議会報告

  • 2012年12月17日
    憲法9条、TPP、社会保障制度改革、原発問題、南海トラフ巨大地震対策、市街地の買い物難民対策、木質バイオマス、高知県こども条例

2012年12月定例会 代表質問 吉良富彦 議員

質問項目

  1. 知事の政治姿勢【憲法9条と集団的自衛権】
  2. 知事の政治姿勢【TPP】
  3. 知事の政治姿勢【社会保障制度改革推進法】
  4. 原発問題
  5. 南海トラフ巨大地震対策
  6. 市街地の買い物難民対策
  7. 木質バイオマス発電
  8. 高知県こども条例
  9. 第二問

1.憲法9条と集団的自衛権

■吉良議員
私は日本共産党を代表し、質問いたします。

まず、憲法9条と集団的自衛権についてお聞きします

領土問題を口実にして憲法9条改定や「集団的自衛権の行使を可能」とする議論がなされています。侵略戦争の反省のうえに戦争放棄を国の基本とした憲法を根底からくつがえす危険な企てです。

憲法9条2項の戦力不保持の条項は、どんなに解釈改憲をかさねても、海外での武力行使はできない、という一線を維持する重要な条項です。当然、日本が武力攻撃されていない状態で、海外での集団的自衛権の行使も許されないとしてきたのです。集団的自衛権の「行使」とは、軍事同盟を結ぶアメリカが戦争を始めたら、日本が武力攻撃されていなくても、自衛隊が米軍とともにたたかうということです。戦後の歴史でも「集団的自衛権」は、アメリカのベトナム侵略や旧ソ連のチェコスロバキア侵攻などの正当化に使われ、侵略の道具となってきました。

03年、大量破壊兵器の保有というウソではじめたイラク戦争では、小泉政権は、日米同盟を理由に自衛隊を現地に派遣しました。この時、9条の改悪や集団的自衛権行使を可能としていたら、どんな事態になっていたか、不正義の戦争で殺し殺されるという最悪の事態に巻き込まれていた可能性がありました。現に集団的自衛権を理由にイラクに参戦したイギリスや各国で、イラク参戦の反省、検証がなされていますが、そうした反省、検証もなく9条を改悪し、集団的自衛権行使に踏み出そうとの主張は極めて無責任かつ危険な議論と言わざるを得ません。

9条にもとづく平和外交こそ今もっとも必要とされていると考えます。領土問題も棚上げ論にたって領有の根拠を主張できない外交不在から、歴史的事実と道理にたった外交交渉で解決することが必要であり、緊張を高める処置では解決しないことを、我が党は本議会でも討論を通して明かにしてきました。

知事は、08年9月議会でわが党の米田稔議員の質問に応えて「日本国憲法前文の中で、世界平和を理念とする平和国家を表明したわが国において、憲法第九条は、これまでの平和の維持、発展に大きく貢献したことと認識しており、これをしっかり守ることが重要であると考えております。」と答弁しております。

この立場を、堅持していくことがいっそう重要になっていると思うものですが、知事にお聞きします。

■知事

吉良議員の質問にお答えします。まず、憲法第9条についてお尋ねがございました。

私は、憲法第9条は、これまでの我が国の平和の維持や発展に大きく貢献してきたものと認識しており、このため、これをしっかり守るということが、立脚すべき立場であるとの考えであります。

もとより、今般の衆議院選挙においてそうでありましように、今後第9条に限らず、広範に憲法改正論議が従来に無く活発化するものと考えます。

私も時代の変化に応じて憲法改正を議論することは必要だと思いますが、その際には、第一に、先ほど第9条について申し上げたように、憲法の各条文がこれまで果たしてきた役割、意義に鑑み、先ずは同条文を守るとの立場に立脚したうえで、第二に、であるにも関わらず、あえてこれを変える必要性について、多角的かつ慎重に論じ、国民的議論に付す、という多層的かつ重厚な議論を要するものと思っております。

■吉良議員

北朝鮮が今月12日、「ロケット」発射を行いました。これは、アジア各国をはじめ国際社会の打ち上げ自制を求める声を無視し、「弾道ミサイル技術を利用した発射」の中止を求めた国連安保理決議1874号(2009年6月)に違反する行為であり許されるものではありません。

日本共産党は、北朝鮮が情勢を悪化させる発射を再び強行したことに強く抗議するとともに、北朝鮮が国連安保理決議を順守し、2002年の日朝平壌宣言、2005年の6カ国協議の共同声明に立ち返るよう強く求める声明を発表しました。同時に、国連安保理をはじめ国際社会が、非軍事・外交的手段に徹しながら、この地域の緊張をこれ以上高めることなく、一致した対応で北朝鮮への働きかけを抜本的に強めるよう呼びかけました。

◆日本は、中国、ロシア、韓国とは領土問題をかかえていますが、理性的で積極的な外交交渉で解決する努力をし、北朝鮮問題の解決へこれらの国と共同して取り組める環境をつくることが重要であると思うものですが、知事にお聞きします。

■知事

次に、北朝鮮問題に関し、領土問題を抱えている中国、ロシア、韓国と共同した取り組みについて、お尋ねがございました。

外交問題全体としましては、国益を第一に考えて、総合的かつ戦略的に、硬軟織り交ぜた対応が必要であると考えています。

中国、ロシア、韓国との間においても、領土の問題に関しては、毅然とした態度をとりつつも、北朝鮮のミサイル問題については、政府間で連絡を取り合い、各国が協調して北朝鮮に対してミサイル発射の自制を求めるなど、連携できるところは連携するといった両面からの対応が重要だと考えております。

北朝鮮との間では、ミサイルだけでなく、拉致問題もあります。我が国としては、国際社会との連携を図り、それぞれの問題に最も相応しい解決への道を探っていくことが必要であるとの考えでございます。

■吉良議員

また、一部に核武装を検討する発言がなされています。毎日新聞が実施したアンケートでは自民党候補の4割近く、維新候補の4分の3以上が核武装を検討すべきだと回答していると報じていました。が、核武装は「核拡散防止条約体制の否定、離脱」という国際的孤立の道であり、北朝鮮に核放棄をせまる根拠を失う道です。そして、「非核平和」という他国にない日本固有の外交上の道義的な力、ソフトパワーを失う道だと考えます。

◆核武装の検討はすべきではないと思いますが、知事の認識をお聞きいたします。

■知事

次に、核武装の検討はすべきでないと思うが、認識を聞く、とのお尋ねがありました。

私は、核武装はすべきではないと考えます。

2.TPP

■吉良議員

次に「TPP」に関してお聞きします。

TPPの問題点について、わが党は、一次産業だけでなく、公的医療制度や公共事業にも極めて深刻な影響を与えることをこの議場においても指摘してきました。県議会も3度の反対、抗議の意見書決議を議決してきたところです。しかし、世論調査で賛否が拮抗している状況をみると、その危険な本質が十分には知らされていないと言わざるをえません。その原因として考えられることは、「交渉して守るべきものは守る」とか「原則関税ゼロを変えさせる交渉力が問題だ」という主張に見られるように、交渉次第でなんとかなると思わされていることに一因があります。

そもそもTPPは二国間交渉のFTA、EPAでは市場を開放させることに限界があるとの考えから、「例外なき関税ゼロ」「非関税障壁の撤廃」を参加するにあたってのルールとすることで始まったものです。実際、後から参加したメキシコ、カナダは、アメリカに念書をとられ、「すでに合意されたTPPの内容については一切変更を求めることはできないし、今後、決められる協定の内容についても、一切、交渉には口は挟ませない」ということを約束させられています。

◆そもそも「守るべきは守る」というような交渉する余地がなく、交渉とはいえないものがTPP参加だと考えますが、知事の認識をお聞きします。

TPP交渉は、交渉開始に当たって各国の提案や交渉文書を極秘扱いとし、交渉文書や各国の提案、関連資料を入手できるのは、政府当局者のほかは、政府の国内協議に参加する者、文書の情報を検討する必要のある者または情報を知らされる必要のある者に限られます。また、文書を入手しても、許可された者以外に見せることはできません。さらに、これらの文書は、TPP発効後4年間秘匿されます。TPPが成立しなかった場合は、交渉の最後の会合から4年間秘匿されます。

県内で実施されたTPP反対集会で講演をした、鈴木宣弘・東京大学教授は、日本はすでに昨年11月に参加の意思表示をしており、いま裏交渉で米国の要求する内容とのすりあわせが進んでおり、その内容を米国が「妥当」と判断したら、あらたな「表明」をしなくても、明日にでも、米国が「日本の正式参加を認める」とアナウンスし、決まってしまう、そういう危険な局面にある、と警告しています。

◆ このような、国民には交渉中も、その後も一切内容が公開されないという、国民の目に隠れたところでの裏交渉ともいえる交渉も、直ちにやめさせる必要があると思いますが、知事にご所見をお伺いします。

■知事

次に、交渉の余地の無いTPPへの参加についてのお尋ねがありました。

TPP交渉への参加は、言うまでもなく例外なき関税撤廃を原則としており、このことがTPPにおける最大の懸念であります。

また、すでに参加国間で合意済みのルールについて、政府からは、途中から参加した国が再協議できるのかどうかといった点も明確にされていませんが、原則、再協議はできないのではないかと思います。

