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- 2014年01月15日
- 議会(質問・討論)
- 12月県議会 塚地佐智県議 本会議一般質問と答弁(2013年12月12日)
質問テーマ
1、いじめ防止基本方針について
2、男女共同参画の推進について
3、大人ひきこもり対策について
4、追手筋遺跡の保存と活用について
おはようございます。私は日本共産党の立場から質問をさせていただきます。
まず、いじめの防止対策から伺います。
10月11日、文部科学省のいじめ防止基本方針策定協議会が、「いじめ防止等のための基本的な方針」を決定しました。
策定された「基本的な方針」は、先の通常国会において成立したいじめ防止対策推進法にもとづき国が定めるものとされたもので、今後、地方自治体、学校で同方針を基に、地方、学校の実情を反映した基本方針の策定がもとめられることになります。
いじめ防止対策推進法そのものは、安倍首相肝いりで設置された教育再生実行会議の提案にもとづき、国民的な議論はもちろん、中教審の審議さえなく制定されたもので、多くの教育関係者から、「いじめ禁止」を法律で定めようとしていること、「懲戒」や「出席停止」など厳罰化で取り締まろうとしていることなどの問題点が指摘をされ、日本共産党も、同法案には、厳罰化や規範意識の押しつけでは何ら解決にならずさらに悪化すると反対したものです。
今回の「基本的な方針」にも、いじめを「撲滅」とし警察との連携を第一にあげる等、その危険性はなくなっていません。しかし、方針を策定した協議会には、有識者会議と違い、教育と心理学の研究者や学校現場代表者が入って議論され、大津市の第三者調査委員会の提言にも通じる施策が入るなど、今後の取組みにいかすことのできる内容を持っています。
以下、今後、県で制定される基本的な方針が、憲法と子どもの権利条約をいかし、真に子どもの成長に資する内容となるように願って、基本的な方針についての積極的な部分の内容を紹介しながら質問をします。
「基本的な方針」は、冒頭に「法制定の意義について」でこう述べています。 「大人社会のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどといった社会問題も、いじめと同じ地平で起こる」「、他人の弱みを笑いものにしたり、暴力を肯定していると受け取られるような行為を許容したり、異質な他者を差別したりといった大人の振る舞いが、子供に影響を与えるという指摘もある」、「いじめの問題は、心豊かで安全・安心な社会をいかにしてつくるかという、学校を含めた社会全体に関する国民的な課題である」というものです。
「子どもは社会の鏡」といいますが、90年代半ばからの企業リストラや、非正規雇用、派遣労働、ブラック企業の横行による人間のモノ扱い、餓死・孤独死が後をたちません。また、一流銀行が暴力団と関係をもつ、大手鉄道会社が安全点検を手抜きする、一流ホテルが食偽装を行っている現実もあります。この社会の状況を放置して「人を大切にしよう」「ウソをついてはいけません」など、大人が上から「道徳」や「規範意識なるもの」を押し付けても反発を招くだけでなく、「規範とは、建前。うわべのこと」と教えていることになります。いじめ問題は、発生は学校・教育現場に多いが、生み出す温床は社会環境にあるがゆえにその課題は深刻といわざるを得ません。
◆まず、知事と教育長に、この文科省の「基本的な方針」の指摘に係る決意を伺います。
■知事
塚地議員のご質問にお答えいたします。
まず、文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」の指摘について、お尋ねがございました。
滋賀県大津市の中学生が亡くなった事件に接した際、自ら命を絶つという選択をせざるを得ない状況にまで追い詰められた生徒の気持ちを考えますと、胸が締め付けられる思いであると同時に、直接間接に関係する人々が何らかの手をさしのべることができなかったのかと非常に残念でなりませんでした。
このような痛ましい事件を、本県で絶対起こしてはいけない、そして、子どもたちが安心して過ごせる環境を整備していかなければならないと強く感じております。
子どもは、多感で、いろいろなことに心が揺れ動く年齢期でありまして、その子どもたちの心の変化を、大人たちがしっかりと受け止め、支援していくことが重要です。
しかしながら、国の基本方針の指摘にもありますように、大人社会の未成熟な状況や大人自身の人権感覚を疑うような言動等が、子どもの心に」大きな影響をあたえており、いじめ問題と決して無関係ではないと考えております。
教育再生実行会議の委員として、いじめ問題についても議論させていただきましたが、このいじめ問題は、教育委員会だけでなく、知事部局、警察をはじめとする関係部局が一丸となって社会総ぐるみで取り組みを進めるべき課題であり、また、各自治体や学校が、組織として取り組んでいくことが重要な課題であると捉えております。
県といたしましては、子どもを取り巻く社会の現状や本県独自の課題を踏まえまして、子どもたちが安心して過ごせる社会の実現を目指しますとともに、学校や家庭、地域が連携しながら県民挙げていじめ問題に取り組んでいきたいと考えております。
■教育長
まず、文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」の指摘に関するお尋ねがございました。
我が国の社会や経済が大きく変貌する中で、今、子どもたちを取り巻く環境には、お話のありました大人社会の問題、また、人間関係や地域社会の連帯感の希薄化など、大変厳しいものがあヤます。
こうした状況の中で、将来を担う子どもたちが安心して日々を過ごし、夢に向かってチャレンジできる環境をいかにして整えていくのかが、私たちに課せられた重要な課題だと考えております。
いじめ問題につきましては、これまで、県教育委員会としまして、「いじめは絶対許されない」、「いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こりうる」という認識の下、すべての児童生徒を対象にした「いじめアンケート」の実施をはじめ、教職員向けのいじめ対応マニュアルの作成や、校内研修の実施などを通じて、いじめの予防や早期発見、必要な対策の実施等に努めてまいりました。
こうした取組は、今後とも、さらに充実させていかなければならないと考えておりますが、このいじめの問題は、先程、知事からお答えいたしましたように、関係機関が一丸となって県民を挙げて取り組むことが必要な課題でございます。
そのため、県としてのいじめ防止等の対策を総合的に推進するための「高知県いじめ防止基本方針」を早急に策定し、実効性ある取組を着実に進めてまいりたいと考えております。
塚地県議
以下、教育長に伺いします。いじめ防止については、今日のいじめの特徴を正しく認識することが極めて大事だと思います。
基本的な方針の根底なす考え方「いじめ理解」で「いじめは、どの子供にも、どの学校でも、起こりうるものである」とのべ、国立教育政策研究所の追跡調査では、小学校4年から6年生で、いじめの被害体験、加害体験がない児童は1割程度しかないことも明かにしながら、「多くの児童生徒が入れ替わり被害や加害を経験している」と指摘をしています。
