議会報告

  • 2012年07月06日
    「東明神の採石場跡への廃棄物処分場設置をしないことを求める意見書」への賛成討論

吉良富彦議員

私は、ただいま議案となりました議発第15号「東明神の砕石場跡への廃棄処分場設置をしないことを求める意見書議案」に対し、賛成の立場で討論を行います。
 この5月、愛媛県久万高原町東明神への産業​廃棄物最終処分場建設計画が明らかになりました。場所は、仁淀川の源流、久万川沿いにある採石場で、その採掘跡地を産業廃棄物最終処分場に転用しようというものです。
 私ども日本共産党県議団は6月初旬、現地調査に入りました。採石場を経営している有限会社・大宝砕石工業の小倉代表取締役に案内された予定地は、安山岩を砕石・掘削した跡地で面積3ha、深さ60~90m、容積1​00万立方メートルという広大で深い穴でした。代表からは、建設しようとする管理型産業廃棄物最終処分場に屋根はつけない。たまる水は採石場に沿うように流れる仁淀川源流の久万川には放流せず、7000㎥の貯水池を設け、その水を浄化して隣接する山で継続する砕石事業に再利用する。産廃施設の経営は、有限会社大宝砕石工業​と松山市のオオノ開発が共同出資して作った株式会社TOが行う。との説明を受けました。

仁淀川は全長124キロメートル、流域市町村は仁淀川町、越知町、日高村、佐川町、いの町、土佐市、高知市の7市町村。人口は県民の55%、44万人がくらし、県人口の45%を占める高知市をはじめとする飲料水としても利用されています。流域市町村の農作物生産の農業用水としてなくてはならない命の水であり、流れ込む土佐湾における水産・漁業に大きく影響する四国第3の大河です。水質は、平成22年度、全国1級河川水質日本一と国土交通省が認め、水辺利用率も全国一位。まさに県民の暮らしと強く結びついた奇跡の清流といわれる清流です。NHKスペシャル「仁淀川 青の神秘」で「仁淀ブルー」として取り上げられるなど、様々なメデイァで注目され、中流域6市町村で構成する仁淀川地域観光協議会を中心に屋形船やリバーツーリズムなどの取り組みが進められ、観光資源として今後大いに期待もされています。
 その源流域に100万立方メートルもの産業廃棄物処理場が設置されということは、処理場の管理や運営など人的要因に加え、地震や大雨などのたびに自然災害を要因とする事故での汚染水流出を心配し、30年後に埋め立てが完了したのちも将来わたって流域の市町村は常に汚染の危険との隣り合わせでの暮らしを余儀なくされることとなります。また、私たちは久万高原町の高野町長とも対談したのですが、町長が町のブランド米の「久万高原清流米」やトマトの風評被害が考えられるとして、農業関係者の反対が強い」と述べたように、事故が起こらなくてもあるだけで農業生産物、水産物への風評被害や、観光資源としてのイメージダウンを招くことが必至となる施設といえます。

いま、東日本大震災のがれき処理と福島第一原発による放射線物質の拡散による環境汚染に対して、国民は関心を示し不安感を抱いています。そのような状況の中、開発を計画する民間業者の役員には、愛媛県内に民間で最大規模の廃棄物処理施設を東温市にもつ業者の幹部が含まれており、4月上旬に「震災瓦礫の受け入れに積極的に協力したい」旨、東温市に申し入れしていることは、私たち県民の不安をさらにひろげるものとなっています。
 建設予定地の久万高原町では、町特産の久万高原清流米や高原野菜への風評被害や仁淀川水系の美しい自然という観光地としての魅力が薄れることを理由に、松山市JAを核とする農業生産者​組織や面河川漁協、地元明神地区、流域の水利組合、そして町長も町議会も、反対を表明し決議しています。
 高知県内でも仁淀川漁協は早々に反対を決議し、「仁淀川を​守る会」など運動団体も結成され設置に同意しないよう愛媛県や関係団体に働​き掛けています。仁淀川流域の仁淀川町、越知町、日高村、佐川町、いの町、土佐市、高知市の7市町村議会はすべて、「川の水を飲料水や農業用水など命の水として愛用している、汚染水が流失すれば死活問題と、この6月議会で民間の管理型産業廃棄物最終処分場計画を認めないようにと、建設反対の意見書を可決し、6月20日愛媛県と久万高原町に提出しています。
 このような世論と議会の決議の前に、開発を計画している業者は、申請を出すことを現時点では留めています。しかし、調査に入った私たちに対し代表取締役が「町が反対しているので当面は事前協議に入れない。原発事故の影響で過敏になっているので今の段階では地元の合意は難しいだろう。時間をかけて理解してもらうしかない」と述べたことにわかるように、長期戦を構え、世論等が下火になる頃合いを見計らい処分場建設を実現する意図であることを明け透けに語っています。そのことは、申請を取りやめたのち、新聞記者の質問に代表取締役が「計画を再検討し、しかるべき時に住民に説明したい」と答えていることを見ても明らかです。
 ここまで、開発者の意図が明らかになっている今、「正式の申請がなされていない」とか手続き上の問題点などをあげつらって、今、県議会の意思を明らかにすることに反対することは、事実上、開発業者に塩を送ることに等しいものであり、流域の住民の願いに背を向ける態度だと指摘せざるを得ません。
 知事は6月15日の記者会見で「非常に心配している、この問題は愛媛県の中の愛媛県の問題と捉えるのではなく、やっぱり高知県にも大きな影響を与える問題だとして、愛媛県側の皆様方にも本県の意見をよく聞いていただきたい」と述べられています。本意見書議案はこの知事の思いと同様、愛媛県産業廃棄物適正処理指導要綱にある「関係地域住民の同意を得なければならない」とある「関係住民」に、高知県下仁淀川流域住民は当然該当すべきであり流域市町村の議決を尊重すべきであることを求めるものとなっています。
 高知県民を代表する本県議会で、本議案を、今、採択することは、流域市町村議会あげての決定と県民、そして知事の懸念にこたえるものであります。「そのうちに」と高をくくっている業者に対し、申請に必要な同意は未来永劫あり得ないという確固たる県議会の姿勢を明確に示し、仁淀ブルー、奇跡の清流、命の水を孫子の代まで残そうではありませんか。以上、同僚各位のご賛同をお願いし私の討論といたします。