このように、11カ国による協議が進む中で、守るべきものは守るという主張を関係各国に認めさせることは、相当困難ではないかと考えております。

こうしたことも含めて、交渉参加を決めます前の段階で、本当に「国益を守る」という姿勢での交渉の進め方が可能なのかどうかといった点をしっかりと詰めていく必要があります。我が国にとって最適な判断をしていただきたいと考えます。

次に、国民の目に見えないTPP交渉の進め方に関してのお尋ねがありました。

政府間の外交交渉であるという性格上、TPPの交渉過程について、一定の情報の壁があることはやむを得ないものですが、とはいえ、参加の可否については、国民の皆様に十分な情報をお示ししたうえで、議論を尽くして判断すべきであり、残念ながら現段階ではこれに足りる十分な情報提供や対応がなされているとは言えない現状だと考えています。

政府において、水面下での交渉が進んでいるかどうかは定かではありませんが、TPPへの参加が総選挙の争点として取り上げられました11月には、全国知事会におきましても、あくまでも、十分な国民的議論と合意を得た上で、参加の可否を判断することなどを求める緊急要請活動を行っています。

今後も引き続きあらゆる機会を捉えまして、TPPが経済活動や国民生活にもたらす様々な影響や、関係国との協議内容などにつきまして、国民的議論に足りる情報を開示し、明確な説明を行って頂けますよう、政府に強く求めていきたいと考えておるところであります。

3.社会保障制度改革推進法

■吉良議員

次に、社会保障制度改革推進法についてお聞きします。

8月22日に施行された社会保障改革推進法について、8月24日付の東京新聞は「社会保障改革推進法の実態は 自助強調 弱者切り捨て」と報じました。

この法律は、1条の国民会議の目的を説明する部分では、社会保障費の増大の結果、国と地方の財政状況が悪化していることを強調し、2条に基本的な考え方がのべられています。

その第1項は「自助、共助及び公助」の適切な組み合わせを留意し、「国民が自立した生活を営むことができるよう家族相互、国民相互の助け合いの仕組みを通じて、実現を支援する」、第2項は「税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制」すると書いています。つまり、自己責任を強調し、社会的弱者を敵視するような文言となっているのです。

憲法25条に規定された生存権を保障する国の責務、「福祉の増進」という地方自治体の役割を定めた地方自治法をも無視したものと言わざるをえません。日本弁護士連合会も「憲法に抵触する恐れがある」と指摘しているのは当然だと言えます。

知事は、生存権などの社会権の重要性について「社会権は、20世紀になって、社会国家の理想に基づき、特に社会的・経済的弱者の方々を保護することにより、社会における実質的な平等を実現するために保障されることとなった人権である」「社会権は国民一人一人の固有の権利であり、基本的人権の中でも、大きな意義を有する重要な権利であると考えております。」とご答弁をされています。

◆このような知事の社会権についての認識と、「社会保障制度改革推進法」の考え方には大きな違いがあるのではないかと考えます。そして「自己責任論」が強調され、社会保障の切捨てがすすめば、所得が低く、1人暮らしの高齢者が多い本県にとって極めて深刻な影響を与えるのではないかと危惧するところでありますが、知事のご所見をお伺いします。

同法の付則には生活保護制度の給付水準の見直しも明記されています。生活保護の給付費が増加していると一部メディアや政治家が問題にしていますが、真の問題は、貧困が拡大していることです。

わが国の相対的貧困率は、97年の14.6%から、09年の16.0%へと上昇しています。しかも、その基準となる貧困線が149万円から125万円へと低下しています。貧困線よりも所得の多い中流層の平均所得が下がり貧困線を押し下げた結果だといえます。貧困線が低下する中で貧困率が高くなっている、ここにはっきりと貧困の拡大があらわれています。その人口は、なんと2040万人にも上ります。

貧困の拡大の原因は、「構造改革」路線で、富が一部大企業や富裕層に偏在し、一方、賃金の低下、非正規雇用の拡大により国民の所得が減ったこと、医療や介護保険料などの負担が増加したことにあることは明白です。

◆貧困の拡大そのものをなくす手立てこそが今こそ必要とされていると思いますが、知事の所見をお伺いします。

そもそも社会保障制度は、貧困をなくす取り組みの中から生み出されてきたものです。19世紀末、イギリスをおそった大不況のもとで、貧困が拡大し社会不安が増大します。労働運動も活発になります。そんな中、貧困は本人の心がけの問題としたそれまで貧困観を転換し、雇用の問題であることを明かにしたのがチャールズ・ブースという資本家の調査でした。貧困の原因は、「ひどく劣悪な条件でも、否応なく食べるために働かなければならない」という状況が、労働条件の際限ない切り下げを招いていることにあると明らかにしました。その処方箋が「ブースの雇用政策」「労働市場の組織化」と呼ばれているものです。当時は肉体労働が中心であり、その点でハンディキャップをもつ高齢者、障害者の生活を保障し、「ひどく劣悪な条件でも生きていくために働かなければならない」という「労働力の急迫販売」を防ぐことで、正規のきちんとした仕事が雇用条件の標準となるようにし、労働者・国民全体の生活を改善するというものです。具体的には、世界初の無拠出老齢年金(1908)、失業保険(1911)、劣悪な雇用を排除する職業紹介所(1909)等に結実し、効果を発揮しました。現在でも、ILOは、貧困を防ぎ、経済のまともな発展にとっても必要であるとして、「社会的保護のゆか(床)」と規定して、その役割を強調しています。

◆劣悪な雇用を防ぎ、社会全体の健全化を支える点に、社会保障の重要な意義があると思いますが、知事のご所見を伺います。

社会保障は、人権であり、まともな雇用を支える土台となるものですが、別の面では、産業であり雇用の場です。この分野は深刻な人手不足にあり、処遇の改善が求められていることは、本議場においても繰り返し議論されてきたところです。また、年金は特に郡部においては地域の消費を支え、経済を支える重要な役割を担っています。

◆社会保障の切捨ては、デフレ不況をいっそう深刻にするとともに、雇用の場を縮小させることになり、若者の定住をめざす本県にとっては影響が大きいと思いますが、知事のお考えをお聞きします。

■知事

次に、私の社会権についての認識と社会保障制度改革推進法の考え方に大きな違いがあるのではないか、また、社会保障の切り捨てが進めば本県に深刻な影響を与えるのではないか、とのお尋ねがありました。

お話しにもありましたように、社会権は、20世紀になって社会国家の理想に基づき、特に社会的・経済的弱者の方々を保護することにより、社会における実質的な平等を実現するために保障されることとなった人権であると認識しておりまして、国民一人一人の固有の権利であり、基本的人権の中でも大きな意義を有する重要な権利であるとの考えは、これまでもお答えしたとおりであります。

8月10日に成立しました社会保障制度改革推進法は、着実に進行する少子高齢化などの社会情勢の変化などに対して、しっかりとした財源の裏打ちされた持続可能な社会保障制度の再構築へ向けた第一歩として、社会保障制度改革の基本方針等が盛り込まれたものであります。

今回の社会保障制度改革では、年金、医療、介護制度などの改革を行うとともに、各々の分野で高齢者を含めた低所得者へのきめ細かな対策に取り組むこととされております。これによって、大綱にも示されたように一人一人が積極的に社会及び社会保障の支え合いに参画でき、必要な人に必要なサービス・給付が適切に行われるような社会保障制度を構築することが、すなわち国民の社会権の保障にもつながるものと考えます。私の認識とも齟齬をきたすものではないと考えております。

今後、社会保障制度改革の具体的な内容については「社会保障制度改革国民会議」において検討し、結論を得ることとされておりますので、その過程で、国において国民の皆様に丁寧な説明を行っていくべきだと考えておりますし、県といたしましても、地方に影響を与えるものにつきましては、国と地方の協議の場などを通じまして、しっかりと意見を主張していく所存であります。

次に、貧困の拡大そのものをなくす手立てこそが必要ではないか、また、劣悪な雇用を防ぎ、社会全体の健全化を支える点に社会保障の意義があるのではないか、とのお尋ねがありました。関連しますので併せてお答えします。

貧困の拡大や劣悪な雇用を防ぎ、こうした問題から人々の暮らしを守るためにも、社会的なセーフティネットがしっかりと維持されなければなりません。

急速な少子高齢化といった人口構成の大きな変化により、2050年には65才以上1人に対して、20歳~64歳は1.2人となることが見込まれております。こうした厳しい状況によるセーフティネットの維持のためにも、将来にわたって持続可能な全世代型の社会保障制度の確立に向けて、今後、しっかりと議論していくことが重要になってまいります。

また、お話にもありましたように、貧困率が上昇しているという現実に対して、その背景となる国民所得の低下や、所得分配の問題にどう対処するのかという観点も重要だと思います。

まずは、国において、デフレからの早期脱却への対策を講じるとともに、確固たる成長戦略の確立を図ることが重要になりますし、高知県としましても産業振興計画や日本一の健康長寿県構想にしっかりと取り組んでいくこと通じてこうした問題に対処していきたいと考えておるところでございます。

