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- 2012年09月28日
- 議会(質問・討論)
- 精神障害者への運賃割引制度について、介護福祉分野の人材確保について、周産期医療体制の整備について
2012年9月定例会 予算委員会 塚地佐智 議員
質問項目
1.精神障害者への運賃割引制度について
■塚地 議員
県民の暮らしが本当に日々切実な要求を持っていまして、その解決を目指して質問をさせていただきたいと思います。
まず最初に精神障害者へのバス運賃の割引制度について地域福祉部長に伺います。
2006年の障害者自立支援法によって身体障害者、知的障害者、精神障害者も一元的にサービスを提供されるとの考え方にたって、精神障害者保健福祉手帳も写真付きのものに変わりました。2007年6月議会で中根議員が質問し、関係機関と協力しながら前進を図りたいとの部長答弁をいただきました。しかし、今日に至っても身体障害者手帳、知的障害者手帳保持者には実施されているバスの運賃割引制度が、一部の市営バス以外は精神障害者には適応されていませんけれども現状はどうなっているかお示し下さい。
■地域福祉部長
現在のところ、県内の乗り合いバス事業者14社のうち、精神障害者保健福祉手帳を交付された方に運賃割引を行っているのは2社となっています。また、昨年12月末現在ですが、6つの市町村営のバスで手帳による運賃割引が行われています。その他、2つの町では民間バスの利用時の無料券が交付されているというのが現状でございます。
■塚地 議員
14社中2社という実態で、他にはいくつかあろうかと思いますけれども、基本的にはまだまだという到達だと思います。
本県には約2,500名の精神障害者保健福祉手帳を持たれている方が居ますが、その方の多くは月5~8万円の障害基礎年金とほんのわずかな作業工賃で生活をしておられまして、通所には県の助成制度がありますけれど、通院や日常生活にかかる交通費が負担となっています。
高知県精神障害者家族会連合会の方や、ボランティア団体の方などを中心に、実施に向けた要望活動がこれまでも取り組まれてまいりました。
そうした声を受けて、この7月31日に国土交通省の乗り合いバスの標準約款が改訂されることになりました。その中では、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方が、運賃割引の対象として明記をされ、9月30日から、この改正約款が施行されることになりました。この点をどのように評価されているか伺います。
■地域福祉部長
県としましては、精神障害のある方への運賃割引の適用について平成11年から国への要望活動を継続をしております。私自身もこれまで毎年のようにその要望活動を続けて参りました。県内の交通事業者に対しましても身体・知的・精神の3障害同一の考え方で運賃割引の適用を拡大していって頂くよう粘り強く要請をしてまいりました。その結果、一部の地域のタクシー運賃の割引は実現しましたが、国の基本的な考え方が運賃割引は事業者の判断によるということにされていたことから、なかなか事業者を拡大していく、ということにはつながってまいりませんでした。この度、乗り合いバスの標準約款の改正が行われました。これは国の中でもバス事業者の認可を所管する国土交通省が運賃割引の対象に精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者、と明記されたもので、割引制度を拡大していく上で非常に意義のあるものだと受け止めておりますし、今後全国的にもこの約款によって割引を行って頂く事業者が広がっていくのではないか、と私自身は期待もしているところでございます。
■塚地 議員
ありがとうございました。その期待が現実のものになることを望んでいるわけで、既に標準約款の改訂が示されて、9月30日施行という段階になっていますから、県内事業者の中でもこれによる動きがあるのではないかと思いますけれども、その点は今どのように把握されているのかおうかがいします。
■地域福祉部長
県内14社の事業者に対して約款改正の対応をお聞きをしました。現在運賃割引を行っている2社の他に4社が新たに改正標準約款を適用するよう手続きを進めている、とその運賃割引の開始時期として来月10月1日が2社、11月1日からが1社、実施時期について検討中が1社、という状況と伺っております。
■塚地 議員
それらの中に県内2大大手のバス会社は含まれているでしょうか。
■地域福祉部長
残念ながら含まれておりません。
■塚地 議員
県内大手のバス会社が実施に踏み切らないと、ある意味大多数の方が恩恵を受けることができない、というのが実態だと思うんですね。今回の約款の改定というのは一定の義務的要件というものも含まれたぐらいの強い指導になっていますから、ぜひともこの大手のバス会社にも実施に踏み切っていただく、という指導が必要ではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか?
