議会報告

  • 2012年07月06日
    「過疎後進県に配慮された衆議院選挙制度改革を求める意見書」への反対討論

中根佐知 議員

私は日本共産党を代表して、ただいま議題となりました議発第9号「過疎後進県に配慮された衆議院選挙制度改革を求める意見書」議案に反対の立場で、また、民意の反映を支えるための衆議院比例定数の削減に反対の立場で討論を行います。

衆議院比例定数80削減を掲げた民主党マニフェストや、小選挙区の「一人別枠方式」を違憲とした2011年3月23日の最高裁判決をうけ、また東日本大震災や福島第一原発事故を機に噴出した国民の政治不信・政治批判が交錯するもとで、衆議院では選挙制度改革をめぐる各党協議が続けられてきました。
選挙制度をどうするかは議会制民主主義の根幹にかかわる大問題です。国民の意思を議席に正しく反映する抜本的な選挙制度こそ求められています。

各党協議会では、民意を歪曲し、議会政治と議員の劣化を生み出している小選挙区制の弊害を指摘する声が相次ぎ、民主党を除くすべての政党が抜本的な選挙制度改革を要求しています。また、多くの民主党議員を含む超党派の「選挙制度の抜本改革をめざす議員連盟」では、小選挙区制廃止と選挙制度の抜本的改革に向けての検討・模索が続けられています。
 小選挙区制を導入した当事者の反省の声や世論調査でも民意を反映する制度への改革を求める声が圧倒的多数であることは、今年の2月議会での意見書討論で岡本和也議員が紹介したとおりです。
 ところが、民主党は、単独で選挙制度の改定案を衆議院に提出し、6月26日、全野党の反対にもかかわらず、特別委員会への法案付託を強行しました。これまでの経過を無視し、法案の単独提出と委員会付託を強行した民主党の姿勢は、そのこと自体が議会制民主主義を踏みにじる暴挙と言わざるを得ないことを厳しく指摘しておきます。
 本件の「過疎後進県に配慮された衆院選挙制度改革を求める意見書案」の内容は、第1に、各党間の協議で進められ、国民の声でもある小選挙区制中心の制度から、民意を反映させる制度への転換を求めるものでもなく、また、民主党の単独提出という暴挙も批判することなく、今日求められる選挙制度改革の中心点を避けた内容となっている点で、制度改革の名に値しない内容です。
 第2に、「単純な人口割りでは、地方の切り捨てが進むことが懸念される」と主張していますが、今日の地方切捨て、過疎化の進行は、自然現象ではありません。
 木材の関税ゼロや米などふくむ輸入自由化、大型店舗進出の規制緩和など一次産業や地域の業者を衰退においこんだ財界中心、アメリカいいなりの歴代政府がもたらした政治の結果です。
 選挙制度との関係で言えば、大政党に有利で、死に票が多い小選挙区制のもとで、コメ輸入自由化や「三位一体改革」など一次産業と地方を切り捨てがいっそう拡大したことも忘れてならない事実であり、この点からも、民意の反映する制度への改革こそが重要なのです。
 第3に、本意見書議案で国民合意にもなっていない憲法改定にも言及していることは、まったく道理がありません。
 私たち日本共産党は、衆議院の選挙制度について、民意を乱暴にゆがめる小選挙区制をただちに廃止し、全国11のブロック別比例代表で選出することを提案し、また、各党との協議の中で、かつての中選挙区制に戻すことについても検討に値すると考えてきました。
 今年、3月21日、幅広い女性団体で構成される国際婦人年連絡会は、国会で各党代表らに、「女性の政治参画を拡大し、多様な民意を反映する選挙制度を求める要望書」を渡しています。同要望書は、政府の男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会の最終報告が「政治分野における女性の参画の拡大は、選挙制度の在り方において重要な論点」と強調し、「死票が多くなる小選挙区制より中選挙区制・大選挙区制や比例代表制の下での方が多様な民意が反映されやすく、女性議員の割合が高くなる傾向がみられる」と指摘していることを紹介し、比例定数の削減では、多様な民意の反映はますます困難になると批判し、多様な民意を反映する選挙制度の改革を求めています。世界経済フォーラムが発表しているジェンダー・ギャップ指数(2011年度)では、日本は135カ国中98位という先進国としては極めて恥ずかしい低位置にいますが、その大きな原因の1つが女性の国会議員の少なさにあり、その改善は、日本社会の発展、活力にとって急務の課題です。

今、求められている選挙制度改革の基本は、憲法に明記された一票の格差をなくし、民意が正しく反映される制度に変えることにあり、この考え方を基本に抜本的改革が求められているのです。
 ところが、意見書案の「憲法改正も視野に入れ、一票の格差に過度に固執することなく地方の意見が国政に反映される選挙制度・定数配分・選挙区割りの構築すべき」との考え方は、憲法を基本に一票の格差をなくすべき改革に固執しないという、本来の選挙制度改革の基本をないがしろにした逆転した論理であり、選挙制度改革の基本をはずした意見書内容になっており、賛同することはできません。
 以上の理由から、「本意見書案」に反対をし、女性の政治参加を阻む衆議院比例定数の削減には断固反対を述べ、討論を終わります。議員各位の賛同を、お願いいたします。