次に、社会保障の切り捨ては、デフレ不況を一層深刻にするとともに、雇用の場を縮小させるなど、本県への影響が大きいものではないか、とのお尋ねがありました。

国民の将来に対する不安や閉塞感が、景気や消費低迷の遠因と、背景になっていることを考えますと、社会保障の税と一体改革により、社会保障を充実させることや、制度の持続性を確保することで、国民が安心して消費や経済活動を行うなど、中長期的には経済にプラスに働く側面も大きいのではないかと考えております。

また、雇用の場の確保につきましても、社会保障制度改革を通じて、医療や介護、保育サービスの充実により、潜在している需要に応えていくことで、新たな雇用の創出も期待されるところであります。

県としましても、社会保障制度改革に伴う低所得者への影響を注視しながら、雇用の場の創出や経済的な効果につなげていくよう、先ほど申し上げましたとおり産業振興計画や日本一の健康長寿県構想を中心に進めてまいりたいと考えておるところでございます。

4.原発問題

■吉良議員

次に、原発問題についてお聞きします。

9月県議会で原発ゼロに踏み出すべきだ、と私どもの党は質問いたしました。今回は、その根拠について別の角度から質問いたします。

知事は9月議会で「五層の深層防護は極めて重要」であり、「IAEAが示す国際基準にも適合した世界最高水準の安全基準を策定し、その基準に照らした上で、厳格に審査していただきたい」と答弁しています。深層防護、世界最高の安全基準の確立をめざせば、原発を再稼働させるなどという「条件」は数年以上にわたり、決して整わないのが現実です。

第一に、活断層の影響調査についてズレも含んだ基準の厳格化がうち出されました。規制委員会の島崎邦彦委員長代理は、活断層の認定に関して、現行の耐震指針で12万~13万年前以降となっているものを、地震学の常識である40万年前より後に動いたものを、活断層とみなす考えを示しています。また、これまでの調査では「変動地形学」という活断層の真の専門家が入っていなかったことも明かになりました。新たな調査で大飯原発は、活断層が走っていることを、原子力規制委員会は否定できませんでした。また、敦賀原発の下にも活断層があることが、全員一致で否定できなくなりました。

日本の原発で活断層と無関係なところが存在するのでしょうか。東日本大震災を経て、日本の地震、津波の学問の知見が根本から見直しがなされ、日本地震学会は、地震の予知は「非常に困難」とし,これまでの①地震発生は(概ね)周期的であり,②大きな地震の発生前には識別可能な「前兆」現象が存在する、というパラダイムをリセットする必要が議論されています。

◆南海トラフ巨大地震の影響を、最新の地震学や「変動地形学」の知見も踏まえ、検証・調査することが必要ではないかと考えますが、林業振興・環境部長にお聞きいたします。

第二に、深層防護の4層、シビアアクシデント対策の問題です。

11月7日の衆院経済産業委員会での日本共産党の質問で、現在の原発は「原子炉立地審査指針」に照らし、「不適合」であることが明かになりました。

ICRP基準では、原発から10キロ時点の「原発敷地境界」での年間被曝量の最大値を100mSV以下にすることが定められています。日本の「原子炉立地審査指針」も07年、従来の250mSVから100mSVへ見直すべきとの中間報告が出され、現在はその基準が採用されています。

ところが、規制委員会が行った拡散予測では、1週間分の被曝量でも100mSVの範囲が30キロ内外となっており、立地審査指針で「不適合」となります。この指摘に、田中・規制委員会委員長も「指摘のとおり」「基準を満たさないものは動かさない」「福島事故のような放出がおこらない対策を取らなくてはならないと動かせない」と答弁し、最新の知見を取り入れた対策、バックフィット規制の必要性を明言しています。しかも、そもそも「原子炉立地審査指針」は、「格納容器がこわれない」ことを前提にしたものであり、対策の抜本的な見直しが必要です。

伊方原発でそうした対策がとられているのかどうか、明らかにさせていかなければならないと考えるものです。

◆まず、伊方原発は、二次冷却系やそれを冷やす冷却機能も含めて炉本体と同じ耐震対策がとられているのかどうか、林業振興・環境部長にお聞きします。

■林業振興・環境部長

原子力発電についての、ご質問のうち、まず、南海トラフ巨大地震の影響を、最新の地震学や「変動地形学」の知見も踏まえ、検証・調査することが必要ではないかとのお尋ねがありました。

南海トラフ巨大地震については、多くの県民の皆様が不安を感じているところであり、特に、この3月には国から新しい想定が出されたことから、これに対する安全性がしっかり確保されているかは非常に重要だと考えております。

このため、今年4月に開催した四国電力との勉強会において、国の新想定を踏まえた南海トラフ巨大地震の影響について確認いたしましたところ、独自にマグニチュード9クラスの地震を想定し、地震動解析を実施した結果、伊方原発所の最大加速度は約170ガルであり、想定される最大の揺れである基準地震動570ガルに影響を与えるものではないと考えているとの説明を受けております。

現在、四国電力においては、国からの詳細なデータの提供を受け、さらに精緻な検証を行っているところであり、結果が出次第、説明を受けることになっておりますのでその際には、お話のありました、最新の地質学や「変動地形学」の知見が反映されたものになっているかどうかも含めてしっかりと安全への影響を確認してまいります。

次に、伊方原発において、二次冷却系やそれを冷やす冷却機能も含めて炉本体と同じ耐震対策がとられているのかとのお尋ねがありました。

伊方原発の耐震対策につきましては、これまでの四国電力との勉強会において、耐震設計上の重要度に応じた耐震対策が講じられていることを確認しております。

万一の災害・事故時に「止める・冷やす・閉じ込める」機能を備える必要がある安全上重要な設備は、最も耐震性が求められる施設として分類されております。二次冷却系の中でも、それに該当する蒸気発生器や補助給水ポンプなど重要な設備は、原子炉容器や原子炉格納容器と同様に、想定される基準地震動570ガルに対して、十分な耐震対策が取られているとの説明を受けています。

また、四国電力は、安全上重要な設備の耐震裕度を2倍程度確保する独自の取り組みを進めており、伊方原発3号機については、本年6月に完了し、1、2号機につきましても、平成27年度までに完了する計画とお聞きしております。

■吉良議員

最高の安全基準は、計画でなく実際に対策が完了して判断できるものです。

報道によれば、伊方3号機のベント装置設置は2015年度末、1号・2号は未定とのことです。オフサイトセンターの移設も方針は出されましたが、場所も機能・規模も、具体的検討がはじまったばかりです。

◆シビアアクシデント対策は、計画をもって了承するのではなく、措置の完了が基準と思うのでありますが、知事の認識をお聞きします。

次に深層防護の第五層、原子力防災の状況について伺います。

11月30日、日本原子力研究開発機構は、原発から5キロ圏内の住民は、放射性物質の大量放出前に、30キロ圏外へ避難すれば、被ばく量は100分の1以下に抑えられ、被曝量を100ミリシーベルト以下に抑えることができる、と原子力規制委員会に報告しました。

原子力防災の専門家である,元四国電力職員の松野元氏は4/23毎日新聞のインタビューの中で「日本の対策の致命的欠陥は本当に避難できるかの保証がない」と問題点を指摘し、「電源喪失など異常事態から25時間以内?これは格納容器が破壊に至るまでの時間とのことですが――で全員避難できない原発は廃炉にすべき」と主張しています。そして、アメリカ・ニューヨーク州では、知事が避難計画を承認せず廃炉になっていると紹介しています。これらに関する本県の現状は、スピーディによる放射能汚染の影響すらも示されていません。

◆避難対策、原子力防災についても、再稼働の環境はまったく整ってないと考えます。知事の所見をお伺いします。

以上のように、世界最高水準の安全基準を確保するとすれば、原発推進の立場であっても、当分は動かせないのが現実であると断定できます。にもかかわらず、電力会社が原発に固執し、再稼働を急ぐ理由、それは「経営問題」が本質であると考えます。

6月13日、「脱原発ロードマップを考える会」に資源エネルギー庁が「脱原発が電力会社の経営に与える影響について」という文書を提出しています。それによると「原発ゼロ」決定で、原発・核燃料の資産価値がゼロとなり、一方、廃炉引当金の不足が顕在化し、4兆4千億円の特別損失が発生することが明らかにされました。原発は、40年間で減価償却をし、40年間・76%の稼働率で廃炉引当金を積み立てる仕組みになっており、建設が新しいもの、事故などで運転が止まった期間の長い原発ほど損失が大きくなります。東京電力をはじめ、少なくない電力会社が債務超過に陥るというものです。

また、5月7日の内閣府「需給検証委員会」に提出された「原子力発電所が停止し続けた場合の電力9社の財務状況」によれば、中部電力と中国電力以外は、12年度の赤字分が、原発ゼロ決定後の資産を上回り、債務超過におちいります。つまり、「安全が確保できなくても廃炉にできない」、「再稼働をしなければ債務超過に陥ってしまう」、という問題がのしかかってくるのです。