阪神大震災で被災者のケアにあたった精神科医の中井久夫氏は著書「いじめの政治学」で、今日のいじめの特徴について「孤立化、無力化、透明化」という段階を経ると解明しています。
まず、「孤立化」の段階。標的を探し出し孤立化させる。標的の理由はなんでもよく、誰もが標的になる恐怖感のもと、標的にならないことにホッとし、標的ななった子とは距離を置く。こうして「孤立化」が進む。耐え切れず、反撃しても更に過酷な暴力で罰し、反撃は無力だと観念をさせる。それは依存構造と同様で加害者の感情に従属をして、加害者との関係の中でだけが生きるようにさせられる。一見「仲のよい」ように見えることで、いじめは「透明化」するというものです。この段階になると、いじめを察知して尋ねても被害者が否定をし、言うがままに無理難題を強要され、完全に支配をされ、最後の自尊感情までもが踏みにじられることだと指摘をしています。だから、自殺は自己の尊厳を守る唯一の方法となっているというものです。
◆今日のいじめの特徴についてどう認識しているか。もし「いじめの政治学」を読まれていれば感想をお聞きをします。
■教育長
次に、今日のいじめの特徴についての認識と「いじめの政治学」を読んだ感想について、お尋ねがございました。
議員からもお話がありました国立教育政策研究所の「いじめ追跡調査」によりますと、「仲間外れ、無視、陰口」などのいじめについては(小学校4年生から中学校3年生までの6年間で被害の経験をした子ども、加害の経験をした子どもがいずれも9割程度いるという報告があります。
また、一昨日公表しました平成24年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査では、本県のいじめの態様として、「冷やかしやからかい」・「脅し」等が最も多く約半数を占めております。
そして、「携帯電話等での誹誘中傷」については、平成23年度の件数の約2倍になっており、今後大きな問題になることが危慎されておりす。
これらのことから現在のいじめの特徴は、「・「暴力を伴わないいじめ」が多くなっている。・多くの児童生徒が被害者にも加害者にもなりうる。・携帯電話等でのいじめなど潜在化しているいじめが増加している。」といったことがあると考えております。
中井久夫さんが述べられている「いじめの政治学」では、「孤立化」「無力化」「透明化」との表現によりいじめのメカニズムが被害者側と加害者側の心理状況から説明されていま
す。いじめが深刻化していく過程が明確に示されており、このことからも、いじめを早期に発見し、解決を図るためには、いじめ行為の事実だけでなく、いじめに至った被害者、加害者の背景を心理的な側面から捉え、抜本的な解決を図っていくことが重要であると認識しております。
塚地県議
「基本的な方針」は、「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織」を置くことを求めています。心理、福祉等に関する専門的な知識を生かすことは重要なことですが、子どもと直接接している教職員全体の役割が決定的です。
大津市のいじめ自殺事件でも、何人かはいじめに気がついており、また、少なくとも2回、こどもが「いじめ」を訴えていましたが、自殺6日前に校長、担任など5.6名による15分の協議で、「喧嘩」であり「見守る」と決定し、自殺を防止する機会を生かすことは出来ませんでした。
いじめや気になる子の情報について、教職員集団・・・養護教員、用務員さん、学校給食調理員、また、学校図書館支援員などが大事な情報をもっている例は少なくありません。そういう意見が自由にだせ、全体で情報を共有し解決方法をさぐる場、とりわけ職員会議がそのようなものとして重視され、機能しているかが重要です。それは、教員としての力を磨く場でもあります。高知県でも、南国市の虐待死問題では、それぞれの教職員が気になる情報をもっていたのに共有できなかったという痛苦の反省すべき事例があります。
◆いじめ問題にかかわって、職員会議の実際の状況はどうか。役割と課題についてお聞きします。
■教育長
次に、いじめ問題にかかわって、職員会議の実際の状況と職員会議の役割と課題について、お尋ねがございました。
いじめ問題を早期に発見し対応するためには、学校での生徒の状況を把握する機会を多くもつことが重要となります。
現在、多くの学校では、定期的に職員会議がもたれており、気になる子どもの情報交換やその対応についての方針の確認が行われており、いじめを初めとする1生徒指導上の諸問題に関する共通理解を得る場として、職員会議は有効な場であると考えております。
今後、新たに設置する「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織」は、いじめ問題に対する取組の進捗管理を行うとともに、状況に応じて個別ケースの検討も行う場となりますので、その組織で話し合われた内容を職員会議において全教職員で共通認識を図りながら、学校をあげた取組を進めていくことが必要になってくると考えております。
塚地県議
今日のいじめの特徴で指摘しましたが、大人が気がつく段階、まして本人が「いじめられている」と訴える段階では、そうとういじめが深刻な段階に達していると捉える意識が重要です。ある例では、金曜日の昼休みに、子どもがいじめについて相談してきましたが、担任の先生は、午後から半年間準備してきた教育委員会からも視察にくる公開授業があり「月曜日に話を聞くから」と帰した直後に自殺をしています。
公開授業も大事です。しかし、子どもの命に優る課題はありません。学校にも教育機関にもこの文化がなくてはなりません。何をおいても、子どもの命最優先の対応がつらぬかれなくてはならないとおもいます。
◆県教育委員会としての強いリーターシップが求められていると思います。どう徹底してくおつもりかお伺いいたします。
■教育長
次に、県教育委員会の子どもの命最優先の対応の徹底について、お尋ねがございました。
いじめ問題を改善していくために、学校には、さまざまな取組が求められますが、特に重要なものとして、一つは、教員がいじめに気付く力をしっかりと身に付けることであると考えています。いじめられている子どもは、そのことを打ち明けられない心理状態にあるとの前提に立ち、教員自身が学級の状態や個々の子どもの様子を見ながら、いじめを認知する力を向上させることが重要です。
そのため、現在、県内すべての公立学校において、いじめに関する校内研修が、毎年、実施されています。各学校における研修の実施に当たり、県教育委員会では、これまで、研修教材の提供や指導主事の派遣等を行っており、今後とも積極的な支援を行うことで、教員の認知力の向上につなげてまいりたいと考えています。
二つ目に求められる力として、組織として、いじめ問題に取り組み、解決していく力があります。
いじめ問題は、単に加害・・被害の関係にとどまらず、周囲の子どもも含め、指導・支援が多岐にわたります。したがって、学校全体の問題ととらえ、全教職員で取り組むことが重要です。
今回、各学校で設置される「いじめの防止等の対策のための組織」において、PDCAサイクルに基づいていじめ問題が着実に展開されるようにするとともに、職員会議等を通じて教職員へ周知徹底.を図り、組織として機能する体制を構築しなければならないと考えます。