■地域福祉部長
今回の標準約款の一部改正についてお話のありましたように国から各地方運輸局に対して特段の事情がない限り、改正後の標準約款の規定を適用するよう事業者を指導すること、ということなどが通知をされております。ただしかし、割引に要する経費は事業者の負担となりますので、その経営状況によってはただちに割引にふみきれない事業者もあるのではないか、というふうに考えられます。ただ、この通知に基づき、運輸局からバス事業者に対して周知、あるいは指導は行われるものというふうに考えておりますので、県としましてはその状況を注視しながら必要な場合は家族会みなさんや施設などの関係者とともに、各バス事業者、また運輸局について運賃割引について地域福祉部だけでなく交通部局とともに要請もしてまいりたいというふうに考えております。
■塚地 議員
福祉施策の一つとして県が主体となってその実施を求めるということも大事だと思います。特段の理由の中に経済的、経営的な理由、というのを含むとなれば、県としての対応もこれからは考えていかなくてはならないのではないかと思います。
障害の種別によってそのサービスに格差がある、というのを行政として認めない、という立場での対応をですね、ぜひ求めておきたいと思います。
本来でしたら、ユニバーサルサービスとして国が財政的措置をとるという性格のものでもあると思いますけれども、国に対する対応というのは今後どうされていくでしょうか?
■地域福祉部長
今回バス事業者の方にお聞きした中では、先ほどの事業者以外に近い将来、対応を行っていきたい、というふうなお話もございました。お話にあったとおり、運賃割引の促進については身体・知的障害者との均衡、三障害同一の取り扱いとする、というのが今回の改正の主旨というふうに理解をしておりますし、その主旨を事業者に理解していただいて、できるだけ多くのバス事業者に約款の規定を適用して自ら実施をしていただく、ということが私は大切である、と考えております。ただ、その状況も踏まえ、事業者の経営状況なども考慮して、必要な場合は国に対して支援制度の提案、要望を行いまして、全国一律で速やかな割引制度が実施されるよう取り組んで参りたいというふうに考えております。
■塚地 議員
精神障害者の方への割引制度の実施は、ある意味利用を引き上げるという観点もありますし、莫大な金額が必要なわけではありません。社会的責任を持っておられる大きなバス会社のみなさんにはぜひ積極的にその実施をはかっていただきたい、ということを心からこの場でお願いをしておきたいと思います。県もどうぞよろしくお願いをいたします。
2.介護福祉分野の人材確保について
■塚地 議員
では続きまして、今後の介護福祉分野の人材確保についてお伺いをいたします。
介護・福祉分野での雇用の確保は、サービスの確実な提供にとっても、雇用労働者を増やし税収を高める上でも県政の重要課題と位置づけられるべきものだと考えますが、まず知事の認識を伺います。
■知事
介護福祉分野の人材確保は非常に重要な課題だというふうに思ってます。そういうことで、例えば高校生ぐらいからの啓発活動から始まり、さらには人材育成、さらにはマッチング支援、ということで例えば社会福祉協議会の中に人材センター、研修センター、これも昨年度から強化をしてですね、そういう取り組みをしたりしてきているところです。おっしゃるとおり、これは非常に重要な課題である、とそのように思います。
■塚地議員
大変重要な課題なんですけれども、現実は本当に困難な状態が続いていると言わざるを得ません。
今後の高齢化の進行に伴って、介護人材の必要性は質の面でも量の点でも、大きく高まることになっていきます。今後、今年度からの3年間、第5期介護事業支援計画の実施のためだけでも、新たに必要となる介護職員は、約700名というふうに見込まれていますけれど、今、郡部、とりわけホームヘルパーさんなどの確保が大変困難な状況で、
先日高知社会福祉協議会が実施をいたしました「福祉職場における人材確保・育成・定着」に関するアンケートでは、その現状と課題が浮き彫りになりました。高齢者分野では、「人が集まらない・応募が少ない」と答えた事業所が283事業所58,1%に上っていますし、複数回答で「求める人材の応募が少ない」は59,8%、約6割にのぼっています。この調査結果を県としてどう受け止められているか、地域福祉部長に伺います。
■地域福祉部長