さらに、電力料金ともかかわることですが、原子力発電は、稼働していなくても巨額の固定費がかかるのが特徴で、そこは火力発電と決定的に違う点です。自民党の河野太郎衆院議員は自らのホームページで、九州電力と日本原子力発電の原子力発電費用は、2011年4月~2012年3月で1兆5958億円となっているが、そのうち1兆3650億円が固定費であること、そして動く見込みがなくても「動く」としなければ、総括原価方針のもとでは電気代に反映できない、それが電気代高騰の原因であると、明らかにしています。

当面は動かせる状況はない、莫大な投資をして五層の深層防護に努力しても、動かせる保障もなく、安全への投資をちゅぅちょする。高効率への「コンバイント・サイクル発電」建設の投資もちゅうちょする事態を生み出す。動かせないと電気代に本来は反映できず、莫大な赤字の要因となる。廃炉にすると莫大な特別損失が発生する、という、まさに袋小路に入っているのが電力会社の状況なのです。

私たち日本共産党は、事故がおきればそれを閉じ込める技術をもたず、処理方法もない核廃棄物をこれ以上増やすべきではない、電力は足りている、自然エネルギーの本格的推進のためには原発への未練を断ち切る必要がある、として、原発即時ゼロを主張していますが、徐々に脱原発に向かう立場であっても、この袋小路から抜け出すとともに、安全第一を担保するためには、廃炉に踏み出す清算事業団のようなスキームが必要となってきていると考えます。その費用については、当然、原子炉メーカーや原発に融資してきた金融機関の責任が問われなくてはなりません。

◆再稼働について科学的な基準で判断するためには、廃炉ができるスキームを検討する必要があると思いますが、知事の所見をお伺いします。

原発の推進のために、私たち国民は、電源開発促進税として3千数百億円、そして、全く見通しのない核燃料サイクル・再処理のために電気料で2千数百億円を負担しています。

◆この費用を廃炉にむけた費用とともに、自然エネルギー・省エネルギーの推進に使えば、大きな展望が開かれると思いますが、知事にお聞きいたします。

■知事

次に、原子力発電についての一連のご質問にお答えします。シビアアクシデント対策は、計画をもって了承するのではなく、措置の完了が基準ではないか。また、避難対策、原子力防災についても、再稼働の条件は、まったく整っていないのではないかとのお尋ねがありました。関連しますので一括してお答えをいたします。

原発事故による直接的被害の大きさやその影響が多岐に及んでいることを考えると、原子力発電の安全は、最大限確保すべきであり、シビアアクシデント対策については、再稼働までに完了しておくことが本来の姿であると考えます。

一方で、従前より申し上げていますように、私は原発への依存度は、徐々に徐々に下げていくべきとの考え方に立っていますが、そうした取り組みを進めていく中にあっても、電気は人々の日々の暮らしに欠かせないものであり、電力の安定供給の確保、電気料金の上昇に伴う国民生活や経済活動への影響などを考慮したとき、対策の全ての完了を待たずして、どうしても再稼働せざるを得ない時期や場面が出てくる可能性がないとは言えません。

そのような場面でも、安全性の確保が大前提であることに変わりはありませんので、国としてしっかりと判断していただくと同時に、地元住民、自治体はもとより、国民に対して説明責任を果たしていただく必要があると考えております。

県といたしましても、必要に応じ、四国電力に対して万全を期していただくよう求めるとともに、国に対しても要望等行って参ります。

また、避難対策、原子力防災につきましては、原子力規制委員会において、今年10月に原子力災害対策指針が公表され、原子力災害を想定して、予め、重点的に対策を講じておく「原子力災害重点区域」が、概ね30㎞圏内を目安に設定されることになりました。

併せまして、年内を目途に避難を判断する基準や緊急医療体制、甲状腺被爆を防ぐ安定ヨウ素剤の投与基準等が示されることになっていますので、重点区域内の自治体においては、年度内には、それぞれの「地域防災計画」に今回示された指針等を踏まえて、原子力災害対策が盛り込まれることになるものと思います。

なお、本県は、30㎞圏外でございますが、プルーム通過時には、屋内退避など一定の防護措置が必要と思われるため、「高知県地域防災計画」の火災及び事故災害対策編に原子力事故災害対策に係る章を新設し、その中で、異常発生時には、原子力事業者から速やかに本県へ通報することを明確に位置づけたところでございます。

次に、廃炉ができるスキームを検討する必要性についてお尋ねがありました。

国の原子力規制委員会においては、本年度内に新たな安全基準の骨子案を示し、来年7月にはIAEAが示す国際基準にも適応した世界最高水準の安全基準を策定することになっております。

その安全基準は既存の原発にも適用されることから、安全上問題があるとして40年を待たずに廃炉となる原発も出てくる可能性があります。

また、現在、議論になっている活断層の問題により廃炉になる可能性も否定できません。

その際、廃炉に必要な費用について、電力会社の内部留保である原子力発電施設解体引当金だけでは対応できない場面も想定され、新たなスキームの検討が求められる場面も出てくるのではないかと思います。

次に、原発の推進や核燃料サイクル・再処理のための費用を、廃炉に向けた費用と自然エネルギー・省エネルギーの推進に使ったらどうかとのお尋ねがありました。

従前から申し上げていますように、私は、原発への依存度を徐々に徐々に引き下げていくべきと考えておりますが、そのためには、社会システムの改革や科学技術の発展等が必要であり、国は、そのための具体的な工程表を示した上で、必要な財源も確保すべきであると考えます。

こうした取り組みは、確かに多額の費用を必要とするものではありますが、我が国のエネルギー自給率の向上、地球温暖化対策への貢献にとどまらず、さらには成長分野である環境関連産業の育成によって、新たな我が国の経済発展にも資することから、対価をかける価値は十分にあると考えます。

こうした支援の財源につきましては、国全体の予算のなかでしっかりと位置づけ、確保していくべきものと考えております。

5.南海トラフ巨大地震対策

■吉良議員

次に、南海トラフ巨大地震対策についてお伺いします。

「事前復興」の考え方のもと地震・津波対策を加速化させるためには、国として強力な後押しが必要であり、南海トラフ巨大地震特別措置法の制定に私たちも力を合わせて取り組みたいと考えております。

現在、実施している緊急防災・減災事業債とそれに基づく津波避難対策を加速化させるための県の交付金制度は、市町村の「実質負担」なしで事業を進めることが出来るうえ、使い勝手がよい点という点でも、全国的にも注目をされている、よく考えられた制度で、しっかり予算を確保することが大切です。

◆南海トラフ巨大地震対策特別措置法の制定と予算確保について、状況と決意を知事に伺います。

新しい南海トラフ巨大地震対策特措法は、東日本大震災の復興の取り組みを教訓にしたものにする必要があると考えます。

現在の東北の復興では、「個人財産の形成になる」として、住宅、業者、工場、医療機関などの復旧を支援しないという、旧来の災害対策の「原則」が復興の大きな足かせとなっています。支援が、公立病院や大規模な拠点病院に限定されたり、介護施設も、復旧費の大幅な公費助成は、設置主体が市町村や社会福祉法人などに限られていることで、地域に根ざした民間の小さな診療所や介護施設の再建が進んでいないことが大きな問題となりました。日本共産党は、住宅と生業の再建に必要な公的支援を行うことを復興の基本原則とすべきと提案しています。

特に、本県は、小規模な施設がそれぞれの地域で重要な役割を担っております。

◆防災対策を「事前復興」として位置づけるならは、民間、小規模であっても住宅、商店、工場、とりわけ医療機関、介護・福祉施設などの地震・津波対策に対する公的支援を抜本的に充実するべきだと思いますが、知事の所見をお聞きします。

東北の復興にあたって被災者の願いにそって国の施策を充実させることに全国が力を合わせる必要があります。それは、同時に南海トラフ巨大地震対策特措法の内容や高知県が被害にあった場合の復興にも関わってきます。

生活と生業の再建を基本におき、二重ローンに追いつめられずに住宅を再建するための支援や、店舗・事業所・工場の再建にたいする支援などを行うこと、同じ災害の被災者でありながら、「規模」や「競争力」を口実に、事業再開の支援策が「一部の事業所」に限定されるのでは、雇用は減り、地域経済はしぼみ、結局、「一部の事業所」も救われなくなります。

被災地の事業所や産業基盤を“点”ではなく“面”として支援する施策が必要です。恒久住宅のめどもないまま仮設住宅の期限を「2年」に区切る、医療・介護の減免措置を一方的に打ち切る、被災者への失業給付の延長措置も打ち切るなど、実態からかけ離れた「期限つき」支援策が、被災者の暮らしと健康を脅かしています。この点の改善も必要です。

