネットワークの中で初めて一国の安全が確保されるという時代であるのではないかということでございます。
いずれにしましてもですね、いま日本の安全を守っていくために、日本の自衛を確保するために、そのために必要となることについて、しっかり認められるべきものは認めていくということが大事だと、そのように考えてます。
しかしながらですね、くれぐれも申し上げておりますように、憲法9条の本質、これから外れるものについて、本当に本質から外れるものについてまで解釈で変更するということはそれはおかしいのであって、それは改憲論議をどうどうとすべきだと思います。しかしながら、憲法の本質から展開される解釈の範囲内で認められることであれば、それは時代の状況に応じて展開をしていくべきだと考えます。それは憲法9条に限ったことでもございません。憲法13条だって、様々な形で解釈を展開して新しい人権を認めてきたわけでありまして、そういうことは時代の変化に応じて対応していくことは重要ではないかと、そういう中で認められうる集団的自衛権があると私は考えております。
【知事の政治姿勢②/大飯原発運転差し止め判決】
●米田県議
次に、大飯原発運転差し止め判決について、知事にお伺いします。
5月21日、福井地裁は、関西電力に対し、「大飯原発」から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、運転の差止めを命じる判決を言い渡しました。判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、原発は、憲法上の最高の価値である人格権を侵害する異質の危険性をもつものであり、「万が一にも事後がおこってはならいない」が「安全技術及び設備は、確たる証拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なもの」として差し止めを命じました。
まず判決について、知事の率直な感想をお聞きします。
■知事
判決に対する感想について、お尋ねがありました。
原発の稼働に際しては、地域住民が安心して暮らせるような安全性の確保が大前提であることは、私もこれまで何度も申し上げてきたとおりであります。
今回の大飯原発に関する判決では、福島第一原発事故による被害の大きさや、その影響が多岐にわたっていることなども踏まえ、これまでの知見の上に立った大飯原発に係る安全対策に疑義があると判断されたものと認識しています。
この判決を踏まえて、原子力規制委員会においては、厳格な上にも厳格な審査を行い、基準に該当しない原発は稼働させないとの姿勢を堅持していくべきであり、電力会社においては、なお一層の安全確保に向けた最大限の努力をしていただく必要があると考えております。
●米田県議
判決は、基準地震動を超える地震が、この10年で5件も発生していることを重視し「基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは、根拠のない楽観的見通しである」と指摘をしています。
その原因については、原告側の準備書面は、基準地震動を決めるもととなるデータが極めて限られているうえ、またその限られたデータにもとづく応答スペクトル、断層モデルでの解析方法は、平均値を求めるものであり、データのばらつきが考慮されておらず、平均像で行えば、実際に起こる地震、津波の半分は、無視され、著しい過小評価となっていると解明をしています。前回の質問で指摘した入倉方式では、平均値から一番離れたデータは、ほぼ平均値の4倍の値をしめしています。
四国電力は570ガルを基準地震動としていますが、いずれにしても基準地震動を平均値で求める方式は、著しい過小評価があると思いますが林業振興・環境部長にお聞きします。
■林業振興・環境部長
基準地震動の設定を平均値で求める方式は著しい過小評価があるのではないかとのお尋ねがありました。
原発の設計の前提となる原発直下の最大の揺れである基準地震動につきましては、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析を行い、地盤の状態も考慮し策定されております。
ご指摘のありました地震動の評価につきましては、今回の大飯原発差し止め判決におきまして、「地震動を推定する複数の方式について原告らが主張するように選択の誤りがあったのではないか等の議論があり得ようが、これらの問題については今後学術的に解決すべきものであって、当裁判所が立ち入って判断する必要のない事柄である」としています。
原子力規制委員会においても、それぞれの原発の基準地震動を定めるにあたっては、電力会社の主張に対して様々な角度から検討を加えているところであり、厳格な審査がすすめられているものと認識しております。
伊方原発におきましても、今後、基準地震動が規制委員会で了承された時点で、四国電力から詳細に説明を求め、その妥当性について、しっかりと確認を行ってまいります。
●米田県議
判決は、「地震における外部電源の喪失や主給水の遮断が、基準地震動以下の地震動によって生じ得ることに争いがない。しかし、外部電源と主給水が同時に失われれば、限られた手段が効を奏さなければ大事故となる」と指摘しています。使用済み燃料プールも同様です。
外部電源、主給水施設が耐震Sクラスになっていないのは、著しい安全軽視ではないのか、林業振興・環境部長にお聞きします。
■林業振興・環境部長
外部電源、主給水施設が耐震Sクラスになってないのは、著しい安全軽視ではないかとのお尋ねがありました。
関西電力は、「外部電源が断たれれば、非常用ディーゼルエンジンで冷却することになり、主給水が断たれれば、補助給水施設が冷却手段となるので、安全機能が確保される」と主張しています。
それに対して今回の判決では、「主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉本来の姿であって、安全確保の上で不可欠な役割を第一次的に担う設備は、これを安全上重要な設備として、それにふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる」として、「このような設備を安全上重要でないとするのは、理解に苦しむ主張であるといわざるを得ない」と関西電力の主張を退けています。
新規制基準の耐震重要度分類では、「原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設等をSクラスとする」としており、電力会社が安全確保の観点で設定することとなっています。
なお、伊方原発の主給水系施設のうち、主要な部分はSクラスで整備されていると聞いています。
いずれにいたしましても、規制委員会においては、厳格な上にも厳格な審査を行い、安全性の確保に努めていただくことはもとより、今で良しとするのではなく、絶えず国内外における最新の知見を収集し、専門家等の意見を聞きながら幅広い議論を行った上で、世界最高水準の安全基準となるよう全力で取り組んでいただく必要があると考えています。
●米田県議
外部電源、主給水施設が破壊されたあとのシビアアクシデント対策は、原則として手動、可搬設備での対応となっています。判決は、そうした事故対応のイベントツリーの実効性について、「混乱と焦燥の中で適切かつ迅速にこれらの措置をとること」の「困難性」を詳細にしめし、「それが効を奏さないかぎり大事故になる」としています。
これら非常用の対策が確実に実行できる保証はあるのか、林業振興・環境部長にお聞きします。
■林業振興・環境部長
外部電源、主給水施設が破壊された後の非常用の対策が確実に実行される保証はあるのかとのお尋ねがありました。
今回の判決では、原子力安全保安院から指示を受けて実施した原子力発電所の安全性に関する総合評価いわゆるストレステストで求められている、リスク予測対応としてのイベントツリーに示された安全対策の実効性について指摘されたものと認識しております。
その後、発足した原子力規制委員会により新たに示された新規制基準においてはシビアアクシデント対策が義務付けられ、炉心損傷や原子炉格納容器の破損を防止するための安全設備の設置や対応手順等を詳細に示し有効性評価を受けることになっています。
これまでの四国電力との勉強会で確認したところでは、伊方原発では、重大事故が発生した場合でも迅速に対応できるように、免振性を備えた緊急時安全対策所の設置や非常時の電源確保のための大容量電源車の配置などに加えて、緊急時の実効体制や手順書の整備も行われています。
あわせて、安全対策の実効性を担保するために、実地訓練や総合訓練を繰り返し実施し、習熟度の向上に努めていると聞いています。
現在実施されている、原子力規制委員会の適合性審査においても、これらのシビアアクシデント対策が有効に機能することも含めて厳格な審査が行われているものと認識しています。
●米田県議
これまでの多くの原発裁判の判決は「原子炉設計基準を充たしていれば安全」というロジックでなされていました。福島原発事故は、そのロジックが間違いであったことを示し、今回の判決はその反省にたってのものです。新しい「規制基準」も安全性を保証したものではなく、規制委員会自身も「リスクは残る」と述べています。
原発を動かすことは、このリスクを敢えて受け入れることです。そういう国民的な合意、判決でいえば福島原発事故で実際に検討された避難範囲250キロの住民の合意抜きに、原発再稼動は不可能と思いますが、知事にお聞きをいたします。
■知事
国民的な合意や、原発から半径250キロメートル圏内に居住する住民の合意抜きに原発再稼働は不可能ではないかとのお尋ねがありました。
これまでも申し上げてきましたとおり、原発につきましては、その依存度を徐々に徐々に引き下げていくべきだと考えておりますが、その過程においては、現実的に利用可能な料金による電力供給が困難となる恐れがあることから、やむを得ず原発を再稼働せざるを得ない時期や場面が出てくる可能性は否定することはできません。しかし、仮にそうなった場合でも、安全対策が万全であることが大前提であると考えております。
本県においても、ひとたび伊方原発で事故が起これば、その影響を直接的、間接的に受ける恐れがあることから、伊方原発の安全確保には非常に強い関心を持っており、福島原発のような事故は絶対に起こしてはならないという強い思いを持っております。
そのため、四国電力に対しては、勉強会などを通じて、南海トラフの巨大地震による影響なども含めた安全対策について、詳細な説明を求め、徹底した安全の確保を行うよう、今後とも強く要請を行ってまいります。