介護分野の有効求人倍率、ピーク時の平成20年には1.83倍という状況でしたが、今年の7月には0.95倍と、最近は低下傾向にあります。そういうことから、数年前と比べると統計的には人手不足感が緩和されているのではないか、というふうに思っていましたが、今回のアンケートでは、半数以上の事業所で求人に対する応募が少ない、という結果となっていますので、介護分野での人材確保は厳しい状況が続いていることを改めて認識したところでございます。
一方で、求める人材の応募が少ない、という答えも6割近くになっていますので、応募はあっても、求人側が求める福祉人材がなかなか見つからない、といったことも課題になっていると認めています。こうしたことから福祉人材の育成確保には更に積極的に取り組んでいくことが重要であると考えていますし、福祉人材センターなどで行っていますマッチングの支援なども強化をしていくことが必要ではないか、というふうに考えております。
■塚地議員
今、おっしゃられた課題の一つ一つを具体的に実現をしていくということが大事だと思います。
人材育成に欠かすことができないのが、教育機関であることはいうまでもなく、義務教育、高校教育の中で地域福祉を大いに学んでいただく、ということを重視することも当然ですけれど、喫緊の課題として、近年福祉専門学校への入学者が激減をしてきております。定員を大きく割り込む状況となっておりまして、こうした中、龍馬学園は今年度から介護福祉コースを閉鎖をし、他の専門学校でも入学者の確保が難しい状況だと聞いております。専門学校が存続できなければ、介護福祉士の養成機関が本県からなくなってしまうという可能性も否定ができません。現在、国の基金事業を活用して、一般入学定員の6割を切る学校の学生確保に対して補助がなされていますけれど、その継続はなんとしても実施が必要だと考えますが、地域福祉部長のご所見をお伺いします。
■地域福祉部長
県におきましては、国の基金事業を活用しまして平成21年度からお話にありました入学定員の充足率が6割未満の養成校が高等学校を訪問して福祉介護の仕事を説明すること、進路相談会で学生等からの相談に応じることなどの学生確保にむけた取り組みに対して補助を行って参りました。質の高いサービスが提供できる人材を安定的に確保するためには介護福祉士の養成が重要ですし、先ほどのアンケートでも厳しい人材確保の状況がありますので、今後も引き続き必要な支援ができますよう、基金の拡充・延長などについてこの4月にも国への政策提言を行ったところでございます。国の来年度の概算要求では、基金の福祉介護人材の確保対策については、今後の予算編成過程において検討するということとされていますし、補正予算にも動きなどもありますので、改めて基金の積み増し延長などについて、国に対し、提言を行っていきたいというふうに考えております。
■塚地 議員
ぜひ実施が継続できる方向でご努力いただきたいと思います。
職員のスキルアップを図りサービスの質を高めることは、利用者の満足度を高め、福祉職場の社会的地位を高め、イメージアップにつながり、雇用の確保にもつながってまいります。そのため、研修の充実は今後の大きな課題です。しかし、実質研修の大きな役割を担っている高知県福祉研修センターの現在の人員では、手一杯の状況となっていることもあり郡部での研修の開催などが十分にできないとお聞きをしております。高知県福祉研修センターの研修日数や時間数など体制面の現状はどのようになっているのかお伺いします。
■地域福祉部長
平成23年度における福祉研修センターの人員は正職員2名、非常勤・臨時職員3名の合計5名となっております。研修日数等につきましてのべ150日、951時間の実施となっております。さらに今年度の研修日数は、委託件数の増加などによりましてのべ200日となっております。ご案内のとおり、研修の実施にあたっては企画立案あるいは事前準備、さらに研修後のフォローアップなどきめ細やかな対応も行っていますので、お話にありました郡部等での研修につきましては、ニーズはあるものの必ずしも十分には実施できていないのが実情でございます。
■塚地 議員
東西に広い県でございますし、小規模事業所などはなかなか中央には出てこられないという状況もございますので、郡部開催というのは望まれるところです。そうしたことからこの研修センターへの人員増も含めた研修の充実が必要だと思いますけれども部長のご答弁を伺います。
■地域福祉部長