◆ 東北の復旧を、我が事としてとらえ、問題点の解決に力をつくすことが、南海地震対策の充実にもつながっていくと考えますが、知事にお聞きします。

■知事

次に、南海トラフ巨大地震対策に関しまして、特別措置法の制定と予算確保についてお尋ねがございました。

この特別措置法の制定につきましては、南海トラフにおいて地震が連動発生すれば、東日本大震災を大きく上回る被害が生じ、まさに我が国にとって国難となることや、現在の対策が東海地震と東南海・南海地震のそれぞれ別の法律に基づき行われており財政措置に格差があること、また、これらの法律に基づく現行の制度では、学校の耐震化など揺れ対策に軸足が置かれており津波対策が十分でないことなどから、大きな被害が想定される東海から九州に至る広範囲を包括的にカバーする法律の必要性を国へ強く訴えてまいりました。

本年6月には、南海トラフ巨大地震対策特別措置法が議員提案で国会に提出され早期の制定が期待されていましたが、このたびの衆議院の解散となったところです。

また、対策を進める上での予算に関しましては、最大クラスの津波から県民の皆様の生命を確実に守ることを目指し、避難空間の整備を進めるために、緊急防災・減災事業債を最大限活用して参りました。

しかしながら、早期に取り組むべき事業が全国的にも数多くある中で、国が当初想定していた起債枠では、需要に見合わない状況となっております。

こうしたことから、近々発足します新内閣に対しましても、9県知事会議などと連携しながら特別措置法の一日も早い制定に向けて、一層強く働きかけてまいります。

また、国においては、これから予算編成の大詰めを迎えますので、地震・津波対策を加速化させるための財源確保にも全力で取り組んでまいりたいと考えております。

次に、住宅、商店、工場、医療機関、介護・福祉施設などの地震・津波対策への支援の充実について、お尋ねがございました。

県では、国の制度等も最大限活用しながら、限られた予算の中で効果的に地震・津波対策を進めております。幅広く防災対策を進めていくためには、多額の経費を要することからも、災害拠点病院などの災害対策上重要な施設や、災害時に支援を要する方が利用する介護・福祉・教育施設など、優先順位を判断し対策を進める必要があると考えております。

こうした中、民間等への支援としては、住宅の対策改修や、事業者が工場に外付け階段等の津波避難施設を整備する場合の補助、また、一般病院も含め自家発電機及び衛星携帯電話の購入に対する補助等を行っているところです。 今後は、医療機関への補助制度の拡充や、小規模な社会福祉施設などの高台移転を支援する制度についての検討を進めるなど、地震・津波対策のすそ野を広げていきたいと考えております。

次に、東北の復旧の問題点の解決に力を尽くすことが南海地震対策の充実につながるのではないか、とのお尋ねがありました。

東日本大震災の被災地では、被災者の生活再建のため、医療保険・介護保険の特例措置やその他の様々な施策に取り組まれております。

しかしながら、これらの取り組みが、被災地にとって十分に対応できているとはいえない面もあることは、ご指摘のとおりであります。こうしたことから、全国知事会において、失業給付の延長措置終了後の就業支援強化や、応急仮設住宅の供与機関の更なる延長、二重ローン問題への対応強化のほか、中小企業の資金調達手段を確保するための保証制度等の継続など、被災地の支援の充実・拡充を要望しております。

また、今の東北の復旧に向けた取り組みから得られる様々な知見を、本県の南海トラフ巨大地震対策に生かすことはきわめて大切だと思いますので、先ほど申しました知事会の提言に加え、現在策定している新しい行動計画にも生かしていくよう取り組んでいるところです。

■吉良議員

南海地震対策を加速化するためには、国の制度の充実とともに、地域の状況にそった計画を具体化するための自治体の体制の充実や、耐震診断などの専門スタッフの充実が不可欠です。また、地域の防災対策を日常的に点検・強化し、災害発生時には被災者救助の中心的役割を担う市町村消防の体制は、職員の不足が常態化しています。

◆特別措置法においては、職員配置の充実についても対応できる内容が必要と思いますが、危機管理部長にお聞きします。

■危機管理部長

南海トラフ巨大地震対策についてお答えします。

まず、特別措置法においての対策を担う市町村の職員配置、あるいは市町村消防体制の充実などについても対応できる内容が必要ではないか、とのお尋ねがありました。

県内の各自治体においては、東日本大震災を受けて、南海地震対策を喫緊の課題として捉え、すでに担当課室の設置や防災担当職員など、体制の充実に取り組んでおります。

また、橋梁や建築物などの耐震診断といった専門的な知識を必要とする業務については、外部への委託により順次対応を進めてきております。
 
一方、市町村消防の体制につきましては、各消防本部の管内人口や地理的状況、日ごろの活動状況などを踏まえ、各市町村等が条例で定数を定めており、現時点において、職員数は条例定数をほぼ充足する状況にありますが、消防庁が消防行政を取り巻く状況の変化を対応して、今後市町村が目指すべき目標として定めた「消防力の整備指針」における基準人員に対しては、約64%の充足率となっております。

近年の火災をはじめとする災害の大規模化や多様化、救急・救助活動の増大等を考えますと、地域の防災力の要となる消防職員の体制強化について、地域の実情を踏まえながら、市町村とともに検討していくことが必要だと認識しております。

なお、南海地震などの巨大災害が発生した際には、消防庁から示されている基準を満たしたとしても、本県の消防力だけでは対応できませんので、その場合には、県外からの緊急消防援助隊や自衛隊などの応急救助機関とともに活動することとなります。

今後、特別措置法とともに、国において検討される南海トラフ巨大地震を想定した応急対策活動要領では、発災時における警察や消防、自衛隊などの応急救助機関の具体的な派遣規模が示されますので、そうした県外からの応援部隊が、県内の消防機関などと連携し、救助活動等が円滑に行えるよう、体制を整えてまいります。

■吉良議員

8月に文部科学省が、建築後25年以上を経過した学校施設が約7割を占め、安全面・機能面において多くの課題を抱えていると、「学校施設老朽化対策ビジョン」の中間取りまとめも発表されています。学校耐震化については、9月県議会でもお伺いし、一部の自治体を除いては着実に進んでいます。また、危機管理体制、防災教育や地域の自主防災組織との連携など県教委がチェックリストを作成し、一校一校課題の進捗状況をつかみ援助しているとのことです。その後、9月に文部科学省が、学校の「非構造部材」の耐震診断と対策の実施状況を発表しました。今年4月1日時点で高知県の耐震点検の実施率は42.8%、対策実施率は20.9%にとどまっています。

◆公立小中学校の非構造部材の耐震化についても2015年度内に完了すべきと思いますが、計画と決意について、教育長にお伺いします。

◆学校施設は、住民の避難所に指定されているところが多数あり、その点では危機管理部としても備蓄品や飲料水・生活水を確保する浄水装置など備えるべき資材についても連携して検討されていると思います。それらの現状と課題について、危機管理部長にお聞き致します。

■教育長

公立小中学校の非構造部材の耐震化について、その耐震化の計画と決意についてお尋ねがありました。

公立小中学校の非構造部材についても建物と同様に、原則として、平成27年度末までに耐震化を完了することを目標としております。

このため、各市町村教育長に対して、平成25年度末までに非構造部材の耐震の点検を完了することを、本年10月に文書で要請をいたしました。

点検後、各市町村において平成27年度末までに耐震化を完了するための計画を策定していただくとともに、県としても計画どおりに耐震化が進んでいるか随時確認し、遅れている市町村へは加速化の働きかけをすることにより、目標年度までに非構造部材の耐震化を完了するよう取り組んでまいります。

■危機管理部長

次に避難所となる学校施設などに備えるべき備蓄品等の現状と課題について、お尋ねがございました。

避難所の開設や避難所で必要となる食料や資材などの確保については、一義的には市町村が行うこととなっております。

このうち飲料水と食料については、想定される避難者の一日分を市町村が備蓄をし、県はその20%にあたる量を、市町村を補完するために備蓄することとしております。

県の備蓄は、すでに目標に達しておりますが、市町村における充足率は、食料で約5割、水で約3割となっており、今後できるだけ早期に目標量まで積み増していくことが課題となっています。

また、発災後は、市町村の業務が膨大となり、避難所への支援が滞ることも予想されますため、県の備蓄物資の一部は、県立高校などの避難所に指定されている県有施設で保管することといたしました。

さらに、避難所の環境を向上させるために、ポータブル発電機、懐中電灯、ラジオなども避難所となる県有施設に備えることにしています。

今後は、年度内に発表を予定しております新たな被害想定を踏まえ、必要となる備蓄物資の数量や保管場所について、市町村や県教育委員会などとも協議をしながら、必要な見直しを行ってまいります。

■吉良議員

橋梁など、社会資本の老朽化が大きな問題となっており、公共事業の維持・補修の比重が大きくなっています。国土交通省が発表した15m以上の橋梁の長寿命化対策では、今年4月時点で対象の橋梁が1685あり、点検済みは1336、計画530にとどまっています。計画策定530のうち修繕が必要なものが387。うち対策が実施ずみなのは1個所だけです。6月県議会で、市町村道とそれにかかる橋梁の耐震化について質問し、土木部長からは「市町村の計画づくりが進んでいない」との答弁がありました。

◆ 県として市町村の計画づくりを支援するとともに、とりわけ住民の避難所ともなっている学校に通じる道路、橋梁の耐震化は、優先して実施することが有効ではないかと思いますが、土木部長にお伺いします。