議員ご指摘の、「命を最優先とした取組」については、危機管理の観点からも当然のことと考えます。いじめ対策は、この危機管理の視点が重要であり、そのことをしっかりと認識しながら、取組を推進してまいりたいと考えております。
塚地県議
いじめへの対応は、対子どもだけでなく保護者、そして子供同士、保護者同士、まわりの児童・生徒との関係や感情の交差を長期間慎重に調査するため、神経が磨り減らされ困難をともないます。1人で担うには重過ぎる課題です。教師自身の無力感、敗北感、自己を責める気持ち、深い苦悩に襲われます。
この点で「基本的な方針」が「地方公共団体として実施すべき施策」として、「必要な財政上の措置その他の人的体制の整備等の必要な措置を講ずるよう努める」「生徒指導に係る体制等の充実のための教諭、養護教諭その他の教職員の配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者であっていじめの防止を含む教育相談に応じる者の確保、いじめへの対処に関し助言を行うために学校の求めに応じて派遣される者の確保等必要な措置」を求めていることは重要だと思います。
また、「基本的な方針」には、学校評価や教員評価にあたって「いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく」と「いじめゼロ」などの数値目標を現場に押しつけるだけの「いじめ対策」が、隠蔽体質をうみだしてきたことを指摘しています。
◆教育行政の責務は、教員や専門職の人的配置や組織体制の充実など、財政上の裏付けをもって整備を図ることで、現場の児童・生徒への対応と教育環境に厚みを生み、結果的にいじめゼロへと導く事だと思いますが、お聞をいたします。
■教育長
次に、いじめ対策の充実に向け、教員や専門職の人的配置や組織体制の充実などが必要ではないか、とのお尋ねがございました。
本県におきましては、学力向上のみならず、いじめ問題など生徒指導上の諸問題に対応するため、30人・35人学級編制といった少人数学級の導入を進めるとともに、児童生徒支援のための加配教員の配置も重点的に進めてまいりました。また、生徒指導上の課題が顕著にみられる学校につきましては、速効性のある教育課題への対応のため、教頭や養護教諭の複数配置など重点的に教員を配置することで、きめ細やかな指導や個々への対応ができる学校組織体制の整備にも努めてきたところでございます。
さらに、来年度に向けまして、より実効的ないじめ対策を進めるため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の心理、福祉の専門家の配置拡充などについても検討しているところでございす。
いじめ問題をはじめ、さまざまな教育課題への対応を、実効性あるものとして進めていくためには、職員の配置等の体制整備だけではなく、組織的な取組をいかに強化していくかが重要となってきます。
今後とも、人的配置や組織体制の充実を図った学校における課題の改善状況など、その成果を検証しながら、効果的な支援に努めてまいりたいと考えております。
塚地県議
いじめの問題の解決に不可欠なことは、教員の「多忙化」「燃え尽き」解消です。
今年3月にまとめられた文部科学省の「教職員のメンタルヘルス対策について」でも、「学校教育は、教職員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであることから、教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるようにすることが極めて重要である」としています。
◆ケアする立場である教員の働く環境の改善の重要性について認識と、合わせて国に対し、教員定数の改善、教育予算の確保を強く求めるべきですが、お聞きをいたします。
■教育長
次に、教員の働く環境の改善の重要性についての認識と、国に対し、教員定数の改善、教育予算の確保を強く求めるべき、とのお尋ねがございました。
教職員が充実した教育活動を行うためには、しっかりと子どもと向き合う時間を確保するとともに、風通しの良い職場づくりを行い、心身ともに健康で生き生きと働くことができる環境をつくることが大切であることは申し上げるまでもございません。
県教育委員会といたしましては、県の実状に応じ、また、特性や強みを生かした教育を振興していくために、中長期的な計画として策定した「高知県教育振興基本計画」に基づき、効果的な教職員の配置に努めてまいりました。
また、国に対しましては、「高知県教育振興基本計画重点プラン」の目標が達成されるよう、指導方法を工夫改善していくための加配や、生徒指導上の諸問題に対応できる加配教員の継続的な配置とその確保に努めるよう働きかけを行ってまいりました。それにより、加配総数は、過去5年間増加しており、本県の取組に対して、国からの理解と協力をいただいているところでございます。
さらに、県教育委員会として、いじめや不登校への対応など、心を耕す教育を総合的に推進するため、スクール・カウンセラーやスクール・ソーシャル・ワーカー、特別支援教育や学校図書舘のための支援員など、加配教員の配置以外にも、市町村教育委員会と連携しながら、学校における人的支援の充実に努めてまいりました。
今後におきましても、国に対しましては、本県の教育課題の解決に必要な加配教員の重点的な配置が可能となるよう、教職員定数や教育予算の確保に努めるように粘り強く働きかけを行ってまいります。
塚地県議
次に、「基本的な方針」は、学校基本方針の策定にあたって「児童生徒の意見を取り入れる」ことなど、子どもたちの声をいかし、その自主性・自発性にもとづくとりくみの重要性を指摘をしています。
いじめ問題の解決の一番の力は子ども自身にあります。子ども同士が何でも言えるような学級集団に変化していくことが重要です。そのためには、教員自らが児童・生徒の声を受け入れることや、基本方針づくりにも、子ども自らの参加などが肝要だと思います。
◆「児童生徒の意見を取り入れる」意義についお聞きをいたします。
■教育長
次に、学校の基本方針づくりに、児童生徒の意見を取り入れる意義について、お尋ねがございました。
いじめ防止等の取組を進めていくうえで、児童生徒や保護者の方々などに主体的に参画していただくことは、大切な視点であると考えています。そのため、市町村教育長や県立学校の管理職を対象にした説明会においても、国の基本方針を周知する中で、学校の基本方針を策定する段階から、児童生徒や保護者・地域の声を取り入れていただくよう説明をしてきたところであります。
今後は、児童生徒などの声を取り入れながら、それぞれの学校の実情に応じた基本方針を取りまとめていただくとともに、児童生徒や保護者、地域と一体となったいじめ防止等の取組につなげていただくことが重要だと考えております。
塚地県議
また、「基本的な方針」は、「いじめを生まない土壌をつくるため」に、「互いの人格を尊重」することとともに、いじめの背景に「ストレス等」があることに「着目」をし、「その改善を図(る)」ことをあげています。いじめそのものを防止するために、その背景に言及したことは重要です。
