議会報告

  • 2013年11月25日
    9月議会(10/15)「特定秘密保護法案に反対する意見書」賛成討論(吉良富彦議員)

 私は日本共産党を代表し、ただいま議題となりました、議発第11号「特定秘密保護法案に反対する意見書議案」に賛成の立場で討論を行います。

 安倍政権は国家機密を漏えいした場合、最長10年の懲役を科す、特定秘密保護法案をこの臨時国会に提出すると報道されています。しかし、7年以上国民の目に触れないところで検討してきたにもかかわらず、法案提出の1か月前に突如として概要のみ示し、しかもわずか2週間のパブリックコメントですます手法は、国の統治機構や国民の知る権利等諸権利を著しく蹂躙する本法案の内容からしても断じて容認できません。国民主権の否定につながるこのような手法による法案提出は認められないというのが、意見書議案に賛成する第一の理由です。

 二つ目の理由は、「特定秘密」の定義や範囲のあいまいさです。

政府は「特定秘密」の対象として防衛、外交、外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止、テロ活動防止―を挙げています。しかし、「特定秘密」を指定するのは「行政機関の長」です。時の権力者の恣意的判断で政府や自衛隊、警察の情報が国民の目から隠されてしまいます。戦争準備の軍事情報、原発や警察の不正も隠される危険性があります。先のパブリックコメントでは、短期間にもかかわらず約9万件の意見が寄せられ、そのうち賛成は1割強にとどまり、8割弱が「特定秘密の範囲が広範かつ不明確」「内部告発できなくなる」といった反対意見でした。政府側の都合でいくらでも拡大されるものは認めないというのが民意であり、提案は見送るべきです。

  理由の三つ目は、懲役10年などの重刑が科され、公務員だけでなく、民間業者、家族・友人、ジャーナリストまで処罰対象となり、憲法が保障する言論・表現の自由、国民の知る権利に対し致命的な打撃を与えるものだからです。

 「秘密保護法案」の原案20条に「報道の自由について十分に配慮する」と盛り込まれたが、重要な行政情報への国民のアクセスを委縮・弾圧する本質は全く変わりません。

 「秘密保護法案」は、「特定秘密」を扱うことを業務とする公務員や契約業者の漏えいを処罰すると同時に、「特定秘密の保有者の管理を害する行為」と明示し、国民のアクセスや報道機関の取材を厳罰対象にしています。「管理を害する」の意味は不明確で、「人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス」という「例示」に続き「その他」とされており、限定性が全くなく、取材や調査活動などに重大な萎縮効果をもたらします。さらには「取得行為」について、共謀、教唆、扇動を広く処罰対象とし、当事者の「背後」にいる関係者を処罰できるものとなっています。国の情報は公開が大原則であるにもかかわらず、行政情報にアクセスする国民の動きをすべて敵視し、処罰するという、民主主義に照らして重大な問題をはらむ異常な弾圧法規は認められません。

 四つ目は、国会との関係においても、議員調査を制限する秘密優先の異常な構造となっていることです。

「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」と認めれば、国会にすら提供せず、提供する場合は非公開の秘密会が要求され、また、秘密会で知りえた情報を議員や職員が漏えいすれば5年以下の懲役に処され、議員が所属政党で議論したり、専門家の意見を聞くという当然の立法・調査活動までが制限を受けます。その一方、外国の政府や国際機関に提供する場合については、国会等への提供の場合よりも明らかに緩やかなものになっており、法案が処罰対象を、知る権利を持つ国民に向けて作られている異常さを示しています。

 国会による行政の民主的コントロールという憲法原則、衆参両院の国政調査権、議員の言論や政党活動、立法調査活動までも大きく制限し、国会の行政監視機能の役割を否定するこの法案は、行政優位・官僚優位への構造転換をもたらす違憲立法といえるもので到底容認できません。

五点目は、特定秘密を扱う者に対する「適性評価制度」と称する思想・身上調査でプライバシーが著しく侵害されかねないということです。

概要は、「行政機関の長」や警察本部長が、「特定秘密」を扱う公務員と民間業者に対し「適性評価」という名目で調査を行うとしています。対象者は、思想信条をはじめ犯罪歴や情報の取り扱いに失敗した経験、薬物乱用、精神疾患、飲酒、経済的な状況などを調査・管理されます。調査の範囲が職員や会社員の家族、友人、市民にも及び、本人の同意もないままマイナンバーなどを活用して個人情報が収集され、調査されます。「適性評価」で「特定秘密」を取り扱うに足る人物と認定された後も、警察や自衛隊情報保全隊、公安調査庁に監視される恐れもあり、断じて容認できないものです。

  最後に、そもそもこの法案は日米軍事同盟の実態を隠す意図でアメリカによって日本政府に押し付けられたものであるという事です。

  政府はいまでも国家情報の多くを秘密扱いにし、国民が知ることのできない状況にしています。防衛省は12万件以上も秘密です。外務省などの他省庁も同じです。にもかかわらず、「特定秘密保護法」を新たにつくるのは、日米両政府が2007年に結んだ「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)が根拠です。

 アメリカの「防諜法」は「違反者」に懲役10年を科しています。「軍事情報包括保護協定」はこの「防諜法」並みのレベルにしないと重要な国家秘密を提供できないとして、アメリカが日本に押し付けたものです。安倍首相がアメリカの「国家安全保障会議」をまねた日本版「国家安全保障会議」(NSC)設置法案と一体で、「特定秘密保護法」を制定しようとしているのは、まさにこのためです。

 去る10日、特定秘密保護法案の狙いは日米同盟の実態隠しであると、超党派の国会議員12名と市民が手を結び、「特定秘密保護法案」を考える勉強会が国会内で開かれ、250人の参加者で会場が埋め尽くされました。

 会では、日米の沖縄返還協定に関する密約を明らかにし有罪とされた、西山太吉元毎日新聞記者が「密約の存在を裏付ける、どんな証拠が出ても、密約を認めないのが日本政府だ。情報操作にとどまらない、情報犯罪だ」と批判。「日米同盟の実態は、その建前と大きく違う。その違いを隠すのが秘密保護法の目的だ。情報公開と秘密保護法は二律背反だ。両立することはありえない」と指摘しています。

  また、上智大学の田島泰彦教授らが、政府、与党が法案に「知る権利」の明記や「第三者委員会の設置」など、法案を“改善”するような動きがあるようだが「行政機関の一存で、野放図に秘密に指定できる仕組みを変えるものではない」とのべています。今、安倍首相は憲法解釈を変えてアメリカの言いなりに「集団的自衛権」行使の容認にふみきろうとしています。国民とメディアの目をふさぎ、「国民の知る権利」を侵害して、日本をアメリカの戦争に参加させる企ては断じて許されません。

 私たちは、戦前の政府と軍部が「軍機保護法」などで国民の目と耳をふさいだことが侵略戦争につながったという苦い経験をもっています。本法案に反対する国民の声は、パブリックコメントだけでなく、日本弁護士連合会や日本ペンクラブなど多くの個人や団体があげています。戦前の暗黒政治をくりかえさせないためにも、憲法が保障する「国民の知る権利」を奪う「特定秘密保護法案」を認めるべきではありません。本意見書議案への、同僚各位のご賛同をお願いしまして、以上、賛成討論といたします。