■土木部長

県としての市町村道にかかる橋梁の耐震化計画づくりの支援及び避難所となる学校に通じる道路、橋梁の耐震化についてのお尋ねがありました。

橋梁の耐震化につきましては、避難路の確保や、発災直後からの救命救助活動、緊急輸送の確保のため、早期の対策が求められているところであります。

現在、市町村における橋梁耐震化計画につきましては、9市町村が完了し、6市町村が策定中という状況です。策定に着手していない市町村につきましても、南海トラフ巨大地震の新想定に伴う地域防災計画の見直し後、順次策定する予定となっています。

議員ご指摘のとおり、学校などの避難所への経路にある橋梁については、優先的に耐震化を進めることが重要です。そのため市町村では、地域防災計画に位置づけられた避難路にある橋梁や津波から避難するために必要な橋梁などの耐震化を図る計画を策定しているところです。

県としましても、今後も引き続き早期の計画策定を支援するとともに、計画策定や対策の実施に必要な予算を確保し、市町村が迅速な耐震化を進めていけるように努めて参ります。

6.市街地の買い物難民対策

■吉良議員

次に、市街地の買い物難民対策についてお聞きします。

県は、国の緊急雇用などの基金事業の終了に伴う市町村への支援として産業振興推進ふるさと雇用事業を創設しました。そのなかで「あったかふれあいセンター」など福祉的なものは、県の恒久的施策とし、産業振興的なものは、自立を目指していき、だんだんと支援を絞っていく、との方向性が示されています。

大枠としては妥当な方向だと思いますが、その中には、産業振興的な取り組みに見えて、福祉的要素を多分にもった取り組みがあります。高知市内の高齢化率の高い地域の買物難民対策です。

この地域、升形商店街に1976年に進出したスーパーが不採算を理由に閉店。07年同スーパーの労働組合が雇用継続と地元の存続要望に応える形で営業を引きつぎましたが、2010年12月に閉店。スーパー進出後は、その地域の個人経営などの店がなくなっていましたので、その結果、多くの「買物難民」が生まれました。また商店街の1日の通行人も800人から200人に激減し、1つの生活地域が消滅するような事態に追い込まれようとしていました。そんな中、住民のみなさんが運動をおこし、2010年、昨年11月、3800名以上の署名をそえて買物難民に関する請願を高知市議会に提出、そして採択されました。当時は、高知市は「特別援助できる制度はない」というものでしたが、2011年9月に高知市の委託事業「ふるさと雇用企画提案型雇用創設事業」として開店し、この4月からは県の「産業振興ふるさと雇用事業補助金」を活用しています。

この店は、お年寄りに利用しやすい店づくりをめざし、半径2キロまでは希望者には買物したものを自宅まで配達しています。「ひもじゅうて死ぬ」と電話があって食べ物を届けたり、「かぼちゃが切れん、切つてくれ」との要望にも応えるとも言います。地域の人には、大変よろこばれていますし、まちづくりの中核的な役割も果たすようになっています。中山間地域だけでなく、県都高知市においても各地で地元の商店街が衰退し、買物難民の発生が言われています。

◆買物難民対策は多分に福祉施策的側面がありますが、街全体の活気をとりもどす取り組みといえます。こうした取り組みに対する支援について、是非検討すべきではないかと考えますが、商工労働部長にお伺いたします。

■商工労働部長

買い物難民対策や商店街の活性化への支援についてお尋ねがありました。

県内の商店街は、人口減少などに伴う市場の縮小に加え、郊外への大型店の進出などにより、厳しい状況にあります。

議員のお話にもありましたように、高知市内におきましても、商店街からの量販店の撤退などにより、高齢者を始めとする住民の生活に支障が生じている、という地域が出てきており、商店街の活性化は、地域の商店の進行や賑わいの創出という面はもとより、住民の皆様の日常的な買い物の場の確保という点からも、重要な課題だと考えています。

そのため、県としましても、これまで「こうち商業振興支援事業」を活用して、買い物弱者への支援といった面で、お話にありました高知市の量販店の新規出店への支援を行いますとともに、店舗の少ない地域へ中心部の商店が出向いていく「移動商店街」といった取り組みにもご活用いただくなど、地域の実情に応じて、支援を行っているところです。

また、商店街の活性化に向けましては、例えば、商店街をイルミネーションで彩り、多くの皆様を呼び込む取り組みや地域の中学生の商店街での職場体験イベント、スタンプラリーの開催といった商店街の取り組みの支援を行うとともに、空き店舗対策として、新規出店時の改装に要する経費への助成を行うことで、高知市でも平成21年度からこれまでに18件の新たな出店につながってきています。

今後とも、市町村や商店街の皆さんのご意見を伺いながら、それぞれの地域の課題に応じた取り組みを支援することで、住民の皆様の利便性の確保と、県内の商店街の活性化を行っていきたいと考えています。

7.木質バイオマス発電

■吉良議員

次に、木質バイオマス発電についてお聞きします。

7月から自然エネルギーの固定価格買取制度がはじまり、本議会にも、売電益を地域に還元するためのスキームが提案されているところです。さて自然エネルギーの中でも高知県の一次産業との関連が極めて高い木質バイオマスを活用しての発電計画が姿を明かにしつつあります。本県においても木質バイオマス発電と、ボイラーの燃料になる木質ペレット製造を手掛ける複合施設を2015年に開設する計画や、その他にも複数の共同体による取り組みが検討されてきています。

固定価格買取制度においては、木質バイオマス発電では、燃料調達の態様やコスト,事業リスクを踏まえ,「リサイクル木材」「一般木材」「未利用木材」の区分が設定され,主として建設廃材を想定した「リサイクル木材」を燃料源とする発電の買取価格が13円/kWh、主として木材加工の工程から出てくる端材・おがくず・樹皮などの残材を総称した「一般木材」を燃料源とする発電の買取価格が24円/kWh,主に「未利用木材」を燃料源とする発電の買取価格が32円/kWhとなりました。さらに単一木質バイオマス燃料を燃焼させる発電だけでなく,複数の木質バイオマス燃料を混ぜて燃焼する「専焼」発電,および石炭等化石燃料やゴミ等一般廃棄物と木質バイオマスを「混焼」する発電が認められました。

事業化にとっては、林地残材や間伐材等の収集運搬コストの抑制、チップ化の経費の軽減、燃料の安定的供給などが課題となっています。

林地残材の低コスト収集・運搬技術では、作業道の整備、また急峻な地形での効率的な作業ができる機器の開発導入ももとめられています。フォワーダの積載能力を高度化、チッパー機能付きプロセッサ、また圧縮脱水による低コスト乾燥技術など森林総合研究所のレポートでも取り上げられています。

同時に、熱エネルギーはそのまま使うのが一番効率的であり、廃熱利用とあわせてコージェネレーションの取り組みが極めて重要です。また、未利用木材を活用することは、防災上の観点からも重要で、その防災的な価値も含めた支援が必要と思います。

◆本県における木質バイオマス発電の事業化における課題と取り組みについて、林業振興・環境部長にお聞きします。

我が国の木材自給率は丸太の関税ゼロなど自由化が推進されてきたもとで26%にまで低下しており、木質バイオマスエネルギーの利用にとって、木材の絶対的需要不足を改善することが求められています。付加価値をつけて用材をきちんと活用する、そして端材、樹皮の利用とともに、間伐の推進とあわせ未利用木材の活用をすすめることを、木材の利用拡大を土台にして推進することが極めて重要です。

◆木質バイオマスの活用を木材の需要拡大の中で、どう位置づけられるおつもりなのかも、林業振興・環境部長にお聞きします。

■林業振興・環境部長

次に、木質バイオマス発電の事業化における課題と取り組みについて、お尋ねがありました。

木質バイオマス発電は効率的な発電を確保するために、一定規模以上の施設が必要となってまいります。このため、施設整備にかかる初期投資が大きくなることや、目安となる規模の5,000キロワットの発電では、概ね10万立方メートルのチップ用原木が必要になるとの試算があるように、大量の原木を安定的に確保しなければならないといった課題があります。

こうしたことから、施設整備にかかる初期投資につきまして、国の事業などを活用しながら支援する予算を、来年度に向けて要求させていただいているところです。

また、燃料となるチップ用原木の確保につきましては、第2期産業振興計画の目標に沿って原木を増産する中で、曲がり材や小径木といった低質材が大量に発生しますので、これまで未利用であった林地残材も合わせて、効率的に収集するための仕組みづくりを関係者と構築するとともに、必要な支援をしていきたいと考えております。

次に、木質バイオマスの活用を木材の需要拡大の中で、どう位置づけているのかについて、お尋ねがありました。

本県の成熟しつつある森林資源を利用するため、第二期産業振興計画では大型製材工場の稼働もあり、大幅な原木の増産に取り組むこととしております。

こうした原木増産の中では製材用の上質材ばかりでなく、曲がり材や小径木といった低質材も大量に生産されることになります。これら低質材は現在主に製紙用のチップとして利用されていますが、そうした需要も縮小傾向にあることから、その行き場が大きな課題となってまいります。これまでの園芸用ボイラー等への木質バイオマスの利用に加え、木質バイオマス発電の導入に取り組んでいくことは、こうした低質材やこれまでは利用されていなかった林地残材を山に放置することなく、大量に活用することにつながりますので、上質材の需要拡大を目指す大型製材工場の整備とあいまって、木材全体の需要拡大に大変大きなインパクトを与えうる重要な取り組みであると考えております。