子どもと向き合って努力している団体、個人の実践から学び、また交流・討議を通じてその知恵と力を結集して、方針づくりを進めることが極めて大事だと思います。その過程自体が、いじめ防止の力を育む過程とも言えます。
◆方針策定の進め方、またその過程のもつ意義をどうとらえておられるかお聞きします。
■教育長
次に、学校の基本方針の策定の進め方、また、その過程の持つ意義をどう捉えているか、とのお尋ねがございました。
学校の基本方針は、学校におけるこれまでのいじめ対策を振り返り、児童生徒の実態や学校の実情を踏まえて、具体的ないじめ防止等のための取組を盛り込むものであり、言い換えれば、いじめを生じさせない学校づくりのための決意を表すものでもあると考えます。
策定にあたっては、学校の教員一人一人が、自身の教育実践を振り返り、これまでのいじめの事例や効果のあった実践などを出し合い、保護者や地域の方々などのご意見もいただきながら、議論することで、いじめの防止等の対策が明らかになってくると思います。
その過程で、教員一人一人が役割を理解し、共通理解を図ることが、学校としての組織的な取組につながり、保護者や地域と一体となったいじめ対策がより充実したものになると考えます。
塚地県議
次に男女共同参画の推進に関し質問をいたします。
世界経済フォーラムは10月25日、政治、経済、健康、教育の4分野で男女平等の度合いを評価した「男女格差報告2013年版」を発表いたしました。日本は136カ国中105位。昨年より4位順位を下げ、06年の調査開始以来同報告書では過去最低となりました。
政策決定の場での参加の遅れ、経済活動での賃金格差や管理職の少なさなどがその大きな要因となっています。役割分担意識の解消、ポジティブアクションによる積極的な登用、育児や介護などの社会資本の整備、企業任せでない賃金格差の解消、正規雇用の拡大など抜本的な解決が求められています。
◆知事は本県の男女共同参画推進本部長に就任をされていますが、この間日本のジェンダー・ギャップ指数が低下し続けている現状と課題をどのようにとらえておられるか、まず認識を伺いたいと思います。
■知事
日本のジェンダー・ギャップ指数が低下し続けている現状と課題に対する認識について、お尋ねがございました。
男女平等の度合いを評価するジェンダー・ギャップ指数を見ますと、わが国は、教育や健康分野では、諸外国と遜色がないものの、国会議員や閣僚に占める女性の割合を指標とする政治分野では特に低く、また、労働力率や賃金、管理職に占める女性の割合などを指標とする経済分野の値も平均値に届いていません。
こうしたことから、先進国でありながらも、全体としては低い指数となっており、順位も低下傾向にあります。
本県におきまても、直近の数値で、男女間の賃金には約3割の開きがありますし、女性の労働力率は、5割にも達していない状況であります。また、県議会や町村議会議員に占める女性の割合も5%台と低い状況となっています。
このように、高い教育を受けた女性が政治・経済活動において、一質、量の両面で、いまだ十分にその能力を発揮できていない現状は、男女共同参画推進本部長として、私も非常に残念なことであると思っております。
特に、全国に先行して、人口の自然減や高齢化が進行している本県におきましては、県勢浮揚に向けて、潜在的な女性の労働力や培われたキャリアを活かし、女性の活躍促進を積極的に図っていくことが重要であると考えております。
塚地県議
安倍首相は、「成長戦略」に「女性の活躍」を位置づけ、10月の臨時国会の所信表明でも、それに先立つ9月26日の国連演説でも「女性が輝く社会」づくりをアピールしています。なぜ、今、「女性が輝く社会」を掲げるようになったのでしょう。今年6月に安倍政権が発表した「日本再興戦略」で、「とくに、これまで活かしきれていなかった我が国最大の潜在力である『女性の力』を最大限発揮できるようにすることは、少子高齢化で労働力人口の減少が懸念される中で新たな成長分野を支える人材を確保していくためにも不可欠である」と述べているとおり、労働力確保に重点が置かれているものに他なりません。 一方で、進められているのは、労働法制の規制緩和です。職務や勤務地を限定した「限定正社員」は「限定」だからと賃下げし、職務や事業所がなくなればいつでも解雇できる仕組み。派遣労働の拡大も、残業代をゼロにする裁量労働制度の導入も狙っています。女性が働き続けることのできる条件整備を進め、女性の就業率を高めることは大事です。しかし、男女の賃金格差の是正、非正規と正規の均等待遇、長時間労働の是正、母性保護制度の充実を企業の努力任せでなく、実行あるルールを作ることと同時に進められなくてはなりません。昨年10月から1年かけて行われてきた厚労省労働政策審議会での男女雇用機会均等法の改正に向けた議論の結論は、日本経済団体連合会が法律改正そのものに反対をし、法改正でなく指針などの改定にとどまり、きわめて実効性の乏しいものとなりました。
◆真に「女性が輝く社会」とするなら、男女が平等に評価をされ、仕事と家庭の両立ができる職場づくりのための男女雇用機会均等法の改正が必要だと考えますが、知事のご所見を伺います。
■知事
次に、男女雇用機会均等法についてのお尋ねがありました。
今後の男女雇用機会均等対策につきましては、男女雇用機会均等法が平成19年の改正後5年を経過したことから、同法の施行状況等を踏まえ、必要な措置を講ずることを目的として、国の「労働政策審議会雇用均等分科会」において、平成24年10月から公益、労働者、使用者の委員による審議が行われ、今年9月に報告書がとりまとめられております。 国におきましては、この報告に基づき先月12日に、労働者の募集や採用、昇進、職種の変更にあたって、転居を伴う転勤に応じることを要件とするのは、合理的な理由がある場合を除き差別に該当するというたことなどを、省令及び指針に盛り込むことについて労働政策審議会に諮問しているところでありまして、年内には答申が出される予定となっております。
省令及び指針が施行・適用されますと これらに抵触する場合は、一部を除き法律に違反することとなりますので、その遵守への取組が加速され、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に向けて、また一歩前進するものと認識をいたしております。
県といたしましては、女性の活躍を一層促進していくため、ご指摘にもございました男女雇用機会均等法はもちろんのこと、労働基準法や、育児・介護休業法など関係法令が遵守されますよう、国と連携して周知に努め、民間企業の主体的な取組を促してまいります。
また、「高知県男女共同参画推進本部会」におきましても、女性が働きやすい環境づくりに向けた新しい施策展開に全庁挙げて取り組むことを確認しております。夜前から一歩踏み込んだ実効性ある施策となるよう取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
塚地県議
さて、きわめて不十分なものであっても「女性の活躍」を掲げた国の方針も受け、県としても来年度予算に向け積極的な施策の推進を図られているところで、さらなる前進が図られるよう期待していくつか質問させていただきます。
まず、高知県の女性白書づくりです。