そして、何よりも国において、原発の安全性について、様々な角度からの検証を徹底していただき、新規制基準に該当しない、安全性の確保されない原発は稼働させないとの姿勢を堅持していくべきだと考えております。
【知事の政治姿勢③/地方教育行政法「改正」】
●米田県議
次に、地方教育行政法の改正について、知事並びに教育長にお伺いします。
地方教育行政法改悪が強行されました。安倍内閣は、「改正」の理由を大津のいじめ事件を引き合いに「教育長と教育委員長の責任と権限の明確化」「迅速な対応を可能とすること」などとして改悪をすすめようとしてきましたが、国会審議では、何人もの参考人が「多くの教育委員会は本当に責任を持ってやってきたし、迅速にも処理してきたと思っております」と述べ、下村文科大臣も「多くの教育委員会はうまくいっていると聞いているし、私もそう思う」と答弁するなど、立法の前提そのものが崩壊しています。まさに政治的思惑での「改悪」です。その内容は、地方の大まかな教育方針である「大綱」を国の教育振興基本計画を参酌して定めること、首長が主宰する「総合教育会議」を新設すること、教育委員長を廃して、首長が新教育長を直接任命罷免できるようにするなど、国と首長による地方教育行政への政治支配を強化するものとなっています。国会審議の中で、教科書採択や学力テストの結果の公表など教育委員会の権限である事項について、教育委員会の同意がなくても、首長が勝手に「大綱」に書き込めることも明らかになりました。
教育への政治介入を強めることには、首長が変わるたびに、教育方針が変わり、教育現場に混乱をもたらすなど強い批判の声が出されました。子どもの権利・教育・文化全国センターが実施した全国の教育委員へのアンケートでは、68%が反対の意思をしめしています。
こうした懸念、不安の声をどう受けとめているのか知事、教育長にそれぞれお聞きをいたします。
こうした批判の声を反映し、国会審議を通じて、教育委員会の専権事項にかかわっては教育委員会に決定権限があること、首長との調整において合意しなかった事項については「大綱」に記載されたとしても尊重の義務がないことなど重要な確認がされました。また、総合教育会議について「相互の役割・権限を尊重しつつ、十分に協議を行い、調整を図ること」などが付帯決議に盛り込まれました。
教育長は、就任にあたり、「現場の教員が誇りやモチベーションを保って仕事をできる環境づくりをしたい」と述べるとともに、「教育には政治がからまない方がよい」と述べていますが、きわめて大事な視点だと考えます。政治的意図で教員が評価されたり、教える内容が偏ったりすれば、教育は崩壊をします。その最大の被害者は子ども達です。
教育は政治からの独立性を持って営まれるべきと思いますが、教育長にお聞きします。
教育現場、教育委員会の意思を尊重して、その環境整備などで支援することに首長の役割があると思うが知事にお聞きをいたします。
■知事
地方教育行政法の改正に係る懸念や不安の声をどう受け止めているのか、とのお尋ねがございました。
教育は、個人の精神的な価値の形成に直接影響を与える営みであり、その内容は、特定の党派的勢力から影響を受けることなく、中立公正であることが求められます。教育の政治的中立性は私としても非常に重要なことであると考えております。
今回の地方教育行政法の改正は、昭和31年に現在の制度が形作られてから、およそ60年ぶりの大きな改正となります。そのため、この改正に対して、不安や懸念をお感じの方々もいらっしゃると思いますが、今回の改正では、首長が教育に関して教育委員会と連帯して責任を負う仕組みとするとともに、教育委員会を執行機関として残すなど、教育の政治的中立性を確保するための仕組みもしっかりと構築されているところであります。
教育において、この政治的中立性を確保することも大切ですが、併せて、教育に民意をさらに反映し、責任を明確にして施策を着実に実行していくこともまた極めて重要なことであります。
私としては、今回の法改正は、両者を共に考慮したものとして評価できるものと考えております。
今後、首長と教育委員会が教育の政治的中立性の重要性を常に念頭に置きながら、総合教育会議などで、それぞれの権限と責任に基づき、密接にコミュニケーションを図り、連携して教育行政を推進してまいりますことで、教育に対する住民の期待に応えていくことが大切なことだと考えております。
■知事
次に、地方教育行政法の改正に係る首長の役割について、お尋ねがございました。
私は、住民による選挙で選ばれ、自治体を代表する立場にある首長が責任を持って、教育に民意を反映させ、住民の期待に応えていくことが、重要であると考えております。
その意味で、今回の法改正によりまして、首長が教育行政に連帯して責任を負う仕組みが構築されたことは、大きな意義があると考えております。
本県ではこれまでも、私と教育委員会が密接なコミュニケーションを図りながら、学校施設の整備や教職員の定数などの教育環境を整えることに加え、児童生徒の学力や体力の向上、不登校をはじめとする生徒指導上の諸問題など、教育課題の解決に連携して取り組んでまいりました。また、児童生徒の健全育成に向けて、「高知家の子ども見守りプラン」のもとで、知事部局と教育委員会、警察本部が連携して総合的な取り組みも推進してきたところであります。
こうしたことに加え、新たな教育委員会制度におきましては、総合教育会議において、教育の振興に関する施策の大綱をはじめ、教育条件の整備などの重点的に講ずべき施策、児童生徒の生命にかかわる緊急な場合に講ずべき措置などを知事と教育委員会が協議・調整することとなっております。
この会議の場で、先ほども申し上げましたとおり、教育委員会とこれまで以上にコミュニケーションを図り、ベクトルを合わせながら施策の推進を図りますことで、さらなる本県の教育の振興につなげてまいりたいと考えているところでございます。
■教育長
まず、地方教育行政法の改正に係る懸念や不安の声をどう受け止めているのか、また、教育の政治からの独立性について、お尋ねがありました。関連いたしますので、併せてお答えいたします。
教育は、個人の精神的な価値の形成に直接影響を与える営みであり、その内容は、特定の党派的勢力から影響を受けることなく、中立公正であることが求められていることから、教育の政治的中立性は非常に重要なことであると考えております。
今回の法改正では、首長が教育長を直接任命することや総合教育会議で首長と教育委員会が協議・調整を行うことなどが制度化されておりますことから、政治的中立性の観点からご心配やご懸念の声があるかもしれませんが、教育委員会を引き続き執行機関として残し、その職務権限も従来どおりとするなど、教育の政治的中立性を確保する仕組みがしっかりと構築されております。
そうした仕組みの中で教育長は、教育行政の責任者として、主体的に役割を果たすことを基本とした上で、住民による選挙で選ばれ、自治体を代表する立場にある首長と、総合教育会議などの場で、しっかりとコミュニケーションを図り、連携しながら教育行政を進めていくことが重要だと考えております。
【知事の政治姿勢④/農業規制改革案】
●米田県議
次に、農業規制改革案について知事にお伺いします。
国連は今年を国際家族農業年と定めました。その趣旨は、家族農業や小規模農業が、食料生産だけでなく国土保全、生物多様性の維持、文化伝承などでも大きな役割を担っていること、特に経済危機で失業率が高まる中で小規模農業の雇用調整力は重要な役割をもち雇用創出力もあり人口扶養力も高いものがあること、また石油などの資源依存度も低く、環境への負荷も小さいことなど社会的役割を高く評価しています。そして国連加盟各国に対し、小規模家族農業が今後も存続しその役割を果たせるよう積極的な政策を策定し、必要な予算措置を講じることを勧告したのであります。しかし安倍政権が進めようとしている農政改革はこの様な国連の動きに反して農地の集約化と規模拡大に向け企業の農業生産への参入を推進する為の規制緩和を行おうというものです。
安倍政権が進める農政改革は国際家族農業年の意義、取り組みに逆行するものと考えますが、どう認識されているのか伺います。また国連の勧告もふまえて、本県の主流でもある小規模家族農業を存続させるために今後どのような対策を強めていくのか、知事のお考えをお聞きします。
■知事
安倍政権が進める農政改革への認識と、小規模家族農業を存続させるための対策についてお尋ねがございました。
「国際家族農業年」は、家族農業に象徴される小規模農業が食糧安全保障や自然環境、農業の持続性などの面で大きな役割を果たしていることに着目し、国際規模で小規模農業が直面する課題などについて議論を交わし、飢餓の根絶などに対応していこうとするものであります。
今般の農政改革では、農業への企業参入や経営の大規模化といった側面がクローズアップされておりますが、我が国の農業経営体の大半は家族経営が占めており、その役割は非常に大きいものがあります。安倍総理ご自身も、今年3月の参議院予算委員会において、「私たちの政策は家族経営を否定しているものではない」「しっかりと支援していきたい」と発言しておられます。
こうしたことを踏まえますと、国の農業政策が国際家族農業年の意義に逆行するようなことには、恐らくならないであろうと認識しておりますし、そういったことがあってはならないと考えております。
本県では、生産条件が厳しく、規模拡大が困難な中山間地域が多いことから、単なる効率化という視点ではなく、小規模な家族経営体が中心となって、地域がまとまっていくことが大事であります。
そのため、産業振興計画のもと、まとまりのある産地づくりの取り組みや、高齢化などにより農地の維持が困難となった地域では、集落営農の推進に取り組んでいるところでございます。
他方、本県農業の足腰を強くするためには、次世代施設園芸団地に代表される先進技術を取り入れた大規模経営の推進もまた重要であります。
そのため、今年4月に開設しました農業担い手育成センターにおいて、今後、本県農業を支える先進技術を学んだ新たな担い手の確保・育成に取り組むこととしております。
いずれにしましても、この農業年で言われる小規模農業の有する価値、及び、担い手の多様性という点を考えますと、本県のめざす農業政策と根本的に相通ずるものがあると思っております。規模の大小や経営の形態を問わず、多様な担い手が地域で安心して農業を続け、農業・農村社会を維持・発展できるよう、今後ともこうした取り組みを着実に進めてまいります。
