議会報告

  • 2012年10月09日
    「国家秘密法(スパイ防止法)の一日も早い制定を求める意見書(案)」に対する反対討論

2012.9月定例会 米田稔 議員

私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました議発第12号「国家機密法(スパイ防止法)の一日も早い制定を求める意見書」議案に反対する立場から討論を行います。

1985年、国家機密法=スパイ防止法は、国民の強い反対で廃案になりました。ところが政府はいま、廃案になった国家機密法の流れを引き継ぎ、さらに危険、悪質にした秘密保全法の立法化をすすめています。今意見書議案は秘密保全法制と一体のものであり、到底認めることはできません。

秘密保全法制は、政府や行政にかかわる広範な情報を特別秘密として管理し、秘密を漏らしたりする行為を重罰をもって処罰すると言うものです。

「国の安全(防衛)」「外交に関する情報」だけではなく、新たに、「公共の安全及び秩序の維持に関する情報」をも特別秘密として、国や地方自治体など行政機関が保有する重要な情報はすべて対象となりかねません。

何を「特別秘密」にするかは行政機関により判断され、都合の悪い情報や知られたくない情報が「特別秘密」として秘匿される危険性があります。

原発の耐震性や制御棒の挿入時間、使用済核燃料の扱いなどは核にかかわる問題として、TPP交渉は外交にかかわる問題として、オスプレイ配備問題などは安全保障の問題として、十分な情報を国民が得られることができなくなる恐れがあります。この1日をはじめ米軍機オスプレイが四万十市上空などを飛行した問題での、住民不在の情報管理のあり方にも強い怒りと批判の声が上がっています。また福島第一原発事故の際のSPEEDI情報が秘匿されて公表されなかったことが被害を取り返しがつかないほどに拡大させたことを想起しても、「公共の安全及び秩序の維持」を名目に、国民にとって重要な情報が隠されることの理不尽は明らかです。

元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)氏は、「政権にとって、良い漏えいと悪い漏えいがある」として米国のオバマ政権の7件の情報漏えい事件での対応を紹介しています。 国際テロ組織アルカイダやイランに対して、オバマ大統領の“強い”対応を印象づける情報については、刑事訴追がなかった一方、政権の不都合な情報を暴露した3件については、「オバマ政権は訴追をOKにした」というものです。孫崎氏は、「為政者に中立公正な情報開示を期待しにくい。どうしても政権を正当化する特定の情報しかださなくなり、政策決定をゆがめていく」と指摘し、「(秘密保全法制のような)規制はできるだけないようにしないと、国民を守るための情報も出てこない」と長らく外務省の第一線で「情報」を扱ってきた経験から、その危険性に警鐘をならしています。

秘密の漏えいなどについて、公務員だけではなく、委託企業、下請業者や研究機関、そこで働く労働者や研究者など広く国民が処罰の対象とされます。

対象になる行為として、漏洩行為の過失犯、共謀、独立教唆、扇動まで広く処罰されます。例えば、防衛秘密を探ろうとした記者がデスクと相談したことが「共謀」や「教唆」に問われることも考えておかねばなりません。もちろん、市民も「扇動」などで罪に問われる可能性があります。

また、新たに、「社会通念上是認できない態様の行為」による特別秘密の取得行為も処罰するとしています。「社会通念上是認できない態様の行為」の概念は極めて曖昧であり、夜討ち、朝駆けの取材行為まで、非常識で社会通念上是認できない行為として処罰の対象とされる危険性をもっています。

極めて重たい罰則も問題です。10年以下の懲役刑を選択することを検討しているとされています。これは、初犯者でも実刑になるという大幅な重罰化であり、過失犯も処罰されることから、秘密情報の取扱者を萎縮させるとともに、取材活動を行う記者やフリージャーナリストに対しても萎縮的効果を与えること、また、不正をあばく内部告発も抑え込むことは明白です。

さらに、情報を取り扱う者を選別する「適性評価制度」の導入が計画されています。これは秘密を取り扱わせようとする者について、行政機関や警察が、職歴、活動歴、信用状態、通院歴等を無断で調査し、秘密情報の取り扱い適性を評価するというものです。家族や友人なども調査対象となります。アメリカの「愛国法」でも頻発した名義を勝手に使われるなどして無関係の人が誤って「危険人物」扱いされることもあり得えます。また制度そのものの実効性が問われています。

国家機密法、秘密保全法制は、国民のプライバシー侵害、思想・信条による差別など人権侵害の危険が極めて大きい制度で、日本弁護士連合会、新聞協会などマスコミ関係からの強い反対の声がだされています。情報公開に逆行し、国民弾圧につながりかねないこのような法律の制定は断じて許されるものではありません。

すでに、現在でも、秘密保護のために、自衛隊法、MDA秘密保護法、刑事特別法、国家公務員法等による厳しい情報保全体制がとられています。こうした秘密保護の法律のねらいを端的にいえばアメリカと一体となり戦争するためと言わなければなりません。

1985年に国会に提出された国家機密法も、1978年の日米「旧ガイドライン」で求められた情報保全、秘密保護の具体化でした。「新ガイドライン」、アフガニスタンやイラクでの戦争、米軍再編を通じて米軍と自衛隊との一体化が進められ、それとあわせて、日本の秘密保全がアメリカから繰り返し求められてきました。最近では「武器輸出三原則」を見直し、武器の共同開発や輸出まで進めようとしています。アメリカが、日本に補完的な役割を求める世界戦略のもとで、戦争や武器技術などに関する情報・秘密を保全する体制が強く要求されているわけであります。アメリカが安心して日本を戦争に加担させるための法律と言っても過言ではありません。

また、軍需産業と原発の推進、TPP加入など、財界や多国籍企業の要求にもとづいた法律です。

戦前の軍機保護法や国防保安法のもとで情報が隠され、完全に情報が統制されて侵略戦争が進められた苦い経験を思い起こさなければなりません。戦後も、核持ち込みや沖縄密約、原発神話など国民への情報が隠され、反国民的な政治が進められてきました。いま日本にもとめられていることは、国民の知る権利を保障し、もっと情報公開をすすめることであります。

本意見書議案は、国民の知る権利、民主主義を危険にさらし、平和と国民の利益に反する秘密保全法制の成立を後押しするもので、断じて認めるわけにはいきません。また高知県詩「自由は土佐の山間より」を全会一致で制定した高知県議会が採択すべきでないことを強く訴えるものであります。

以上反対討論とし、同僚各位のご賛同を心からお願いいたします。