議会報告

  • 2012年09月19日
    2012月9月定例会 「李明博大統領の竹島上陸と天皇陛下に関する発言に抗議する決議」「香港の民間活動家らによる尖閣諸島不法上陸に関する決議」議案への反対討論

■中根佐知 議員

私は日本共産党を代表して、議発第2号「李明博大統領の竹島上陸と天皇陛下に関する発言に抗議する決議」議案、議発第3号「香港の民間活動家らによる尖閣諸島不法上陸に関する決議」議案に反対の立場で討論を行います。

領土問題の解決は、あくまでも歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって解決を図ることが大事です。緊張を激化させるような行動は双方が慎まないと問題の解決にはなりません。今回の韓国大統領の竹島上陸問題や尖閣諸島の問題をめぐっても、冷静な対応が必要です。

先の国会では、「韓国大統領竹島上陸非難決議」と「香港民間活動家尖閣諸島上陸非難決議」が議決をされました。 決議は、韓国大統領の竹島訪問を非難するにとどまらず、「竹島の不法占拠を韓国が一刻も早く停止することを求める」と、これまで政府も求めてこなかったエスカレートした対応を突きつけ、日本政府に対しては「効果的な政策を立案・実施するべき」ことを求めています。

尖閣問題では「警備体制の強化を含め、あらゆる手だてを尽くすべきである」ともっぱら物理的な対応を強化することに主眼をおいたものになっています。

両決議は、冷静な外交交渉による解決の立場がまったく欠落しており、日本共産党は反対いたしました。今回の意見書決議案も、基本は、国会決議と同じ内容です。しかも、強引に異例の議会冒頭の決議によって、さらに緊張を激化させ、理性的な解決を困難にするだけのものです。

6月県議会で、尖閣諸島をめぐる意見書決議の討論で、提出者の自民党は、“民主党の弱腰外交への怒りが、尖閣諸島買い取りの寄付としてあらわれている。”“政権交代後、足元をみられるようになった”など、問題をどう平和的に解決するかという見地ではなく、党略的な動機を語りました。今回の決議案も、その延長線上であることは明白です。

6月議会の討論で、私たち日本共産党は、歴史的にも、国際法のうえでも日本に正当性があること、そして平和的解決の方向をしめしました。中国側の主張は、「日清戦争に乗じて日本が不当に尖閣諸島を奪った」というもので、この主張は侵略戦争の降伏文書やポツダム宣言を根拠にしたものです。確かに、日清戦争で日本は、台湾とその付属島嶼(とうしょ)、澎湖(ほうこ)列島などを不当に奪いましたが、尖閣諸島は、その領域に入っていません。日本共産党は、日清戦争の講和条約の経過を詳しく研究し、①日本による尖閣領有の宣言が交渉開始の2カ月前である ②条約は尖閣について一切言及していない ③交渉過程で中国側が抗議した事実はない ④条約締結の交換公文で定める台湾付属島嶼にも含まれていない、と、尖閣諸島の領有は、侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる正当な行為ということを明らかにしました。

ところが、歴代政府は、戦争で奪った土地という中国側の主張と正面からむきあえず、領有の歴史上、国際法上の正当性について、国際社会と中国政府に対して理を尽くして主張してない弱点がありました。
 
1972年の日中国交正常化にあっては、福田外相は「ことは荒立てないほうがいい」、「領土問題を話し合う考えはない」との立場で臨みました。領土画定の好機だった1978年の日中平和友好条約の交渉過程では、鄧小平副首相の「尖閣諸島の領有問題については中日間双方に食い違いがある」との主張を受け入れ、「棚上げ」論を認めています。92年に中国が「領海および接続水域法」という国内法で尖閣諸島を自国領に含めたことに対しても、日本側は事務レベルの抗議にとどまりました。問題を紛争にしない知恵は必要ですが、道理をきちんと主張し、問題を一つずつ解決していく外交努力が欠落していました。その姿勢が、民主党政権にも受け継がれているのです。

この姿勢を転換し、侵略戦争の明確な反省にたって、尖閣領有が侵略主義と無関係であることを中国国民にも国際社会にも説得的に主張する、道理をつくした外交を確立することが最も大切です。また、どんなに意見が違っても、暴力に訴えることは断じて許されません。両政府の冷静な対応を強く求めるものです。

竹島の領有についても、日本共産党は、歴史的にも国際法上も日本の領土と主張しています。

同時に、竹島の日本編入が行われた1905年は日本が韓国を植民地化する過程であり、韓国の外交権が奪われており、韓国国民のほとんどが戦前の日本による植民地支配の最初が竹島だったととらえている点を重視する必要があります。冷静に話し合う土台を築くことには、日本が韓国に対する過去の植民地支配の不法性と誤りをきちんと認めることが不可欠です。その土台の上で、歴史的事実をつき合わせて問題の解決を図るべきです。しかし、日本政府は、今日でも、韓国併合=植民地支配を不法なものと認めず、解決を困難にしています。しかも、自民党政府は、日韓基本条約で、竹島は紛争地であることも合意し、日韓漁業協定では、尖閣の領有を棚上げして、日韓の中間線で線引きにも合意しており、今回の決議案の主張は、自らの行動ともあいいれない、まったく無責任な党略的主張でしかありません。

もっとも毅然とした対処とは、道理にもとづく外交です。竹島、尖閣の領有権について、アメリカでさえ、日本の立場を支持せず、「特定の立場をとらない」との認識です。ここに相手国や国際社会に、道理をつくした説明をしてこなかった弱点が如実に表れています。

日本は、かつて軍部が暴走し、侵略戦争に突き進み、その結果、甚大な被害をアジアと日本国民にもたらした痛苦の教訓を持っています。その反省に立ち、意見の違いは徹底した対話、平和的に解決しなければならない、と自らの体験をもって説得できる位置にあり、その役割を担う責任があります。その努力こそ求められています。

韓国の李明博大統領が、天皇への謝罪を求めた発言は、今の天皇が憲法上、政治的権能をもっておらず、日本政府に対して、植民地支配の清算を求めるのならともかく、日本の政治制度を理解していない、スジ違いの不適切な発言です。国政ルートで抗議しており、領土問題と一緒にしてとりあげることは不適切です。

冷静で理を尽くした外交努力にこそ知恵と力をつくすべきだということを再度強調するとともに、高知県の反戦平和の歴史を、民間レベル、地方レベルの交流においても積極的に伝え、草の根から平和の土台を築いてくことをよびかけて、二つの決議案に対する反対討論とします。

同僚各位の賛同をお願いいたします。