●米田是県議
さらに政府の規制改革会議が5月22日に提出した「農業規制改革案」は、農業協同組合や農業委員会制度の解体、営利企業の農地所有の解禁など、家族経営とその組織を基本とした今までの農業政策の在り方を根本から覆すものと言わざるを得ませんが、何点かお聞きをします。
まず、市町村農業委員会の公選制を廃止し首長の任命制に改変することや行政庁への意見・建議を業務から除外させる事などは、農業委員会を市町村長の下請け機関化させ、農地所有者や農家の参加を排除し農業委員会の独自性をなくすことになると考えますが、御所見を伺います。
次に、中央会制度を廃止し、全国農業協同組合連合会は株式会社化するとの当初の「改革案」は、国民的な批判を受けて一部見直しがされたものの、その本質、ねらいが変わるものではありません。まさに系統組織の解体であり、総合農協という日本農協運動の大事な特徴を壊すものでもあります。さらに単位農協の事業から信用、共済事業を取り上げ、委託、窓口業務に限定することは、今まで組合員が作り上げてきた貴重な資産を金融資本や多国籍企業に明け渡すことになり、また単位農協の大切な財源や組合員同士の助け合いを奪うことにつながり、単位農協自身存続できないことにつながるのではないか、ご見解を伺います。
最後に、いま農家が求めている改革は、営農指導の充実、農産物の価格安定、地域農業の担い手の確保などであり、農家、組合員とともに農協自ら改革をすすめることです。しかし今回の「農業規制改革案」は、日本共産党紙智子議員の国会質問に対して後藤田農水副大臣が「農業関係者の要望から出されていない」と答弁しているように、農業関係者を無視したもので重大です。今回の「農業規制改革案」をどう受け止めているのか、また高知県農業、小規模家族農業を守る立場で国に対して強く提言を行っていくべきと考えますが、ご所見を伺います。
■知事
国の農業に関する一連の改革についてのお尋ねがございました。関連しますので、併せてお答えいたします。
政府は、規制改革会議から提出された答申を受け、昨日、農協組織の見直しなどを盛り込んだ「規制改革実施計画」を決定し、また昨年12月に策定された「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改定しました。
まず、今回の見直しの一つである「農業委員会の見直し」についてお答えをいたします。
農業委員会は、地域の優良農地の確保や農地の利用調整、遊休農地の解消、地域の農業者の声を農業施策に反映させるための活動などを行っており、地域農業の維持・発展に大きく貢献している行政機関であります。
近年、農業者の高齢化や次代の後継者問題、受け手を必要とする遊休農地や耕作放棄地の増加など、我が国の農業を巡る環境は厳しい状況にあります。
また、今年度から、「農地中間管理事業」により、担い手への農地集約化を大幅に推進することとしており、農業委員会の主たる使命であります農地利用の最適化という役割は益々重要になってきております。
今回の見直しは、農業委員会の機能を、こうした役割に特化させることを目的としているものと理解しております。
しかしながら、例えば、農業委員会の選挙制度を廃止することにより制度が恣意的にに運用されるのではないか、農業者の声が施策に反映されなくなるのではないか、などといった現場からの懸念の声もありますので、今後の制度設計にあたっては、このような懸念が払拭されるよう、国にはしっかりと検討していただきたいと考えております。
次に、農業協同組合の見直しについてお答えをいたします。
これまで、農協中央会を中心とした農協系統組織は、県と一体となって産業振興計画の推進に取り組むとともに、営農指導はもとより、農産物の共同販売や資材の共同購入など、本県の農業や組合員にとって、大変重要な役割を担っております。
また、中山間地域では、地域住民に欠かせない購買店舗や金融機関などの機能を発揮しており、農協が行う総合的な事業全体が地域社会を支える重要な仕組みとなっております。
今回示された改革の内容として、地域の農協が独自性を発揮して農業の成長産業化に全力投球できるよう、「中央会制度から新たな制度への移行」や、「全農等の事業・組織の見直し」などが求められております。
しかしながら、例えば、全農の株式会社化は、営利優先により不採算部門の縮小や廃止を招くのではないか、また、信用事業の譲渡は、収益の低下による営農指導事業の弱体化や、経営の効率化による不採算店舗の閉鎖などにつながるのではないか、といった懸念もあり、今後の議論の行方によっては、本県の農業や地域住民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあるものを含んでおります。
こうしたことから、今月3日に開催されました四国知事会におきまして、「これまでの地域農業や地域社会に対して果たしてきた農協等の役割を踏まえ、地方の意見も十分に聴き、中山間をはじめとする地域の農業・農村の衰退につながるような拙速な見直しとならないようにすること」との緊急提言を採択し、国に対して申し入れを行ったところでございます。
今後とも議論の行方を注視しながら、適切に対応していきたいと考えております。
【公共交通再編】
●米田県議
次に、公共交通再編について副知事に伺います。
土佐電鉄の暴力団問題を契機に県が設置した「中央地域公共交通再構築検討会」は、土電と県交通両社を特別清算し、事業を引き継ぐ新会社を10月に設立する再編スキームを確認し、新会社に対し県と12市町村がそれぞれ5億円ずつ都合10億円の出資を求めています。
県民は、公共交通を守るための新会社設立は余儀なしかなと思うものの、元土電会長西岡寅八郎県議の辞職以外、未だ政務調査費問題も含め全容解明がなされず、本来、暴力団との関りなど知りえる立場にあり、また、元県議の個人商店化した土電の経営実態も知りえる監督者としてあったにもかかわらず、その責任を果たしていたと言えない県行政の不作為に対する不信から、出資に釈然としない感を持つ方も多いと言われています。新会社は巨額の行政の出資、税金投入を前提に経営がされます。新たな公金を支出するには県民への説明責任が不可欠であり、それには、県民不信がある従前の土電対応の問題点を原因も含め明らかにする姿勢を示すことも含まれなければならないと考えます。
新会社の設立とそれへの行政の出資額の妥当性をどう県民に説明するのか。そして、この間の土電経営への県の対応をどう教訓にし、新会社の経営に生かしていくお考えなのか、お聞きをいたします。
■副知事
新会社の設立と行政の出資額の妥当性をどう県民に説明するのか、土電経営への対応を新会社の経営にどう生かしていくのかについて、お尋ねがありました。
この4月以降の再構築検討会において、両者の厳しい経営状況が明らかとなり、ともに単独での事業継続は極めて困難であるとの見解が示されたことから、両者の統合のあり方について検討を進めてまいりました。
その結果、安定した財務基盤を確保し、持続可能な公共交通を維持するためには、組織を一体化する経営統合が最も効果的であるとの考え方により、新会社を設立するという結論に至ったものです。
また、新会社に対する出資につきましては、新会社は設立時点において、金融機関からおよそ26億円から28億円の債権放棄等の支援を受けてもなお、実質債務超過の状態にあり、この債務超過の解消や今後事業を展開していくうえで必要となる安全・安心のための設備投資に要する費用などを検討した結果、出資の規模としては、10億円が必要と判断されたものです。
今回の新会社の設立と自治体による10億円の出資は、県民の通勤や通学など日常生活を支える基本的なインフラとして極めて公益性の高い公共交通を維持し、今後も継続し続けること。すなわち、「将来にわたって持続可能な公共交通の構築」をするために必要な支援だと考えます。
県民の皆様に対しましては、株主総会でのご判断を踏まえ、県議会はもとより、関係市町村の議会説明や各種の広報などを通じて説明を重ねてまいります。
土佐電鉄への県の対応についてのお尋ねでございますが、これまで土佐電鉄を含め、県内の交通事業者に対する交通政策上の指導・助言につきましては、適正に対処してまいりました。
特に、平成21年度からは、専任の理事職を置き、高知県公共交通経営対策検討委員会を設置するなど、公共交通事業者、県民代表も交え、積極的に議論を行い、事業者に対する助言、提案などを行ってまいりました。
新たな再構築スキーム案は、全額、行政が出資をする、いわば、県民の会社となりますので、県が出資という形でかかわっていくことになれば、これまでの立場に加え、県民の声をしっかりと伝えるなど、株主としての役割と責任を果たしてまいります。
●米田県議
公共交通中央地域にある12自治体にとっても新会社での住民の移動を確保することの必要性は理解をしているものの、わが地域の住民の足が確保されるのかどうか、また、不採算の地域生活路線維持のために補助制度を見直すとされているが、基礎自治体の市町村に新たな財政的負担がかぶさってくるのではないかとの不安を持っています。公共交通は、社会インフラでありその上に医療・福祉・教育をはじめとする住民生活があることを考えると、住み続けられる地域として再生するために、それが果たす役割が極めて大きいことは言うまでもありません。
住民の移動権を守る立場で路線確保を図るべきだと考えますが、どうお考えか。また、補助制度の見直しをどう図っていくのか、そして新たな財政負担への危惧に関してのお考えをお聞きします。
■副知事
路線の確保や補助制度の見直しをどう図るのか、また、新たな財政負担への危惧に関しての考え方について、お尋ねがございました。
今後の公共交通の再編にあたっては、県としましては、路線バスと路面電車の組み合わせにより、骨格となる幹線部分を確保し、多様な移動手段と組み合わせることで、面的な交通ネットワークを形成すること、公益性が高く、地域住民にとつて必要なバス路線については、行政の支援を含めて維持することを基本として、検討をすることとしております。
また、公益性が高く、地域住民にとって必要であるものの採算が取れない路線を、今後も将来にわたって維持していくためには、補助制度の見直しなど、行政として支援のあり方を検討していく必要があると考えております。
今回の再構築スキーム案は、事業者の経営努力や増収対策により一定の収支改善が見込まれており、両社がそれぞれ単独で事業を行うケースと比較して、行政経費は抑制される計画となっております。