8.子ども条例

■吉良議員

次に、子ども条例についてお聞きします。

今議会に自民党会派から「改正高知県子ども条例」なる議案が提案されました。ご案内のとおり、現高知県こども条例は2004年7月26日、全国に先駆け、県段階では初の成立を見、自由民権運動発祥の地、婦人参政権発祥の地に相応しい全国に誇れる採択と言えるものです。

採択された現行条例案は、当時執行部原案にあった、第7条の(休む・遊ぶ)権利の条文の削除や、「こどもの意見が大人と同等に尊重される」という部分が「こどもの意見が適切に尊重される」への変更、「権利行使の制約」が示されるなど、議会による修正・変更で、子どもの権利条約の精神からは一部離れ後退した部分も見受けられるものではありました。が、私ども日本共産党は、4年もの期間を費やし、高校生など子どもたちと多くの県民の参加をもって、県民みずからが考え、行政とともにつくっていくという、今までにない画期的なプロセスを経て作成された条例案であることや、今後の運用により、子どもの権利保障を広く行政施策に生かしていくことが可能であることなどから、その採択を後押ししてきたものです。

子どもの権利条約をもとにした、行政主導ではない県民主体の条例づくりは、2001年4月、高知県子ども課が NPO 活動家など 8 人のメンバーに声を掛け、「みんなでつくろう! 「こども条例」 委員会」 が発足し始まっています。子どもたちを取り巻く現場からの意見を吸い上げることに重点が置かれ、02 年 3 月には 8 つのプロジェクトから8 通りの 「ミニ条例」 が作られ、03 年 3 月には 「高知県こども条例試案」 が出されています。 この試案では制定趣旨の 「ねがい」 として, 「こどもも大人もみんなで知恵を出し合い, 地域社会のルールづくりができるように!」 「こどもと大人が共に生きるパートナーとなるように!」そして 「こどもの権利が守られ, 豊かな未来が保障されるように!」 などがうたわれ、取り組みそのものが権利条約の精神を生かし体現させたものといえます。

すでに本県は、土佐の教育改革の中で、生徒や保護者などの意見を教育に生かそうと各学校に「開かれた学校づくり推進委員会」 を設置し、「子どもの権利条約」 第 12 条の 「意見を表す権利」の具現化として「このような会や生徒会・学級会活動などで自分の意見を表明してみよう」と、推進委員会の解説で子ども・生徒たちに呼びかけ、取組を進めていたことも、本条例づくりの背景にはあったと考えるものです。

◆知事は、県民が主体となって条例制定がなされた成立過程のこの取り組みをどう認識しているのか、ご所見をお伺いします。

◆また、全部改正案の提案者にもお聞きします。成立過程の取り組みをどう評価しているのか、お聞かせください。

現行条例は、「日本国憲法や児童の権利に関する条約などの理念を踏まえ」と明記されているように、「日本国憲法」と、1989年に国連総会で採択され、1994年に日本政府が批准した『子どもの権利条約』にもとづくものです。『権利条約』は人類が長い間紆余曲折を経て培ってきた子供観の到達点を、国際社会の約束という形で表現した、人類の倫理的声明です。それゆえ現行条例は、子どもの権利条約が求めている「権利の行使主体としての子ども観」の実質部分をわかりやすい形で、第2章から第4章までに明示し、古い子供観や教育観からの脱却を示し、取り組みの根拠としています。いわば、この条例の心臓部です。

本県では、これらに基づき様々な取り組みが各部局や市町村で実施されています。なかでも、昨年は、条例で設置された「高知県子どもの環境づくり推進委員」が「こどもが運営するまち~とさっ子タウン」とコラボし、「こども条例記念日フォーラム」が開催されました。高知市が今年から始めた「こうちこどもファンド」も子ども条例の精神が生かされた素晴らしい取り組みだと思います。先の高知市議会で、これら取組の意義を問われた高知市の教育委員長は「今後も、本条例の趣旨を踏まえ、子どもたち一人一人の豊かで健やかな成長のための取り組みを進めてまいりますと」と答えています。『権利条約』は法的拘束力を持つ法律であり、批准した国は自国内の子どもたちに対し、明らかな責任を負っていることを規定しているものです。ゆえに、本条例をふまえたこれら取組は、規定にのっとり、子どもの権利条約の理念を学び広げ具体化し、自治体として批准した責任を果たしているものだといえます。

◆今年も知事は土佐っこタウンに参加されていますが、参加されてのご感想をお聞かせ下さい。

◆また、3月の記者会見でこども条例に対して知事は「こういう考え方というのは、今においても非常に大事なことだと思いますし、尊重されるべきことだと思っています」と述べられていますが、改めて「子どもの権利条約」と「高知県こども条例」の意義についてのご所見をお聞きいたします。

◆提案に至った契機として、「県が進めている施策と『子ども条例』が目指す方向には矛盾が生じている」旨あげられていましたが、これらの取組は県の施策と矛盾をきたすものになっているのか、合わせてお聞きします。

一方、新たに提案された条例案は、最高法規である「日本国憲法」と、日本が国会の手続きを経て批准した「子どもの権利条約」という根拠を外しています。しかも、国際的な到達点である、子どもに保障されるべき権利の実質といえる第2章から第4章、つまり“心臓部”を見事にごっそりと抉り取っています。

例えば、2章7条は、「こどもは幸せに育つため、その妨げとなる、児童虐待をはじめ、身体的および精神的に有害な環境に直面している場合は、その環境から守られることができます」とあります。これは、権利条約の19条の「虐待・放任からの保護」にある、「親(保護者)が子どもを育てている間、どんなかたちであれ、子どもが、暴力をふるわれたり、むごい扱いなどを受けたりすることがないように、国は子どもを守らなければなりません」という事に照応する条文で、今次の、児童虐待から子どもを守る根拠となる大事な条文です。

また、12条は「子どもは感性や創造性豊かに育つために、芸術、スポーツ、伝統文化、昔遊び、及び地域の文化に触れることができます」と、地域を愛し、誇りを持つことを推奨する条文もあります。また、夢を持つ、と規定された第3章では、第10条で「こどもは夢を持つために、あらゆる人と交流することで、たくさんの生き方や考え方を学び、社会の様々な情報や仕組みを知ることができます。」は、権利条約の27条の社会的な発達権利と28条の教育の権利の具体化であり、先に紹介した「フォーラム」や「土佐っ子タウン」の取り組みの根拠と言えます。

これら、根拠法と権利の内容、つまり大事な骨格部分が明示されていない今回の提案条例は現行条例の精神を引き継ぐものではなく全く別物だと言わざるを得ません。

◆そこで、提案者にお聞きします。「改正」というなら、なぜ、現行条例の支柱である「日本国憲法」と「子どもの権利条約」を外したのか、そして、子どもの権利の実質を示す心臓部分をなぜ外したのか。

◆また、そもそも「子どもの権利条約」のもつ意義を提案者はどう認識しているのかお聞きいたします。

◆また、根拠となる理念や法規がなく、「子どもの尊厳および権利」を守り「高い規範意識」を身につける環境をつくる、と述べています。そこでいう子どもの尊厳、権利、高い規範意識とは、何を持って規定しているのか、お聞かせください。

以上、述べてきましたように、今回提案されている条例案は、現行のこども条例とは全く次元、立つ位置が違うものだといえます。現行条例の理念が見受けられず継承すらしてない条例案を「全文改正」という名で制定することは、現行条例を葬り去ること、廃棄することであり、到底認められるものではありません。

◆現行子ども条例を「改正」するかのような誤解を県民あたえる提案の仕方はおやめになって、独自の条例として県民に示し提案すべきだと考えますが、提案者のお考えをお聞きいたしまして、第一問といたします。

■知事

次に、現行のこども条例の成立過程をどのように認識しているのか、とのお尋ねがありました。

お話にもございましたが、現行のこども条例は、その制定のプロセスにおいて、多くの県民の皆様が参加されたものと考えております。

具体的には、平成12年度から15年度にかけまして、日ごろから子どもや子どもの活動に関心を持ち、積極的に関わっている県民の皆様などで組織する委員会の活動を中心に、多くの県民の皆様や子どもたちに参加をいただきながら、こども条例の検討が行われています。

当時の地方分権という流れの中で、県民参加、県民との協働を進める有意義な方法であったと認識しております。

次に、とさっ子タウンに参加した感想についてお尋ねがありました。

本年9月、とさっ子タウンにお邪魔し、高知市の吉岡副市長とともに、新しく選ばれた、とさっ子タウンの市長さん、議員さんたちと、まちづくりについてお話をさせていただきました。