今回、施策の検討に当たり、県は企業向けのアンケートを実施をされました。女性の要求をつかむことは、県民の意識調査から抽出されています。しかし、これでは、県内女性の実情を具体に把握することができません。労働者としての女性だけでなく、高知県に多い自営業の家族従業者、第1次産業で暮らす女性、ダブルワーク、トリプルワークでぎりぎりの生活をしている一人親家庭、都市部と中山間地域の女性ではその要求も異なってきます。
◆それぞれの担当部署任せでなく、全庁をあげて取り組みを進めるためにも、女性団体ネットをワークの皆さんの智恵もお借りしながら、高知県の女性白書を作成していただきたいと考えますが、文化生活部長にお伺いします。
■文化生活部長
男女共同参画の取り組みを全庁挙げて進めるために、高知県の女性白書を作成すべきと考えるがどうか、とのお尋ねがございました。
県では、現在、こうち男女共同参画センターソーレにおいて、女性を取り巻く様々な統計値や意識調査の結果などを「データでみるこうちの男女共同参画」としてとりまとめ、毎年、ホームページで公表しているところです。
今後は、このデータ集が、県内の女性の実情をより反映した、本県の女性自書として活用できるものとなりますよう、女性団体も含め関係団体機関からのご意見や情報をいただきながら、盛り込まれる内容の充実に努めてまいります。
塚地県議
2点目は、市町村の男女共同参画プランづくりの促進です。先日、NPO法人ポレールが開催した市町村男女共同参画計画策定の手引きの学習会に参加しました。県が策定したこの手引きはじつに有効なものだと思いましたし、この計画づくりは、住民の暮らしを見つめ男女ともに暮らしやすい町づくりを進める総合プランなのだと改めて実感いたしました。その意義を踏まえ、県としても策定に向け積極的な取り組みをされていますが、小さな自治体になればなるほど、人材が不足をし、他の業務の後継に押しやられているのが実態です。しかも、多くの自治体が福祉課や生涯学習課などに担当が置かれており、全庁的な取り組みに位置づけにくくなっています。
◆この際、計画づくりの推進を総合的な町づくり計画と位置づけ、企画部門に男女共同参画担当を置くよう提案してはどうかと思いますが文化生活部長に伺います。
■文化生活部長
次に、市町村の男女共同参画プランづくりの推進を総合的なまちづくり計画と位置付け、企画部門に男女共同参画担当を置くよう提案してはどうか、とのお尋ねがございました。
男女共同参画の取組は多岐にわたっており、行政の様々な分野に関わっていることから、議員がお話のようにそれぞれの取組を進めることが、その市町村のまちづくりにつながっていく側面もあると考えられます。
県といたしましても、市町村における男女共同参画計画策定の取組が、一つの担当課にとどまらず全庁的な視点を持った取組となりますよう、市町村に対して、企画部門との連携についても働きかけてまいりたいと考えております。
塚地県議
その他、たくさんの個別の課題がありますが、今回は男女平等の意識啓発にとってもきわめて重要な教育現場での男性の育児休業の取得について伺います。
人格形成の上で大きな影響を与えるのが教育の場です。「男性が育休をとることが当たり前なんだ」と子どもたちの理解が深まること。幼い命の営みを身をもって男性教員が経験することは、命をはぐくむ教育現場にとってもきわめて重要です。しかし、本県の小中学校では、育休を取得した男性教員は21年度1人、22年度2人、23,24年度は0という実績です。
◆教育長はこの実態をどのように受け止めておられてるか、男性教員の育休取得の意義をどのようにとらえられ、今後どのような対策を講じていかれるおつもりか伺いをいたます。
■教育長
次に、本県の小中学校における男性教員の育児休業取得の実態に対する受け止め、男性教員の育児休業取得の意義、今後の対策について、お尋ねがございました。
本県の小中学校における男性教員の育児休業取得者の状況は、平成21年度からの5年間で4名と、残念ながら少ない人数になっています。
男性が育児休業を取得するなど、育児に積極的に参加することは、男女共同参画や次世代育成支援の観点からも重要であり、また、教員にとっては、命を育む教育に携わるうえでも大切であると考えます。
そのため、教職員が育児のための休暇・休業制度を理解し、積極的な活用を考えていただけるよう、昨年12月に、関連する制度の一覧や、育児休業の取得例を掲載した「子育て休暇・休業のしおり」を-新しまして、周知を図ってまいりました。
また、本年11月に作成しました、仕事と家庭生活の調和を促す啓発パンフレット「活力ある学校づくり」の中にも、出産・育児に関する制度の概要を掲載し、全教職員に配付をして、休暇・休業制度の活用を呼びかけたところでございます。
今後におきましても、こうした教職員に対する普及啓発の取組を継続して行っていくことに加えまして、市町村教育委員会や校長会とも連携し、管理職員が対象職員に対して、個別に育児休業制度の説明や、育児休業取得の意向の聞き取りを行うなど、男性教員が育児休業を取得しやすい職場環境づくりに努めてまいります。
塚地県議
大人のひきこもり対策について地域福祉部長に伺います。
若者のひきこもりが社会的な問題となっていますが、地域で活動していますと、若者に限らず40代、50代など大人の引きこもりも相当数にのぼっているのではないかと実感をしています。
内閣府の調査では全国に70万人(出現率1.79%)と推計されるひきこもりですが、全国に先駆け全戸調査を行った秋田県藤里町では、働く世代のおよそ10人に1人(出現率8.74%)がひきこもり状態という衝撃的な事実が判明をしています。多くは都会で職を失い、地元に帰っても仕事に就けず、周囲の目を気にする中で社会から孤立しているとのことです。そのうち40歳以上は半数近くおり、「消えた高齢者」の予備軍とも言える存在です。山形県が民生・児童委員に実施したアンケート調査でも、40歳以上が45%となっています。政府の「ひきこもり」の定義は「39歳以下」です。県としても引きこもり自立支援対策を推進するため、福祉保健所の県域ごとに居場所づくりに努力をされていますが、人材や財政的基盤の脆弱さからその開設が進んでいないのが実情です。
地域に数多く方が、政策の谷間で放置されているのではないか懸念されます。どこに相談したらいいか、相談できることなのかと悩んでいる方々が存在していることを実感しています。
今年の1月には、文部科学省の委託事業で、玄田有史東大教授の「孤立無業者の現状と課題」というレポートが発表されています。「孤立無業者」とは、「20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業者のうち、ふだんずっと一人か、一緒にいる人が家族以外にはいない人々」で、英語の頭文字をとってSNEP(スネップ/Solitary Non-Employed Persons)という新しい概念を取り入れています。報告書は、社会の不安定化を背景に21世紀に入り急増、162万人と推定され、20~59歳の40人に1人となるとのことです。高知県の20-59歳人口は、345777人(2010年国勢調査)ですから、この比率をあてはめると全県7203人いることになります。