お話にありましたが、先ほどのアンケートなどでも高知市で開催される研修が多く、遠方からの参加は時間的、経済的負担が大きい、ということ。或いは小規模事業所では人員不足から研修を受ける機会が少ないといった意見がございましたので、今以上に研修に参加しやすい環境をつくっていくことが必要であるというふうに考えております。
今回のアンケートで明らかになった課題なども踏まえて、より充実した研修が実施できますよう、福祉研修センターと協議を重ねて参りますとともに、そのために必要な体制についても検討をしていきたいと思っております。
■塚地 議員
やはり体制というのは重要ですので、必要な体制も充実させるという立場でぜひご検討をいただきたいと思います。
こうした雇用確保のために、今キーパーソンとして動いておられる方が、高知福祉人材センター、安芸と幡多の人材バンクに所属をしておりますキャリア支援専門員の役割です。まさに八面六臂の活躍で、事業所や学校、ハローワークをつないで活動をしてくださっています。人脈やノーハウを蓄積できるよう本来でしたら非常勤職員ではなく、複数体制も検討すべきでないかと思いますけれど、この専門員の果たしている役割と今後の配置をどう考えているかお伺いします。
■地域福祉部長
県におきましては、国の障害者自立支援対策臨時特例基金事業を活用しまして、平成21年度から高知県福祉人材センター、安芸福祉人材バンク、幡多福祉人材バンクに専門員を各1名配置しており、その方たちにハローワークに出張し、就職希望者のニーズに応じた相談、個々の求職者にふさわしい職場の紹介、福祉の仕事に関するセミナーの開催、そして事業所を訪問し、求職者にあわせた職場開拓、職員が定着できる職場づくりなどについて支援を行って頂いております。更に、小中高等学校を訪問して生徒や教員に福祉介護の仕事の出前授業を行ったり、福祉の職場体験のコーディネートを行うなど、幅広く積極的に活動を行っていただいております。こうした専門員の活動は人材確保対策にとって極めて効果的な取り組みでございますので、今後も継続して専門員を配置することは大変重要なことだと考えています。先ほど申し上げましたように、国においては、福祉介護人材の確保対策について今後の予算編成過程において検討するとされておりますので、国の編成状況を見極めながら専門員の配置ができますよう、基金事業の継続などについて国に対しても更に提案をしていきたいと思います。
■塚地 議員
よろしくお願いします。
人材確保にとって、労働条件、処遇改善がもっとも効果の上がるものであることはいうまでもありません。現時点においても年収200万円以下の介護労働者というのが数多く存在をしていまして、介護職員同士では結婚もできない、といった声も聞かれます。このため、賃金を引き上げるための介護報酬の改定が行われましたけれど、利用者の負担増になっているという問題も生じていまして、この抜本的改善が求められています。
中でも、今回、介護・福祉職についている女性の働きやすい職場づくりも指摘されていますので、ぜひ女性が働き続けることのできる職場環境をつくるという点で、確実な育休・産休・生理休暇がとれるような人員体制がとれるような事業所への補助というのも考えていただけたらと思いますが、その点はいかがでしょうか。
■地域福祉部長
福祉介護の職場は女性が占める割合が高く、女性が働きやすい職場環境づくり、これは大変重要なことだと考えております。
その女性の就業支援につきましては、国の支援制度として、職業生活と家庭生活の両立を支援するための育児休業取得者の代替え職員の確保、子育て期の従業員に対する短時間勤務制度などの両立支援助成金というものや、介護労働者の負担軽減のため労働環境の向上に取り組む事業者に対する介護労働環境向上奨励金といったものなどがありますので、各事業所などではこうした支援制度を積極的に活用して女性が働きやすい環境作りに取り組んで頂きたいと思っております。その上で、県としましては、介護分野は女性が多い、ということから女性の労働条件がしっかりと確保されるよう人員確保はもとより質の高いサービスの提供、安定した施設運営面などからも県として施設経営者や施設長との会議などを通じて、各法人施設に女性が働きやすい環境作りについて働き掛けてまいりたいと考えております。
■塚地 議員
ぜひ施設長さんの協力もいただいて、ただやはり人的確保ができなければそういう体制ができませんので、そうした支援策をぜひ検討をいただきたいと思います。