路線バス事業の運営は、事業者の最大限の自助努力が基本となりますが、公共交通を取り巻く環境が今後さらに厳しさを増し、利用者の減少傾向が続くことが想定される中、将来にわたって路線を維持するためには、行政の負担が一定増加することは避けられないものと考えております。
●米田県議
検討会に両社が提出した事業再生計画案では新会社は3ヶ年目には黒字転換するとしています。それは地域住民の利用促進なくしてありえないことは自明の理です。「株主」となった県民が当事者として経営に関する意見が反映でき、徹底して住民ニーズにこたえる取り組みを保障する事が持続可能な公共交通として再生することにつながると考えます。
県や市町村を代表する役員配置の考え方と合わせ、路線や料金、各種サービスへの県民の声を活かした利用促進の取組みをどう進めていくのか、伺います。
■副知事
新会社の役員配置の考え方や県民の声を生かした利用促進の取り組みについて、お尋ねがありました。
今回、県といたしまして、「将来にわたって持続可能な公共交通の再構築」を実現するため、株主総会でのご判断が前提となりますが、出資という形で、行政としての関与を高めるという判断をしたところです。
新会社の役員構成などの具体的な内容につきましては、事業者と県、高知市などで構成される予定の「新会社設立委員会」で協議・検討されることになると考えております。
また、新会社が安定的な経営をするためには、多くの県民の皆様や観光客の皆様にご利用いただくことが必要となりますことから、利用者の意見を反映させることにより、使い勝手のよい路線やサービスを提供する必要があると考えております。
利用者のご意見をお聞きする機会は、事業者や市町村において、多くあると思いますが、県といたしましても、広く県民の皆様方のご意見をお聞きした上で「高知県公共交通維持活性化対策フォローアップ委員会」などを通じて事業者に対して必要な助言や意見を伝えるようにしていきたいと考えております。
●米田県議
交通運輸事業は、運転手などの運行従事者がいて、初めて成り立つ事業です。肉体的・精神的な状態、技術力が安全運行に直結します。事業基盤の強化や人材育成の土台として、安全・安心の労働環境の成立が求められます。これらの取り組みについての考え方をお聞きいたします。
■副知事
安全・安心の労働環境の取り組みについて、お尋ねがございました。
公共事業者にとって、安全・安心な運行の確保とは、何よりも優先されるべきものですし、そのための人材の育成や労働環境の整備の必要性についても論をまたないところです。
今回の検討会におきましても、両社の社長が、「社員の安全・安心に対する意識の高さ」は主張されておられましたし、厳しい経営状況の中にあっても、運行の安全・安心に関する投資には特に意を用いてきたとのお話もございました。
また、土佐電鉄におきましては、日本バス協会が認定する貸切バス事業者の安全評価認定制度で四国で3社しかない「二ツ星」を所得していることも報告がありました。
このように、両業者ともに安全・安心の確保につきましては、高いレベルで取り組みがなされており、これらの取り組みは今後も継続されるものと考えております。
なお、社員の労働環境など待遇面につきましては、先に申し上げました「新会社設立委員会」など社内において協議、検討されるものと承知をしております。
【大学の学費と奨学金問題】
●米田県議
大学の学費と奨学金問題について、知事にお伺いします。
異常に高い日本の学費の無償化と、給付制奨学金の一日も早い創設を強く願い質問をするものです。
13年の国立大学法人の授業料は、53万5,800円、入学金は28万2千円に達し、初年度納付金は81万7,800円、さらに私立大学の学費は、11年の平均データで授業料85万7千円余と、入学金、施設管理費含めて初年度納付金は131万4千円余にのぼります。高学費の実態は、とりわけ経済的に貧しい家庭の出身者はもちろん、全ての国民、子どもたちから「教育の機会均等」を奪うものとなっています。さらに進学、進路を保障すべき奨学金制度は、利用者の内7割が有利子の貸与となっており、まさに金融事業化しています。いま不安定雇用が広がり、雇用破壊が進むもとで「奨学金が返せない」という深刻な社会問題を引き起こしています。大学卒業と同時に数百万円規模の借金を抱えての社会人スタートが、希望ある青年と日本の未来をも奪うものとなっているのであります。
この間、日本民主青年同盟高知県委員会が、学費、奨学金などについて県下の学生実態アンケートを実施し207人から回答が寄せられています。これがその結果のまとめですが、これに基づいて質問したいと思います。
アンケート結果をみると、奨学金は予約などを含めると63%、6割を超えて利用している実態が浮き彫りになっています。実家からの仕送りの「ある」人が62%で月3万円が一番多く、「仕送りなし」が23%です。また、学生の約7割が「親に経済的な負担をかけている」ことを気遣いながら、奨学金がないと生活できない、アルバイトしないと生活できないと、と訴えるとともに、バイトのために学習時間を削ったり、授業を遅刻・欠席するなど学業への直接の影響も現れています。そして、学費を安く、教材費を無料に、返済不要の奨学金を作って、アルバイトの時給を上げて、など経済的負担の軽減を強く求めていることが明らかになっています。
直接の聞き取り調査も実施しています。
奨学金月3万円借りている2年生の女性。授業料は親が払い、3万円の奨学金と月3~4万円のアルバイト収入で生活。二人の弟も大学で家は大変。バイトは週3回、終わって家に帰ると、疲れて寝てしまい課題もできなくなる。不安なことは本当に奨学金を返せるのかと言うこと。怖くて総額を数えたことはない。借金なので、できるなら借りたくなかったが、家族と相談の結果借りた。でも奨学金がないと生きていけない。でも将来が不安と、話しています。
無利子奨学金を月5万円借りている4年生の女性。奨学金を借りないと大学に行けなかった。奨学金とアルバイトで生活。服は買う前に悩んだら買わない。マイボトルのお茶を持参し、自炊は毎日。もしお金があれば大学院で勉強もしたかった。将来のことを考えても結婚どころではない。自分たちも生活できないのに子どもがほしいとは思わない。病気になって奨学金が返せなくなるのが一番不安だ。奨学金で儲けるのはおかしいし、国がもっと教育にお金をかけるべきだと思う。自己責任はおかしい。だから少子化になると思う、と訴えています。
こうした学生の生活実態や学費・奨学金への願いをどのように受け止められるのか、また直接学生に会い話を聞く場をもってはどうかと思いますが、知事の御所見を伺います。
■知事
次に、大学生の厳しい生活実態や学費・奨学金への願いをどのように受け止めるのか、また、直接学生から話を聞く場をもってはどうかとのお尋ねがございました。
我が国の大学の授業料は、諸外国と比較しても高い水準にありますし、近年の経済状況を背景に、家庭における高等教育段階での教育費負担は増加をしております。
こうした中、国におきましては、高い志を持って大学への進学を望む学生が、経済的な理由で進学を断念することのないよう授業料減免や奨学金に係る予算を拡大するなど学生への経済的支援を充実させております。
また、県におきましても、大学改革に合わせて県立大学の授業料減免枠を撤廃したり、文化学部夜間主コースの授業料を半額にするなど、学びの機会の保障、拡大に向けた取り組みを進めております。
家庭の経済状況にかかわらず、意欲あるすべての子どもや若者たちが安心して教育を受けることのできる環境を整えることは非常に重要であり、我が国の将来の社会、経済、文化の発展を支える人材育成という観点からは、こうした学びを社会全体で支えることが必要であると考えております。
また、これまでも医師や福祉職を目指している、或いは防災活動に取り組んでいる県内の大学生や専門学校生の皆さんと意見交換を行っております。今後、そういった場で学生生活の実態などについても率直な意見交換を行っていきたいと考えております。
●米田県議
1979年の国会批准以来、長い間留保されていた「国際人権A規約」第13条2(b)および(c)が国民的世論の中で、2012年9月11日留保が撤回されました。これは中等教育、そして高等教育の「特に、無償教育の漸進的な導入」を規定しており、拘束されることになったのであります。いまOECD加盟34カ国中17カ国が大学授業料無償化となり、無償化でない残り17カ国のうち16カ国に給付制奨学金があります。しかし学費無償も給付制奨学金もないのは日本だけであり、まさに教育後進国なのであります。いま世界の流れは、学費は無償、奨学金は給付が当たり前となっています。
知事は、留保撤回をどう受け止めているのか、また高知県の実態をふまえ、「無償教育の漸進的な導入」を国に積極的に提言すべきと考えますが、合わせてお伺いします。
■知事
次に、国において、国際人権A規約の中の「無償教育の漸進的な導入」に関する規定の留保を撤回したことについての大学教育に関する受け止めと、国に対する働きかけについてお尋ねがございました。
国におきましては、国際人権A規約の留保撤回以降、大学の授業料減免や無利子の奨学金に係る予算の拡充、所得連動返還型奨学金制度の導入など高等教育段階での経済的支援の充実が図られております。
また、私も委員として参加している教育再生実行会議においても、来月とりまとめられる予定の第5次提言では、国及び大学は、授業料減免や所得連動返還型奨学金等の支援策を一層推進するといった内容を盛り込むよう議論が進められているなど、国においても改善の方向で取組が進められていま
す。
将来を担う子どもたちの学びを支えていくということや、夢や志を持つ子どもたちの学ぶ機会をしっかりと保障するということは極めて重要なことでございます。
私は、日本が今後も成長し、安全で安心して暮らせる社会を維持していくためには、教育への投資は決して惜しんではならないと思います。少子化対策への投資とともに未来に対する投資と位置付け、国においても新たな財源も確保しながら積極的に対応していただくことが重要であります。
教育再生実行会議の場におきましても、私はこの点を強く強調してまいりました。今後も、全国知事会次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして政府への政策提言のその他の場などでも申し上げていきたいと考えております。
●米田県議
次に、高知県立大学、高知工科大学に関して文化生活部長にお伺いします。