◆ 大人のひきこもり、スネップについての課題意識についてお聞きします。また、県内の実態について本格的な調査活動を実施する必要があるのではないかと思いますが、お聞きをいたします。
■地域福祉部長
大人のひきこもり対策についてお答えします。 大人引きこもり=S N E P(スネップ)についての課題意識と、県内の実態について本格的な調査活動を実施する必要があるのではないかとの、お尋ねがありました。
40代、50代のひきこもりの実態につきましては、現在のところ国においても把握されておりません。議員のお話にあります、いわゆる「スネップ」といわれる人を含めた大人のひきこもりの問題は、地域の中で孤立化し、ゆくゆくは生活困窮者に陥るなど、地域社会にとって深刻な状況をもたらすことにもつながりかねない課題だと受け止めております。
一方で、ひきこもりの問題につきましては、そのご家族の皆様にとりましても、大変デリケートで複雑な問題であるため表面化しにくく、県が主体となって本格的な実態調査を行うには、様々な検討すべき課題があるものと考えております。
塚地県議
全国の先進例として注目されているが藤里町の取組です。同町の社協の責任者は、「相談援助までは福祉にでもできる。でも、引きこもりの人に“一度外に出てみようよ”と水を向けても“どこへ?”と返されると、その先に答えがなかったんです」と出発点の問題意識を語っています。その答えとして、同町社協は2010年4月、地域との交流の場で福祉の拠点となる「こみっと」、翌年4月には宿泊施設「くまげら館」を併設し、支援活動を本格化させています。これにより、障害者手帳を持たない多くの利用者たちが、長年の空白を埋めるための作業ができる場が出来ました。簡単なボランティアやアルバイトのできる「中間的就労」の場を提供をしたり、後継者不足の商店街復活に埋もれていた若い力を活用したりし、すでに3割近い、30人が職を得るまでになっています。
この取組で注目したいのは、「ひきこもり」の人をどう見るかという視点です。
1人暮らしの老いた母親の家に息子が帰ってきても、仕事が見つからない。親の介護に追われ、気がつくと、就職からも結婚からも遠い年齢になっていたなど、仕事に就けないまま、だんだん社会から離脱せざるを得なかった、誰にでも起こり得るような問題であり、だからこそ適切な支援をすれば元気を取り戻せるし、そのためにも早期に介入する具体策が重要と述べています。
「悲惨さや暗さを伴い、普通ではない、というのが世間での引きこもりの定義。その定義そのものが、本人や家族に、そこまでの我慢を強いている」との認識に立ち、それを打開するために積極的に地域の説明会、訪問活動にとりくんでいることが教訓的です。
玄田教授も、誰にでも起こり得る問題とし「元々は対人関係形成能力のあった無業者でも、閉じた状況を続けるうちにその状態が惰性となって、働く意識や行動が萎えていく悪循環も懸念をされる」と指摘をし、「必要なのはまず『出会う』ことである。その出会いを通じて、広く家族以外と交流するきっかけをつくることである」と指摘をしています。
◆社会が不安定化しているもとで誰にでも起こりうる問題という視点での取組が大事だと思いますが。藤里町の取組について学ぶべき点についてお聞ききします。
■地域福祉部長
次に、秋田県藤里町の取り組みに学ぶべき点について、お尋ねがありました。
藤里町では、町の社会福祉協議会が、稼動年齢層にある生活困窮者や、ひきこもりにより社会的に孤立している人などの実態把握をきめ細かく行ったうえで、就労支援や居場所づくりなどの分野で、そのニーズに応じた地域独自の支援策に取り組んでおります。
こうした取り組みは、県が、今後進めます生活困窮者やひきこもりの自立を促し、非行少年の立ち直りを支援するための取り組みなどを進めていくうえで、大変参考になる先行的な事例だと受け止めています。
塚地県議
県は、あったかふれあいセンターなど地域の居場所づくりにとりくんでいます。残念ながら高知市が撤退したため同事業でなくなったのですが、高知市内の「アテラーノ旭」で話をおききしますと、そこに来ておしゃべりしたり、地域のお役にたつ事業に参加したりする中で、精神的にも元気になり、ウツ症状がなくなった例がいくつもあるとのことです。孤立を防止し、社会との関係を紡ぎなおすことの大事さも証明されていると思います。
◆40歳以上の大人でも相談の窓口があることを発信すること、福祉部門の「対策」という枠だけでなく、居場所のあるまちづくり、地域活性化の仕組とも結んだ総合的とりくみが必要ではないか、お聞きをいたします。
■地域福祉部長
次に、40歳以上の大人でも相談窓口の情報発信と福祉部門の対策という枠にとらわれず、居場所のあるまちづくりや地域活性化の取り組みとも連携した総合的取り組みが必要ではないか、とのお尋ねがありました。
ひきこもりの状態にある方やそのご家族の悩みを解決するためには、まずは、相談先を知っていただくことが重要となります。このため、県民の皆様には、専門的な相談窓口となります「ひきこもり地域支援センター」や、身近な相談窓口である市町村のほか、経済的に困窮した状況にある方に対する生活困窮者自立促進支援モデル事業による相談窓口など、ニーズに応じて多様な相談窓口があることの周知を図ってまいります。
一方、ひきこもりに至る背景には、経済的な問題や家庭内の問題、健康や障害など様々な問題が複雑に絡み合っている実態があり、一人ひとりの悩みやニーズに的確に対応するためには、相談機関が医療機関や就労支援機関、、あるいは社会福祉協議会などとのネットワークづくりを強化していく必要があります。
また、その際には、誰もが利用できる「あったかふれあいセンター」などの居場所の活用や、地域における見守りネットワークの構築など、高知型福祉の実現に向けた取り組みと併せて、地域の生活を守り、産業をつくる中山間地域の活動拠点となります「集落活動センター」の取り組みなどとの連携を図ることにより、ひきこもり状態にある方やご家族が地域の中で孤立することなく、自立した日常生活が送れるように支援に努めてまいります。
塚地県議
最後に、追手筋遺跡で発見された池の保存と今後の高知「城下町遺跡」への対応について 伺います。
新図書館建設に伴う発掘調査が、追手前小学校の跡地すなわち、追手筋遺跡において五月以降、市教委や県埋蔵文化財センターによって実施されています。市街地における発掘事例としては過去最大の規模を有するものとなっています。
ご承知のように当該地は、高知城下町の中枢地域であり家老クラスの上級武士の屋敷が甍を連ねていたところで、江戸時代の古地図などには屋敷所有者が具体的に記載されている例も多く歴史情報としては比較的に恵まれている場所であり、発掘調査結果とのすり合せによってより豊か城下町の歴史復元が期待されています。
周辺の学校関係、商店街の人々など、すでに発掘現場を訪れた見学者は1000人にのぼっているとのことです。
そこで、この6日の発掘現場視察で見聞したことやこれまで周辺部で実施された調査結果などに基づいて、発見された遺構や遺物の歴史的評価や今後の取り扱い方、位置づけなどについて質問させていただきます。