現在、先ほどからお話がありましたとおり、それぞれ介護職員の確保のために県が取り組んでおられる事業というのはほとんど今、基金事業として使われてまいりました。国の状況によりましては、この基金が拡充はされるのか、縮小されるのか、もしくはなくなるということは多分ないとは思いますけれど、今ある事業がせめて継続をされなくてはならないというのが現場では大変大きな思いでございますので、ぜひこの継続を求めたいのです。その中でも特に大きな金額となっておりますのが、外部に研修に出したときに、外部に出したときの代替職員として配置をしてもらう、これは約7500万円ほどの予算になっておりますけれど、その代替職員を派遣するという事業も含めて今、必要な施策となっていると思います。そうした施策がしっかりと実現をできるということが県としての対応として今後必要だと思いますけれど、その必要な財源は国の基金が厳しくなった状況でも、県としても確保する、という決意をぜひ知事にお伺いをしたいと思います。
■知事
まず国に対しまして必要な事業の継続をこれをしっかりと訴えていきたいと思います。そして、そういう政策提言を行っていきたいとおもいますし、また必要な事業についてはですね、予算確保をするよう努めて参りたい、とそのように考えているところです。
代替職員派遣、これ緊急雇用基金、こちらを使っています。これ間もなく終わりますですね。その後どうすべきなのか。国にですね、代替の補助制度を作るように訴えていきたいと思いますし、その国の動向を見ながら我々も対応を考えていかなければならないと思います。
■塚地議員
質問が前後して大変申し訳ありませんでしたけれど、代替職員がいることによって研修に参加できるという保障がつくられているので、ここの部分が次引き継がれるかどうか、というのは大変研修の充実に大きな意味を持ちます。その点も含めて県として対応するかどうかというのは知事のご答弁をもう一度お願いします。
■知事
まずは国に政策提言をしてその結果を踏まえて適切に対応したいと思います。
■塚地 議員
それでは極めて消極的なご答弁に聞こえてしまいますが、まずは国がやるという方向目指すとして、ぜひ県としてもですね、この質を高め、確保するという点で必要な事業ですので、今後予算査定の中でしっかりと見て頂くように強く要請をしておきたいと思います。
3.周産期医療体制の整備について
■塚地議員
それでは、次に、周産期医療体制の課題についてお伺いをいたします。
安心して出産できる体制の確立は県民、とりわけ女性の切実な願いです。しかし、今日本県の状況は、出産できる施設がわずか16施設となり危機的状況を迎えています。医療現場のスタッフのまさに命を削る、命がけの奮闘で何とか支えられているという現状が先日来、地元紙でも縷々報道されてきたところです。これまでも、議会で議論がされてまいりましたけれども、本県の産科医不足や周産期医療体制が改善されず事ここに至ったといえる状況となっています。医師や助産師、看護師の確保、早期出産の予防の取り組みなどがなされていますが、県民が危機感を共有し高知で生める体制を維持するために、市町村を含む行政がしっかりかみ込んだ体制づくりが必要だと思います。
本県と同じように、少子高齢化・医療過疎が進む岩手県では、周産期医療ネットワーク「いーはとーぶ」の構想を進めておられます。東日本大震災時に岩手県総合周産期母子医療センターで陣頭指揮を執っていた岩手医科大学臨床遺伝科診療部長の福島明宗氏は、そのネットワークの特徴についてこう語っています。「重要な点は行政機関が加わっていること。母子保健は、妊婦のメンタルヘルスや育児相談など行政機関の関わりが必要になるため、医療施設を結んだネットワークだけでなく、行政サイドも巻き込んだ支援システムを考える必要があった」として、市町村の持つ妊婦基本情報、医療機関の周産期部門カルテ情報を周産期サーバーで集約して共有・連携し、インターネットを介して総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センター、協力病院、診療所・助産所、行政で利用する形態をとっていること。これらの行政を巻き込んだシステム、そしてこのシステムが東日本大震災時にはこのデータがより正確で迅速な母子手帳の再発行ができ、対応ができた、ということを述べておられます。同じように課題を抱えている本県として、大いに参考になる取組ではないかと思いますが、この「いーはとーぶ構想」について、どう評価されているか健康政策部長に伺います。