まずそれぞれの、日本学生支援機構の第1種、第2種奨学金の貸与の推移、また貸与にならなかった申込者数とその主な理由についてお聞きします。
■文化生活部長
高知県立大学と高知工科大学における日本学生支援機構の奨学金の貸与状況についてのお尋ねがございました。
無利子であります第一種奨学金につきましては、平成21年度の学部生で、高知県立大学が230件、高知工科大学が221件でございましたが、昨年度にはそれぞれ、301件、343件と両大学とも増加している状況でございます。
有利子でございます第二種奨学金につきましては、毎年増減はありますが、この5年間は、高知県立大学が、350件から400件程度、高知工科大学が500件から700件程度で推移をしております。
また、申し込みをしたにもかかわらず不採用となった件数につきましては、第一種、第二種合わせで、両大学合計で毎年10件程度あり、その理由としては、収入基準や学力基準を満たしていなかったり、大学ごとの推薦枠を超過しているためでございます。なお、ここ数年、奨学金事業予算は大きく増加しており、昨年度は大学ごとの推薦枠の超過による不採用はございませんでした。
●米田県議
授業料免除制度については、一定の改善を図られているとのことですが、その内容とそれぞれの実施状況の推移について伺います。
■文化生活部長
両大学の授業料免除制度についての見直し内容と実施状況の推移についてお尋ねがございました。
高知県立大学は、平成23年度まで、授業料総収入の約4%を授業料免除の上限枠としておりましたが、平成24年度より要件を満たす全ての学生に対して免除を行うこととし、その免除枠を撤廃をしております。なお、平成21年度44件であった免除件数は、昨年度は79件と増加をしております。
一方、高知工科大学は、私立大学の時から、学資負担者の死亡や失職など、家計の急変者に対して免除を行ってきておりましたが、平成22年度からは、他の国公立大学の免除要件と同様、経済的理由により授業料の納付が困難であり、学業成績が優秀な者を対象とするよう制度を見直しております。平成21年度には1件であったものが、平成22年度には22件となり、昨年度は38件とこちらも大きく増加をしております。
●米田県議
先に指摘をしました「無償教育の漸進的な導入」との立場に立脚したさらに抜本的な改善が必要だと考えます。学力基準の緩和・撤廃、日本学生支援機構等の奨学金貸与を前提にすることの見直しなどを検討すべきと思いますが、御所見を伺います。
■文化生活部長
両大学の授業料減免の要件であります学力基準の緩和や撤廃、また奨学金貸与を前提とすることの見直しなどを検討すべきではないか、とのお尋ねがございました。
ほとんどの子どもたちが進学する義務教育に近い高等学校段階における減免制度は、学びの保障という観点から経済的要件のみで対象とすることが望まれます。一方で、自ら進路として選択し、就学する大学段階での授業料減免制度は、意欲と能力のある学生が安心して修学できる環境を整備する
ための制度でございまして、学びへのインセンティブを高める観点も求められております。さらに、経済的支援の制度として、大学においては、まずは貸与型の支援である奨学金を活用していただきたいと考えております。
このため、大学段階においては、学力基準や奨学金の貸与を受けているという要件は一定必要であると考えておりますが、現在、国において学生の経済的支援のあり方について検討を行っておりますので、今後の国の動向を注視していきたいとこのように考えております。
【第二問】
●米田県議
実態について、知事も再生実行会議議の一員でありますし、次世代のリーダーとしても頑張っておられるわけで、さらにそういう生の声を、実態を反映をするということで、そういう問題でも学生と会いましょうというふうに答えられたのか、ちょっとよう聞き取りませんでしたが、それをお聞きしたいのと。確かに、奨学金問題が社会問題にもなってまして、色んな改善も国も検討せざるを得ない所にきています。しかし、まったく不十分な中身なんですね。もともと有利子制度というのはなかった訳でして、奨学金に、導入された時に、将来的には撤廃するということまで言ってたんですよね、それが今、全奨学金を受ける方の7割が有利子になってますから、少々の改善ではやはり、当初の思いがかなえれない訳で、そういう点で本当に未来の投資ということからしたときに抜本的な改善が求められますので、ぜひ、学生のリアルな意見も聞いていただきたいし、そういう声を届けることについて再度、お聞きしたいと思います。
■知事
学生と会うのか会わないのかという話でありますが、先生ご指摘のみなさんと会うということを特定した訳でなくて、幅広く色んな方々のご意見を聞いてみたいですねと、そういうご意見を申し上げたつもりでございましたけれど、先生から再度そういうふうにお話もいただきましたし、特に私、後者の方のお話にちょっと興味があります。ですから、ぜひお話を聞かせていただければとそのように思います。
【高等学校再編問題】
●米田県議
次に、高等学校再編問題について教育長に伺います。
この間、南高校関係者を対象にした教育委員協議会が2回行われましたが、引き続き強い批判と反対の声が寄せられています。「署名をいっぱい集めたのに何も変わっていない。署名をしてくれた人に責任もてない。統合案だけでなく、第2案、第3案を絶対出して下さい」と涙ながらに母親が訴えていました。「あくまでたたき台」「丁寧な議論を」と言いながら、結局「統合ありき」「事実上の廃校ありき」のすすめかたは、到底認められるものではありません。 関係者の130項目を超える意見への、県の回答にもそのことが現れていると思います。いくつか紹介し、個々お聞きいたします。
「適正な規模」について、再編振興アンケート結果は、7割の保護者・生徒が一学年2~5学級を希望している、との意見に、アンケートは中山間地域を中心にとった結果だからと、高知市中心部での結果とは違うかのように反論をしています。そうならば、改めて高知市、また周辺部を含めたアンケートを実施すべきではありませんか、お伺いします。
■教育長
高知市とその周辺部を含めて、高等学校の適正規模に関するアンケートを実施すべきではないか、とのお尋ねがございました。
議員ご指摘の県立高等学校再編振興に係るアンケートは、有識者等による県立高等学校再編振興検討委員会にお示しするために、県全体の高等学校の適正規模を判断する基礎資料として、平成23年9月に実施をいたしております。
このアンケートの趣旨は、中山間地域が大部分を占める本県の状況を踏まえた高等学校の適正規模に関する生徒や保護者の意見を把握するということでございました。
こういったアンケートの結果も参考にしながら、再編振興検討委員会からは、高等学校の適正規模を、1学年4~8学級という報告をいただいております。
この報告を基に、今回の再編振興計画のたたき台では、中山間地域を含めた県全体の適正規模を
1学年4ないし8学級としたうえで、過疎化が著しく、近隣に他の高等学校がない学校は、地域の学びの機会を保障するため、特例として1学年1学級以上を最低規模として学校を維持することとしております。
一方、高知市及びその周辺地域の中央部においては、検討委員会の報告書を踏まえ、さらに突っ込んだ検討を行った結果、生徒が切磋琢磨できる、より充実した教育環境を維持するために、1学年6学級以上の学校規模の維持に努めることと判断したものでございます。
したがいまして、高知市とその周辺部を取り出して、あらためて、アンケートを実施する考えは、もっておりません。
●米田県議
6学級以上でないと十分な習熟度別授業などができない、と回答していますが、13年2月の検討委員会報告では、習熟度別学習指導などを行うためには一学年4~8学級必要としているではありませんか。また高知市などは6学級以上とする明確な根拠はありません。4、5学級についても、必要なところは行政が責任もって条件整備を図るべきであり、その検討を行うべきではありませんか、お伺いします。
■教育長
1学年当たり4ないし5学級になると見込まれる高校であっても、必要なところは行政が責任を持って条件整備を図るよう検討すべき、とのお尋ねがございました。
今回お示しした、再編振興計画のたたき台では、生徒数が減少する中においても、一定の生徒数の確保が見込まれる高知市及びその周辺部地域の中央部においては、6学級規模の学校を維持することで、教員数の加配による習熟度授業の実施などにより、より良い教育環境を維持していくこととしております。
学校規模による教育環境を比較いたしますと、1学年6学級規模の学校であれば、その学校規模に応じ教員が配置され、習熟度別授業は1学年7科目程度を実施することができますし、地理歴史科・公民科や理科などの専門科目をそれぞれの専門教員が指導できます。その結果、生徒の進路や課題に応じたきめ細かな学習支援が可能となります。また、生徒数が多い学校であれば、団体競技をはじめ、多くの部活動を行うことが可能となり、切磋琢磨しながら互いに成長できるようになりますし、部活動の数が増えることで、生徒の希望や適性に応じた選択の幅が広がります。
一方、1学年4学級の学校となりますと、教員数が少なくなることから、習熟度別授業は1学年3科目程度しか実施できませんし、地理歴史科・公民科や理科などの専門科目にそれぞれの専門教員を配置することができなくなり、きめ細かな学習支援が行き届きにくくなります。また、部活動につきましても、多人数の団体競技は、例えば、野球やサッカーかどちらかしかできない状況となるなど、生徒が望む選択肢の幅を狭めていく状況になります。さらに、3学級規模の学校ともなれば、習熟度別授業は、1学年2科目以下の状況となるなど、生徒が充実した教育環境で学ぶための条件はさらに厳しくなってまいります。
現在、高知市内には1学年7学級規模の学校が4校、6学級規模の学校が2校ありますが、このまま、何もせずにいますと、生徒数が減ることで、20年後には全てが5学級以下となり、1学年4学級や3学級の規模の学校も増えてまいります。このことによる教育環境への影響は大変厳しいものが予想されます。
こうしたことから、統合により1学年6学級以上の学校規模を維持していくことが必要と判断したものであり、何卒ご理解を賜りたいと思います。
一方で、今回のたたき台によっても、1学年6学級以上の学校規模を確保できない学校も多く、中には1学年1学級となるような学校もありますので、それらすべての学校で生徒たちが将来の目標に向かって挑戦できるような教育環境の充実にしっかりと取り組んでまいります。
●米田県議
