議会報告

  • 2012年07月06日
    尖閣諸島の実効支配を推進するための法整備を求める意見書」への反対討論

米田稔 議員

私は日本共産党を代表して、只今議題となりました議発第10号「尖閣諸島の実効支配を推進するための法整備を求める意見書」議案に反対の立場で討論を行います。
 尖閣諸島に対する日本の領有権には、歴史的にも国際法上も明確な根拠があり、中国側の主張には正当性はありません。
 尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていました。しかし、近代に至るまでいずれの国の領有にも属さない、国際法でいう「無主の地」であり、無人島でした。日本政府は、1895年1月14日の閣議決定で尖閣諸島を日本領に編入しました。これが、歴史的には最初の領有行為となりました。この行為は、「無主の地」を領有の意思をもって占有する、国際法でいう「先占」に当たります。一時期200人近い人々が居住するなどそれ以降、今日に至るまで、尖閣諸島は、戦後アメリカの施政権下に置かれたことはありましたが、日本による実効支配が続いています。以上の歴史的事実に照らして、日本による領有は国際法上明確な根拠があります。
 中国、台湾が領有権を主張し始めたのは1970年代に入ってからで、中国は71年12月に公式の声明を出しています。直前の69年、尖閣諸島周辺で石油天然ガスの海底資源の存在の可能性が指摘をされていました。しかし、中国側の主張の最大の問題点は、日本が領有を宣言した1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていないという事実です。中国は、1970年代に入ってからにわかに尖閣諸島の領有権を主張し始めました。その主張の中心点は、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだというものです。
 しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約とそれに関するすべての交渉記録によれば、日本が中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎(ほう)湖(こ)列島であり、尖閣諸島はそこに含まれていません。日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による侵略とはまったく性格が異なる正当な行為であり、中国側の主張が成り立たないことは明瞭です。戦後も、中国人民日報の報道の中で琉球群島は尖閣諸島などから成っていると、尖閣諸島という日本の呼称を使って同諸島を日本領土に含めて紹介していました。また60年前後に北京市地図出版社から発行された中国全図などでは、尖閣諸島は中国領の外に記載されています。このように、尖閣諸島が台湾など中国の領土に属する物ではなく、中国側も70年代にいたるまではそのように認識していたことは明らかです。

 同時に日本側の最大の問題は、歴史と国際法にもとづく道理を尽くして日本の領有の正当性を主張する外交努力を回避してきたことであります。
 旧自民党政権は、日中国交正常化(1972年)や日中平和友好条約(78年)の交渉過程では、尖閣諸島の問題には触れず、棚上げするという態度をとりました。国交正常化交渉にあたって、当時の福田外相は、「(中国から)物言いがついては困るから、ことは荒立てないほうがいい」として、「尖閣列島の領土問題を話し合う考えはない」と国会で答弁をしています。(1972年5月25日、衆院内閣委員会)。侵略戦争に無反省のまま国交回復をしたために、「侵略戦争に乗じて尖閣諸島を奪った」という中国側の主張に正面から反論できず、曖昧な対応に終始しています。日本共産党は、過去の日本による侵略戦争や植民地支配に最も激しく反対し命がけで戦ってきた政党ですが、尖閣諸島問題、日本の領有権問題は、歴史と国際法に照らして、侵略とは別の問題であり、日本の領有権は全く正当である、との見地に立ち、その立場での政治的・外交的対応を72年に見解も発表し求めてきたところであります。
 92年、中国が「領海法」という国内法で尖閣諸島を中国領に含めた事に対しても、外務省が口頭で抗議しただけで、政府としての本腰を入れた政治的・外交的対応を放棄しています。
 現政権も「領土問題は存在しない」「国内法、司法で対処する」と言うだけで、中国政府と国際社会に日本の道理ある主張を明らかにする努力を展開していません。
 尖閣諸島をめぐる問題を解決するために、何よりも重要なことは、領有の歴史上、国際法上の正当性を、国際社会および中国政府に対して理を尽くして主張することです。国家間で意見の違いが起こった場合、大切なのは、問題をすぐに政治問題にすることをいさめ、実務的な解決のルールにのせ、話し合いで平和的に解決することです。昨年12月の日中首脳会談でも、「東シナ海を『平和、協力、友好の海』とするための協力の推進」が確認されています。しかし議発第10号意見書は、こうした平和的に解決するための肝心要の問題が抜け落ちていることに最大の問題があります。平和的・外交的努力をせずに、中国側も日本側もそれぞれが国内法の整備を進めることは、何の問題の解決にも成りません。いたずらに緊張感を高めることになり、結果として解決を困難にするものといわなければなりません。
 ASEANは南沙諸島の問題をめぐり、中国との間で、平和的解決のためのルールをつくり、意見の違いを紛争にしないための努力を続けています。こうした事例にこそ学ぶべきです。
 5月31日の産経新聞に東京都知事の尖閣諸島購入発言に関わって、「浮足立った強硬路線」というコラムが掲載をされました。
 “最近、「国のため」とか「これが国益」などといえば、こぞって皆が同じ方向に向くような気がしてならない。それが非常に危険であることは、歴史を見れば明らかだ。・・・・威勢のいいことが勇気と混同され、冷静で慎重な意見を持つ人は臆病者と罵られ、非国民の烙印(らくいん)を押された。その同調圧力の先に何があったか。まず歴史に学べ。地に足つけよ。弱腰外交は言うまでもないが、浮足立った強硬路線も国を滅ぼす。”と述べているのであります。
 道理をつくした外交努力の不在を正し、尖閣諸島の日本領有は歴史的にも国際法上も正当、日本政府はこの大儀を堂々と主張し、国際社会と中国政府に働きかけるよう強く求めて、議発第10号意見書議案への反対討論とします。同僚各位のご賛同を心からお願いします。