今年5月?6月に主として小学校校舎跡地を対象に高知市教育委員会が調査を行い。続いて、8月初めから県埋蔵文化財センターが3,000平方㍍余りの発掘に着手して、今まさに佳境を迎えています。近代から幕末そして江戸時代初期にいたる生活面が確認をされ、場所によっては三面、四面の遺構が残存しており、1.5m程の地層断面には幾層もの堆積層が確認をでき、その一つ一つに数百年にわたる各時代を生きた人々の営みが刻まれています。
今回の調査による検出遺構や遺物は膨大な量に及び、江戸時代の遺構では屋敷境の南北に伸びる大溝、井戸、池、集水施設、導水施設など、各遺構からは土器類を中心に膨大な遺物が出土しています。遺物の多くは、衣食住に関するものであり、このような遺物の中には、文献史料では見出せない情報が数多く含まれています。
遺物の中で今回驚かされたのは、「山内蔵人(やまうちくらんど)」などと書かれた木簡(もっかん)が多く出土していることです。今後解読作業が進めば、多くの事実が明らかになり、今後の研究の進展が期待され、そのための体制整備が急がれますが、教育長はどのようにお考えかまず伺います。
■教育長
次に、追手筋遺跡に関する一連の御質問にお答えいたします。まず、追手筋遺跡の研究の進展に伴う体制整備について、お尋ねがございました。
新図書館建設に伴う追手筋遺跡の発掘調査では、江戸時代、の井戸跡や屋敷境と見られる溝跡、そして、池跡など多くの遺構が確認されました。また、土器類とともに木簡など木製品も数多く出土しています。
これらの出土品については、今後埋蔵文化財センターにおいて、専門家の助言も頂きながら、調査し整理を進めることとなりますので、そのために必要な体制の確保に努めながら、本県の歴史資料として役立てることができるよう取り組んでまいります。
塚地県議
遺構の中で最も注目すべきは、調査区の東と西から発見されている2基の池の跡であると専門家は指摘をしています。これらの池は庭園に伴うものと考えられますが、残念ながら庭園そのものは後世の改変によって消滅をしています。しかし、所属時期については出土遺物から、西部の池は18世紀には作られ、、東部の池は19世紀代に築造されたとみられています。
一般的に江戸時代の園池は、18世紀に京都で成立して全国に普及し19世紀には盛行期を迎え、高知でもその典型的な例を五台山の竹林寺の苑池(国指定名勝)に見ることができます。竹林寺例は京都風を呈していますが、今回発見の2例は、比較的小振りの礫を石垣状に、まるで河川の護岸のように積み上げるなど手法が京都風とはことなります。
発掘調査で明らかとなったものとしては県下で初めての事例であり、西部の池は18世紀に遡る点で、竹林寺以前に独自の手法による苑池があったことが証明をされました。判っていなかった高知独自の苑池造営手法が武家屋敷に伝統的に存在していたことが明らかとり、全国的に武家屋敷に伴う園池の発見例は20例程度ときわめて少ないことから、庭園史のなかに重要な位置を占めることになるといわれています。またこれらの遺構は、今後、高知城下町の形成と展開を知る上で重要な位置付けを得るとともに市民の大きな知的財産、街つくりの資源となるものと確信するものです。
◆この2つの池の歴史的価値をどのように受け止めておられるか教育長に伺います。
■教育長
次に、遺跡で確認された池跡の歴史的価値についてお尋ねがございました。
追手筋遺跡では、池跡が2か所確認されました。近世城下町の発掘調査は近年全国的に増えてきており、文化財を総合的に研究する機関である奈良文化財研究所のデータベースによりますと、江戸時代の武家屋敷跡で池遺構が確認された報告事例が11件ございます。 こうした池跡の歴史的価値については、今後、今回の発掘調査の成果を整理していくことになりますので、近世城下町遺跡で発掘調査された、全国の池遺構の資料などを収集し、比較検討しながら、評価を行ってまいります。
塚地県議
以上のような視点からこの池については、現地保存を行うべき性格の遺構であると考えますが、保存についての見解を伺います。新図書館は県民に取って新たな知的殿堂となりますが、それと引き換えに歴史が失われるのは賢明ではありません。歴史遺産を活かし取り込んだ施設作りを推進していただきたいと思いますが、どのように対応されるか、合わせて教育長にうかがいます。
■教育長
次に、遺構の保存についてのお尋ねがございました。
庭園は、建物や築山、池などによって形成される空間が重要となりますが、今回の調査では、池の一部を除き、庭園の大部分は既に破壊されているため、全体像が不明な状況にあります。
また、現在整備を進めている新図書館は、将来の人づくりを担う新たな知の拠点となる施設でもありますので、池遺構の現地保存は考えておりませんが、今回の発掘調査によって得られた資料を、記録保存するとともに、有効活用について高知市をはじめ関係機関と協議検討してまいります。
■教育長
次に、歴史遺産を活かし取り込んだ施設作りについてお尋ねがございました。
新図書館は、着実に整備してまいりたいと考えていますが、今回、発掘された出土品の活用については、例えば、歴史民俗資料館などの他の施設での活用といったことも含め、関係機関と連携しながら検討を進めてまいります。
塚地県議
この際、今回の調査結果も踏まえ、これまでの「城下町遺跡」の取り扱いについて伺います。近代都市は城下町が発展した場合が多く高知も例外ではありません。他地域では1980年代から城下町の発掘調査が行なわれ記録保存が蓄積されるとともに場合によっては現地保存や遺跡を取り込む形で街作りがなされてきています。
それに対して高知市では、戦後長きにわたって城下町での本格的な調査は行なわれてきていません。城下町の中枢とでも言うべき「郭中」(西は枡形、東は京町、北は江の口川、南は鏡川まで)の範囲を遺跡分布地図に示しているだけで、城下町関連遺構・遺物に対して何ら有効な措置が取られていないのが実態です。
「郭中」の中で繰り返されてきたビルの建替えや地下駐車場などの再開発においても本格的な調査は全くされていません。2000年以降、再開発が高知城を取り巻く官公庁の建て替え工事を前にやっと緊急調査が実施され始めましたが、他県の県都に比べて実に20年近く出遅れています。
この間はじまった裁判所や検察庁、市民病院跡地やマンション建設関係で行なった発掘調査なと、何れの例をとっても近世を中心に豊富な遺物・遺構が発見され、高知市の歴史復元に重要な資料となっており、高知市街地の地下は「歴史の宝庫」であることが証明をされてきました。
昨年行なわれた調査では、平安時代にさかのぼって遺構・遺物が出土し、15世紀代には今日の追手筋を基本とする地割りが成立していたことも明らかになりました。 今回の調査結果も踏まえ、これからの「城下町遺跡」の取り扱いについて、県と高知市が連携し「わたしの城下町」の形成をめざした取り組みが求められています。
追手筋遺跡も含めて今世紀になって実施してきた調査によって周辺部一帯が高知市の歴史を知る上で重要な遺跡あることが明らかになりました。まず、先に述べた高知市の郭中は参考地として範囲を示すだけでなく直ちに埋蔵文化財の包蔵地とし、その上で、ビルの立て替えなどに際しては事前の発掘調査ができる体制を少しでも早くつくるため、県としても積極的な支援措置を執るべきと思いますが、教育長のご所見を伺います。
■教育長
最後に、高知市の郭中といわれていました高知城周辺地域について、埋蔵文化財包蔵地として位置づけて、県としても積極的な支援措置をとるべきではないか、とのお尋ねがございました。