また部活動等は大事な教育活動の一環ではありますが、特別活動含めて学校規模が小さくなれば学校の活力が弱くなっていく、6学級以上ではより活気あふれる学校づくりが可能、と回答しています。
しかし部活動等のあり方をもって、しかも6学級を基準に、抽象的な学校の「活力」「活気」について云々できるものではありません。また先のアンケートは高校選択の要素に部活動と答えた人は1~2割となっており、あくまで高校教育の目的から見て副次的なものです。部活動を理由に一つの学校を廃校することは県民の納得を得られるものではないと考えますが、お聞きをいたします。
こうした対応を見ると「統合案」に強く固持するばかりで、県民の思いを大事にして誠実に対応しているとは言えません。
■教育長
部活動を理由に統合することは県民の納得を得られるものではない、とのお尋ねがありました。
今回お示しした、たたき台では、生徒数が減少する中においても、一定の生徒数の確保が見込まれる高知市及び周辺部地域の中央部においては、6学級規模の学校を維持することで、教員数の加配による習熟度授業の実施などにより、より良い教育環境を維持していくこと、社会や経済の急速なグローバル化に伴う、幅広い教養や課題解決能力などを備えたグローバル人材を育成していくために、中高6年間の一貫した教育プログラムを導入し、より効果的な教育を実施すること、津波によって長期浸水が予想されている地域の高等学校は、最大限のリスクを想定し、必要な対策を講ずることにより、将来の子どもたちが安心安全に学ぶことができる環境を提供すること、を柱として統合案をお示しをしております。
このことに加えまして、部活動につきましても、高校生にとって、お互いが切磋琢磨し、人間性や社会性を養ううえで、また、生徒の学習意欲の向上や責任感、連帯感を育むうえで大きな役割を果たしておりますので、学校の規模を判断するうえでの重要な一つの要素になるものと思います。
●米田県議
2月県議会で議長に提出された1万5千名をこえる統合計画案の撤廃を求める陳情、そしてその後採択された高知市議会での請願と県知事、教育長に対する意見書決議は、民意そのものであり極めて重いものがあると考えますが、どう受け止めているのか改めてお伺いをいたします。
■教育長
統合計画案の撤廃を求める県議会議長への陳情と高知市議会の意見書等は、極めて重いものがあると考えるが、どう受け止めているのか、とのお尋ねがございました。
1万5千名を超える陳情への署名や高知市議会からの意見書等につきましては、たいへん重く受け止めております。
そのため、教育委員会において丁寧な議論を重ねることが必要であると考え、本年5月から教育委員協議会において、統合案の対象となっている学校関係者の皆様や高知県小中学校長会、高知県小中学校PTA連合会、高知県高等学校PTA連合会の方々などに、より具体的で分かりやすい資料を示しながら丁寧な説明と意見交換を重ねているところでございます。
高知南中学校・高等学校や高知西高等学校の関係者との意見交換の場では、ご出席いただいた皆様からは、南中・高等学校関係者を中心に「統合にはあくまで反対である」とのご意見がある一方で、西高校の関係者からは「統合後の学校の姿として、グローバル教育への取り組みは是非進めてほしい」という声もいただいております。また、検討をすすめる上での具体的なこととして、「別の統合の仕方を検討してほしい」「高知南中高の生徒へのケアを充実させてほしい」というご意見もいただいております。
こうしたご意見につきましては、しっかりと受け止めさせていただいたうえで、今後の検討に生かしてまいります。
●米田県議
また、西高校関係者の協議会では、まずは南中高の生徒や保護者に納得してもらえる案を出してほしい、それからの話だ、とPTA会長が発言をされています。全く道理のある話であり、先に南中高の納得がなければ西校との話も進まないということでもあります。この発言をどう受け止めているのか、「たたき台」に対する第2案、3案を誠実に提示すべきではありませんか、今後の対応も合わせてお聞きをいたします。
■教育長
高知南中学校・高等学校関係者の納得を得ることや「たたき台」に対する別案を示すことについて、お尋ねがございました。
今回のたたき台につきましては、高知南中学校・高等学校の保護者の皆様などから、「なぜ、高知市内で統合が必要なのか」、「なぜ南中高なのか」というご意見をいただいておりましたので、より具体的で分かりやすい資料を示しながら丁寧な説明と意見交換を重ねているところでございます。
1回目の協議の際には、「30人学級にすれば今のまま維持できるのではないか」など134項目に及ぶご意見やご質問をいただき、これにお答えするために、先日、2回目の協議の場を持たせていただいたところでございます。
また、高知南中学校・高等学校との2回目の場では、「統合をするとすれば、高知南と高知西の生徒がいっしょに学ぶような統合案はだせないのか」などのご意見をいただきました。
現在、そういったご意見も踏まえ、高知南中学校・高等学校と高知西高等学校の関係者のどちらからも、ご理解いただけるような、現在のたたき台で示している案に代わる統合の仕方がないのか、検討中であり、できるだけ早く、教育委員協議会でお示しをし、ご意見をいただくことを考えております。
【第二問】
●米田県議
たたき台に代わる案をというふうに言われましたけれど、それはどういう統合をするかという案を深めるという案もあるかと思いますが、合わせて現在の統合案ではないという案も含めた案も指されていると思うのですが、そういう理解でよいのか。
それとですね、一番やっぱり問題なのは、高知市とその周辺の子どもたちが多く通う高知市とその周辺の大改編ですよね、としたときに、やはり高知市の中学校長会、たぶん一度お話を聞いたとおもうのですが、私は厳しい意見があったというふうに伺っていますけど、ここのご意見もやっぱりよく聞くべきではないかというふうに改めて思いますが、その後どういう対応をされてきたのか、どうするのか、いうことですね。
もうひとつは、結局統合ありき、しかも、見切り発車ありきで、絶対に話を中断すべきではないですし、丁寧な議論というのは、やっぱり意見交換、お互いがやっぱり歩み寄っていく、そういう話し合いを粘り強くするということですから、期限を持って、あるいは入試のこととか色々持ち出して決して見切り発車をするべきでないし、そういう思いはあると思いますので伺っておきたいと思います。
■教育長
統合案の仕方を検討するということの中身についてのご質問がございました。私、申しました趣旨はですね、南中高等学校、西高等学校の統合そのものをということではございません。統合の仕方について今現在の考え方といたしましては、それぞれを入学した学校でそれぞれ卒業をしていいだくということを基本にした統合の仕方を考えております。そうなりますと、南中高等学校ではだんだんと最終的に統合するまでに生徒の数が減っていくということについてのご心配される声もございましたので、そういったことについてですね、別のやり方がないのか、そういうことを検討したいということでございます。
それから高知市の中学校長会からご心配されているご意見があるということでございますけれども、そういったご意見については、我々もお聞きしております。内容といたしましては、ひとつは県立の南中学校にですね、いま進学している子どもが、高知の南部に多いわけでございますが、そういった現在多く、高知市の南部地域から県立中学校に進学している子どもたちの行き先の問題ですとか、あるいは西高校のほうに県立高校が併設された場合に、西高校周辺の中学校において、これまで地元の中学校に入学する生徒がそういった新しい県立中学校に入学することで、地元の中学校に問題が起こるのではないかと、そういったご心配があるとお聞きしています。県立中学校については、そもそも広域から入学していただくということが基本でございますので、そういった基本はふまえつつ、地元の高知市内の中学校につきましては、高知市の教育委員会と連携しながら教育内容の充実を図ってまいりたいというふうに考えています。こういったことについては、高知市の教育長さんとですね、定期的な連絡会も開催しておりますので、そういった中でも議論させていただきたいというふうに思っております。
また、高知市の中学校長会にはですわね、会に県の教育委員会からも出席するような機会もございますので、そういったご説明もさせていただきたいと考えております。
それから再編の検討について、期限を設けることなく粘り強くということでございますが、三石議員にお答えしましたように、一定、そのいまの中学生が進路を決定するような時期の問題ですとか、あるいはいたずらに伸ばせないような事情もございますが、とはいいながら、丁寧に議論していくということは大変大事だと思いますので、見切り発車することなく、丁寧な議論はしていきたいというふうに考えております。
●米田県議
再編問題では決してゴールや出口を決めずにですね、真摯に話し合いをぜひしていただきたいと思います。高知市とその周辺も初めての重大な問題ですので、十分時間をかけて議論してください。
【子ども・子育て支援新制度】
●米田県議
次に、来年4月から実施されようとしている子ども・子育て支援新制度について知事に伺います。
同制度は、保育所をはじめ子育て支援をどう充実させるかという視点から議論がはじまったものではなく、経済成長戦略の一環としてスタートしました。国民的な反撃で、児童福祉法24条1項の市町村の保育実施義務は残りましたが、事業者と利用者の直接契約、企業参入を容易にする規制緩和など、保育を市場化することが基本となっています。
実施主体は市町村ですが、尾崎知事は知事会の次世代育成支援対策プロジェクトチームリーダーをつとめており、基本点な考えについてお聞きします。
新制度は待機児童解消を理由としていますが、市町村が保育所整備に二の足を踏んできたのは、国の定める基準が極めて貧困なためです。国基準では、保育料は3歳以上児で月額10万円を超える大変高い額となっています。また、今は一般財源化されていますが、「運営費補助基準」では、保育士の配置数が実態より少ない、保育士1人の人件費も400万円程度しかなく、多くの市町村が持ち出しを強いられてきました。
先日公定価格案がしめされましたが、国の低すぎる基準が改善され、市町村の超過負担を解消するのか、また子育て施策がさらに前進できる財政の枠組みとなっているのか、知事にお聞きをします。
■知事