■健康政策部長
この構想は、一つは周産期にかかる医療資源を集約化すること、もう一つが医療機関や市町村などをインターネットの回線で結びまして妊産婦の検診や診療情報を共有しまして保健と医療が密接に連携を計りまして母体管理と母子保健を推進をしていくというふうに理解しております。限られた周産期の医療資源の中で安全安心な出産の環境を維持・確保していくということにおきまして、この電子カルテのネットワークシステムということは非常に有用な手段であると考えております。また市町村にとりましても、妊婦さんの健康状況をリアルタイムで把握いたしまして、母子保健の必要につなげていけるという点でも価値があるものだと考えておりますので、今後国の動きや岩手県の取り組みによる効果を勉強させていただきまして、研究していきたいと考えております。
■塚地 議員
ぜひ大いに参考にしていただきたいと思います。
高知県でも周産期医療の機能の確保のために周産期医療の提供体制再構築ということを緊急整備促進や母胎管理の徹底に取り組む必要がでてまいりました。中でも、先に述べたような行政も関わる形の周産期医療提供体制の再構築というのが急がれています。県としても課題と具体的な対策について検討を始めておられると思いますけれども、どのような視点で見直しを図ろうとしておられるか、お伺いをいたします。
■健康政策部長
周産期医療の提供体制の再構築に向けまして誰でもが安心して県内で出産できる環境をつくるということが目標となりますので、まずは分娩取り扱い件数につきまして少なくとも現時点での件数を確実に確保できる体制をつくっていく、とそういったことが基本になると思います。そのため、視点という対しまして、一つは分娩を取り扱っております7つの病院がございますけれども、この病院の高度医療に向けた機能強化をしていく、と。2つめに産科の診療所9つございます。分娩を取り扱っておるそこの診療所の存続にむけてどういう条件整備が必要か、ということを検討していくということ。3つめがその病院と診療所の連携、役割分担、こういうことについてのきちっとしたお互いの体制を構築していく、というこの3つの視点で、現時点で医師確保はじめとする医療従事者の確保、それから徹底した母体管理、そういうことに取り組みながら、この3つの視点でやっていきたいと思います。
■塚地 議員
緊急対応という形ではそういう体制でいいんだと思います。ただ、岩手県の例では、重要な点は行政機関が加わっていることだと。母子保健が妊婦のメンタルヘルスや育児相談など行政機関の関わりが必要になってくるため、医療施設を結んだネットワークだけでなく、行政サイドも巻き込んだ新システムを考える必要があったということを述べられているとおりなんですね。やはりそういう視点に立って、行政が主体となって作り上げていく、再構築の抜本的な見直しということが必要だと思うんですけれども、その点についての視点はいかがでしょうか。部長。
■健康政策部長
特にハイリスクの妊婦さんの保健指導などにおきまして、市町村と一緒に県の福祉保健所もやっていく、そういうことについて再度意思統一もしたところです。先ほど岩手のシステムのようなものにつきましては、市町村におきまして参加することについて国の補助制度とかランニングコストとか全ての医療機関が参加していただくには電子カルテとか様々なこれから勉強していく手もございますので、ただ行政として関わっていくということにつきましてはその姿勢はもちろんのことだと考えております。
■塚地 議員
ぜひその主体性を生かした形での体制の構築というのをつくって頂きたいというふうに思います。
本県の危機的状況を打開する取り組みに私はこの周産期医療体制の抜本的なネットワークづくりができてくる、と、これは電子カルテを入れるかどうかという問題だけでなく、母子保健とどうつなぐかということも含めて大変重要な課題になってこようかと思います。現場の先生方はもっと早くに問題点を浮き彫りに私たちが発信していればよかった、というような声もおっしゃっておられまして、行政が深く関わって頂くことということを強く期待もされております。その皆さんの期待の声に応えるというのが今大切だと思います。安心して出産できる体制の確立ということのために県が役割を果たさなくてはなりませんけれど、その役割を担っているのは、今、担当課の中の母子難病対策の2人体制になっているんです。時間も人もほしいというのが現場の声ですし、先生方は県がどう責任ある対応をこれからとるか、という点で県の体制に大変注目をされています。そこで知事にお伺いをいたしますけれども周産期医療体制の再構築ということを目指した取り組みを進める上での県庁の組織の抜本的強化ということが必要だと思いますけれども、どのようにお考えかお願いをいたします。