埋蔵文化財包蔵地の指定については、まず高知市が文献や現地調査などに基づき、指定する範囲を検討し、指定を受けることを決めたうえで」県に協議を行い、決定していくことになります。
埋蔵文化財包蔵地に指定されますと、そこで開発を行おうとする事業者や、住宅を建てようとする方々は、事前に市を経由して県に届出するとともに、土地の状況によっては試掘確認調査や本格的な発掘調査が必要になってくる場合もあります。そうした点も含めて、高知市として指定を受けるかどうか、判断をすることになります。
現在、高知市から包蔵地指定の意向は、お伺いしておりませんので、引き続き郭中参考地であることの周知に努めてまいりたいと考えております。
塚地県議
さらに城下町は武士の住まう「郭中」だけでなく町人の居住する町家も含めて城下町であり、調査の対象地を機会を捉えて積極的に拡大して行く必要も踏まえておかなければなりません。
今や豊かさの物差しは大きく変わってきました。全国で地域の歴史や文化を活かした魅力ある町つくりが盛んに行なわれるようになってきました。その中で埋蔵文化財は大きな役割を果たしています。ハリボテも一時的な集客効果はありますが、賞味期限が切れれば粗大ゴミ、ハリボテからは何も出てきませんが、本物は迫れば迫るほどに輝きを増し時を経るごとに歴史を雄弁にかたり、遺跡は、そこに立つことによって歴史と空間を共有することを可能にし、保存整備されば歴史の語り部として第二の生命を付与されます。
◆高知には高知城という他の地域にはない核となる遺産があります。これを中心に借り物ではなく本物の歴史遺産を活かした街作りのグランドデザインを描く時がきているのではないかと考えます。そうした立場で県市共同での取り組みを強化するよう知事の決意をこの際お伺いしまして、私の第一問といたします。
■知事
次に、追手筋遺跡の保存と活用に関して、本物の歴史遺産を活かした街作りのグランドデザインを描く時が来ているのではないか。また、そうした立場で県市共同での取り組みを強化すべきではないかとの、お尋ねがございました。
歴史的遺産を活かしたまちづくりにつきましては、県としましても文化財の保存と活用のバランスに留意しながら進めてまいりたいと考えております。現在、高知城の北側にある北曲輪と西側の西堀地区では、国の史跡指定を受け、高知城と一体的な整備を計画しておりまして、高知城という本物の歴史的遺産を活かしたまちづくりにつなげていくことといたしております。
あわせて、高知市中心部では、県と市が民間団体等の皆様と協働しながら、多くの人が集まり、気ままに「まちぶら」できるエリアを目指し、はりまや橋周辺から高知城までの東西軸エリアの活性化プランに取り組んでいるところであります。
このプランでは、取り組みのひとつとして、高知城周辺の回遊性の向上に向けまして、高知城や新資料館とさらにその間、武市瑞山、吉田東洋、板垣退助らの史碑などの周辺史跡を結び、さらなる相乗効果をもたらす取り組みこういうものも考えて進めてきておるところでございます。
議員からいただきましたご意見につきましては、東西軸エリア活性化プランフォローアップ委員会の場でご紹介させていただくなど、今後検討に生かさせていただきたいとそのように考えております。
塚地県議
それぞれ答弁いただきまして、ありがとうございました。それでは時間も少ないのですが、第2問を行なわせていただきたいと思います。
まず1点目が、先ほど教育長が男性の教職員の育児休業の取得が重要だということで、これまでの取り組みに加えて、各所属長が 直接対象となる教職員に面談もして、聞き取りもして、促していく新たな取り組みをされると言うことでありましたので、是非その成果に期待をしたいと思います。と同時に、現在の学校現場が 余りにも忙しい状況が育児休業が取り辛いという状況になっているということも思っております。学校現場の実態を日常教職員が置かれている状況というものを具体に把握をしていくということがこれからも重要になると思いますので、ぜひその取り組みを進めていただきたいと思います。が、なかでも、小学校の先生の定年前の退職の数が大変多くなっていて、そのことは一つの働きつらさの証明ではないかと言われているところです。先日12月2日の男女共同参画推進本部会議が開かれまして、そのなかで教育長は小学校の先生方の退職者のうち半数が定年前だと、その原因が何なのかと実態調査をしてみたいと、お話になっておられますけど、是非、そのことは前向きに具体化していただきたいで、何が原因で早期退職になっているのか、という事態を調べることで、学校現場の教職員の悩みも具体化されると思うのです。
是非そういう方向で、実態調査をですね、 前向きに進めていただきたいと考えておりますけども、お考えを伺えたらというふうに思います。
二つ目の問題が、遺跡調査の問題ですが、先ほど現地での保存がなかなか難しい状況だと、たしかに、新図書館の建設等々とも比べるとそういう状況下とも思います。ただ、こうした歴史的遺物 、本物を街づくりに生かしていく ということは極めて重要なことだと思いますので、ただ書面で記録保存するということでなく、県民・市民の目で確認ができるものとして、移設保存というのを是非検討いただきたいと考えますが、有効活用にそのことも含まれるのか、高知と協議していくおつもりはないのか、合わせてお伺いしたいと思います。以上2問です。
■教育長
まず、教職員の定年前退職の件でございますが、今塚地議員から働きにくい環境があるのではないかというお話がございましたが、働きにくい環境を想定した場合、学校現場が働きにくいのか、あるいは家庭生活の状況で働きにくいのか、社会生活をおくる上で働きにくい状況にあるのか、いろいろあろうかとおもいます。そういう意味で、そういう調査をしてみる価値があるなということを思っている訳でございます。なお、学校だけでなく知事部局も含めた話し合いをしてみたいと考えているところでございます。
それからもう一点、現地保存ができないのであれば、せめて移設保存はできないのかというお話がございますが、先ほどごと御答弁申し上げましたとおり、これからあの出てきた遺跡の、特に池になろうかと思いますが、評価というものが専門家によってなされると思います。そのなかで、移設保存までして保存する方がいいものなのか、それとも、記録に留めておくことで適切なのか、そういった評価もなされると思いますので、そういう評価を待って、検討をしてみたいと考えております。
塚地県議
ありがとうございました。今の調査の件は、前向きに検討して、具体化を図っていただき、それに対する対応策は何なのかということも合わせて、お示しいただけるようにお願いをしたいと思います。働きやすい学校現場づくりといううえでも、貴重なことになろうかと思いますので、是非よろしくお願をいいたします。
遺跡の保存のことですが、その価値を見定めてどう対応するということは基本だと思いますが、やはり本物がきちんと出てきたという状況ですから、その本物をどう時代に継承していき、そして、今の街づくりに生かしていくかという視点で、是非積極的に高知市とも協議を進めていただきたいということをお願いいたしまして、私の一切の質問を終わります。ありがとうございました。
以上