子ども・子育て支援新制度に関し、まず、市町村の超過負担は解消するのか、また、子育て支援施策が前進できる財政の枠組みになっているのか、とのお尋ねがございました。
子ども・子育て支援新制度は、本格的な人口減少社会が到来する中、子どもを生み、育てたいという希望を持つ方を、国や地域を挙げて、社会全体で支援する新しい支え合いの仕組みを構築することを目指すものであります。
その仕組みの中で、子どもの最善の利益を図るために、子育て支援の中心的な役割を担う保育所や幼稚園、認定こども園などへの確実な財政支援は、大変重要なことと考えております。
私は、国の子ども・子育て会議に、全国知事会の次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして参加し、職員の処遇の改善や、保育士の配置基準の見直し、また、地域の子育て支援の充実などについて、強く発言してまいりました。
その結果、新制度においては、例えば、職員の処遇の面では、現在実施されている職員の勤務年数に応じる給与加算への更なる上乗せが図られております。
また、保育士の配置では、3歳児について、国の基準よりも手厚く職員を配置している施設に、加算措置が講じられるとともに、地域の子育て支援として保護者の相談に応じる補助職員を配置した場合の加算も新たに計上されるなど、新制度は、子育て支援施策の推進につながるものと考えているところです。
また、これまで保育士を手厚く配置するために、独自で財政負担を行ってきた市町村にとっては、今回の職員配置に関する加算措置により、財政負担の軽減にもつながるものと考えております。
なお、国からは、公定価格の細部について、保育所や幼稚園、認定こども園などからいただいている意見や要望も踏まえて、最終的な単価設定を行っていくとお聞きしております。
県といたしましても、今後の公定価格の決定に向けた動きを注視してまいりたいと考えております。
●米田県議
市町村の保育実施義務は残りましたが、保育所に入所できなかった人は、認定こども園や小規模保育など地域型保育の利用を市町村の斡旋をうけて直接契約しなくてはなりません。
保育の必要性について親の就労を基本に優先順位をつけますが、障害児をかかえて親のどちらかが就労していない場合や両親が不安定な非正規労働など貧困などのリスクを抱える家庭の点数が低くなり入所できない懸念があります。保育所に入所できない場合、他の施設では直接契約となり、施設側が利用者を選択するために入所はさらに困難になります。入所出来ても、保育料以外の上乗せ負担や質的に劣る条件での保育で我慢しなければなりません。例えば小規模保育のB型では保育士は半分でよい、C型では研修をうければ保育士でなくてもよいとなっています。
障害をもつ子どもやリスクを抱える家庭の子どもが、体制のしっかりした保育所で保育を受けられることが重要と思いますが、県としてどう考えているのか教育長にお聞きします。
■教育長
障害を持つ子どもや厳しい事情の家庭の子どもなどへの保育についてお尋ねがございました。
議員からお話がありましたように、すべての子どもが一人ひとりの状況に応じた適切な保育を受けることのできる環境を整備することは、大変重要であると考えております。
現在、市町村では、入所にあたり、子どもの障害や両親の不安定な就労など、いろいろなご事情のある家庭については、柔軟に受入れを行っているとお聞きしておりますが、保育所が定員に達しているときなどは、希望していても入所ができない場合がございます。
この場合、現在の制度では、保護者は、認定こども園など他の受け入れ可能な施設の紹介を市町村から受けるものの、入所申請等の手続きは直接施設に対して、保護者が行わなければならず、大きな負担がかかっております。
来年度からスタートする子ども・子育て支援新制度のもとでは、保育と幼児教育に関する制度が一本化されることにより、保育所や幼稚園、認定こども園への入所申し込みの窓口が一本化され、市町村は、保護者の希望に応じて、保護者の就労状況や子どもの実態を考慮し、適切に対応ができる施設を斡旋するなどの調整を行うこととなります。
また、子どもを受け入れる施設においては、利用の申し込みに対し、特別な場合を除き、応諾する義務が課せられております。
こうしたことから、支援を必要とする子どもそれぞれの状況に応じた施設の利用が図られるとともに、保護者自らが施設を探すといった負担も軽減されることとなります。
また、保護者負担金について、文房具代など利用料以外の費用徴収が行われる場合は、保護者世帯の所得に応じて、その一部を助成する市町村事業も実施されますことから、保護者の負担軽減も図られることになります。
県といたしましても、一人一人の子どもに応じた質の高い保育が提供されるよう、保育士等への研修の充実を図っていくことにより、これまで以上に充実した保育サービスの提供に努めてまいりたいと考えております。
●米田県議
厚労省が発表した2013年の保育所の死亡事故報告では、利用園児数に対する事故発生率は、認可外は認可保育所の45倍となっています。この点からも質の担保はきわめて大事です。
子どもに平等に良質の保育を提供することが重要と考えますが教育長にお聞きします。
■教育長
認可外保育施設も含めた平等で良質な保育の提供について、お尋ねがありました。
現在、県内に約100か所ある認可外保育施設につきましては、保護者自らの意志で、認可外保育施設を選択する方もいらっしゃるなど、認可を受けた保育所とともに地域の保育ニーズの一部を担っていただいております。
ただ、認可外保育施設については、設置基準がゆるく、また、公的な支援も少ないことから、受入体制や保育環境の面で課題を抱えているところもございます。
子ども・子育て支援新制度においては、認可外保育施設が条件を満たせば、認定こども園や地域型保育事業への移行ができますので、そうなれば県や市町村の指導・監督の実施とともに、公的な支援を受けることができるようになり、より良質な保育の提供につながるものと考えております。
そのため、県といたしましては、できるだけ多くの認可外保育施設が新制度に移行していただけるよう、該当施設の職員に必要な研修を実施するとともに、市町村に対しても、管内の認可外保育施設の実態を十分把握し、新制度への移行を進めていただくよう要請しているところでございます。
今後も、市町村と連携しながら引き続き移行を促し、保育サービスを必要とする全ての子どもに対して、質の高い保育・教育を提供することができるよう取り組んでまいります。
●米田県議
来年4月実施といいながら、制度の細部は決まっておらず、自治体関係者からとても間に合わないとの声が聞こえています。なにより保護者へ説明がなされておらず、きわめて複雑な制度を短期間で周知するのは不可能だと思います。
実施の延期も含め、保護者の理解をえる機会を十分保障するべきだと思いますが、知事にお聞きします。
■知事
新制度の実施の延期を含め、保護者の理解を得る機会を十分保障すべきではないか、とのお尋ねがございました。
子ども・子育て支援新制度については、先月、来年4月からの施行が正式に決定され、国の職員が直接各地域に出向いての説明会も始まっております。
これまで、県及び市町村では、子ども・子育て支援会議を設置し、保護者の代表の方々もメンバーに入っていただき、新制度における事業計画の作成に取り組んでまいりました。
また、事業者においては、当初から想定されていた来年4月の新制度実施を見据えて、認定こども園等への移行準備などを行っており、新制度の実施時期を延期させることは、かえって混乱を招くものと考えております。
県では、これまで市町村や事業者を中心に、新制度の説明会を実施してまいりましたが、今後は広く保護者の皆様に対しましても、この制度の実施主体である市町村と連携しながら、新しい保育サービスの内容や利用手続きの方法、利用者負担などの説明に努め、新制度を円滑にスタートさせるよう取り組んでまいります。
【子どもの医療費助成制度の拡充】
●米田県議
次に、子どもの医療費助成制度の拡充について知事に伺います。
県は学童保育料の減免や教育費負担の軽減など、子育て支援策の充実のために取り組んできました。その中でも、長らく拡充がされていない子どもの医療費助成制度の抜本的な検討をすべき時期に来ていると考えるものです。
「子どもを持つ場合の不安」として「経済的負担の増加」が圧倒的な割合をしめており、その改善が少子化対策として極めて重要なことは論をまちません。
そのため、高知県内でもすでに、34の市町村のうち25自治体で「中学校卒業まで、医療費は入院も通院も無料で所得制限なし」となっており、子育て世代に歓迎をされています。これまで遅れていた高知市も、やっと今年10月から、就学前まで入院・通院とも県の助成分に上乗せをして拡充されることになりました。それでも、県内の市町村の中には大きな差が生まれているのです。
知事はこれら自治体の取り組みと努力を、どう評価しているのかお聞きします。
群馬県では、平成21年からは全国ではじめて「所得制限なし、自己負担なしで、入院・通院とも中学卒業まで対象とする」制度を県として実施をしています。その効果の大きさは明らかで、先行していた自治体ではさらなる子育て支援に予算が使えるなど、市町村との合意も大変スムーズに、歓迎されて導入できたとおききをいたしました。
まさに、県の出番ではありませんか。群馬県の取り組みの評価と感想を伺います。
■知事
子どもの医療費助成制度の県内市町村の取り組みと努力の評価、また、群馬県の取り組みの評価と感想についてお尋ねがありました。関連しますので、併せてお答えをいたします。
県内の多くの市町村では、ここ数年の間に医療費助成制度の拡充を図っており、中学校卒業までの医療費の無料化を実施している市町村は、平成21年4月に入院12か所、通院12か所から、平成26年4月には入院27か所、通院25か所となっております。限られた財源の中で、子育て支援施策の充実に熱心に取り組んでいただいており、今後も拡充される動きがあるものと認識をしております。
また、群馬県が全国に先駆けて行った無料化の取り組みについては、それまで、群馬県では大半の市町村の医療費の助成が3歳児までとなっていたようでありますので、中学校卒業までの完全無料化というのは、群馬県内の市町村の状況を飛躍的に向上させたという点で、効果的な取り組みであると考えているところでございます。
●米田県議
若い世代の定住・移住をさらに促進するためにも、また全国より10年先を行く少子高齢化県としても、特に「課題解決」が求められているとすれば、医療費無料化の枠を広げる県全体での施策の前進が重要であり、高知県にとって避けて通れない課題だと考えます。