本当にどの子どもたちも、目をキラキラと輝かせ、真剣にまちづくりのことを考えておりまして、大変感心をいたしましたし、私自身も刺激を受けたところでございます。

また、こうした子どもたちが多くいることに改めて高知県の将来に希望を持ちましたし、こうした子どもたちがさらに育ってくることで、高知県の将来はもっと明るいものになるのではないか、そういった感想を持ったところでございます。

本当にすばらしい取り組みだと思います。

次に、「子どもの権利条約」と「高知県こども条例」の意義についてお尋ねがございました。

そもそも、子どもの権利条約は、世界の多くの子ども達が、飢え、貧困等の困難な状況に置かれている状況にかんがみ、世界的な観点から子どもの人権の尊重、保護の促進を目指したものだと考えております。

我が国におきましても、児童虐待やいじめなど子どもを取り巻く環境が厳しいことを考えますと、子どもの権利条約の考え方は大切なことだと認識しています。

また、現行のこども条例につきましては、3月の記者会見の場でもお話をさせていただきましたが、いじめや児童虐待の増加など、子どもたちを取り巻く深刻な状況を踏まえて、子どもたちの人格と権利が尊重され、社会全体の責務として子どもたちが健やかに育つ環境づくりを進めていこう、すなわち、いじめ、児童虐待など、子どもの人権が侵害されるような状況がある中で、どうやって子どもを守っていくか、というところに主眼があったものと考えています。こうした考え方は、今においても非常に大事なことだと思っておりますし、尊重されるべきことだと考えております。

また、併せて、今回提案されている改正条例案においても、こうした考え方は盛り込まれております。いずれにいたしましても、議会においてしっかりと議論していただきたいと考えています。

次に、子ども条例に関して、とさっ子タウンなどの取り組みは、県の施策と矛盾をきたすものになっているのか、とのお尋ねがありました。

私は、自らの夢や将来の目標を持って、それに向かって努力し、切り拓くことができる、そうした子どもたちをこの高知県で育てていきたいと思っています。

そのため、いわゆる「知」、「徳」、「体」とバランスよく育て、将来を力強く生き抜いていくための教育にも力を入れてまいりました。

その意味では、「とさっ子タウン」にしても、また、「こうちこどもファンド」にしましても、子どもたちが主体的に参加し、様々な体験や活動を通して、社会の仕組みを知る、あるいは、まちづくりに関心を持つ、こうした子ども達の意欲を引き出したり、夢や志を喚起する取り組みだと受け止めておりますので、県の施策の方向性と異なるものとは思っておりません。

■浜田英宏 議員

提出者を代表いたしまして吉良議員のご質問のお答えします。

まず、現行の高知県こども条例について高校生を始めとした多くの県民が参加をして行政とともにつくられた県民主体のこの成立過程に対する評価に対するお尋ねがございました。

吉良議員がご指摘のとおり、この条例の一つ一つの条文は、長い時間をかけて県民の方々にも関わって頂き、築き上げられたものであり、この過程においては様々な意見を頂きまして、優しさや期待など子ども達に対する思いが色濃く盛り込まれたものであると感じております。

このような条例制定までの過程は、日本共産党の申す、子ども権利条約、いわゆる児童の権利に関する条約の精神を県民と行政とが共有をし、理解を深め、広めるということにおいても、また、民主主義の精神が体現された(子どもに対して思想や概念を具体的に説明する、表現をすること)ものであるという点からもおおいに評価ができるものと感じております。

次に、いわゆる児童の権利に関する条約のもつ意義についてのお尋ねがありました。

18歳未満を児童と定義し、国際人権規約において定められている権利を児童にふえん(例をあげて詳しく説明をすること)したこの条約は、児童の人権の尊重、確保の観点から必要となる詳細かつ具体的事項が規定をされております。この内容は、基本的人権の尊重を基本理念に掲げている日本国憲法を始めとした国内法と軌を一にするものだと思います。特に、児童の基本的人権に言及していること、また、虐待など権利を侵害されたり立場が弱いとされる児童の保護や援助について謳われていることからもこの条約の発効を契機に家庭、教育現場、さらには地域社会において広く児童の人権の尊重に対する理解が深められたものと認識をしております。

次に、現行条文の支柱である、日本国憲法といわゆる児童の権利に関する条約をはずした理由、つまり第二章から第四章までを削除した理由についてのお尋ねがありました。

現行のこども条例の理念は日本国憲法はもとより児童の権利に関する条約の精神を基調として構成をされております。このたびの改正案は言うまでもなく、憲法、条約の精神を決して否定したものではありません。これらの理念を当然のことながら引き継いだ上で、児童を取り巻くよりよい環境作りのため実効性が高まるよう、一歩踏み込んだ内容に致しました。また、現行条例の第二章から第四章までを削除したことについては、子どもが本来的に有している人権などは上位法令である憲法をはじめとした国内法や条約において、その崇高な理念が謳われております。それら上位法令ですでに担保されている子どもの権利などに関する条項を県の条例で改めて書き添え、屋上屋を重ねるということよりも、子どもの権利のために、そして子どもが心豊かに健やかに成長できるために大人が何をするべきか、ということこそが今一番に求められており、改正案の上程に踏み切ったものであります。

次に、改正条例案で謳っている子どもの尊厳、権利、高い規範意識についてのお尋ねがありました。

子どもの尊厳とは人が生まれながらにして有している人としての尊さであって、決して他人が犯してはならないものです。また、子どもの権利とは子どもが有している児童の権利に関する条約や日本国憲法などで保障された人権のことであります。

そして規範意識とは道徳心や倫理観と表現してもよろしいかと思います。このたびの改正条例案では、その規範意識をより高い次元で目指すものであります。

最後に、このたびの改正条例について、改正という提案ではなく、独自の条例とすべきではないのか、とのお尋ねがありました。現行の子ども条例の制定から8年余りが経過する中で、痛ましい児童虐待やいじめの問題などが社会問題として大きく取り上げられていますように、子どもを取り巻く社会環境は著しく変化をし、悪化の一途をたどっております。そういった社会環境の変化に危機意識を持ち、こうした問題にしっかりと向き合う条例が求められているという強い思いのもとに、先ほど申し上げましたとおり、本県初の県民の手作りである子ども条例に関わられた県民の方々の温かいお気持ちをしっかりと受け、それを引き継ぎながら、我々自民党県議団は子どもが心豊かに健やかに成長できる社会の実現を目指して、より実行力のある条例へと改正をしようとするものです。

以上、答弁とさせていただきます。

9.第二問

■吉良議員

それぞれ答弁ありがとうございました。

第二問は子ども条例について絞っていきたいと思います。

先ほど、提案者の方からも説明がありました。明示はしていないけれども、ここでいう権利というのは憲法上、それから子どもの権利条約の権利というものを念頭においている、ということです。そうすると余計に疑義が出てくるんですよね。認めているというならわざわざ5条から13条までの子どもの固有の権利を削るのか、その立法事実は一切触れられていませんね。そこが全く県民には分かりませんね。あえて、削った。そしてその立法事実はどういう事実があるから削ったのか。そしてなぜわざわざ全文から児童の権利の問題、憲法を削ったのか。また新たに疑問がわくわけですね。

その不合理な事実がきちっと提起でないと立法するという要件は出てこないと思います。具体的に記載して不合理な事実をお示しをしていただきたいと思います。

それから、もう一方でですね、この憲法を認めるということですけれども、憲法の98条には、条約遵守義務というのがあるんですね。子どもの権利条約の条約には、第42条に、「批准した国は適当かつ積極的な方法でこの条約を広く知らせなければなりません」と明記されています。児童の権利条約の名詞、子ども達に保障された個々具体的な権利、今まで単なる保護されるもの、あるいは子ども中心主義の考えから脱却してパートナーだと、将来の大人を育てるのではなく、今現地点でパートナーだから一緒になって作っていこうよ、と。そして子どもだから足りないところは私たち大人が援助するよ、と。具体的な権利条項、固有の権利をしっかりと明記をして、遅れた児童観の方々に示していく、広めていく。そしてそれに基づいて、先ほどご指摘のありました、とさっ子タウンなどいうものに一緒になって取り組みながら学んでいくことが必要なんですけれども、この条約遵守義務に照らしてもですね、後退をしていると思いますけれども、それについてご答弁をお願いします。

■浜田議員

ただいまの質問に対する答弁をさせていただきます。

我々はこの子ども条例の改正を議論する中で、ただいま申し上げましたことに関しましては、既に上級法令、児童の権利に関する条約、あるいは憲法などで担保されている、ということを前提に、わざわざ屋上屋を重ねて県条例で上書きをしたり、同じことを書く必要は全くない、とそういうことは全てあえて削除をさせていただきました。

以上でございます。

■吉良議員

やはり納得できませんね。その論理でいいますと条例はいらない、となります。いずれにしてもですね、やはり委員としてのコンプライアンス、提案するなら提案する事実、そして法規をきちっと守っていく、そういうコンプライアンス、規範意識をですね、提案した方々には持って頂いて、十分県民の論議に付す、と。成立過程を評価するならば、そういう経過を経て県民の審判をあおいでこの条例は提案し直してほしい、ということを申し上げて私の質問を終わります。