■知事
本県の周産期医療の充実強化はこれは喫緊の課題だと思っております。そういうことで、長寿県構想推進会議こちらでもこれをテーマとして取り上げたところでございますし、また、昨晩も議論をしておったところでございますが、様々な新しい取り組みを進めていかないといけないと思います。既存の取り組みも更に強化していかないといけないという点も多々あろうかと思います。そういうことをしっかり担うことのできる体制を構築する、そのことを是非やっていきたいと思っています。
■塚地 議員
例えば、定住促進であればプロジェクトチームがあります。室を構えているところもあります。私は今日、本当にお産難民をうむかもしれない危機的状況を立ち至っているわけですから、ある意味、体制は一定の確立したもの、独立したものとして作る必要があるのではないかというふうに考えていますけれども、そういうご議論になっているのか、再度知事にお伺いしたいと思います。
■知事
具体にどのような形態にするかはぜひおまかせいただきたいと思いますけれども、十分喫緊の課題に対応できる体制をつくりたいとそのように考えております。
■塚地 議員
是非とも、体制の充実で現場の皆さんの期待に応えられるような対策をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
今後の早産の予防問題につきましてお伺いをさせていただきます。
早産の危険因子というものが数々ありまして、県としても今取り組みが進められているところですけれども、熊本県では、絨毛膜羊膜炎対策と歯周病対策の二つの対策が妊婦にとって大変効果がある、と言われていまして、取り組みが進めれるようになっております。本県でも、子宮頸管長の測定という妊婦検診の充実が図られることになりましたけれど、その検診の充実とあわせまして、今回の熊本県でも取り組まれている歯周病対策、絨毛膜羊膜炎の検査というものが取り入れられるような検診の充実を望まれていると思いますがその点はいかがでしょうか。
■健康政策部長
熊本県の取り組みはまずモデル事業をやりまして、そこの実績をもとに県下全域で拡大するという取り組みだと聞いておりまして、今後もぜひ注目していきたいと考えております。本県でも早産の兆候を検査するための子宮頸管長の測定ということに新たに取り組んできておりますし、また、細菌検査を実施するという方向で専門家の周産期医療協議会の先生方のご意見もいただいた上で、是非取り組んでいきたいと考えておりますので、そういう点でも熊本の取り組みを参考にしてやっていきたいと思っております。
■塚地 議員
ぜひこの熊本での取り組みというのを重視をしていただいて、とりわけここの中でいわれていますのは、歯周病対策ということなんです。歯周病対策が天草で極めて大きな実績を上げておられまして、検診の中でぜひ歯周病対策というのを早産予防の観点で妊婦さんに実施して頂く、というのが大事になってまいりまして、歯科医師会の皆さんとの協力でぜひ強く進めていただきたいと思いますが、その点、お願いします。
■健康政策部長
早産予防のためには妊婦の歯周病予防対策が非常に重要であるということは重々承知しております。昨年度に県独自で作成いたしました母子健康手帳の別冊の中にもページをさきまして歯周病と早産の関係を説明しておりますし、市町村で妊婦手帳を配布時、或いは妊婦さんの健康教室の中でもそういう実施の勧奨というのは行ってきております。
また、歯科医師会と連携をいたしまして、平成18年度から女子高校生を対象にいたしました歯と口の健康教室を実施しています。その中で、歯周病と早産の関係とか、妊娠性歯肉炎、そういうことについても教育をやっておりまして、今後ともそういうことは継続してやっていきたいと思います。
■塚地 議員
それぞれご答弁いただきましてありがとうございました。
私は喫緊の課題として周産期医療体制の充実ということが急がれますので、その体制が抜本的に強化をされて、喫緊の課題として抜本的な改善策として改善が進められるよう県として全力あげて取り組んで頂きたいことを再度お願いをいたしまして、全ての質問を終わります。