高知県で中学校卒業まで無料化を実施した場合、県負担はどれだけ必要となるのか、またこの際、拡充すべきだと考えますが知事に伺います。
■知事
子どもの医療費助成制度の拡充にかかる県負担額の考え方についてお尋ねがありました。
県内の全市町村が、中学校卒業まで所得制限なしで、医療費の無料化を実施した場合の金額を推計しますと、総額でおよそ24億円となり、そのうち二分の一が県の負担となりますので、およそ12億円が必要になることが想定をされます。
子どもの医療費につきましては、子どもが生まれ育った環境によって左右されず、全国どこでも治療費を心配することなく安心して医療を受けられるよう、社会全体で支えていく必要があると考えており、国において、新たな子どもの医療費助成制度を創設するように、全国知事会等におきまして、提言しているところでございます。
先程、お答えしましたように、現在、多くの市町村で既に中学校卒業まで医療費の無料化が実施されていますので、県による助成制度の拡充が、市町村での財源の振り替えになるだけでは、本当の意味での子育て支援策の充実にはつながらないのではないかと考えております。
このため、次世代を担う子どもたちの健やかな成長と発達、少子化対策として、どのような支援策が、県民の皆さまにとって、最も効果的であるのか、子どもの医療費助成制度の拡充を含め、十分な検討を行ってまいりたいと考えております。
【障害児の通学支援】
●米田県議
障害児の通学支援について教育長に伺います。
介護タクシーの利用などについて、昨年12月議会に続いて実状に見合ういっそうの改善を求めて質問をします。
この間、県教委が国に積極的に提言、協議する中で、保護者等が急病等の体調不良により介護タクシーを利用した場合、年間4回、2往復ですが、全額就学奨励費の対象になりました。しかし、年間2往復では現状に合いませんし、障害児の通学保障には不十分です。安心して学校へ送り出せるよう回数を増やすこと急がれます。さらなる改善を国に働きかけると共に、この間の国との協議の中で、文科省は「突発的な事情により介護タクシーを利用した場合の承認や、介護タクシーを利用した際に、ガソリン代を支給するか、介護タクシー代を支給するかは県の判断」という見解をしめし、県はガソリン代支給の新たな制度をスタートをさせていますが、県として実態に見合う対応に踏み出すことを強く求めるものですが、ご所見を伺います。
■教育長
介護タクシー利用のさらなる改善について、お尋ねがございました。
通学時におけるタクシー利用については、昨年度まで、やむを得ない理由があり、事前申請があったものについてのみ、就学奨励費の補助対象としてまいりました。
本年度から、保護者の通学支援を一層充実させるために、国とも協議したうえで、保護者の急病といった突発的な理由がある場合について、事後申請であっても、年間4回を超えない範囲でタクシー代全額を就学奨励費の補助対象とするとともに、その他の突発的な理由で、タクシーを利用した場合についても、自家用車のガソリン代相当分を補助対象とすることといたしました。
このことは、国の就学奨励費が原則としている「最も経済的な方法」という主旨を踏まえながら、一歩踏み込んだ対応を行ったものでございます。
本制度は、この4月から運用を開始したばかりですが、保護者から制度の新設を歓迎する声もいただいており、現在、2名の児童生徒が、のべ5回、利用している状況です。
今後も活用状況を把握し、検証も行いながら、より実態に応じた運用に努めてまいります。
●米田県議
次に、障害者移動支援事業、ガイドヘルパーの派遣についてであります。
12月議会で紹介したK君は、視力障害もある重度重複障害児で通学の車中でも舌が下がり窒息状態になるのを防いだり、ずれる体を元に戻すなど送迎するお母さんは必死の運転です。重度であっても、仲間の中で学び、成長するK君をみたい、そのためにも一日でも多く通学をさせたい、との親の思いです。しかしお母さんが病気になれば、介護タクシーを仮に利用できても学校に通わせることはできません。どうしても介助者が必要なのであります。
東京都千代田区では、義務教育や養護学校高等部への通学に保護者が付き添えないとき、現在月30時間という制限はありますがガイドヘルパーが同行してくれます。年間45人が移動支援サービスを登録しており、うち26人の子どもたちが通学に利用しています。確かに区の実施要綱も「通年かつ長期間にわたるもの」は対象外との規定ですが、紹介事例は実態もそれに該当しないし、できるだけ広く住民の移動を、社会参加を保障しようという立場を貫かれていました。こうした臨時的、突発的とも言える通学への移動支援サービスを実施する自治体は多数広がっています。
地域福祉部長にお聞きいたしますが、県下の状況はどうか、実施がすすむように自治体への支援・指導を強めていただくよう求めるものですが、御所見を伺います。
■地域福祉部長
障害児が通学する際の支援に関して、県内市町村の移動支援事業の実施状況と、当該事業が進むように、市町村への支援、指導を強めるべきではないか、とのお尋ねがありました。
障害児の通学の際における移動支援につきましては、障害の種別や程度などにより、障害者総合支援法に基づく自立支援給付の対象とはならない場合、市町村が行う地域生活支援事業として実施することが可能となっています。
しかしながら、国が定める基準では、通学などの通年かつ長期にわたる外出は、やむを得ない場合を除き、対象外とされているところです。
本県では、昨年度において、市町村が移動支援事業を活用した障害児の通学に際しての支援を行った事例はなかったものの、これまでに、保護者の疾病を理由に、ごく短期間での支援を行った取組みの事例はございました。
また、他県などにおきましては、やむを得ない理由により、保護者が付き添いのできないケースにおいて、移動支援事業の取り組みの中で、上限を設けることにより、ガイドヘルパーの同行による通学支援を認めている事例などがあることをお聞きいたしております。
県といたしましても、他県の取組事例などを参考にいたしまして、市町村への積極的な情報提供を行ってまいりますとともに、地域ニーズに応じた適切できめ細やかな対応が可能となるよう、県や市町村の教育委員会との調整も図りながら、指導・助言に努めてまいりたいと考えております。
●米田県議
K君は介護タクシーと共に、ガイドヘルパーの同行がないと学校に通うことはできません。教育行政の核心である、通学を支援し教育を受ける権利を保障するために、市町村の移動支援事業が整備されるまでの間、緊急対応をするべきだと考えますが、教育長の見解を伺います。
■教育長
通学を支援するための介護タクシーの利用と、ガイドヘルパーの同行に関してのお尋ねがございました。
タクシーの利用については、障害が非常に重い児童生徒の保護者の方にとって、通学などにかかる肉体的、精神的な負担も考慮し、身体障害者手帳1種1級を所持されている児童生徒の保護者に限定して、特に突発的な理由がなくても、通学に自家用車に代えてタクシーを利用した場合、かかる経費の一部について、今年度から県独自に補助することとしております。
一方、ガイドヘルパーの同行につきましては、児童生徒の状況や保護者の事情によって、必要と思われるケースがあることは、県教育委員会としても認識いたしておりますが、国の就学奨励費の補助対象となっておらず、他の都道府県教育委員会においても、関連する事業を実施していないのが現状です。
一方で、県外のいくつかの市区町村では、福祉的サービスとして、通学支援を含むガイドヘルパーの派遣を事業化しているところもありますので、福祉施策との整合性も考慮しながら、今後の対応について研究したいと考えております。
●米田是県議
最後に就学奨励費の支給手続きについて伺います。
ある障害児はお母さんと一緒に路線バスに乗って通学をしています。しかし月々の定期代に悲鳴を上げています。多くのご家庭が共働きもままならないなどきびしい経済状況にあり、一日も早い奨励費の支給が求められています。収入・所得証明書提出の手続きなどがあり、支給が9月頃と伺っています。いま奨学金や高校授業料無償化の手続きでも改善に努力されており、就学奨励費についても早急な支給へと改善を図るべきと考えますが、教育長の御所見を伺います。
■教育長
就学奨励費について、早急な支給へと改善を図るべきではないか、とのお尋ねがありました。
就学奨励費の支給にあたっては、毎年度、保護者の経済状況を基に決定を行わなければなりません。
この手続きには、課税証明書の提出が必要となり、この証明書は、例年6月以降に各市町村から発行されることになっております。その後、すべての保護者から関係書類が提出され就学奨励費の支給が開始されるのは、9月頃となるのが現状でございます。
しかしながら、学校や年度によっては、全家庭から7月下旬までに関係書類が速やかに提出され、8月初旬に就学奨励費が支給されるようなケースもございます。
今後とも、学校から、すべての保護者に対して、速やかに関係書類を提出していただくよう、手引書などを作成し、お知らせをしていくとともに、県教育委員会といたしましても、学校と連携し、なお一層速やかな就学奨励費の支給ができるよう、事務手続きの見直しも図ってまいります。
【第二問】
●米田県議
就学奨励費なんですけど、確かに事務的にはご苦労も多いんですけれども、私は、仕組みを、システムを、考え方、変えるべきだと思うんですよ。この4月から始まった高校の修学支援金も、4月、5月、6月分、どうするかということは、前々年度の収入所得証明でやっています。それから、県営住宅の家賃も前々年度でこの4月からの家賃を決定している訳です。それから高校奨学金も予約申請ということで、5月に決定して6月に支給するという、そういうこうそれぞれの主旨にふさわしい改善、システムを取っていますので、ぜひ、そのことも検討していただきたいというように思います。
■教育長
就学奨励費につきまして、支給の時期が遅いということについて、システムの変更をするべきではないかというお話でございます。いまの制度そのものは国の制度にのっとって、前年度の課税証明を6月にということが前提となっております。そういった中でもできるだけ早く支給できるような、県教育委員会としての工夫はやっていきたいと思いますが、そもそものシステムがですね、もう少し改善できないかということについては、我々としても勉強させていただいて、必要であれば、国のほうにも申し入れをしていきたいと思います。