議会報告

  • 2012年10月09日
    第32回オリンピック競技大会および第16回パラリンピック競技大会の東京誘致を支援する決議(案)」に対する反対討論

2012.9月定例会 吉良富彦 議員

私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっています議発第10号「32回オリンピック競技大会及び第16回パラリンピック競技大会の東京誘致を支援する決議案」に反対の立場から討論を行います。

日本共産党は、オリンピックやパラリンピックの開催そのものに異議を唱えるものではありません。世界中の国々が一堂に会し、スポーツを通じてフェアプレーの精神、友情と連帯の精神を培い、平和でより良い世界をつくることに貢献する本来の目的をめざすことは推奨すべきことと考えています。

今回のオリンピック招致は、「東日本大震災からの復興」をメインテーマに掲げています。国が総力をあげて、被災者・自治体が納得できる復興対策にとりくむことが求められていますが、東日本大震災の被災地の復興は、いまだ入口の段階、緒についたばかりであります。そして、4年以内に70%の確率で起こる、との、東京大学地震研究所発表の首都直下型の地震はもちろん、直下型でなくとも、今後、東海地震で、首都・東京を大地震が襲うリスクが大きいことはご案内の通りです。

このような日本の、震災からの復興と今後の地震対応に世界から大きな注目が集まっている中、2020年の夏季五輪の東京招致委員会が国際オリンピック委員会に提出した、開催地立候補の申請ファイルのオリンピック「開催ビジョン」は、今回の被災地の被害を津波による被害であることをことさら強調し「東京が受けた被害や影響はごく僅か」としか、書いていません。地震など、今後の災害リスクの過小評価を前提として、1万7千人を収容する選手村を始め、多くの競技施設を、臨海部に建設する計画となっています。これでは「リスクは低い」どころか、臨海部は液状化の危険が強く、また東京の津波対策は極めて不十分な状況です。

さらに、原発などの災害リスクも「きわめて低い」と言いきり、東京でも放射能対策で悩まされている実態にもふれず、福島第1原発事故による放射能汚染には全く触れられていません。原発事故や放射能除去も収束にほど遠い状況です。福島原発事故でまき散らされた放射能汚染を収束させるには、まだ長い時間がかかります。スポーツの専門家も、「放射能汚染の危険が取り除かれていない国で五輪を開催できるのだろうか。せめてその見通しが立った段階で立候補するのが良識ある判断ではないか」と述べているのです。

また、野鳥の生息地を破壊する施設計画に 日本野鳥の会などから反対の声があがっています。

2016年のオリンピック開催地決定に対しても東京は手をあげ、その招致活動に広告代理店に支払った約80億円を含め、合計約150億円もの税金を使ってしまったことは、多くの都民から批判を受けました。石原都知事は、2016年のオリンピック招致に失敗した時、次の招致は都民の意見を聞いて判断するとおっしゃっていましたが、「都民の声総合窓口」に寄せられた意見の8割以上が招致には反対しています。しかもその理由に、被災地復興や東京の防災対策を優先すべきだからだと、東京都民があげていることに謙虚に耳を傾けるべきです。

東京都の震災対策事業費は97年度に1兆452億円あったものが、石原都政になって3期目の2010年度には5212億円、なんと半分に減らさらているのです。木造住宅の耐震化は、06~10年度の5年間で木造住宅の耐震化助成が静岡県が8900件余だったのに対し、東京都はわずか300件と大きく立ち遅れています。

こうした現状があるからこそ、都民・国民の招致を求める声は全く広がっていないのです。IOCの世論調査によると、東京での賛成は47%と半数にも達せず、5つの立候補申請都市のなかで最低です。逆に、反対の声は23%と最高の数値を示し、それは、イスタンブールの3%の8倍近くに達しているのです。

4千億円のオリンピック開催準備基金などを活用して、首都東京の安全・安心を確保するための防災・福祉の東京づくりに全力をつくすときと考えます。

五輪招致に石原知事がここまでこだわるのは、国内の事情や、都民・国民の安全よりも、自らが作成した長期計画「2020年の東京」の計画の方を大事にしているからです。

海外の大企業を東京によびよせるための特区作りや、1㍍つくるのに1億円もかかる東京外環道の建設やそして巨大港湾整備事業などを推し進め、東京をアジアの司令塔にする、というこの計画を実行するために、2020年オリンピック招致を絶好の口実にしようとしているのです。こうした道路整備事業を含め、すべてを合わせますと9兆円以上の財源がオリンピックの名で使われようとしています。オリンピックをテコに、都民の防災・福祉、日本の復興よりも、巨大開発事業を進めたいというのが本音です。そのことは、石原知事自身、2011年9月に開かれた東京ビッグトークで、「オリンピック招致が日本の復興の目標になる」という理由について、「それはきれいごとだね」と自ら認める驚くべき発言をしていることで明らかです。

五輪招致の中身はもっぱら東京に投資を集中させ、東京の成熟ぶりを世界に売り込もうとするもので、到底復興に役立つとか、目標になるものではありません。

オリンピック招致は、被災者の生活再建、復興、放射能の除染、防災・福祉の都市づくりなどが軌道に乗った段階で、仮に都民、国民の声が広がるなら、検討すればよいことです。

今回のオリンピック招致決議案は、東北の復興に役立たず、「復興」を口実に、防災や福祉に背をむけて、東京の巨大開発に税金投入を後押しするもので、東京都民ならず被災地の住民にも顔向けできないものであるということを重ねて指摘し、反対の討論とします。同僚各位のご賛同をよろしくお願いいたします。